ラプラスの魔女 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.58
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本棚登録 : 10891
感想 : 561
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041054932

作品紹介・あらすじ

遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きた。検証に赴いた地球化学研究者・青江は、双方の現場で謎の娘・円華を目撃する――。東野圭吾が小説の常識をくつがえして挑んだ、空想科学ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 途中から明かされていく事件の真相や犯人に驚きながら、引き込まれるようにして読んだ。物理学とか原子とか、凡人では理解できないトリック。でもどこかリアルだった。一番最後がよく分からなくて、そこだけが残念。映画になってるみたいだから見てみたいな。

  • 上司が"魔力の胎動"とセットで貸してくれて"魔力の胎動"の次に読んでみた!
    読む順番はどちらでも良いと思うけど、"魔力の胎動"を先に読んで良かったと思う。

    "魔力の胎動"よりミステリー要素多めで良かった。
    謎は途中の伏線で気づいちゃうくらいのものだったけど、それでも面白かった。
    科学とかそういうのからっきしダメな私でも楽しく読めた。
    最後どう決着つけるのかワクワクした。
    個人的にな武尾が好き笑

  • いい塩梅。

    ミステリーすぎず、ライトすぎない。設定も難解すぎず、ガバガバすぎない。このあたりのバランスの良さが東野圭吾の小説の魅力なのかもしれない。

    他の人も感想でチラホラ挙げているが、途中から(むしろ序盤から)展開が完全に読めてしまう。
    ただ、本小説のキモである「未来予測」を利用した殺人トリックは、あまりに現実離れしすぎているため、ラストまで引っ張ってタネを明かしてしまうと、「そんなトンデモ受け入れられるか」と、拒否反応を示してしまうと思う。
    そういう意味では、序盤から「2人には特別な才能があるんですよ」という仕掛けを明示するぐらいでちょうどいい。読者にSF設定をなじませて、世界観に溶け込んでもらい、純粋な人間ドラマに集中させる。この力の入れ具合が絶妙であり、気づけば時間を忘れてスルスル読めてしまう。これがベテラン作家の成せる業なのかな、と感心してしまった。

  • ラプラスの魔女

    「人間は原子だ。ひとつひとつは凡庸で、無自覚に生きているだけだとしても、集合体となったとき、劇的な物理法則を実現していく。
    この世に存在意義のない個体などいない。」

    1.物語
    脳外科医が少年の手術を執刀します。
    植物人間だった少年は奇跡的な回復とともに、
    特殊な能力を獲得します。

    国家/政府が、この青年を監督下に置き、能力解明へとと進めようとします。

    そして、、、。

    2.事件
    ①ある家族の事故
    ②温泉街で発生した事故

    この二つの事故を、学者、警察そして主人公の少女がそれぞれの立場で解決に挑みます。

    3.ラプラスとは?なぜ、魔女
    タイトルから不穏な、怖くなる物語を想像します。
    しかし、読み進めれば、東野圭吾さんの世界で安心できます。
    ひとりひとりの人物描写、そして事件の動機を読者側に丁寧に示してくれます。

    まとまった休みに、東野圭吾さんの世界。

    ありがとうございますの世界です。

  • 衝撃のプロローグから時は数年後からエピローグまで。
    引き込まれるように読んだ作品でした。
    事故と思われた事件の綿密な計画。その奥に隠された真の目的。そして黒幕。
    円華ととある青年が中心の物語でしたね。
    基本武尾と青江はどちらかといえばサブ的な感じで。
    現実的にありえるのかという思いもあるけど。
    長編ながらもあっという間に読めた1冊でした。

  • すごい人気・有名作家なのに初めて手にした1作品目。

    離れた温泉街で起きた2件の硫化水素の事故。
    専門家として現地調査へ行く大学教授や事故に疑問を持つ刑事・2つの現場に現れる謎の少女とその少女を追う人々…など登場人物が多く、前半は不明瞭なことも多くてモヤモヤしたまま物語は進みますが、後半は様々なことが繋がって面白さが加速!

    「ラプラスの悪魔」の能力かっこいい!
    面白くてサクサク読み進めることができました。
    映画化されているみたいなので映像でも観てみたい。

  • これはSF?それともファンタジー?起きるかもしれないし、起きないかもしれない。全ての謎が明かされず、その謎を追いかける人物が真相を追うことを諦めて終わるというのは自分は好きではないが,テーマである『真相を知る事が必ずしも正しいことではない』という所に繋がっていると言うところもあってとても面白かった。前日譚の『魔力の胎動』も読んでみたいと思った。

  • 新作が刊行されると、魅力的なタイトルと読みやすさで、つい読みたくなる(実際に読むのは文庫化されてからがほとんどだが<笑>)作家の一人が、本作の著者東野圭吾。
    今回は、文庫発売と同時に、本作の前日譚を単行本で発売するという、何とも心憎い営業戦略。
    つい手が出てしまう読者が多いことだろう。
    硫化水素中毒による死亡事件が発生。これは事故か、事件か。
    調査に赴く地球化学の研究者、事件の匂いを捉え捜査活動を進める所轄の刑事、事件現場に現れる不思議な能力を持った若い女性。
    様々な人物が絡み合い、さらに超常現象と事件はどう繋がるのか。
    読者の興味は嫌でも刺激されてしまう。これもベストセラー作家のベストセラー作家たる所以だろう。
    超能力と思われるものも、「ナビエ・ストークス方式」とか「ラプラスの仮説」とかを持ち出して、物理学を引用するのは、如何にも理系出身の著者らしい。

