孤島の鬼 江戸川乱歩ベストセレクション(7) (角川ホラー文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 1050
レビュー : 106
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041053348

作品紹介・あらすじ

初代は3歳で親に捨てられた。お守り代わりの古い系図帳だけが初代の身元の手がかりだ。そんな初代にひかれ蓑浦は婚約を決意するが、蓑浦の先輩で同性愛者の諸戸が初代に突然求婚した。諸戸はかつて蓑浦に恋していた男。蓑浦は、諸戸が嫉妬心からわざと初代に求婚したのではないかと疑う。そんなある日自宅で初代が殺された。これは恐ろしく壮大な物語の幕開けに過ぎなかった-。

感想・レビュー・書評

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  •  30にもなっていないにかかわらず頭髪のすべてが白髪となっている簑浦。それは彼が数年前にある奇怪な事件に巻き込まれたからであった。恋人の死、友人の死、そして事件はさらに恐ろしい方向へと転がりだしていく。

     前半は正統派のミステリー。密室の殺人、衆人環視の中での殺人という謎が話の軸です。しかし中盤それが解かれたと思いきや物語は思わぬ方向にスライドしていきます。前半のミステリから後半は冒険活劇、それも乱歩の怪奇趣味が全開で描かれるので乱歩の様々なエッセンスがこれ一冊で楽しめます。

     そしてこの作品を単なるエンタメ以上の作品に引き上げたのが諸戸道雄の存在。同性愛者で一度簑浦に告白したことのある彼が事件に絡むことで、怪奇ミステリのこの物語に愛憎もからんでくる切ない恋愛小説の面も見えてくるのです。乱歩作品に恋愛要素のイメージはあまりなかったのですが、こういう作品もあるのか、と乱歩の引き出しの多さに改めて驚きました。

     そしてそうした恋愛要素が普通の男女ではなく(作中では簑浦の最初の被害者の初代との恋愛描写もあるのですが)、同性愛者の恋愛という観点から書くのも、なんとも乱歩らしいなあ、と思います。

     乱歩作品では他にも『芋虫』や『人間椅子』など倒錯した愛情を持った人物が色々出てくる印象でしたが、諸戸がもしかすると一番乱歩作品で正常に近い人を愛する、という感情を持っていたのかもしれないですね。

     今思い返すと、ものすごく内容の濃い小説ですが、ミステリ、冒険、怪奇、そして恋愛とあらゆる要素を独自の乱歩色で塗り上げたこの作品は今後も唯一無二の作品として色あせることはないように思います。

  • 主人公と、主人公に同性愛の感情を抱く美青年が、壮絶な事件に巻き込まれる物語です。
    腐女子は読まないと損です(*´∀`*)
    鬼は、孤島のヤツじゃなくて、主人公だと思う(笑)

  • 人生観を変えられた作品のひとつ。


    差別的な言葉多様されてます。
    そういうのが許せない人にはおススメできないかも。

    片輪者、同性愛、奇形。
    バンバンでてきます。


    面白いなぁと思ったのが、

    片輪者やシャム双生児(べトちゃんドクちゃんみたいな)を見ても
    人として扱える・むしろ愛することが出来る主人公(初代への懸想もあっただろうが)

    それなのに、どうしても、極限状態においても、道雄の同性愛だけは最終的に受け入れることが出来なかった、ってところ。
    主人公にとっての鬼は彼だったんだなぁ。と。


    主人公は、道雄という、誰もが羨む聡明な美青年に愛される、ということに僅かならず自尊心を持ちながら、
    時には彼に甘えてみたりして、
    でも、そこに道雄の「本気」が見えると、恐ろしくなり、逃げる。ひでぇwww


    乱歩は短編が素晴らしいけれど、
    この長編小説は、他作品に引けをとらないぐらい、世界観が異様。
    おもしろいです。





  • 江戸川乱歩らしい気持ちの悪い怪事件でした。
    恋人や友人の殺人事件を追ううちに、とんでもない鬼ヶ島に辿り着いてしまう話なのですが、
    その島で行われていた悪趣味で不気味な活動や全ての元凶の正体の謎解きが常軌を逸していてとても面白かったです。
    端的に月並みな言葉で言えば「キチガイ」物語ですが、
    「パノラマ島奇譚」のような不思議で不気味な孤島が舞台で、閉鎖的な圧迫感や死の危険を漂わせながらも暗号解読や宝探しなどもあり、冒険小説のようにワクワクしながら読み進められる不思議な作品でした。

