孤島の鬼 江戸川乱歩ベストセレクション(7) (角川ホラー文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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レビュー : 106
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041053348

感想・レビュー・書評

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  •  30にもなっていないにかかわらず頭髪のすべてが白髪となっている簑浦。それは彼が数年前にある奇怪な事件に巻き込まれたからであった。恋人の死、友人の死、そして事件はさらに恐ろしい方向へと転がりだしていく。

     前半は正統派のミステリー。密室の殺人、衆人環視の中での殺人という謎が話の軸です。しかし中盤それが解かれたと思いきや物語は思わぬ方向にスライドしていきます。前半のミステリから後半は冒険活劇、それも乱歩の怪奇趣味が全開で描かれるので乱歩の様々なエッセンスがこれ一冊で楽しめます。

     そしてこの作品を単なるエンタメ以上の作品に引き上げたのが諸戸道雄の存在。同性愛者で一度簑浦に告白したことのある彼が事件に絡むことで、怪奇ミステリのこの物語に愛憎もからんでくる切ない恋愛小説の面も見えてくるのです。乱歩作品に恋愛要素のイメージはあまりなかったのですが、こういう作品もあるのか、と乱歩の引き出しの多さに改めて驚きました。

     そしてそうした恋愛要素が普通の男女ではなく(作中では簑浦の最初の被害者の初代との恋愛描写もあるのですが)、同性愛者の恋愛という観点から書くのも、なんとも乱歩らしいなあ、と思います。

     乱歩作品では他にも『芋虫』や『人間椅子』など倒錯した愛情を持った人物が色々出てくる印象でしたが、諸戸がもしかすると一番乱歩作品で正常に近い人を愛する、という感情を持っていたのかもしれないですね。

     今思い返すと、ものすごく内容の濃い小説ですが、ミステリ、冒険、怪奇、そして恋愛とあらゆる要素を独自の乱歩色で塗り上げたこの作品は今後も唯一無二の作品として色あせることはないように思います。

  • 江戸川乱歩らしい気持ちの悪い怪事件でした。
    恋人や友人の殺人事件を追ううちに、とんでもない鬼ヶ島に辿り着いてしまう話なのですが、
    その島で行われていた悪趣味で不気味な活動や全ての元凶の正体の謎解きが常軌を逸していてとても面白かったです。
    端的に月並みな言葉で言えば「キチガイ」物語ですが、
    「パノラマ島奇譚」のような不思議で不気味な孤島が舞台で、閉鎖的な圧迫感や死の危険を漂わせながらも暗号解読や宝探しなどもあり、冒険小説のようにワクワクしながら読み進められる不思議な作品でした。

  • ミステリ、同性愛、障害者、復讐、隠し財産など、色々とテーマが盛り込まれた小説です。あらすじをものすごくざっくり言うと、恋人を殺した犯人を友人と探し出す話、なんですが。友人(男)が主人公(男)に並々ならない愛情を向けていたり、障害者がたくさん出てきたりと、なかなか濃い話でした。障害者への差別に厳しい今となっては書けない小説でしょうね。
    ところで、当然BL目当てで読んだわけではないので構わないのですが、それでもBL好きなわたしとしては、最初から最後まで友人が不憫でなりませんでした。

  • 唯一まともな人間である初代ちゃんは早々にご退場なさってしまった。

  • 「傴僂」という今はもう使われなくなった言葉が、この物語の不気味、異常さ感じた。

  • 主人公の美青年と美少女が恋に落ちるのはまぁ普通のことだし良く分かる。しかし、そこにさらに美青年が美青年に恋をしてぐるぐるした人間関係と、密室殺人などが絡んできた。もう一人の同性愛者で美青年の諸戸道雄さんが可哀想でした。これで年末の読書会番組にそなえられた感じで楽しみです!!

