屋根裏の散歩者 江戸川乱歩ベストセレクション3 (角川ホラー文庫 え 1-3 江戸川乱歩ベストセレクション 3)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041053300

作品紹介・あらすじ

世の中のすべてに興味を失った男の唯一の楽しみは、下宿の屋根裏から、他人の醜態をのぞき見ることだった。そんなある日、屋根裏でふと恐ろしい完全犯罪を思いつく。その結末は…!? ほかに「暗黒星」収録

感想・レビュー・書評

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  •  この作品は、1925年(大正14年)に江戸川乱歩によって書かれた短編小説である。江戸川乱歩は探偵物というジャンルを確立させた日本の小説家である。
     主人公は25歳の男性、名前を郷田三郎。何をしても興味が持てず、仕事もせず、これといった趣味もないまま過ごしていた。しかし、素人探偵の明智小五郎との出会いを経て、彼は次第に「犯罪」というものにのめり込んでいってしまう。尾行をしたり、脅迫じみた暗号文を書いてみたりと一人、犯罪っぽいことをして楽しんでいた。が、彼は危険が伴わないこれらの行為に飽きてきていた。そんな中、彼が住んでいる部屋の押し入れから、建物の天井に入れることに気付いてしまう。そこからしばらくは、屋根裏から住民の暮らしぶりを見て楽しんでいた郷田三郎だったが、飽き性の彼はそれにすらすぐ飽きてしまった。

    屋根裏から住民を覗き見ることに飽きた彼がとった行動とは何だったのか。読んでいてゾクゾク感がたまらない作品です。是非読んでみてください。

  • よしもとばななさんの王国シリーズを立て続けに読んで、少しばかり精神的な世界に入ってしまったので、そこからとりあえず抜け出そうと思って選んだ。
    物語だから空想ではあるものの、淡々と出来事だけが綴られる文章を読んでいたら、バランスを取り戻した。

    表題作である短編と、「暗黒星」という中編ミステリの2本。
    表題作は犯人が綴る犯罪の流れを描いていて、暗黒星は推理もののミステリ。
    ホラー&ファンタジー&ミステリ、みたいな。豪邸で起こった連続殺人事件の謎に、明智小五郎が挑む。
    ちなみに予想してた犯人が当たったから、よし!と思った。笑

    江戸川乱歩の小説って、どこか悲しい部分があるところが好き。湿ってて妖しくて独特の余韻が残る。

    このシリーズ8まであって装丁も美しいから少しずつ揃えたい。

  • 職場の同期から借りた。屋根裏の散歩者と暗黒星の2編からなる。名探偵明智小五郎が難事件を解決していく。屋根裏の散歩者は犯人目線で書かれていたから最初からトリックも分かっていたけれど暗黒星は誰が犯人か最後まで分からなかった。事件の前兆で映写器からスクリーンに映された写真の目や口の部分が真っ黒に焼け焦げたり、壁に懸けられた写真の目から赤い絵の具が垂れてくるところがあまりにホラーだった。依頼者の一郎がよくしゃべるな…とは思ったけれど怪我させられてるし犯人が現れた時その場にいたから犯人じゃないよな…と思ってたらまさかの自傷と替え玉だった。実は家族の誰とも血が繋がってなかったオチには驚いたし本当に復讐のためだけに生まれてきた邪悪な人間だった。父親に水責めで姉を殺すのを見せてから父親も水責めで殺すって発想は狂気過ぎる。この2作が1冊にまとめられたのは依頼者が犯人だったってのが共通点だからなのかな。

  • この有名な名探偵、明智小五郎が出てくる小説です。他のシリーズより気味の悪さはなく推理小説としても読めます。でも屋根裏の散歩者はぞーとしますね。暗黒星は途中で犯人がわかりました。でもあなたの部屋の天井から物音がしたらもしかして誰か居るかも・・・

  • 異常な性癖を持つある人物が殺人を犯すまでの心情や情景が実にリアルに、生々しく描写されており嫌悪感を抱きつつもこの異常で異様な世界観に不思議と引き込まれて行きます。

  • ミステリーに最近ハマっているような。何をするにも興味が湧かない三郎という登場人物が描かれた最初のページを読んだ時に面白そうと思って、読み始めた。「屋根裏の散歩者」は愉快な感じで、「暗黒星」は、ちょっと恐ろしいなぁと感じる作品だな。でも、明智さんがいてくれて心から安心した。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/686990

