ははのれんあい

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 603
感想 : 65
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041054918

作品紹介・あらすじ

長男の智晴(ちはる)を産んだ由紀子は、優しい夫と義理の両親に囲まれ幸せな家庭を築くはずだった。しかし、双子の次男・三男が産まれた辺りから、次第にひずみが生じていく。死別、喧嘩、離婚。壊れかけた家族を救ったのは、幼い頃から母の奮闘と苦労を見守ってきた智晴だった。智晴は一家の大黒柱として、母と弟たちを支えながら懸命に生きていく。直木賞候補作『じっと手を見る』の著者が描く、心温まる感動の家族小説。

ひとつの家族の一代記みたいなものを書きたいと思ったのが最初のきっかけです。それも「普通の家族」ではなく、シングルマザー、離婚家庭など、そのときどきによって有機的に形を変えていく家族を書きたいと思いました。世間から見たら歪なものであっても、それでも「家族」なんだよ、どんな形をしていても「家族」としてどれも間違ってない、ということを伝えたかったです――窪美澄

感想・レビュー・書評

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  • 『ははのれんあい』窪美澄著 人はねじれながら生きていく | 47NEWS
    https://this.kiji.is/735255796977106944

    窪美澄さん 初の新聞連載『ははのれんあい』で描いた家族の姿|NEWSポストセブン
    https://www.news-postseven.com/archives/20210202_1631447.html?DETAIL

    ははのれんあい 窪 美澄:文芸書 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/321612000240/

  • 「家族」や「親子」を描く作品は数多あるけれど、窪さんが最新作のなかで描くその在り様に心が静かに揺さぶられた。

    登場人物たちが生身の人間として、皆愛おしい。

    それぞれが弱さや脆さ、身勝手さと寛容さ、頑固さとしなやかさを持っている。
    描き過ぎない窪さんの筆致のなかで、登場人物の人間臭さが細やかに呈される。

    心惹かれる人と一つ屋根の下に暮らし、子を持ち、育むことが誰にとっても最大かつ唯一の幸福という幻想はいまだ健在。

    自分がその家族のなかで、どう慈しまれ、どう感じているかを自分自身に問う前に、世間がぼんやりと抱く「家族幻想」と自分の充足感の比較で、何か自分の中の欠損や不足のようなものに目をつむり、ひたすら「世間」や「他者からの目」に焦点を当てて、やり過ごす。

    大切な人に、大事に想われたい。
    寄り添ってほしい。
    理解されたいという本質的な欲求を横に追いやりながら、自分の努力や我慢が足りないのではと、ある時は自分を責め、またある時はそんなネガティブな感情を大事な人に抱く自分を許せず、ひたすら自分を否定する。