  • ミステリ、同性愛、障害者、復讐、隠し財産など、色々とテーマが盛り込まれた小説です。あらすじをものすごくざっくり言うと、恋人を殺した犯人を友人と探し出す話、なんですが。友人(男)が主人公(男)に並々ならない愛情を向けていたり、障害者がたくさん出てきたりと、なかなか濃い話でした。障害者への差別に厳しい今となっては書けない小説でしょうね。
    ところで、当然BL目当てで読んだわけではないので構わないのですが、それでもBL好きなわたしとしては、最初から最後まで友人が不憫でなりませんでした。

  • 唯一まともな人間である初代ちゃんは早々にご退場なさってしまった。

  • 2度目のカナダの冬に読んだ。2009年夏の衝動買いシリーズからの一冊である。
    これの直前に「帰らざる夏」を読んで、色々精神的にうわーって興奮状態だったから、「孤島の鬼」の威力も相乗効果で半端無かった。

    以下、当時の日記から抜粋。日本語がおかしいのは今も昔も変わらない。(反省!)


    『まずは昨日との作風の違い。勿論、時代も傾向も何もかも違うのだが、はやり「大衆文学」「娯楽」という要素の大き過ぎるほどの威力を痛感した。
    なにせこれはミステリ兼冒険ストーリーなのだから。
    久々に、横溝正史作品を読んだ感じがした。不気味な登場人物や極悪非道な魂胆など、私を怖がらせながらも惹き付けて病まないあの俗っぽさ。
    そしてもちろん不純な動機もある。
    諸戸の心が痛い。私にとっての最大の悲劇は彼であった。
    最後の一行に、どうして心をむしり取られないでいられようか。
    ストーリーが何より、諸戸の歪みと純粋さとそしてすべてが、どうしようもなく「人間」を物語っていると感じた。倒錯した愛がなんだ、同性愛がなんだ、彼は一番、鬼の中で人間ではなかったのか。
    主人公の蓑浦も、正常な人間であった。しかし彼は、精神や感情といった面ではあまりにも受動に徹していて、作中の「モラル」「正常」の権化一辺倒であったにすぎない。
    蓑浦はあまりにも、中心人物でありながら、理想の「語り部」でしかなかった。
    人の内なる欲望、原始的な欲求、そして理知に富んだ「人間」でしか制御できない愛と純粋、それ故の歪み、諸戸こそがすべてを包容し、何度挫けても立ち上がった、輝かしい人だ。私は彼の中に、希望を見た気がする。何の希望なのかわからない。だが、違っている、正常でない、おかしい、と言われそうなほどの彼の愛を、私はそれでも評価したい。否、評価せずにいられようか、これほどの「人間」らしさを。
    だがしかし、世の中とは残酷だ。結末は、全く持って話に溺れてそれこそ八幡の薮知の状態で、当初私は驚いた。だがこれは避けられぬ運命だったのだ。ナラティブがどうのこうのより、それよりもっと大きな、著者のいた時代という海流の仕業である。
    悲しい、悲しい、世間が憎い。
    話の間はずっとそうだったが、最後の最後で諸戸に本当にすべて持ってかれた。
    これほどに、いじらしい人がいただろうか。
    こんな人を、切り捨てざるを得ない状態に追い込んだ世間が憎い。それでも最後まで諸戸は戦ったのだ。心の内で、一人で、誰ともなく戦ったのだ。彼はその心を、その愛を貫き通したのだ。そんな彼を、部外者(読者)である私が、愛さずにいられようか。
    これは私が彼に対して異性であると同時に、今の現代社会の中で読み終えたからだろう。
    だが、俗物的なこの小説に、ここまで感銘を受けるとは思わなかった。

    またしてもえらく感情的になりすぎているが、本当に、諸戸の為に泣きたい。

    思ったよりグロくは無かったけど(横溝作品で見知ってるので)、嫌な人は嫌がるかな。それでも、私みたいな妙に斜め上の解釈をする人には、オススメ。』

  • はるかに昔読んだ、二十面相と明智と小林少年も、子供心にも怪しいかった。でも、あれは別物だと思いたい。

    冒頭の、意味深長なくだりは期待度をMaxまで上げますが、
    ラストまでそのまんま突っ走ります江戸川乱歩。

    主人公と初恋の女性とのさわやか交際…と読み進めると、一変。
    妖しさ、おどろおどろしさ、禍々しさ、満載。
    ○○フラグなんて優しいものはなし!


