いるいないみらい

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 1094
感想 : 135
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041054925

作品紹介・あらすじ

夫との快適な生活に満足していた知佳。しかし妹の出産を機に、夫の様子が変わってきて……(「1DKとメロンパン」)。子どもを持たないという人生を選択したひとたちの生き様を描いた、切なくも温かな短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 子どもがいる、いない。欲しい、欲しくない。どちらの気持ちもわかるなと思いながら読んだ。
    こういうことって、考えれば考えるほど答えがでなくなるのかも。
    主人公それぞれが自分の気持ちやパートナーの気持ちに耳を傾けながら、幸せの形を見つけていくしかないんだろうな。
    個人的には「金木犀のベランダ」が好きだった。

  • 子供が欲しい人、いない人、嫌いな人それぞれの思い…5篇。
    いくつかの選択肢、考えを紹介してもらった感じ。最後はどれも明るい未来を感じる。家族をこれからと考える人は、読んでみるといいかも。子供のこと以外でも、思いつめるのでは明るい未来を考えたくなりました。誰もが、自分自身満足できること、選んだ道が少数派だとしても窮屈にならないこと、そう願う。選んだ道で、明るく暮らせればね。頭の上にある一つの星、『小さな光がいつまでもそこにあればいい』と私の上の星にも願う。

  • どの物語も子どもに関係するお話。子どもが欲しくないのに周りに言われて窮屈な思いをしたり、自分が欲しくなくても奥さんが妊活を始めたり。

    夫婦は全く同じ考えを持っているとは限らないから、こうした心のすれ違いは多少なりとも生じてしまうのも事実。

    これらの物語を読んで、自分たちのことを思い出した。私たち夫婦も一年半くらい子どもが出来なかったのだが、たったこれだけの期間でも、出来ない間は永遠にも感じる長さだった。
    だから、②の無花果のレジデンスの奥さんの気持ちは凄くよくわかった。生理がくるたびに悲しむ奥さん。諦めと希望の入り混じった気持ちでこないでと待つ生理予定日。
    なんとなく全ての物語が他人事じゃなく、凄く身近なことに感じられた。

    ①1DKとメロンパン
    35歳の知佳は結婚して仕事をしているが、子どもはいない。職場の仲間は妊娠ラッシュ。知佳の妹が出産し、夫の智宏とお祝いに行ってから智宏は子どもが欲しいと言うようになる。それでも知佳は子どもが欲しくなかった。

    ②無花果のレジデンス
    妻の妊活が始まっても睦生は気が乗らない。子どもが欲しくないわけではないのだが、自然にできればというのが睦生の気持ちだった。妻の本気を知り、病院に通うことになり、そこでの診断は睦生の精子の運動量が足りないということだった。それから2人には微妙な空気が流れ。

    ③私は子どもが大嫌い
    36歳の茂斗子は子どもが嫌いだ。結婚にも興味がない。このまま年老いて死んでいくんだろうなと思っていた。そんな茂斗子だが、マンションの隣の部屋の女の子に触れ、なんとなく世話を焼くようになる。

    ④ほおずきを鳴らす
    54歳の勝俣は過去に娘を亡くした経験がある。その後、夫婦関係がギクシャクし始め、離婚してから再婚することなく1人で暮らしている。
    たまに夜の公園で電子タバコを吸っていると、不思議な女性と出会う。なんとなく娘が生きていたらこんな年齢かと思うとその女性のことが気になりだした。

    ⑤金木犀のベランダ
    夫婦でパン屋を営む繭子は43歳。何年か前に子どもを作ることも考えたが、できないまま43歳になった。このまま2人で生きていくんだとなんとなく考え、今の生活に全く不満も感じていなかったのだが、ある日、夫が養子が欲しいと言いだして。

    どれも著者らしい、なんとなく優しい物語。色々あっても、最後には前を向ける。
    子どもがいる人にもいない人にも。至極の短編集です。

  • 未婚・既婚・子あり・子なし…女性は大人になると生きる道が色々分かれてゆき、その都度選択を迫られる。
    昔と違い選択の幅が広がったことは良いことだけれど、その選択に対し世間から好き勝手に線引きされたり批評されることは、正直悔しい。
    その人が自由か不自由なのかは、その人本人が決めるべきこと。
    他人に決めつけられる謂れはないはずだ。

    最初の短編『1DKとメロンパン』の主人公がラストで思ったこと
    「明日が来ることが楽しみだと、二人でそう思えるのなら、もうそれで今は十分なんじゃないかな」が印象的。
    幸せってこれに尽きるんじゃないかと思う。

    ラストの短編『金木犀のベランダ』の主人公が思ったこと
    「未来は不確定だ。確かなのは今の気持ちだけで、それが今、二人で確認できたのなら、それでもう十分だろう」には救われた。
    生き方に悩んでいた5人の短編の主人公達の苦悩も、この一文で解きほぐされた気がする。

    5編の内、特に好きな短編は『私は子どもが大嫌い』『金木犀のベランダ』。
    切なくて泣けた。でも温かで優しい気持ちにもなれた。
    今まで読んだ窪作品の中で一番好きな短編集になった。

