肉弾

著者 :
  • KADOKAWA
3.76
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本棚登録 : 162
レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041053829

作品紹介・あらすじ

豪放でワンマンな父親のもとで育った貴美也は大学を休学中のニート。親に反発しながらも庇護下から抜け出せずにいる。そんな彼を父親は、北海道での狩猟に連れ出した。地元ガイドの話を無視し、大物の雄鹿を仕留めるために、父子はカルデラ地帯の奥深く分け入っていく。そこに突然熊が襲ってきた。なすすべなく腹を裂かれて死ぬ父親。ひとり取り残された貴美也。後ろから気持ちの悪い唸り声が追ってきた。情けなく涙と涎を垂らし、悪態をつきながら、貴美也は逃げる。ただ、死なないために。
自分の傲岸なまでに強靭なエゴに支配される人間。人間に従属する歴史を繰り返した犬。人間の営みにより生活をおびやかされた熊。残酷だが美しい、それぞれの生――そして青年は覚醒する。

感想・レビュー・書評

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  • 『颶風の王』の花島(ユルリ島がモデル)の馬の姿が忘れられず、河﨑さんの二作目をすぐに予約しました。

    舞台は北海道。原生林開墾・開拓の末のイナゴ襲来と冷夏。容赦のない自然の厳しさを突きつけられる。『羆嵐』のような怒涛な展開に圧倒されました。途中で心の整理が出来ないまま話が進んでいくので「ちょっと待って。ちょっと待って」と動揺してしまいました。だけどよくよく考えてみれば(表紙がすべてを語っている)主役は人間ではなく、物言えぬ野生動物たちなのだ…と気がつき、その目線で読んでみると様々なことが見えてきた。

    増えすぎた鹿に対するオオカミの再導入案。融雪剤と野生動物の関係をググりながら読みました。自然のバランスを崩し壊し続けてきた人間の身勝手さに胸が苦しくなりました。調べていくうちに[風連湖でエゾシカを襲った野犬]の記事を知り、河﨑さんが伝えたかったことは、きっとこれだ…と感じた。ラウダたちの悲痛な訴えが聞こえてきたように思う。



    【カドブン】  
    平松 洋子さん(エッセイスト)のレビュー
     https://kadobun.jp/reviews/153/3e7c1c03 ←さらに深くすごすぎる感想。

    • vilureefさん
      こんにちは。ご無沙汰してます(*^_^*)

      「颶風の王」、良かったですよね!
      スランプ中だったのもあってただただ圧倒されたままレビュ...
      こんにちは。ご無沙汰してます(*^_^*)

      「颶風の王」、良かったですよね!
      スランプ中だったのもあってただただ圧倒されたままレビューも書いていない私・・・(^_^;)

      2作目が出ていたのですね。
      これは読まねばなりません。
      いい本のご紹介、ありがとうございます!
      2018/01/30
    • まっきーさん
      vilureefさん、お久しぶりです。
      お元気ですか?

      『颶風の王』とても好きです。
      圧倒されてのめり込んで徹夜に近い感じで読んだ...
      vilureefさん、お久しぶりです。
      お元気ですか?

      『颶風の王』とても好きです。
      圧倒されてのめり込んで徹夜に近い感じで読んだのを思い出します。
      今も読みたいな~と思うけど、気力がなくて…(>_<)

      二作目は『肉弾』です。
      『颶風~』とは毛色が違っていて、むむむむ…と、うなりながら読みました。
      いろいろあるけど……
      (真っ白な気持ちで読んでほしいのでこれ以上書きません)

      私は河﨑さんの作品が好き、とハッキリ感じました。
      vilureefさんのレビュー楽しみにしています♪



      私はvilureefさんが星4をつけた島本さんの
      『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』を楽しみに待っているところです。
      (只今予約中です)

      =少し脱線しますね=

      昔、(確か…)アンソロジーで島本作品ホットロード論を展開していたvilureefさんに
      ほれぼれしたのを今でも思い出すのです。
      (キャンディキャンディ論もあったような………違っていたらゴメンなさい)

      スコーン…と私の中に落ちてきて
      私の心の底にあるものに目を向けさせてくれたというか、気がつかせてくれた
      vilureefさんに感謝してるんです。(あ、告白みたいで恥ずかしいです。照)
      でも本当にそうで、vilureefさんからしてみると、何だコイツ、トンチンカンなこと言って
      こわいって感じるかもしれないけど、過去にそういうことが起こったんです。
      この場を借りてお礼を言わせてください。ありがとうございます。

      こういうことがたくさんあって
      目をそむけていたことに気がつかされてブクログやってて良かった…と思うのです。

      色々な人の感想が見ることが出来て考えさせられて
      自分だと絶対に選ばない本にも出会えて、本当にあたたかい居場所だな…と
      しみじみ思うんですよ。