  • 主役かと思っていた探偵が突然死ぬところから謎解きが始まる。江戸川乱歩は少年団・冒険譚の話が中心かと思っていたが、同性愛や障害者を生々しく描く。ほのおどろおどろしさから、読めない漢字も何となく読めてしまう。

  • 江戸川乱歩の傑作集が気に入ったので他の作品も、と思い購入。傑作集の、人物心情描写巧みな推理ものとは一線を書くものを読んでみた。
    現在ではこのような話は出版できないだろう。主人公簑浦の婚約者が殺害され、謎を解いていくところまではよくある話。簑浦に対する同性愛的な恋情を抱く諸戸の登場。自らに対して非道な行いをした者への恨みとして健常者を撲滅する目的で奇形の者を人工的に産み出す諸戸の「父親」、それを金儲けではなく自らの悲願として地に手をついて息子に協力を頼むところが個人的に一番ゾッとした。
    読んでいくとゾッとする中で、諸戸の簑浦に対する恋情とそれを知ってて振り回している❨ようにしか見えない❩簑浦のやりとりの一種の耽美性と歪みとがとても際立つ。その意味もあり、読後はぼーっとしてしまい、普段自分は同じ本を続けて二度読むことはないが、2回目をじっくり読むほどであった。

  • おそらく高校生頃から読もう読もうと思ってずっと読んでいなかった本。
    その間に漫画も3種類かな?でて全て手に入れて2作読んでからとうとう読んでみた。さすがに何種類も読んでると漫画化にあたって削られた部分も違う作家さんによって補い合われていてそこまで発見はなかったがそれでもなるほどそういうことかと思う部分もなくはない。親方が諸戸の両親の実の息子だとか。
    あと漫画でもどう解釈していいのかわからなかった君の頭、真っ白だよ。の部分の道雄の笑顔。「道雄はそういって妙な笑い方をした。それが私には泣いているように見えた。」の文が印象的。面白がってる笑顔でもなく悲しんだ顔をするわけでもなくこの笑顔はなんだろうと思っていた部分。文で読んでもはっきりとはわからなかったのだけどあの絵は泣いているような笑顔を表したのね、と。これは漫画を読んでいなかったらさらっと読み流してしまったかも。
    初めて原作を読む江戸川乱歩。ちょっと見慣れずに読めない漢字がでてくるものの文章自体は想像以上に読みやすかった。面白かったー

  • 星4だけど5にしたいくらい良い
    すごい小説に出会ってしまった
    江戸川乱歩好きだわ

  • 気味悪くて途中で挫折しそうになったが、慣れと結末が気になり読了。
    道雄が不憫でならない。

  • カバー買いした。
    和柄の綺麗なカバー。

    前半はふーんと思って読んでいたけど、後半に入るにつれてドキドキと少年のような気持ちで読んでいた。
    先が読みたいけど読みたくない…!みたいな。

    最近別のところから乱歩のBLと題してこれを売っていたけど、確かに同性愛描写はあるけど、今のBLに慣れていて、しかも咎井淳の表紙絵だと、こう、期待外れ?思ってたのと違う?ってならないのかな。

  • 読了。
    初の江戸川乱歩の長編。

    読みやすく、難しい漢字も予測で読めたので調べる煩わしさはほとんどない。

    主人公よりもその他のキャラクターのほうが魅力的だと感じる。

    初めはいけすかないなと思っていた諸戸が最後の洞穴の辺りから不憫でならない。

    でもプラトニックな同性愛だったので、綺麗だった。

    ミステリー小説は今までに沢山出ているけど、最後まで予想できないものだった。
    (150815)

  • 今から一世紀近く前に書かれたものとは思えない内容。古くささは一切感じられない。
    同性愛の描きかたが非常に生々しくて、だからこそ本気を感じさせる。

  • 多くの要素が詰め込まれていて怪奇的な不気味さで色濃い。
    探偵?冒険小説?文体が当時の書き方なので独特の雰囲気があり引き込まれる。いやー流石、読ませてくれたあー大満足!