    自分のことは二の次、三の次。
    辛いときに誰かに助けてほしいと手を伸ばす自分が許せず、自分で抱え込み、自己解決の道を進み続ける。

    自分でさえ、自分が困っていることに気づいていない。

    「ひとりぼっち」が辛いと感じている人間にとって、この作品は本当に沁みる。

    辛さや大変さを誰にも言えず、自分でコントロールできないことが多すぎ、大きすぎる人へのエールだ。

    子どもを授かったものの、どう扱っていいのかわからない。
    舅姑とうまくやりたいのに、壁を感じてしまう自分が許せない。

    昼夜問わず、授乳、おむつ替えを繰り返し、家事や病院通いに忙殺されたあの日々。
    うちも夫が夜中、目も覚まさず、子ども担当はずっと私だったな。

    簡単ではない家族の事情を子どもながらにずっと背負って、自分の感覚や子どもらしさを封印し、親代わりになった智晴の視線に私の記憶も重なる。

    同い年の窪さんがご自身の生い立ちの中で難しさを抱え、男の子の子育てもシングルマザーとして一人抱えられていたことにも想いを巡らす。

    奇しくも我が家もすべての子どもが独立し、夫婦二人の老後生活が始まったばかり。
    「家族」はうつろうものなのだな。本当は「定型」などない。

    ああ、素敵な作品を堪能。味わい深かった。

  • 読み始めてしばらくタイトルの「はは」が誰なのか、誰が「れんあい」をするのか、と全く予想がつかず。
    だって「はは」という以上、語り手は子どものわけだし、そうすると主人公の子どもって、まだ幼児だから、姑か?あるいは母親か?と。
    結婚して仕事を辞め、夫の家業を手伝いながらの出産。家業の斜陽、子どもを預けての再就職、そして次子の妊娠出産、そんな中での夫の不穏な動き…

    そんな長い長い導入部からの、「はは」と「僕」の物語にようやく突入。
    ここからが、もう、切なくて愛おしくてたまらない。離婚してから母子四人での暮らし。大黒柱である「はは」の代わりに家事を引き受ける高校一年の僕、こと智晴。あぁ、智晴よ、君はなんていい子なんだ。
    でも、えてして「いい子」は大人にとってのいい子であるためにたくさんの我慢をする。
    智晴の我慢。それを無意識に「我慢だと思わない」ようにすることの、しんどさ。

    自分たち母子を捨てた父と、その新しい家族との関係。これは、つらいよな、とつくづく思う。弟たちのように無邪気になれたらどんなに楽だろうか、でもそれが必死に働く母への裏切りのように感じてしまう繊細さ。

    読み終わって改めて思う。家族って何だろう。他人同士が知り合って結婚して子どもが生まれ、親が老い、命が消えていく。増えて、減って。そんな一本の道とは別の形の家族も、ある。
    それをどう受け入れていくか。
    頭で理解していてもそれを心が受け入れるのは難しい。柔らかい心が、たくさんのでこぼこに躓きながら少しずつ鎧をまとっていく。頭と心を自分の中でまとめていく作業。それを支えてくれる祖母や祖父の存在。
    あぁ、家族って何なんだろうな、血のつながりって何なんだろうな、と。
    わからない。わからないけど、今は、この家族の物語が誰かの心の支えになればいいのに、とそう思う。

  • とても良かった!
    ははのれんあいと言うタイトルから想像してた話とは全然違った。
    れんあいというより家族ドラマ。
    家族の始まりから子ども達が思春期になるまで、移り変わっていく家族の形を描いた作品。

    第1部は、出会いから結婚、出産、育児と仕事など、妻・由紀子の視点で語られる。
    第2部は、働く母の変わりに双子の弟の面倒を見る第二の"はは"長男・智晴の視点で語られる。

    1つの家族の話がじっくり描かれていて凄く感情移入してしまった。
    ある時は由紀子、またあるときは智晴になった気分でうん、うんと共感してばかり。

    夫・智久にかなりイライラ!
    なんでちゃんと話さないのか、、
    なんでそんな近くに住むん?
    茂夫の面倒みようよ!
    色々、言いたい事ありまくりヽ(`Д´)ノ

    強くなっていく由紀子が頼もしかった。
    智晴が優しくてほんとにいい子で泣きそうだ。

    家族は時として形が変わってしまう事もあるけれど、その絆は消える事はない。
    ラストがとても良かったです( ᵕᴗᵕ )



  • 疲れてるのかな…最後ずっと涙流しながら読んだ。溢れる涙を止めることができず、理想だって思った。紆余曲折ある人生の中で、結婚、出産、育児、出産、離婚、別れ、たくさんのことを、しなくてもいい経験をし、こうして新しい形になることは理想だ、と。久保さんのこういう話がやはり好き。そして過去の作品を含めてこの作品がいちばん好きです。
    誰も悪い人が出てこないのがまた泣ける。取った取られたではなく、好きになった。それを認めるってすごく勇気のあること。好きになった、恋を知った。私はまたきっとこの本を読むだろうな。

  • 読みやすかった。
    前半は母親目線。後半は長男目線で話が進んでいく。
    私も母親だけど、智晴目線の方が共感できた。長女だから?
    また読みたいな。

