パノラマ島綺譚 江戸川乱歩ベストセレクション (6) (角川ホラー文庫)

  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041053331

作品紹介・あらすじ

売れないもの書きの人見は、極貧生活を送っていたのだが、日がな彼独特の理想郷を夢想していた。ある日、学生時代の同窓生、自分とうり二つの億万長者が死んだことを聞き、恐ろしい企みを思いつく。

感想・レビュー・書評

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  • 11冊目『パノラマ島綺譚 江戸川乱歩ベストセレクション⑥』
    (江戸川乱歩 著、2009年5月、KADOKAWA)
    1926〜1927年にかけて連載されていた表題作の他、1934年に発表された中編『石榴』も収録。
    どちらも乱歩らしい耽美でグロテスク、そして奇天烈な作品である。

    「そして、丁度その時、まるで申合せでもした様に、打上げられた花火の、巨大な金色の花弁は、クッキリと黒天鵞絨の空を区切って、下界の花園や、泉や、そこにもつれ合う二つの肉塊を、ふりそそぐ金粉の中にとじこめて行くのでした」

  • 昔読んだ少年探偵団シリーズ以来、久々の乱歩。一人の男の強迫的で幻夢的な妄想の極致。前衛的で自由な、ユートピア的ディストピアの描写に圧倒。表現者の幸福とは狂気的に突き詰めたコンテンツを産む事と思えば、これほど幸せな作品も無いのかも知れない。

  • アートって、きっと人間の業とか、そういうどろどろしたどす黒いもんから発せられる表現なんだと、江戸川乱歩の作品を読むと感じる。
    作品中で描かれる狂人や偏った性癖のある人などの特徴は、探せば僕らのこころの中にもきっとあるのだろうと思う。

    この本には

    「パノラマ島奇譚」
    「石榴」

    の二作品が収録されている。
    そのどちうらもが、類稀な、江戸川乱歩作品ならではの風合いと感触を持っている。
    まるで見てくれがとても綺麗で小さくてとてもかわいいが、口に入れて咀嚼するとなんとも醜悪な味や匂いを発するお菓子か何かのような感じがするのだ。

    世にも恐ろしい犯罪や兇行は、たった一人の人間のこころのなかに潜む美意識や欲望であったりするのだろう、とそういうことをまざまざと覚えさせられる。

    江戸川乱歩はやっぱり天才だ。
    そして狂人であると思う。
    そういう意味で唯一無二の才能だ。

    更に恐ろしいのは、言葉選びや、感じや、劇中の人物の喋り方や服がやはりどことなく古めかしいのにも関わらず、ストーリーの内容が新鮮であると言うことだ。
    驚くなかれ、この「パノラマ島奇譚」は大正時代に発表された文章なのだ。
    更にまるで美しいタイムカプセルか何かのような感じもある。

    本当に江戸川乱歩は美しい小説家であると思う。

  • 読んでる間ずっとゾワゾワしてた。
    何でしょう?あの感覚。
    「パノラマ」はある意味下品でそれでいて耽美。
    生理的に受け付けない、理性がダメだと危険信号を出しているのに本能で怖いモノ見たさで覗いてみるあの感覚に似てる。
    見たら最後帰って来れない。自分本位だから主人公の自身はハッピーエンド。
    周りもお金に眩んで見て見ぬふりだから割を喰ったのは奥方だけ?
    「柘榴」は…。柘榴のビジュアルは当分見たくないかな?思い出してしまう、この話を。

  • いやー、たまに読み返してみたくなる乱歩作品。
    このおどろおどろしい雰囲気と乱歩作品の変態っぷりがたまらなくいい。
    犯罪としては現代では成り立たないトリックなんだけどその時代背景、まだ夜道を歩くと柳の下にお化けが見えてくるようなそんな雰囲気が
    背筋をゾクゾクさせる作品でした。

  • パノラマ島奇譚
    M県I湾 三重県伊勢湾

    石榴
    信濃S温泉 信越線Y駅

  • 乱歩の作品だと「押絵と旅する男」のような幻想怪奇趣味のあるものが好きなので、期待値高めで読み始めた。
    予想はしていたけど、島の描写の比重が大きくてちょっとくどい。。でも沼のそばに寝そべる裸の女性と椿の描写の文章は、耽美で退廃的な筆致に魅せられて繰り返し読んでしまった。読み終わってから思ったけど、パノラマ島のイメージって、ヒエロニムス・ボスの「快楽の園」っぽい。
    大きなインパクトと同時に虚無感も感じる終わり方が乱歩っぽくて好きだった。

  • 初めて読みましたがこれまでの江戸川乱歩とは少し違う世界観に酔いしれました。
    「パノラマ島綺譚」は正に理想郷を舞台に一攫千金と楽園の為に犯罪を起こす男の話ですが、
    トリックと言えば終盤の死体の隠し場所の謎解きくらいで
    (それも目星を付けれるくらいの謎解き)ほぼ犯人目線で物語が進んでいくので、
    逆に「一体この物語の終着点はどこだろう?」と乱歩の掌で転がされている感覚が強かったです。
    乱歩本人が解説にもあるようにこのような夢想物語を描くことを恥ずかしいと思っていたようですが、
    島に上陸してからの描写は耽美的で浮世離れしていて、
    到底理解できぬ程の狂気なのに恐ろしく美しいと思ってしまう。
    まるで宗教画や西洋絵画を眺めているような美しさで、
    特に海中と最後の花火の描写は自分が「事件」を読んでいるにも関わらず、あまりの極彩色の暴力的な美しさに事件を忘れてしまう程でした。
    「芋虫」や「人間椅子」とはまた違う狂気で、乱歩の才能に驚かされました。

  • 『パノラマ島綺譚』はパノラマ島の描写がすごく細かくて、想像するだけですごく美しい場所なんだろうなぁ。と思った。でも、最後があまりにもあっけなくて残念…それとも最初から廣介は決めてたんだろうか?
    もう一つの『柘榴』はミステリーなんだけど、その内容より硫酸で溶けた顔を柘榴に見立てるのにすごく惹かれました。美しいなぁ…

  • 私が読んだ初板の表紙絵の方が好き。その表紙では、白波立つ海面から、海坊主のような大男が鼻から上を突き出し、頭上から無数のコンクリート建造物をはやしている。その後ろには、薄ピンクの垂れ幕をまくり、上半身をあらわにした大女がいる。そして、彼女が目を伏せる体勢で先程の建造物に白濁した涎を垂らしているのである。グロテスクかつエロティックで、パノラマ島奇譚の表紙絵としてはこれ以上ないといったものだったのだが、きれいめなものに変わってしまって残念。そしてその写真をここに投稿できなくて悔しい。
    というか、パノラマ島奇譚を再読したくて借りたのだけど、パノラマ島の描写を長々しく、うっとおしく感じてしまってあまり入り込めなかった。たぶん、みなとかなえ的な軽い文体のものばかりを好んで読んでるせい。柘榴(ざくろ)も、グロいだけであんま好きじゃない。

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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