  • ぐるぐる考えて凝り固まってしまいがちな心を優しく柔らかくほぐしてくれるような作品でした。想定以上に良かったので、ずっと手元に置いておいて読み返したい。子供を産む人、産みたいけれど出来ない人、子供が大嫌いな人、子供を失った人、、子供に対するスタンスって何通りもあると思うけれど、やっぱり一番大事なのは今隣りに大切な人がいることの幸せを当たり前に思わないこと。最後の篇での繭子の「私の人生に何ひとつ欠けているものはない」というセリフがぐっときた。私もそう思って生きていたいな。「無花果のレジデンス」「金木犀のベランダ」など短編ごとのタイトルも素敵でした。

  • 女性にとって、夫婦にとっての子どもにまつわる短編5編

    『子はかすがい』ということわざがある
    確かに一面では真実であろうが、一概にそう言いきれない場合も多々ある
    子どもはいても、夫婦関係が破綻する例もたくさんあるし、子どもがいなくても、お互いの絆と信頼関係を深め、円満に夫婦関係を続けている夫婦もたくさんいる

    重いテーマで、いろいろ考えさせられたが、
    明日が来ることが楽しみだと、二人でそう思えるのなら、もうそれで十分なんじゃないかなと・・・
    「1DKとメロンパン」より

    未来は不確定だ。確かなのは今の気持ちだけで、それが今、二人で確認できたのなら、それでもう十分だろうと、そう思った
    「金木犀のベランダ」より

    に尽きると思った。きれいごとかもしれないけれど

    5話、施設で育ったため、自分の子どもを持つことに不安を感じている繭子に対して、生涯独り身だった節子さんが語る言葉が心に沁みた

    欲しいと思ったものが手に入らないこともあるの。手に入らなくても欲しい、欲しい、って手を伸ばすのが人間だもの。だけど、すでに持っているものの幸せに気づかないことも時にはあるわね

    欲しい、欲しい、と思っていて、あきらめかけていたものがふいに手に入ることということもあるの

    老い先もみじかいでしょう。思っていることはなんでも話すようにしているの。あのときいっておけばよかった、って後悔が私には山ほどあるのよ。・・・だから、あなたには言っておくわ。ご主人とはなんでも話をなさい。怖がらなくてもいいの。大丈夫

    全編、おきまりの最後には妊娠してハッピーエンドではなく、いろんな選択があっていいんだよという穏やかな優しさに包まれていた

    この感想を書くため、もう一度見返していて、1話の智宏が行列に並んで買ってきた子羊堂のメロンパンが、5話の栄太郎と繭子が営む子羊堂だと気づいて、びっくり!
    繋がっていたんだと分かり、ちょっと得した気分!







  • 5編からなる短編集。
    子供を持つことだけが、本当の幸せなのか?
    子供がいなくて肩身を狭い想いをしている女性たちの声を代弁してくれているような作品。
    子供が欲しくても、恵まれない夫婦。
    子供が生まれて、すぐに失ってしまった夫婦。
    もともと子供が好きではない女性。
    世の中にはいろんな人がいる。
    だけど、まだまだ日本の世論は子供がいて、立派に育てたことが立派だと言う見方が強い。
    話の中にもあったが、私も大人の女性になって、結婚すれば、当たり前に子供が出来ると思っていた。
    でも、結果恵まれなかった。
    その結果はとても苦しいものだったし、今でも子育てをしながら働いている同僚や友人を見ると、自分が人間として「失敗作」と感じる。
    でも…
    子供がいなくても、いいんだよ…
    この作品から、そんな言葉が聞こえてくるような気がした。

  • 子供がいるかいないか。迷ったり、選んだり、なかなか恵まれなかったり。
    私には、ちょっとテーマ的に(子供がどうのという時期は過ぎているので)それほど入り込めなかった(人間描写はよかったが)。1DKとメロンパンの話は良かったな。

  • 結婚しているけど、いないみらいの私には共感と刺さりまくりの物語であった。夫婦における、子供いる?いらない?の短編集。人生の大きな選択肢。思い悩む登場人物たち。「こうしなさい!」と突き付けるのではなく、固くなった心を優しくほぐすぐらいのラストが良い。子供を持っても持たなくても、後悔しない保証なんてない。だったら現状を生き抜くのみ。しかしたま~には落ち込んでしまう。周囲の女性陣に比べると、「私ってマイノリティだな」と。そんな私の心もほぐしてくれた一冊である。

  • すごく心に響く。わたしは子どもが欲しくて、もつ、という未来を選んで、それを許されたことに幸せを感じているけれど。いない みらい もまた素晴らしい。 それは日常をいかに大切に 大切な人と生きるかということだとおもう。

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著者プロフィール

1965年東京生まれ。2009年『ミクマリ』で、「女による女のためのR-18文学賞大賞」を受賞。11年、受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、「本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10」第1位、「本屋大賞」第2位に選ばれる。12年『晴天の迷いクジラ』で「山田風太郎賞」を受賞。19年『トリニティ』で「織田作之助賞」、22年『夜に星を放つ』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『アニバーサリー』『よるのふくらみ』『水やりはいつも深夜だけど』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『夜空に浮かぶ欠けた月たち』『私は女になりたい』『ははのれんあい』『朔が満ちる』等がある。

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