    この文が印象に残った。

    人を好きになることは、理屈もなにも通用しない。知らず知らずのうちに台風に巻き込まれるような出来事。自分も、父も巻き込まれた。だからといって、父を100%許せるわけじゃない。けれど、父を許す、という自分は、果たして父よりも上の場所にいるのだろうか、と智晴は思った。


    もっともっと勉強したい、今の自分には知らないことが多すぎる。それでも、勉強してもわからないこともあるだろう。自分の自分につながる人たちの心のうち。
    父さんを許せなかったこと。それでも父さんが好きなこと。それを素直に言えないこと。それでも、どんなに許せないことであっても自分に起きるすべてを、智晴はできるだけ肯定していきたいと思った。

  • 今回も鼻の奥がつんとくる箇所が後半に何箇所かあって。
    夫の家でのミシンの仕事がなくなり、
    駅の売店の仕事し始め、子育て、家の事そして夫はスナック
    知り合ったカンヤラットと新しい家族を作り、長男の智晴(ちはる)とその下の双子の男の子三人が一挙に由紀子の肩に…と前半は母、由紀子目線で物語が進み、
    後半はその息子、智晴目線で進む。
    ははのれんあいというより、由紀子とちはるの成長記だね。
    どちらかというとおっとりしてた由紀子が、ばりばり仕事を仕出してそれも、息子たち3人を大学に入れるのが夢で、ただガムシャラに働いてね、そうだよ恋だってしてほしいし、
    幸せになってほしい。
    母はこんなにも強くなれるんだね。
    息子たちもみんないい子に育ってるし、(特にちはるね)
    父親の智久だよ、仕事と子育てで頑張ってるのにスナックに週いちで通うはじめちゃってさ。
    でも、智久の気持ちもわからなくはない、ミシンの仕事でじゃんじゃん稼いで家を建ててという計画だったのに、それが流れてタクシー運転手に転職し疲れて帰ってくれば、疲れきった妻の顔と散らかってる部屋。
    誰が悪いわけでもないんだよね。
    登場人物が皆、愛おしい。
    義父の茂雄も義母の邦子も、幼馴染みの彩菜も大地も。
    異母兄妹で同い年のシリラットも。
    とりわけ由紀子の母はカッコイイ。
    言いたいことバンバン言って、さっぱりした気性で。
    生きていくってしんどくて大変なこともあるけど、一生懸命、まじめに毎日暮らしていれば幸せな瞬間がきっと訪れるんだなと感じたよ。

  • 結婚して家族になって、それぞれ両親がいて、3人の子供が産まれる。
    親との死別、夫の浮気による夫婦の離婚。夫は新しい妻と家庭を築き、妻は子供3人との母子家庭を始める。
    前半は子供たちの母である由紀子の視点で、後半は長男である智晴の視点で描かれている。

    前半、出産直後の育児の大変さが、だいぶ丁寧に書かれていて、うんうんまさにその通り!と読む。由紀子がこの大変な中で、夫に不満を言わないことがすごいと思った。

    後半、母親を支えようとする智晴の家事育児ぶりが献身的で健気。弟たちが父親に会いたがるのは分かるけど、父親の家庭に遊びに行くことが日常になるってすごいな。それを迎え入れる父親の家庭もすごい。離婚してすぐ新しい家族を作った父親に少しの嫌悪を抱きつつ、周囲の目を気にして新しい恋愛をためらい続ける母親を次第に応援する智晴も、初めての恋愛をし始める。智晴はどこまでも優しい。