    全編冒険推理モノなのに、
    ラストの半ページで、全く違った印象を残した乱歩。

    いまどきのBLものなら、間違いなくもっと軽く器用な性格だったはずの
    道雄君のポジション。
    うまく立ち回せてあげればよかったのに…。
    巨匠は彼に何を思ったのだろう。

  • 江戸川乱歩さんの頭の中ってどうなってんだろう…。
    と前から思ってた事が更に濃くなったそんな作品です。

    色々と驚かされましたが、

    陰険でジメジメしてる一言で言うと「気持ち悪い」話でした。
    その「気持ち悪い」感じが
    ただ気持ち悪いのではなく癖になる、耽美でいて気持ち悪い。
    全く不快感の無い、気持ち悪い作品。

    同性愛の要素も有り、
    最後の最後まで主人公を愛し続けた諸戸さんが切なかったです。

  • 昔読んだことがあったが、内容をかなり忘れていたので再読。探偵と密室殺人と同性愛と奇形と冒険、江戸川乱歩全部入りの小説。

    色んな日本の物語の原点が見える。

  • 江戸川乱歩氏の小説の面白さをわたしに教えてくれた本。
    短編集で「芋虫」を読んで、
    乱歩はあわないかなとおもってそれっきり敬遠していたけれど、とあるきっかけで読んだらものすごく面白かった。
    文章が扇情的で、ぐいぐいと引き込まれる。先へ先へとよませるミステリーだと思った。
    最後の一文が、なんとも胸にぐっと来る。

  • 「傴僂」という今はもう使われなくなった言葉が、この物語の不気味、異常さ感じた。

  • NHKの深読み読書会「江戸川乱歩“孤島の鬼”」が放映されるのを機に読了。
    番組で言われていた「(乱歩ワールド)全部入り」「本格探偵小説と怪奇冒険小説のキメラ」という紹介になるほどと思う。
    長編の乱歩も良かった。

  • 問題作であり衝撃作。
    身体に障がいのある方が読んだら、また違った感想が出てきそうです。
    ナイーブな問題をテーマにしてありますが、そこはそこ、優しい。
    しかし胸が痛む。
    昔はこんなにも虐げられていたのかと連想してしまう。
    敢えてテーマにしたのは、内容の流れから言えば乱歩の優しさだと思います。
    誰が犯人か分からず、右往左往させられました。

  • 主人公の美青年と美少女が恋に落ちるのはまぁ普通のことだし良く分かる。しかし、そこにさらに美青年が美青年に恋をしてぐるぐるした人間関係と、密室殺人などが絡んできた。もう一人の同性愛者で美青年の諸戸道雄さんが可哀想でした。これで年末の読書会番組にそなえられた感じで楽しみです!!

  • 主役かと思っていた探偵が突然死ぬところから謎解きが始まる。江戸川乱歩は少年団・冒険譚の話が中心かと思っていたが、同性愛や障害者を生々しく描く。ほのおどろおどろしさから、読めない漢字も何となく読めてしまう。

  • 学生T、高校時代の後輩からのおススメ。「中学時代の私でも読めたのでホラーが苦手な人でも読めるはずです。話も一つ一つが短いので、読みやすいですよ」

  • ひさびさの乱歩。しかも初の中篇。あいかわらず乱歩しか書きえない世界。衆人環視での殺人事件など謎解き要素があるのでミステリに入れているけど、個人的には幻想文学だと思っている。
    あまりの恐怖体験のため一夜にして白髪になってしまった蓑浦。彼の回顧録という形で語られていく異様な物語。婚約者の初代が殺され、蓑浦は自分に懸想していた諸戸道雄を疑う。友人の探偵深山木に調査を依頼するが、真相を掴んだと彼が告げた直後、衆人環視の海水浴場で殺されてしまう……

    とまあ、ここまでを書いても面白い展開なんだけど、ここからさらに蓑浦は諸戸とともにある島へ乗り込んでいくことになる。そこへ行くきっかけとなる手記の内容もすごい。

    今の時代だと逆にいろいろ引っかかって書けないものを題材としている。差別的表現も頻発するし。でもそれさえ気にしなければ、とにかくめくるめく面白さ。ラスト近くは冒険小説のような展開にもなる。

    この作品の面白さは蓑浦と諸戸との同性愛的関係が描かれているところだと思う。諸戸は物語上、重要人物でもあるけれど、かなり蓑浦に都合のいいように描かれている気がしないでもない。肩入れするほど好人物とは言えないが、最後まで読むと気の毒に思った。