  • 超メジャーどころながら、作品に接するのは初めて。時代を感じさせられるのは、差別的表現が頻発する部分くらいで、会話分を含めて古臭さは殆どなし。それだけで十分に素晴らしいと思ったけど、内容も良かった。殺人事件の謎解きが早々に終わってしまって、残り2/3をどうするんだろう?って思ったけど、それ以上のミステリーが待ち受けてました。”鬼”の最期が意外にあっけなかったから、恐怖感の盛り上がりはもう一歩、って感じもしたけど、それを差し置いて、面白かったです。

  • 人間の不気味さが際立った作品。
    語り部である私が死ぬことはないはずなのにどんなひどい目に合うのかと気が気でないまま読了。

  • 妖しさと不気味さで色濃く味付けされた探偵小説兼、冒険小説。そして歪んだ恋愛小説でもある。しばらく乱歩にはまりそう。

  • ビブリアで出てきて気になったので。初乱歩。思ったより読みやすくてよかったです。

  • 2013/05/08

  • 引き込まれる…。リアルに情景が目に浮かんでくるから、力入っちゃうよー。いつのまにか拳を握りしめて読んでる

  • 差別用語オンパレード
    同性愛
    ミステリーというかホラー

  • 江戸川乱歩を読み直そうシリーズが続いております。今回は長編でしたが、飽きずに最後まで読めましたねー。解説にもありましたが、この作品は大きく前編と後編に分かれており、前編はミステリ(の謎の提示部分)要素が強く、後半は孤島サスペンス、という感じでした。やや無理やりに伏線を拾っている部分はありましたが、まぁそこは古い作品ということで…。

  • 乱歩初めてよんだけど面白い。

  • 流石、江戸川乱歩…グロい。

    諸戸の性癖が、作品の全体の一種のアレゴリーとなっていると読みましたが、所詮ボンノーを糧にしている腐女子なので、最後の一行で切ないと泣いた記憶が一番鮮烈です。

    全体のおどろどろしさや不気味さもさておき、それを背景に交差する感情のほうがグロテスクだなあと思いました。

  • 主人公と先輩?の耽美な関係が魅力的。特に家庭が複雑であった先輩の方に思い入れがある。
    私もおひさんに照らされた現実に怯えて生きてきたから、地下での彼の乱心がとてもよくわかる。人間が作った制度や決まり事なんか届かない闇の中で、本質のままに生きられればいいのに。
    まあ、彼の場合は地下から出てからも立派にやっていけたようだけど。

  • 諸戸に対する箕浦が小悪魔すぎだと思う。すごくおもしろかった

  • これぞ乱歩、というエッセンスをこれでもかこれでもかと詰め込んだ作品。トリック、冒険、倒錯、奇形、同性愛…ああもう本当に乱歩。の割には明智君は出てこなかったが流石に彼を同性愛者には出来ないでしょうし。

    最初の方で、殺した実行犯が子供だった、ってところからして。一々漂う乱歩感。とにかくこの作品の感想はそれに尽きる。乱歩は乱歩。

    ていうか主人公、悪女だなぁ(男だけど)

  • 主人公、結構ヒドイ(笑)。最後の一行が切ないですね。

  • タイトルになっている「孤島の鬼」のみ読了。おうちに転がっていた本で、自分で求めたのではないからどうかな?と思って読み始めたのですが、怖くて美しくてやがて切ないという、かなり好みのお話しでした。諸戸には、元気で探偵になって、そのシリーズがあれば良かったのに。と不毛なことを考えてしまいます。江戸川乱歩、10年ぶりくらいに読んだのですが、やっぱりすごいです。
    5月10日追記。
    「湖畔亭事件」も読了しました。これは普通に面白い感じでした。

著者プロフィール

江戸川乱歩(えどがわ らんぽ)
1894年10月21日 - 1965年7月28日
日本を代表する小説家・推理作家。三重県生まれ。ペンネームの江戸川乱歩は、小説家エドガー・アラン・ポーに由来。早稲田大学で経済学を学びながらポーやドイルを読む。様々な職業を経験した後、大正12年、雑誌「新青年」に「二銭銅貨」でデビュー。昭和22年、探偵作家クラブ結成、初代会長に就任。昭和29年、乱歩賞を制定。昭和32年から雑誌「宝石」の編集に携わる。昭和38年、日本推理作家協会が認可され理事長に就任した。代表作に『D坂の殺人事件』、『陰獣』、『孤島の鬼』、『怪人二十面相』、『幻影城』、『探偵小説四十年』など。少年探偵団シリーズは絶大な人気を博した。

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