トウェイン完訳コレクション 人間とは何か (1) (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041053621

作品紹介・あらすじ

「人間が自分で生み出すものは、何ひとつない――ひとつの意見でさえも、ひとつの考えでさえも、生み出すことはできないのだ」
人間は機械であると主張する老人と、人間の良心を信じる若者。
自己犠牲や母の愛などを例にあげて反駁する若者に、老人は人間の行動はすべて自己満足の結果に過ぎないと巧みな説話で導いてゆく。
アメリカ文学の巨匠トウェインならではのユーモアと鋭い洞察で人間の真理を暴く、最晩年の傑作。
解説・金原瑞人

感想・レビュー・書評

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  • 脱西洋的なのかな、反近代的なのかな、と色々と考えていた。どうも整わない。だけど自由に対する態度がリバタリアン的自由を指していると思った。ようは両立論的自由に疑問を持っている。
    今の僕らから見ると、戦前の思想と前後の思想で大きく分けられる。戦後の思想は戦争の反省が込められている。戦前の思想はそこが見落とされている。戦前:ハイデガー実存、戦後:レヴィナスと言える。この時のマークトウェインは、戦後的だなと思った。
    コミットなど外部に目的をもつと、目標達成のための自由行使になる。諸刃で、今の露のようにもなる。それは戦争に対する反省が外れていると思う。コミットそのものが悪いのではなく、戦争などを召喚するリスクがあり、それを承知していなければ破滅に向かってしまうこともあるだろうと。マークトウェインはそのリスキーな状態に疑問を呈したのだろう。新しい戦前というのは、コミット時代ということでもあると思う。

    対談型の文は苦手だなぁとやはり思った。

  • 人間を機械として描写。人間は創造的な存在ではなく、外からの刺激に反応するだけの機械で、その動力は自己満足に過ぎないと。この見解は一見寂しいものですが、割り切って考えれば、生き方が気楽になるかと。外部の影響に対する反応を受け入れることで、心の負担が軽くなるのです。トウェインの洞察は新たな視点を提供してくれました。刺激的な読書体験。

  • ■評価
    ★★★★☆

    ■感想
    ◯人間とは機械であると主張する老人と、それを否定しようとする青年の対話。
    ◯「自己の精神を満足させることが、行動原理の全て」とする考え方は、かなり納得感があった。
    ◯サイコパスの考え方は、実は本質的なのかもと考えさせられる作品だった。
    ◯鉄を精錬・加工していくアナロジー(鋼鉄・銑鉄・鋼で、不要な成分を除いて性質を向上させていく)は、非常にわかりやすく、面白く読無事ができた。
    ◯金の延べ棒に水蒸気を吹きつけても変化しないけど、気化水銀を吹きかけると溶け出てしまう話や、鉄の精錬の話のアナロジーも面白い。外部からの影響力でいかに左右されるかというのと、それを受けうる気質があるかというたとえとして使われている。

  • 自分の直感と合ってた

  • 本編も面白いが、訳者あとがきにドキッとさせられた。『反応しない練習』(草薙龍瞬)を思い出しながら読んだ。

  • 人間はただの機械であって、外部からの影響によってよみ変化するというおはなし。ぼくらはただ動いているだけ。自己啓発の劇薬と呼ばれるだけあって刺激的でしたが、捉え方や解釈の問題でしかないと思えて、それを真実かのように説明されるのには納得がいきませんでした。また、(訳者の特徴らしいのですが)原作の文法に忠実な訳で日本語として違和感がありました。

  • 明治維新以降濃厚な関係を持つようになった米国
    この米国と古くからの関係国中国との関係で憎らしいほど複雑化した、第二次世界大戦。僕の時代認識は最近の事象含みで嫌悪米国へと及ぶ、そのような時節に本書と出会い心が解き解された◎米国は政府と人民をある程度分離して考える必要がある。と。そのような書き出しで始めた本書感想は、濃厚な禅問答と良質な瞑想レクチャーを受けたかのような内容により一層のトゥエイン作品への興味関心を引き立てた。と言うものである。訳者大久保博氏、解説金原瑞人氏に感謝◎

  • あらゆる価値観、なにより人間の存在や尊厳に対する挑戦的な主張が展開される。
    「人間はただの機械である」
    鋭い洞察により人間の真理を悲観的に捉えているけれど、きっとトウェインが人間に希望をもっていたからこその結論なんだろうな…。

  • 若者 それなら明らかに、人間というものはすべて、善人にしろ悪人にしろ、どちらも、その身を捧げるのは自分の良心を満足させるためなのですね?
    老人 そうだ。それが一番ふさわしい名前だろうな、それを呼ぶのには。「良心」――あの自主独立した「主権者」、あの傲慢なる絶対の「君主」。人間の内部にあって、人間の「主人」なるものだ。良心にも、ありとあらゆる種類のものがあるからだ。暗殺者の良心だって場合によっては満足させられるし、博愛主義者の良心だって、守銭奴の良心だって、押し込み強盗の良心だって、やはり満足させることができる。一つの指針ないしは動機として、それが厳然と規定されたどんな道徳や品行(ただし鍛錬は別だが)にたいしても役立つかと考えた場合、人間の良心などというものはまったく価値のないものなのだ。

    老人 だが、彼らを鍛錬するんだ。そして戦闘を一つや二つやらせてみるのだ。そうすれば、彼らだって兵隊になるはずだ。そう、兵隊だ。兵隊としての誇り、兵隊としての自尊心、兵隊としての理想をもったものにな。そうなれば、彼らは兵隊としての精神を満足させなければならなくなるはずだ。事務員としての精神でもなく、整備工としての精神でもないのだ。その精神を満足させるのに、兵隊としての義務を避けていたのではとてもできることではない。そうだろう?

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著者プロフィール

Mark Twain 1835年-1910年.
邦訳された自伝に、
時系列順に並べられている
『マーク・トウェイン自伝 〈上・下〉 ちくま文庫 』
(マーク トウェイン 著、勝浦吉雄 訳、筑摩書房、1989年)
や、トウェインの意図どおり、執筆順に配置され、
自伝のために書かれた全ての原稿が収録されている
『マーク・トウェイン 完全なる自伝 Volume 1〜3 』
(マーク トウェイン 著、
カリフォルニア大学マークトウェインプロジェクト 編、
和栗了・山本祐子 訳、[Vo.2]渡邊眞理子 訳、
[Vo.1]市川博彬、永原誠、浜本隆三 訳、
柏書房、2013年、2015年、2018年)などがある。



「2020年 『〈連載版〉マーク・トウェイン自伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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