失われた地図

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 143
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041053669

作品紹介・あらすじ

錦糸町、川崎、上野、大阪、呉、六本木・・・・・・。
日本各地の旧軍都に発生すると言われる「裂け目」。
かつてそこに生きた人々の記憶が形を成し、現代に蘇る。
鮎観の一族は代々、この「裂け目」を封じ、記憶の化身たちと戦う“力”を持っていた。
彼女と同じ一族の遼平もまた、同じ力を有した存在だった。
愛し合い結婚した二人だが、息子、俊平を産んだことから運命の歯車は狂いはじめ・・・・・・。

――新時代の到来は、闇か、光か。

感想・レビュー・書評

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  • 恩田陸の作品は数々楽しませてもらった。
    そして、これは
    えっ、おわり?
    いや、どうしたらいいの?
    閉じた本を胸にオロオロする。
    かつての「軍都」のあらわれる「裂け目」
    それを繕う陰の存在
    時代背景もリアルでうすら寒い。
    人間が生きてきた怨念が重なるその地。

    ≪ その記憶 この世とあの世 裂け目から ≫
     

  • 昔合戦が盛んだった地では、根強い人々の記憶が残されている。
    かつてそこで生きた人々の、戦の記憶が形成され現代に蘇ったのが、〈グンカ〉とよばれる記憶の化身であった。

    赤い足跡と、生暖かい風が吹きつける所には、
    過去から現代へと結びつく〈裂け目〉が現れる。

    裂け目は昔合戦があったところに現れやすく、茶色っぽい軍服を着た禍々しいグンカは、過去から現代へとやってくるのだ。

    その裂け目を縫って元どおりに戻すのが、鮎観たち一族の役割だった。
    グンカと闘いながら、誰にも知られる事なく裂け目を直す。日本の平和を背負って、グンカとのバトルが繰り広げられていた。


    説明するのが難しいけど、ファンタジー色の強いストーリーは、想像を膨らませながら読み進めると楽しかったです。

  •  直木賞受賞第一作!という帯がついているが、『蜜蜂と遠雷』で初めて恩田作品を読んだ人が、本作を読んだらどう感じるだろうか。

     ファンには言うまでもないが、恩田陸さんの作品には、本屋大賞受賞作『夜のピクニック』など、現実世界の青春小説も多いのだが、本作のように、何だかよくわからないけどスケールが大きいファンタジーも多い。どちらも恩田陸なのである。

     失礼ながら、青春小説が万人受けしやすい一方、ファンタジー系は大風呂敷を広げた末にフィニッシュで尻すぼみという作品が多い。本作もまた、ご多分に漏れず…というのが、正直な感想である。「らしい」なあと思うのは、ファンだけだろう。

     日本各地の旧軍都に生じる、時空の裂け目。人知れず「グンカ」と戦い、裂け目を縫い合わせてきた一族がいた。手頃な長さの本作は、彼ら一族にスポットを当てた連作短編集である。映像的スケールの大きさは、誰もが認めるだろう。

     謎の一族を描いた恩田作品といえば、「常野」シリーズが真っ先に思い浮かぶ。新刊が10年以上途絶え、全貌がさっぱり見えない常野シリーズと比べれば、情報量は多い印象を受けるが、大風呂敷が広がったままなのに変わりはない。

     一つ注目されるのは、近年のきな臭い世界情勢を意識させる点だろうか。日本もまた、きな臭さと無縁ではない。今後、一族の力が及ばない事態が、起きるかもしれない。現代に警鐘を鳴らしていると、解釈できないこともない。

     ある意味、作家恩田陸の本質を表している本作だが、続編は出るのだろうか。続編が出るなら、プロローグとしては悪くないが、これで終わりだったら、あまりにも薄味と言わざるを得まい。『夜の底は柔らかな幻』くらい弾けてもらわないと。これからもやっぱり、気になる作家には違いない。

  • これぞ恩田ワールド。月の裏側から入った私にはこちらがA面。この放り込み感も、投げっぱなし感も久々でワクワクした。蜜蜂と遠雷から入った方には目が点でしょうが、、、(笑)
    雰囲気的にはエンドゲームに近いかな?に、してもこれは続編書いてもらいたい。単純に好きだ。
    「りょうほう」から生まれた「めんどう」。多分これは序章に過ぎない。ゼロエピソードの家族の話。

  • 日本各地の軍都にある裂け目、そこから過去に生きていた人たちがよみがえる。その風を感じる主人公たちが、各地の裂け目を縫い合わせて回る。

    なんかよくわかんなかったなあ。
    「夜のピクニック」みたいな作品はすきなんだけど、この本はなあ?

  • 「グンカ」たちは「裂け目」から現れる。放置された「裂け目」は惨事を起こす。「グンカ」たちをあしらいながら、「裂け目」を閉じていく鮎観や遼平の一族。

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    歪んだナショナリズムが日本を戦争に向かわせようとするとき、「裂け目」が生じるってことだったんだと思う。たぶん。
    山口の呉を登場させたのは、安倍(元)総理に対する皮肉だったりして。そんなふうに思ったけど、山口県出身の総理大臣ってたくさんいるんだな。気になって調べてみたら、そのルーツは吉田松陰にありそうな感じだった。さすがだぜ長州藩。

  • 説明無しに放り込まれ、そのまま投げっぱなしで終わる(続く?)恩田ワールド開幕です。
    蜜蜂と遠雷を期待して読んだ方々は気に入らなかったようですが、これが恩田ワールドです。デビューからリアルタイムで追っていると蜜蜂と遠雷の方が異様で、もちろん素晴らしい作品ですが、あの投げっぱなしが無くなるのではないかと寂しくもありました。
    でもこれで安心しました。迎合してもしなくても受け入れます。これからも新作期待してます。

  • 軽く読めてしまうけど
    よくよく考えると
    日本の今の情勢を表してて
    うすら寒い怖さを感じた。

  • 「らしい」の好き。
    あれ?なんか前作あったっけ?説明なしで唐突に始まり、え?あと2ページしかないけど・・・スパッと唐突に終わる。
    気になってしゃあない。

  • 久しぶりに読んだ「蜜蜂と遠雷」が傑作で、つい新作と言うことで手を出してしまった・・・全国の軍都と呼ばれたところに、「グンカ」と呼ばれる過去の記憶の化身が蘇る「裂け目」が発生。「煙草屋」の情報を元に、その「グンカ」を裂け目の中に戻し、裂け目を塞ぐ遼平や鮎観たちの活躍を描く。作品的には「常野物語」シリーズに近い感じ。非日常な物語だけれども、「裂け目」が現れる理由の時代背景はしっかりしており、歴史の勉強にもなる作品。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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