      こんな私ですが…
      これからもどうぞ、よろしくお願いします(^^)

      2018/01/31
    • vilureefさん
      まっき~♪さん、こんにちは(*^_^*)
      私は元気です!
      ここのところ子供関係の役員の仕事に忙殺され、人生で一番忙しいのではないか?と思...
      まっき~♪さん、こんにちは(*^_^*)
      私は元気です!
      ここのところ子供関係の役員の仕事に忙殺され、人生で一番忙しいのではないか?と思う日々でございます(←おおげさ笑)
      忙しさにかまけて本も全く読めず、おのずとブクログからも遠ざかってしまい面目ない・・・。

      いやー、まっき~♪さんさんからの告白、嬉しすぎて涙が出そうになりました。
      私のレビューの中身うんぬんではなく、レビューを読んで覚えてくれている人がいるってだけで、胸がいっぱいになりました。

      私、島本作品、ホットロードだとか、キャンディキャンディだとか、良いんでしょうか?こんなレビューで・・・(^_^;)
      まっき~♪さんさんをはじめ、お仲間さんのレビューってすっごい深いんですよ!
      ちゃんと読みこんでいて、それを表現する力がすごい。
      私なんて浅い浅い(笑)
      思った事を書くのが精いっぱいで・・・。
      恥ずかしながら書いているのですが、読んでいる人がいると思うと勇気百倍です!(笑)

      私こそ、感謝感謝ですよ。
      まっき~♪さんのおかげで出会えた本、たくさんありますもの。「蛍の森」なんて良かったな~。
      いつもまっき~♪さんさんの読書量とジャンルの広さに驚かされています。
      たくさん気になる本があって困ってしまうほどですよ(*^_^*)

      円軌道の外さんの復帰もあちこちで盛り上がっていたようですが、私もちょっとばかり間が空いても温かく迎えてくれるここが好きだーって思いますよ。
      いなくなっちゃった人もたくさんいますが、また会いたいですね・・・。

      こちらこそこれからもよろしくお願いします(*^_^*)
      2018/02/01
  • 「抗う。戦う。そのために生きる」
    引きこもりの大学生、劣等感の塊のキミヤが、父親と北海道の山深い森の中で遭難する。
    父親が目の前で野生の熊に襲われ、たった一人で森をさ迷うことになるキミヤ。

    大自然を前にした時、体の大きさや力の強さ、野生だとか人間に飼われていたとか、そんなことは関係ない。
    ただ生きるために、納得いくまで戦い尽くす。
    肉と肉、骨と骨がぶつかり合い、咬みつき咬みつかれる。
    そこには理屈や規律なんてなく、本能に従うのみ。
    死に物狂いで生きる!

    人間と獣たちとの生死を駆けた戦いはリアルに壮絶で、実際に北海道の大自然で暮らす著者でなければ描けないだろう。
    これからも著者にしか描けない物語を描き続けていってほしい。
    元飼い犬たちの試練には特に胸苦しくなった。
    現実にあり得ることで、著者からの警告のように受け止めた。

  • トンデモ本に近い展開でありながらぐつぐつと煮えたぎる気持ちで読みました。
    ミステリーでは全くないのだけれども、ネタバレすると読む価値半減する本です。
    ある意味少年漫画の有りえなさ(彼岸島みたいなやつ)を念頭に置きながら読んで頂きたいと思います。
    合わない人には徹底的に合わなそうだし、突っ込みどころ満載ではありますが、個人的にはこの紙を破きながら書いているような筆圧のようなものを評価したいです。
    昔々の名作犬漫画「流れ星銀河」が下敷きにありそうな気がしますが、なんにしろ犬好きには辛い本でありつつ、本好きにお勧めしたい本でもあるという不思議な本です。
    相当好きなので☆5いっちゃおうかなと思ったのですが、冷静な方の自分は☆4だろうとささやきました。誰もが好きじゃないけど自分は大好きって本は依怙贔屓したくなります。
    ちなみに、犬を捨てた奴らに天罰を。雷に打たれて死ね。

  • きょーれつなお話でした。
    綺麗ごとではない生きるということが描かれていました。
    平和ボケした日本人に読んでほしいと思います。
    ただ、引きこもりのニートは熊どころか犬にも勝てないと思いました。

