- Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041053140
感想・レビュー・書評
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ホラーというよりは世にも奇妙な物語の雰囲気が強い。
相変わらずこちらに語りかけてくる劇口調は読みやすい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
黄色い豹、黒い恩田、白い弘子、今、神谷の眼の前には、この三つの生きものが、世にも恐ろしい巴を描いて、摑み合い、ぶっつかり合い、飛び上がり、打ち倒れ、ころげまわり、狂い躍るのであった。
「さあ、お熊さん、あんよだよ。あんよをするんだよ」
恩田は猫なで声で言いながら、いつの間に用意していたのか、猛獣遣いの短い鞭を取り出すと、恐ろしい勢いで、可哀そうな熊のお尻を叩き始めた。しなやかな鞭が空気を切って、パン、パンと部屋中に鳴りわたった。
(屋根裏の散歩者/人間豹/押絵と旅する男/恐ろしき錯誤) -
父親の書棚より
昭和49年 初版 -
「猟奇」の臨場感。
断然「人間豹」が面白かった。 -
表題含め短・中編集。
屋根裏の散歩者→明智小五郎と変質者気質の犯人。タイトル通り・・と言ってはなんですが、王道のストーリー。
人間豹→とにかく人間豹の描写が気持ち悪く、女性が弱っていく様も生々しく気持ち悪い。読者への呼びかけも入るし、推理というよりエンターテイメント小説?奥さん含め、女性に芯があり 毅然としていてかっこいい!
押し絵と旅する男→教科書にも載っていた有名な話。乱歩お気に入りベスト5に入るそうです。珍しく(と言っては失礼ですが)気持ちの悪い描写の無い作品。非常に味があって好きです。
恐ろしき錯誤→人間の狂気。1人の男が狂っていく様子がよくわかる。奥さん可哀想。 -
父親の乱歩コレクションを再読。短編集となってます。父親のは1974年発行の黴臭い本。なので、ますます乱歩チックで良いのだわ!屋根裏の散歩者は一番好きな作品。ドキドキするしなぁ!人間豹は最後がもやもやですが…。乱歩の味がものすごい出てるなぁと思わずにはいられない!
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三郎が愛しい。
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古典にして原点のはずなのに、今読んでも斬新に感じるのが凄い。
そして何度読んでも飽きずに面白いのは、まるで活弁士のような語り口調がどんどん先へ進ませてくれるから。
どーんとオチをつけてくれる本格ミステリである表題作、不思議を不思議のまま独特の世界へといざなってくれる後二作、ラストはタイトルの付け方からして秀逸で読む前から膨らむ期待を裏切らない良作でした。
「屋根裏の散歩者」、「人間豹」、「押絵と旅する男」、「恐ろしき錯誤」収録。 -
世の中の全てに飽きた青年郷田三郎。彼が見つけた最後の楽しみとは、下宿の屋根裏を歩き回っては他人の醜態を覗き見ることだった。この秘密の快楽に魅入られた三郎は、やがてこれを利用した完全犯罪を思いつく【屋根裏の散歩者】、東京に突如現れた怪物“人間豹”こと恩田。彼は己の欲望のままウェイトレスとレビューの歌姫を手にかける。そして恩田の毒牙は事件解決に乗り出した明智小五郎の愛妻文代に伸びる……【人間豹】、列車に乗り合わせた初老の男が語る、彼の押絵にまつわる世にも不思議な話。傑作と名高い幻想的な短編【押絵と旅する男】、妻を死に追いやった旧友に対し、男が仕組んだ復讐とその意外な顛末【恐ろしき錯誤】の4編を収録。
'04年8月に池袋東武デパートに観に行った「乱歩展」での帰りに購入した1冊。表題作と「恐ろしき錯誤」は既読だったが、「押絵と旅する男」を読んでみたくなったため。……でもって帰りの電車内でこの作品だけは読んでしまったのだが、正直大して面白いとは思えなかった。しかし今回、他の収録作と一緒に再読してみたら、何とも言えない幻想的な作品の雰囲気がいいなぁと感じられたのだ。
喩えて言うなら人に勧められて呑んでみたウィスキーがそれほどでもなかった。が、しばらく後にまた呑んでみたところ、最初の時には感じられなかった何とも言えない(しかもそれまで自分は好みでないと勝手に思い込んでいた)味わいが「旨い」と思った……そんな感じだろうか。その一方で、荒唐無稽で今なら陳腐極まりないはずの煽り文句のオンパレードに辟易するはずが、緊張感のままにページをめくり続けるという久しくなかった体験をさせてくれたのが「人間豹」だった。
やはり乱歩先生は(今更言うことでもないが)偉大なのでした。 -
表題作も当然素晴らしいのですが、「押し絵と旅する男」が特に印象的。読み進めていくほどに募っていく、この「ギュ〜ッ」と胸を締め付けられるほどの切ない気持ちって一体…。