  • 【感想】
    「THE 東野圭吾の小説」って感じの1冊だった。
    はじめに沢山の登場人物が出てきて、どうなるのか?と期待をさせ、また作中のドンデン返しも多数ありつつ、しっかりと伏線を回収していく王道の安心感。
    呼んでいて本当に面白かった。

    作中でSF要素をからめていたが、科学的根拠を論点にしているため現代でも決して実現不可能ではないように魅せているから、決して空想ではない。
    そんな現実感も読者に抱かせるのは東野圭吾の「業」だと思う。
    理系ではない自分からすれば、「世界にはこういう法則や論文があるんだなー」と教えてもらっている感覚なので、それだけでも充分読んで良かったと思えるなぁ。

    とまぁ、科学的な内容に感動したというような感想になってしまったが、読み物としてもとても面白かった。
    良い意味で読者の期待を裏切るストーリー構成や、幻想的で魅力あふれるキャラクター、勧善懲悪のシーンなど。
    何となく、「ガリレオ」みやいにシリーズ化しそうな気がする、そんな1作品でした。

    ※追記
    「魔力の胎動」という前日譚があるのですね、今度読んでみよう。


    【あらすじ】
    "円華という若い女性のボディーガードを依頼された元警官の武尾は、行動を共にするにつれ彼女には不思議な《力》が備わっているのではと、疑いはじめる。
    同じ頃、遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きていた。
    検証に赴いた地球化学の研究者・青江は、双方の現場で謎の娘・円華を目撃する――。
    価値観をくつがえされる衝撃。物語に翻弄される興奮。


    【引用】
    p373
    「数学者のラプラスはご存知ですか?フルネームはピエール・シモン・ラプラスです。」
    桐宮玲が青江に訊いてきた。
    「もしこの世に存在するすべての原子の現在位置と運動量を把握する知性が存在するならば、その存在は、物理学を用いることでこれらの原子の時間的変化を計算できるだろうから、未来の状態がどうなるかを完全に予知できる…」
    「ラプラスはこのような仮説を立てました。その存在のことは後年、ラプラスの悪魔と呼ばれるようになります。」


    p375
    「ナビエ・ストークス方程式。流体力学に関する、未だ解かれていない難問です。スーパーコンピュータを使っても100%のシミュレートが不可能な乱流を、数学的に解析することが可能になります。理論的には、百年後の天気さえもわかるのです。」


    p434
    ・オスのマウスが新生児マウスを攻撃している映像
    「このオスのマウスは後尾未経験で、当然の事ながら新生児マウスは自分の子供ではありません。後尾未経験のオスマウスは新生児マウスに対し、例外なくこうした攻撃行動を取ります。その原因は、新生児マウスが発するフェロモンにあり、そのフェロモンによってオスマウスのジョビ神経回路と呼ばれる部分が活性化され、攻撃行動が誘発されるのです。」
    「後尾未経験の雄マウスが新生児マウスを攻撃するのは、その母親である雌マウスとの後尾機会を早く得るためと考えられています。どちらにせよ、自らの遺伝子を受け継いだ子孫を確保するための行動なのです。」
    「子供を守るために親が養育行動を取るのは、すべての哺乳類に共通する習性です。目的は、自らの遺伝子を効果的に残す事。その点はマウスも人間も同じなのです。」

    自分たちが愛情と呼んでいるものの正体は脳に組み込まれたプログラムに過ぎず、それが欠落した人間の心理には常識が通用しない。


    p476
    「あなたは沢山の間違いを犯しているけれど、最大の間違いを指摘しておく。大多数の凡庸な人間たちは、何の真実も残さずに消えていく、生まれてきても来なくても、この世界には何の影響もない。さっきあなたはそう言った。
    だけど違う。世界は一部の天才や、あなたのような狂った人間たちだけに動かされているわけじゃない。一見何の変哲も無く、価値もなさそうな人々こそが重要な構成要素だ。
    人間は原子だ。一つ一つは凡庸で、無自覚に生きているだけだとしても、集合体となった時、劇的な物理法則を実現していく。
    この世に存在意義のない個体などない、ただの一つとして。」

  • 東野作品は1年ぶり。この作品のキーワードは、硫化水素中毒死 ✕ 超脳力(勝手な造語) ✕ 復讐。

    2つの温泉地で起きた、火山ガス中毒死。警察は事故死として処理したが、可能性の低い極めてレアな事故だった。事故に不可解さを感じた青江(地球化学を研究する大学教授)は、2つの事故現場で事故のことを調べている少女と遭遇し、少女との接触を通じて事件へ引き込まれていく。

    「ラプラスの悪魔」とは、「この世に存在するすべての原子の現在位置と運動量を把握する知性が存在するならば、その存在は、物理学を用いることでこれらの原子の時間的変化を計算できるだろうから、未来の状態がどうなるかを完全に予測できる」存在のこと。

    そして本作のキモは、AIを遥かに凌駕する未来予測を瞬時に行うことができる超脳力の存在。現実的でない漫画チックな設定だが、超能力でないところがミソだな。

    娯楽作品として楽しめた。

    羽原教授のセリフ「人間の養育行動、男性についていえば父性行動にしても、結局のところ遺伝的にプログラミングされたものなのです。そしてそのプログラムのことを便宜上、愛情と呼んでいるにすぎないのです。」にドキッとした。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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