  • 読みやすい文体で大変ビジュアル的、ただし、私的には出てくる登場人間が全て不快で読了感最悪だった。シェイムトロフィーを社長室に飾る勘違い父と引きこもりニートの息子が北海道旅行でエゾジカ狩に訪れ、違法な場所にヒグマを違法に狩りに入り、逆に父のほうがヒグマに殺される。その復讐的なことをする息子、という大筋。そして、平行して捨てられた野犬たちの群れの話が書かれるが、エピソードが不愉快な話ばかりで、さらに醜悪なエンディングで読了感が凄まじく悪かった。ヒグマが死に場所を求めていたのでいいことした的な?許せない。お前も食われろ!と架空の人物を呪いたくなった。何年も前に陸上競技をしていて、さらにアクション系のゲームで戦っていたからとか、設定があまりにもありえなさすぎて冷える。高橋よしひろの『銀牙 -流れ星 銀-』にはじまる銀牙伝説シリーズの真似っこ生ぬるごっこバージョン。確かに知られてから久しい割にどうにもなってない環境破壊や生態系の悪介入問題の提議的な部分も多々あるので、そういう意味ではそれなりに意義はあるかと思う。なんとも自分が同じ人間であることすら恥じたくなるような気分になる作品だった。

  • 異常な育ち方をした熊と、人に対してねじれた感情を持った野犬の群れと、強権的な父親の元で育ち無理矢理狩りに連れてこられた少年の三つ巴の肉弾戦が描かれる。外輪山に囲まれコロセウムのようになった森が戦いの舞台なので、その中で生き残ったものが勝者のように感じるが、実は自然はどこまでも広がっていて、生き残ったそれぞれはまたそれぞれの戦いに身を投じるだけなのかもしれない。正面切っての命のやりとりは大迫力で描かれ、読んでいる身体がピクッと動いてしまうことも。戦いの中で覚醒していく少年の成長の話なのかもしれない。

    • ことぶきジローさん
      文庫化まで待ちます!
      文庫化まで待ちます!
      2018/10/11
  • 1979年北海道別海町生まれ、河﨑秋子さん、強烈なインパクトを与える作家さんです。「颶風(ぐふう)の王」(2015.7)に続き、「肉弾」(2017.10)を読みました。人間と動物の関係、それは愛と癒し、持ちつ持たれつの関係である一方、生死、生きるか死ぬか、食うか食われるかの壮絶な闘いの相手でもある。著者は、動物を介して、生きること、自分の身を守ること、厳しい自然に耐え抜くことの大変さと大事さを教えてくれている。颶風の王では「馬」、肉弾では「犬」「熊」が登場、著者の冷徹だけど温かな視線が注がれている。

  • 「颶風の王」で根室ユルリ島の野生馬たちを描いた作者が、次に何を描くのか、興味を持って待ち望んでいました。
    今回はより野生に肉薄した物語です。

    北海道では開拓民と動物たちのせめぎ合の中で歴史が作られてきました。森林を開拓して10年経っても立ち行かない暮らし。そこで起こる悲劇。小説「羆嵐」を思わせました。狼を絶滅させた後に増えた鹿。食べ物が足りない山の中。人の味を覚えた羆。さらには人間の都合で捨てられた犬たち。美貴也は父に半ば強制のうちに羆棲む森の中へ連れてこられ、異様な体験をします。
    息をつけないほどの緊張感。冷徹なまでに描かれる死、死、死・・・。

    本作では人間のエゴが描かれ、前作よりもさらに自然と人の生き方を突きつけられる思いでした。残酷だけれど、真実がここにある。異世界の体験をした美貴也が、これからどんな人生を送るのか・・・それは全て読者に委ねられます。

    ますます楽しみな作家さんですが、本業は羊飼いでいらっしゃるので、そちらの方も応援したいです。

  • なんてーか・・・あらゆる生き物の生きているゆえの性質というか・・・ちゃんとみんな血の通っている生き物なんだよな・・・ってのが・・・まざまざと・・・

  • 疑問はない。ただ生きるだけ。

    摩周カルデラの中で繰り広げられる熊と、犬と、人の、生き残る為の戦い。そこにあるのは文明だの思想だのモラルではない。生き残るという本能だけだ。前作同様、過酷な自然と、その中でシンプルに生きようとする生物の描写は見事。

    そしてこの作者は、冒頭で衝撃的な物語を差し込んでくるのが大変上手い。そこで心を掴まれるので、正直多少の中だるみを感じつつも、読み進めたい気持ちになる。

    そして、少し的外れかもしれないが、ラストで本作はある種の父殺し(父を越える儀式)の成長物語でもあったのだなと思い知る。

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著者プロフィール

羊飼い。1979年北海道別海町生まれ。北海学園大学経済学部卒。大学卒業後、ニュージーランドにて緬羊飼育技術を1年間学んだ後、自宅で酪農従業員をしつつ緬羊を飼育・出荷。2012年「東陬遺事」で北海道新聞文学賞(創作・評論部門)受賞。2014年に三浦綾子文学賞を受賞した『颶風の王』を15年KADOKAWAより単行本として刊行。同書で2015年度JRA賞馬事文学賞を受賞した。近著に『肉弾』がある。

「2018年 『颶風の王』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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