    智晴が、父親が再婚した女性との子供と、高校で同じクラスになるってすごい設定だけど、実際にもありえる話なのかな。

    家族の形は変わることがある。離れて暮らしても、離婚しても、家族は家族のまま。

    すごいことだらけだと思いつつも、現実の家族だって、事情も形もそれぞれなのだろうな。

    ふむふむ。

  • 由紀子の変わっていく姿…
    結婚、出産、育児、パートで働き始めるところ、
    双子の出産、パートの復帰、姑の死、夫の浮気、離婚、シングルマザーとしての子育て、仕事、全てを通して変わっていく。
    やはり母は強く…どの過程をもってしても、どこかしら読む人に共感を与えるのではないだろうか。
    ページをめくるなかに、過去の自分がいて、あの時、私も同じように感じたことがあったなあと、どこか自分史を読んでいるような気持ちにもさせられた。特にパートを始めたあたりの由紀子の描写や気持ちの表現、私にも懐かしいものがあった。
    先が気になり、翌日への影響も気にしながら、深夜の読書を途中でやめられなかった。それぐらい近年では稀に見る、私にはドンピシャにはまったお話だった。
    家族の形が変わっても家族であることに変わりはない。この言葉があとに繋がっているとは、第1部を読んだだけでは分からなかった。

    第2部は視点を変えて、智晴の目線で描かれていた。読み進むほどに、こんなに良い子いるかしら?と思いながら笑。
    双子の弟の面倒を見ながら、家事もこなす。両親の離婚の皺寄せはこの子に行ったのか…と切なくなった。それでも、恋に目覚め、父とのギクシャクとした関係の修復、将来への覚悟を決めていく姿は、若さに溢れ、眩いばかりに照れ臭くなった。いつかしら、母の目線で智晴と双子たちの幸せを心から望んでいた。
    複雑な年代の揺れる心を上手く表現しており、智晴への愛情となった。親友とも呼べる大地との最後のシーン、蓮の蕾の開く音を2人で聞くところ。
    ちりんと音がした…とあった。いつか私もこの音を聞いてみたい。
    窪美澄さんの文章表現に、そうそう!これ!と胸に響くところが多々あり、沢山、読書メモに残した。
    こんなに自分の感じていたことを綺麗に文章にしてもらえるなんて!ビリっと心に触れるフレーズも多く、これまた沢山、読書メモに残した。
    たとえば…由紀子の母が言ったセリフ
    悪いことをするのは良い人…
    この言葉には驚いた。

    是非、映画化、ドラマ化して欲しい作品。
    配役、考えるのも楽しいだろうなあ。
    素敵なシナリオライターさん、監督さんで撮って欲しいなあ。今のところ、今年読んだなかでは1推しの作品でした。

  • ははのれんあい、という全部ひらがなの題名に表されているかのように、登場人物の心の揺らぎが、とても穏やかに、シンプルに、でも、確実にこちらの心を揺らしていきます。一部の由紀子、二部の善晴という主人公だけではなく、すべての登場人物の心の波紋も、それぞれに伝わってくるのです。日常の中のささいな違和感とか、すれ違いとか、うまく言えない感じが、いちいちジワッとシンクロしてしまいます。なので、とても読みやすい本、なのですが、読み終えるのにちょっと時間使ってしまいました。何気ない、そして誰にでもあり、特別なことは何もない家族の出来事の積み重ねなのですが、それは小さなストーリーではなく、いま現在の、新しい家族の捉え方という大きなストーリーになっているのが、著者の巧みさなのでしょうか?最後まで読み進めて、この作品が地方紙共同の新聞小説だったのだ、と知り、その読み方、読まれ方がぴったり、と思いました。

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著者プロフィール

1965年東京都生まれ。2009年「ミクマリ」で第8回「R‐18文学賞」大賞を受賞。11年、受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』で第24回山本周五郎賞を受賞、本屋大賞第2位に選ばれた。12年、『晴天の迷いクジラ』で第3回山田風太郎賞を受賞。19年、『トリニティ』で第36回織田作之助賞を受賞。その他の著書に『水やりはいつも深夜だけど』『さよなら、ニルヴァーナ』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『いるいないみらい』『たおやかに輪をえがいて』『私は女になりたい』など。

「2021年 『ははのれんあい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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