陰獣 江戸川乱歩ベストセレクション(4) (角川ホラー文庫)

  • KADOKAWA (2008年11月22日発売)
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本 ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784041053317

作品紹介・あらすじ

大富豪と結婚し幸せに暮らしている女のもとに、昔捨てた男から執念の脅迫状が届く。差出人の男は謎めいた探偵作家。女の夫が変死体で発見されると、その脅迫状はぴたりとやむが……意外な結末とは!?

感想・レビュー・書評

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  • 『陰獣』というタイトルから、すごいエログロなのではないかと心配したけど全くそんな話ではなかった。
    結末が二転三転して、自分の想像を遥かに超えた最高のミステリーだった。
    読み終わった後にもう一度読んで確認したくなる本。

    『人間椅子』『屋根裏の散歩者』『D坂の殺人事件』などの要素が少しずつ入っていて、乱歩総集編のような、ファンサービスのような作品。

    あらすじ
    探偵小説家の寒川は、実業家小山田の妻の静子と偶然知り合った。静子は平田一郎という元恋人にストーカーされて悩んでいる。脅迫通りに静子の夫は殺されてしまう。
    平田はどこにいるのか探る寒川。しかし、そこには思いもよらない驚きの真相があった…。
    Audibleにて(本棚の表紙とは違う)。

  • 「蟲」が読みたくて再読。

    陰獣がいちばんすきなんだけど、
    乱歩の中でもかなり良作でビギナーにもおすすめな「陰獣」といちばんの変態作である「蟲」を一緒に収録するか!?角川よ!と思ったのだが(盲獣、闇に蠢くあたりも相当に変態だが)。まあお得ではあるかな。

    「悪魔の恋であった。地獄の恋であった。それゆえに、この世のそれの幾層倍、強烈で、甘美で物狂おしき恋であった。かれはもはや芙蓉のなきがらと別れるにしのびなかった。彼女なしに生きていくことは考えられなかった。この土蔵の厚い壁の中の別世界で、彼女のむくろとふたりぼっちで、いつまでも不可思議な恋にひたっていたかった。」(「蟲」より)

    …なんか切なくなる。

  • 「江戸川乱歩ベストセレクション4」
    「陰獣」「蟲」の2本収録。
    内容もさることながら、もうタイトルが妖しい。
    江戸川乱歩の小説がたくさん、そして同じ作品が何度も映像化されている理由が読むととてもよく分かる。陰鬱で湿っていて、じわじわと何かが迫り来るような独特な雰囲気が、映像化へと掻き立てられるのだと思う。

    「陰獣」は探偵小説を書く主人公の寒川が、資産家夫人の静子という女から「かつて捨てた男から脅迫状が届いた」と助けを求められるところから物語が始まる。差出人は人気探偵作家の大江春泥。静子の美しさと春泥への興味から、寒川は出来るだけの助力を約束してしまう。
    そんなある日、静子の夫である小山田の変死体が発見される。

    静子の肩口には謎のミミズ腫れがあり、そのグロテスクな様に寒川が妙に惹かれるという描写がある。そのミミズ腫れの理由や静子の不思議な色香、そして追いかけても逃げていく陽炎のような犯人像。
    ラストが蛇足だとも言われている作品らしいけれど、はっきりと答えが出ないままの終焉がこの作品の怪しさの余韻になっていて、私は嫌いではない終わり方だった。

    そして「蟲」
    極端な人見知りである柾木という男が、かつての同級生で今や売れっ子女優となった木下芙蓉を愛し、独占欲に駆られてひとつの事件を起こしてしまうのだが、「陰獣」以上に妖しさ満点。
    美しいものもいつしか朽ちていく。その事実に耐えられなかった柾木が起こした行動とは。

    江戸川乱歩の作品は、ミステリでもその謎を解くところがいちばんの醍醐味ではないように思う。自然と目に浮かんでくる情景は、自分なりの映画になっている気さえする。

  • ①陰獣
    個人的にかなり好きかもしれない 乱歩が自分の作品のパロディやってるのちょっと笑った。2転3転して最終的にすっきりと思いきや、最後が...微妙に後味悪くて、そこがまた良い!

  • 陰獣のみ読了

  • なかなか完成度の高い中編集だと思いました…!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    個人的にはやはり表題作である「陰獣」の方に軍配が上がるでしょうか…。「蟲」も悪くはないんですけれども、解説にもある通り、乱歩自身の人格分裂みたいな…人間は一個体だけれども、その中に複数の性格を所有している…そのせいでの悩み…みたいなものが「陰獣」には描かれているようで、そこに僕は関心を寄せましたねぇ…社畜死ね!!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    「蟲」も蟲でまた何とも気持ちの悪いお話ではありますけれども…読者にそういった想像を起こさせる乱歩の筆力にはまさに脱帽であります…!

    さようなら…。

    ヽ(・ω・)/ズコー

  • 「陰獣」/「蟲」の二編が収録。
    何故こんな、じめっとした艶めかしい表現が出来るのだろうか。

  • 「陰獣」だけ読み終わった。「蟲」は時間切れ。

    静子の体温の描写がねちっこく病的で触ってみたい感じがする。読みにくくはないけどなんか最初から最後まで気温がおかしい。
    芍薬の大きな花束。

    江戸川乱歩を読もうと思ったのは恩田陸の「日本に乱歩がいてくれて本当によかった」からなんだけれども、なんとなくわかるような気がする。
    こういうことやってみたい、て書いてくれたっていうのは。
    パノラマ島読みたい。

  • 大好きな江戸川乱歩の中編作品。「陰獣」と「蟲」のが収められている。
    今回特に気に入ったのは「陰獣」の中で他の江戸川乱歩の作品が出てきていたことだ。例えば「屋根裏の散歩者」→「屋根裏の遊戯」といった具合に少し名前を変えつつファンにわかるようにトリックとタイトルを出してある。今でも漫画や小説で同じ作者の別作品がキャラなりタイトルなり出てくるとテンションが上がるがあれはなぜだろうか。
    両作品とも不気味な犯罪と空気感が伝わってきて、妙な気分になってくる。この鬱々とした感じがやっぱり好きだなあ、と再認識した。

  • *陰獣*
    明智小五郎事件簿I〜XIIまで読んだあとに読むと、
    『あれこれ誰目線で書いてる?』と一瞬戸惑った笑
    主人公の優柔不断な感じは乱歩本人の性格の投影?
    ちょっとモヤっとする終わり方も、
    主人公の優柔不断さを考慮すればアリか。

    *蟲*
    もうこっちのストーリーの方が強烈すぎて、
    読み終わった時『陰獣』の内容忘れかけてしまったわ。
    若かりし『かれ』に誰か『人はそんなにあなたの事を真剣に見てないよ』と伝えてあげといて欲しい!!
    後半、状況の不気味さとかれの壊れっぷりが加速して、
    とっても気持ち悪くてとっても良い。
    こっちにまで臭ってくるような錯覚をしそうだった。
    面白かったです。

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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