  • 江戸川乱歩の傑作集が気に入ったので他の作品も、と思い購入。傑作集の、人物心情描写巧みな推理ものとは一線を書くものを読んでみた。
    現在ではこのような話は出版できないだろう。主人公簑浦の婚約者が殺害され、謎を解いていくところまではよくある話。簑浦に対する同性愛的な恋情を抱く諸戸の登場。自らに対して非道な行いをした者への恨みとして健常者を撲滅する目的で奇形の者を人工的に産み出す諸戸の「父親」、それを金儲けではなく自らの悲願として地に手をついて息子に協力を頼むところが個人的に一番ゾッとした。
    読んでいくとゾッとする中で、諸戸の簑浦に対する恋情とそれを知ってて振り回している❨ようにしか見えない❩簑浦のやりとりの一種の耽美性と歪みとがとても際立つ。その意味もあり、読後はぼーっとしてしまい、普段自分は同じ本を続けて二度読むことはないが、2回目をじっくり読むほどであった。

  • おそらく高校生頃から読もう読もうと思ってずっと読んでいなかった本。
    その間に漫画も3種類かな?でて全て手に入れて2作読んでからとうとう読んでみた。さすがに何種類も読んでると漫画化にあたって削られた部分も違う作家さんによって補い合われていてそこまで発見はなかったがそれでもなるほどそういうことかと思う部分もなくはない。親方が諸戸の両親の実の息子だとか。
    あと漫画でもどう解釈していいのかわからなかった君の頭、真っ白だよ。の部分の道雄の笑顔。「道雄はそういって妙な笑い方をした。それが私には泣いているように見えた。」の文が印象的。面白がってる笑顔でもなく悲しんだ顔をするわけでもなくこの笑顔はなんだろうと思っていた部分。文で読んでもはっきりとはわからなかったのだけどあの絵は泣いているような笑顔を表したのね、と。これは漫画を読んでいなかったらさらっと読み流してしまったかも。
    初めて原作を読む江戸川乱歩。ちょっと見慣れずに読めない漢字がでてくるものの文章自体は想像以上に読みやすかった。面白かったー

  • 面白かった。エログロという言葉が相応しい本。

  • 星4だけど5にしたいくらい良い
    すごい小説に出会ってしまった
    江戸川乱歩好きだわ

  • 傑作…切ない…

  • 最高のエンターテインメント、最高の大団円。
    諸戸道雄というキャラクターの魅力的なことよ…
    報われなかったけど、救われてはいたと思いたい。とても切なかったけど、それも良かった。

  • 諸戸さんの 親が憎いけどでも親だから... って気持ちとか
    どうしても蓑浦さんに拒否されてしまうところとかが苦しい

    蓑浦さんが影武者使って島に残ったあたりから こっちも緊張して読むの止められない
    洞窟の中の話が想像すると本当に絶望って感じでとても怖かった洞窟こっわもう洞窟恐怖症だまあ洞窟怖くない人居ないだろうけど

    とにかく洞窟印象的


    最後の文章が重い


    恋愛のことはまだ分からないけどこの恋は
    重いのかな 重くないと思う
    本当に好きだったら

  •  読みやすい。さすがは江戸川乱歩。かなりおもしろかったけど蓑浦この野郎……ってなった。蓑浦が諸戸を受け入れられないのは性的指向として仕方ないとはいえ、性別とか関係なしに、蓑浦の行為は自分に好意を寄せている相手を利用しているようなものだから、諸戸もわかっていることとはいえ諸戸がかわいそうになってしまった。まあそんなことを言ったらこの物語が成り立たないんだけどね!

  • 気味悪くて途中で挫折しそうになったが、慣れと結末が気になり読了。
    道雄が不憫でならない。

  • 箕浦との関係に嫉妬する。読んだきっかけが先生だったし、江戸川乱歩なんてよんだことなかったけどめちゃおもしろかった。表現が少し難しいところもあったけど普通に読めたし、事件のトリックが今読んでも新しい。とにかく箕浦との関係に嫉妬する(2回目)

  • それが面白いんだろうけど「後で言います」みたいなの多いな。

  • トリックはさておき、フリークスや同性愛など、独自の美意識が楽しめる。二段構えの構成も読ませる。

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著者プロフィール

江戸川乱歩(えどがわ らんぽ)
1894年10月21日 - 1965年7月28日
日本を代表する小説家・推理作家。三重県生まれ。ペンネームの江戸川乱歩は、小説家エドガー・アラン・ポーに由来。早稲田大学で経済学を学びながらポーやドイルを読む。様々な職業を経験した後、大正12年、雑誌「新青年」に「二銭銅貨」でデビュー。昭和22年、探偵作家クラブ結成、初代会長に就任。昭和29年、乱歩賞を制定。昭和32年から雑誌「宝石」の編集に携わる。昭和38年、日本推理作家協会が認可され理事長に就任した。代表作に『D坂の殺人事件』、『陰獣』、『孤島の鬼』、『怪人二十面相』、『幻影城』、『探偵小説四十年』など。少年探偵団シリーズは絶大な人気を博した。

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