パノラマ島綺譚 江戸川乱歩ベストセレクション (6) (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 612
レビュー : 52
  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041053331

作品紹介・あらすじ

売れないもの書きの人見は、極貧生活を送っていたのだが、日がな彼独特の理想郷を夢想していた。ある日、学生時代の同窓生、自分とうり二つの億万長者が死んだことを聞き、恐ろしい企みを思いつく。

感想・レビュー・書評

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  • アートって、きっと人間の業とか、そういうどろどろしたどす黒いもんから発せられる表現なんだと、江戸川乱歩の作品を読むと感じる。
    作品中で描かれる狂人や偏った性癖のある人などの特徴は、探せば僕らのこころの中にもきっとあるのだろうと思う。

    この本には

    「パノラマ島奇譚」
    「石榴」

    の二作品が収録されている。
    そのどちうらもが、類稀な、江戸川乱歩作品ならではの風合いと感触を持っている。
    まるで見てくれがとても綺麗で小さくてとてもかわいいが、口に入れて咀嚼するとなんとも醜悪な味や匂いを発するお菓子か何かのような感じがするのだ。

    世にも恐ろしい犯罪や兇行は、たった一人の人間のこころのなかに潜む美意識や欲望であったりするのだろう、とそういうことをまざまざと覚えさせられる。

    江戸川乱歩はやっぱり天才だ。
    そして狂人であると思う。
    そういう意味で唯一無二の才能だ。

    更に恐ろしいのは、言葉選びや、感じや、劇中の人物の喋り方や服がやはりどことなく古めかしいのにも関わらず、ストーリーの内容が新鮮であると言うことだ。
    驚くなかれ、この「パノラマ島奇譚」は大正時代に発表された文章なのだ。
    更にまるで美しいタイムカプセルか何かのような感じもある。

    本当に江戸川乱歩は美しい小説家であると思う。

  • 初めて読みましたがこれまでの江戸川乱歩とは少し違う世界観に酔いしれました。
    「パノラマ島綺譚」は正に理想郷を舞台に一攫千金と楽園の為に犯罪を起こす男の話ですが、
    トリックと言えば終盤の死体の隠し場所の謎解きくらいで
    (それも目星を付けれるくらいの謎解き)ほぼ犯人目線で物語が進んでいくので、
    逆に「一体この物語の終着点はどこだろう?」と乱歩の掌で転がされている感覚が強かったです。
    乱歩本人が解説にもあるようにこのような夢想物語を描くことを恥ずかしいと思っていたようですが、
    島に上陸してからの描写は耽美的で浮世離れしていて、
    到底理解できぬ程の狂気なのに恐ろしく美しいと思ってしまう。
    まるで宗教画や西洋絵画を眺めているような美しさで、
    特に海中と最後の花火の描写は自分が「事件」を読んでいるにも関わらず、あまりの極彩色の暴力的な美しさに事件を忘れてしまう程でした。
    「芋虫」や「人間椅子」とはまた違う狂気で、乱歩の才能に驚かされました。

  • 『パノラマ島綺譚』はパノラマ島の描写がすごく細かくて、想像するだけですごく美しい場所なんだろうなぁ。と思った。でも、最後があまりにもあっけなくて残念…それとも最初から廣介は決めてたんだろうか?
    もう一つの『柘榴』はミステリーなんだけど、その内容より硫酸で溶けた顔を柘榴に見立てるのにすごく惹かれました。美しいなぁ…

  • 入れ替わりトリックを用いた殺人事件が題材。
    しなし、トリックそのものよりも奇怪、混沌、摩訶不思議に満ち満ちた人工島の描写にこそ乱歩の真骨頂があるのだろう。海底トンネル、錯視を利用した造形物、動物のように主人に傅く人間…人によれば桃源郷にも映る景色の数々を想像するだけで恐ろしいような、それでいてどこか心地の良さを感じてくるから不思議。

  • 入れ替わりトリック
    仕掛け自体はチープな感じが否めないが、
    パノラマ島の描写が個人的に好み。

  • 昔読んだ少年探偵団シリーズ以来、久々の乱歩。一人の男の強迫的で幻夢的な妄想の極致。前衛的で自由な、ユートピア的ディストピアの描写に圧倒。表現者の幸福とは狂気的に突き詰めたコンテンツを産む事と思えば、これほど幸せな作品も無いのかも知れない。

  • 【概略】
     売れない作家である一見廣介は、ある日、学生時代の友人で自身と外見がそっくりの資産家・菰田源三郎の訃報を聞く。その死因は癲癇によるもの。死者と瓜二つであること、癲癇は死亡と診断された後に息を吹き返すことがあること、その土地は土葬の風習が残っていること、この3つの要素が一見廣介に壮大で淫靡な計画をもたらした。

    時期不詳        読了
    2019年12月20日 読了
    【書評】
     おそらくは小学校高学年、または中学生だった頃に読んだ記憶があるこの「パノラマ奇譚」。久々に読んでみた。
     「あれ?このM件S市(小説の舞台となった場所)って、三重県志摩市?」・・・という予感、どうやら当たったみたい。志摩市には江戸川乱歩の記念館があるそうだ。いつか訪ねてみよう。
     なんとも言えない淫靡な雰囲気、この空気感はなにをもってもたらすことができるのかなぁ。一度、写経とかしてみたら吸収すること、できるのだろうか?パノラマ島の中を(かりそめの)妻と練り歩く描写は、少し長いかなぁ~とは思ったけど、計画を思い立ってから実行に移したあたり、また、計画が実行された最初のあたりの雰囲気は、なんともいえない感覚に襲われた。
     おそらくは乱歩自身はそんな風に捉えてはいないと、そんな意図を含んではいないとは思うけど、パノラマ島での職人や芸術家に対する厚遇は、なんというか資本主義に対する、若しくは芸術や職人技術に対する冷遇へのアンチテーゼのようにも感じたなぁ。
     推理小説・・・というには設定が都合よすぎる、けど、人間の欲の膨張と、蟻の一穴と、人体(とりわけ女体)を想起させるパノラマ島に対する描写・・・ベルセルクの「蝕」の時間のような、そんな感じで耽読できた(笑)

  • 終わりは意外と呆気ない。

  • 少し長いけど全く飽きずにどんどん読めた。同時収録の『柘榴』も面白かった。

  • 前前前世系

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著者プロフィール

江戸川乱歩(えどがわ らんぽ)
1894年10月21日 - 1965年7月28日
日本を代表する小説家・推理作家。三重県生まれ。ペンネームの江戸川乱歩は、小説家エドガー・アラン・ポーに由来。早稲田大学で経済学を学びながらポーやドイルを読む。様々な職業を経験した後、大正12年、雑誌「新青年」に「二銭銅貨」でデビュー。昭和22年、探偵作家クラブ結成、初代会長に就任。昭和29年、乱歩賞を制定。昭和32年から雑誌「宝石」の編集に携わる。昭和38年、日本推理作家協会が認可され理事長に就任した。代表作に『D坂の殺人事件』、『陰獣』、『孤島の鬼』、『怪人二十面相』、『幻影城』、『探偵小説四十年』など。少年探偵団シリーズは絶大な人気を博した。

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