- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041052693
作品紹介・あらすじ
貌のない神は、喰う――。赤い橋の向こう、世界から見捨てられたような禁断の地にさまよいこんだ私。
かの地の中心には、顔のない神が坐して、輝きを放っていた。万物を癒やす力を持つその神には、代々受け継がれている秘伝の奥義があった。そのことを知った私がとった行動とは?(「無貌の神」)デビュー作『夜市』を彷彿とさせる表題作ほか、生きることにつきまとうやるせなさをあぶりだしながら、時代も国籍もジャンルも縦横無尽に飛びこえ、自由闊達、神話的な語りの境地をみせる傑作ブラックファンタジー全6作!
感想・レビュー・書評
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暗く幻想的な物語。「無貌」「カイムル」良。
無貌の神:癒し神(顔無)が人食いに変貌。神殺しで交代。
カイムルとラートリー:喋る虎と千里眼姫の旅
青天狗/死神(77人斬少女)等詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「無貌の神」「青天狗の乱」「死神と旅する女」「十二月の悪魔」「廃墟団地の風人」「カイムルとラートリー」の6篇収録。
この中では、パラレルワールドをデザインする時影とその他手足となって邪魔者を殺害する少女を描いた「死神と旅する女」が、まあよかったかなあ。ただ、全体的に今一だった。期待してただけにちょっとがっかり。「カイムルとラートリー」は中篇にして描き込めばもっと面白くなったかも。 -
6つの短編集。
どれも怖面白い。
77人日本刀で斬る12歳の少女の話がとても印象的。「死神と旅する女」
「廃墟団地の風人」も好き。
私は重いから空に帰れない。
重さは、体重計に乗った時の針の位置ではなく、存在としての重さ。地上に対する未練、執着、想い。
カイムルとラートリーも壮大なファンタジーのような感じで良かった。
恒川光太郎さんの「夜市」「秋の牢獄」が大好き。
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ここではないどこかの話にひきこまれる。ハッピーエンドではない話もあるのに読み終えて全てスッキリした気持ちになる。最後の話があれで良かった。爽やかに読み終えた。
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短篇六篇の連作集です。
それぞれが独立した話ですが、辛く理不尽な扱いを受けた人物が不思議の力を借りて、理不尽が取り除かれるというストーリーが多かった気がします。
やはり、意地の悪い奴や残酷な悪役がひどい目に遭うのはスッキリとしますよ、単純ですけどね。
ただ、だからといって助けられた人が希望や幸福に向かうかと言うと必ずしもそうではなく、むしろ状況は悪化していたりするのだけどそれでもここからはこの人は悩みながらでも自分の足で歩いていくのだろうな、と思わせるような、全篇素晴らしい内容でした。いやぁ、こんな話作ってみたい。
3つ目の話『死神と旅する女』を読んでトロッコ問題を思い出しました。
あなたはトロッコに乗ってて、線路上に10人がいます。このままだと全員轢いてしまう、避けなければ。しかし避けた先にも1人いる。どうする?
というやつです。
時影には時の線路を切り替える力があり、人死が少なくなるよう選んでいたのかな。それが彼の芸術であり、描こうとした一九四五年の東京だったのでしょうか。
だからといって個々の人間の幸福には頓着せず、そんなものは一人一人が自分で考えることだ、と割り切ってますね。彼ならトロッコで迷うことなく1人を殺す方を選ぶ気がします。
フジを辛い目に合わせた本人なのですが、しかしながら時影と出会わなかったもうひとりのフジを見せられると、どちらが良いか?は分かりません。
ラストで心の腐ったある男を始末したことはよかった。ちょっとしたプレゼントですね。
カイムルとラートリー
人語を話す幻の虎カイムルと、千里眼を持つ薄幸の皇女ラートリーの冒険譚。とても面白かった、途中までは。
突然話が終わってしまうのが衝撃的。まるでジャンプの不人気マンガみたいに打切りで強引に終わらせたようです。
小説でもあるのですかね?出版できないのでこの話は何ページまでに収めてください!的な事情が。
紙の本で読んでたので残りページの少なさで覚悟はしていたが、電子書籍で読んだ人はびっくりしたろうなぁ。 -
「無貌の神」(恒川光太郎)を読んだ。 恒川さんの作品を読むのはもう四冊目ではないか。
六つの短篇 無貌の神 青天狗の乱 死神と旅する女 十二月の悪魔 廃墟団地の風人 カイムルとラートリー
ビターテイストです。 が、嫌な味付けではない。 (十二月の悪魔だけはちょっと好みではなかった)
スルッと読んでしまった。 -
各短編が始まるたびに、ホラーや童話のような異世界の色気に飲みこまれる。それを語る凛とした文章も、すぐ隣にあるような現実感の芯を通していて魅力的。
表題作に加えて『青天狗の乱』『カイムルとラートリー』が特にお気に入り。 -
久しぶりに恒川さんの本を読んだけど、相変わらずあっという間に不思議な世界に連れてってくれる方でした。
短編はいつも物足りなくて苦手なのが多いんですが、恒川さんの本は内容が濃いせいか、全然物足りなさを感じた事がありません。
不気味だけど、素晴らしかったです。 -
いつもの恒川ワールドが感じられる、安定した短編集だった。異世界でありながら、リアルさをひしひしと感じる、絶妙な描写がたまらない。
「無貌の神」
神と無気力な人々の話。面白かった。
ある意味、理想郷ともいえるかもしれない。
「青天狗の乱」
幕末から明治初期にかけての混乱を
面白い切り口で表現されている。
異世界云々ではなく、あの時代は、
今から見れば異常な世界だよな。。
「死神と旅する女」
タイムパラドックス的な話。
時影の、人を超越しながらも、
人っぽい感情があるのが面白い。
「十二月の悪魔」
SFのような話。
これは、ちょっと印象に残らなかった。
「廃墟団地の風人」
母体不明な風人の話。
よくこんな話を考え付くな、と思う。
異世界というより、普通に人間が怖いと思う話。
「カイムルとラートリー」
気味の悪さや恐怖などはなく、
少し不思議な美しいおとぎ話のような話。
この話だけ見ると少し物足りないが、
他の作品と連なる中にあっては、
ほんの最後を飾るにふさわしい、
後味の良い話であった。