    クセがすごい小説家、江戸川乱歩のベストセレクション。
    「屋根裏の散歩者」は犯人が先に判明している叙述ミステリー。
    名探偵・明智小五郎が登場する。

  • 乱歩の中ではベスト10に入るくらい好き。

  • 面白かった。
    屋根裏の散歩者は、先に陰獣を読んでしまっていたので、トリックが分かってしまっていたのが残念だった。
    (陰獣は、乱歩のオマージュ的な要素が盛り込まれている)
    可愛いタイトルだが、好奇心に勝てない主人公の異常さが際立っていた。
    暗黒星は洋館に暮らす一家で起こる殺人事件の話だが、誰が犯人なのか、動機は何か、話に没頭してしまった。
    本作の3/2を占める少し長めの話だったが、伏線が回収されていく気持ちよさと負の感情の力強さを感じられる話だった。

  • もっとどぎついほうが好みだけどこれはこれで面白い。他人の生活を屋根裏から覗き見るスリルを想像するとわくわくする。

  • 読了。
    所謂乱歩ワールド雛形の初出といえば、やはりコレか「人間椅子」か?まだ後年のようなドギツサも無く、やや牧歌的な文体ながら、その後何度も使い回されるアイデアの萌芽が其処にある。

  • 人間椅子から乱歩デビューを果たしてここへ。帯アオリの「のぞきも殺しもこんなに楽しい」という文句に惹かれたのは言うまでもない。他人の醜態を覗き見るってかなり気持ち悪いけど確かに見てみたいかもしれない。怖いもの見たさで。
    解説ではどうして乱歩は懐かしいのかという批評が織りなされていたけれど、まだ懐かしさを感じるには至らず、、いつかもう一度読んで懐かしさを感じたらいいな

  • 解説者山田正紀氏。

    最近気づいたのだが、文章にちょいちょい作家の感情?が入るのが変わっているな、と。
    『あぁ、まさかそんな恐ろしい事が』みたいな。
    そしてその表現に引きずられる自分は単純だ。。

    今回はサイコホラーというよりは人間的であるからこそ拗らせたような感じでした。

    でも暗黒星の犯人は映像だともっと怖そう。。

  • 厨二をこじらせたと思われたくない、というわけではないけれど、新潮文庫のほうの傑作集を読んでからなんとなく近寄りがたく感じていた江戸川乱歩。
    意を決して読んでみたけれど、このあたりの作家にしては個人的に読みやすく、久しぶりに続きが気になって仕方がない!と一気に読んでしまいました。

    犯人がわかるようでわからないこのじれったい感じ…。個人的には犯人であって欲しくなかった…。

    解説のような懐かしさは感じなかったけれど、推理小説の醍醐味を、ほんとうに久しぶりに感じることができた作品でした。

  • 江戸川乱歩ベストセレクション『屋根裏の散歩者』
    屋根裏の散歩者/暗黒星 の2編収録 
    今回はあの有名な明智小五郎が登場します!

    何をやってみても面白くない。どんなことに挑戦してもつまらない。
    そんな主人公郷田三郎は明智小五郎との出会いから、犯罪趣味に興味を持ち、偶然見つけた屋根裏の入り口を利用して「屋根裏の散歩」を始める。

    自分の家族や友達、よく見かけるけど名前の知らない人たち。そんな人たちが普段、誰もいない安心して無防備でいられる一人の時間にどんなことをしているか気になる時がある。
    人の生活を覗けるなら覗いてみたい。
    きっと乱歩もそんな考えからこの小説書いたのだと思う。
    ただ、ふと天井を見上げた時に、見知らぬ人と目があったら色々な意味でゾッとしそう。

  • やっぱり夢中で読んでしまったなぁー続きが気になって暇ができるたびに読んでた…。

  • 綺麗な文章で人の奥底の性癖を抉り出す。今回の標題の作品も同様である。
    屋根裏を這い回る喜びを丁寧に描いている。そこから殺人に至る心理描写の過程も素晴らしい。

  • じっくりたっぷり楽しめる、レトロな推理小説。
    大人になってから明智探偵は初めて読んだのですが、こんなにもお耽美な話だっけ? と少しびっくりしました(笑)
    神出鬼没の犯行と、それを追いかける明智探偵の動きも良いのですが、何よりも犯人の動機がすごかったです。最後の数ページで語られただけですが、そこだけで小説1本書けるのではないでしょうか。というよりも、そんな小説をすごく読みたいです。

  • 表題作は別の乱歩集で既読でしたが、「暗黒星」がすごく気になったので購入。

    「屋根裏の散歩者」は、屋根裏という身近で未知な空間が舞台。その暗闇と主人公の暗く底知れない欲望が相乗効果でいいかんじ。

    「暗黒星」は……荒川の扱いが微妙すぎていまいち。冒頭文に魅力を感じたけど、ミステリーとしてはどうなんだろう。犯人の目星はだいたいすぐにつくのだけど、ただ、一つだけ納得できない場面があって、あー明智さんはどうやって覆すのかなーと思いきや、荒川……。
    いくらなんでもそんなことしないでしょ、荒川……。

    荒川の行動原理がイマイチということで、星よっつ。

  • 読了。

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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