水やりはいつも深夜だけど (角川文庫)

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  • KADOKAWA (2017年5月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784041054956

作品紹介・あらすじ

『ふがいない僕は空を見た』『よるのふくらみ』の実力派が贈る、珠玉の連作集

セレブママとしてブログを更新しながら周囲の評価に怯える主婦。
仕事が忙しく子育てに参加できず、妻や義理の両親からうとまれる夫。
自分の娘の発達障害を疑い、自己嫌悪に陥る主婦。
出産を経て変貌した妻に違和感を覚え、若い女に傾いてしまう男。
父の再婚により突然やってきた義母に戸惑う、高一女子。

文庫化に際し、オリジナル短編、一編追加収録。

感想・レビュー・書評

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  • R3.10.8 読了。

     「かそけきサンカヨウ」の映画化になると知り、先に小説を読んでみたいと思った。植物と家族にまつわる短編集。不思議なことだけど、各短編には登場人物の老若男女問わず「その気持ち、わかるよ。」と頷ける部分が多くあった。
     また、どの短編も読んだ後にじんわりと温かい気持ちにさせてもらった。癒された。
     特にお気に入りは「ゲンノショウコ」。ラストは感動して泣きそうになってしまった。
    あとは「ちらめくポーチェラカ」と「かそけきサンカヨウ」も好きな作品ですね。きっと自分の身近にも誤解や遠慮や思い込みで、距離をとっている家族や友人や職場の同僚がいるんだろうなあ…。
     窪美澄さんのほかの作品も読んでみたいですね。

    ・「お父さん、言葉は少ないけれど、お母さん、お父さんの言いたいことはわかるのよ。やさしい言葉をかけられたって、態度がそうじゃなかったら、なんだか悲しいじゃない。お父さんはね、やさしい人よ。私がそう思っているんだからいいじゃないの。」

  • ホッとした。私だけじゃなかったんだって。
    なにも特別なことが書かれているわけじゃない。ありふれた家族の日常が描かれているのだけど、それぞれが抱く苦悩や葛藤に少なからず共感してしまう自分がいて。
    仕事も育児も家事も全部こなすのが当たり前、みんな頑張ってるんだからって、苦しいと思うことすら許されないような世間の無言の圧力を勝手に感じていたけれど、やっぱり生活にかなり無理を強いられてるよなぁって。
    言えないだけで、本当は無理してる人は多いんじゃないかな。
    この短編集の各主人公たちも、必死で頑張っているのだけど、ちょっと何かが欠けただけで崩れてしまいそうな脆さがある。
    それでも、もがきながら、なんとか道を模索していき、最後には希望の欠片を感じさせてくれた。
    「かそけきサンカヨウ」「ノーチェ・ブエナのポインセチア」の2編(映画で観たやつだ)は子ども目線で語られるが、残りの4編は家庭を築く厳しい現実でもあるので、親になってから読むことを推奨したい小説かな。
    優しい言葉より、よっぽど励まされた。

  • 普通の家族に定義はあるのでしょうか。足るを知るとは思いながら、ただなんとなくだけでなく、時には強引に、普通の家庭を手に入れたいと、思ってきたような気もする。
    なにげない毎日をやり過ごしている家庭は、さりげない思いやりと幾許かの各々の忍耐によって築かれているのだろうと思う。
    “かそけきサンカヨウ”で、突き詰めないでぼんやりとさせたまま家族を続けられなかった夫婦。
    全てを語り合う事が、最良でない時もあるけれど、
    全てを隠し合う事は、最良になる時はないのでしょう。

    昭和の家庭小説と読み比べると、一般的な家庭表現も随分変化している。昭和の終わりの男女雇用均等法施行あたりが境界でしょうか。登場する男性陣が家事と育児を分担する。親との同居も少ない。普通は普遍ではないんですよね。どの家庭も、これからがある家族に描かれていて、読み心地が好きな作品でした。

    • かなさん
      おびのりさん、こんばんは!
      いつもいいねをありがとうございます。
      窪美澄さんの作品、私今回初めてこの作品を読みましたが
      なんだか、スゴ...
      おびのりさん、こんばんは!
      いつもいいねをありがとうございます。
      窪美澄さんの作品、私今回初めてこの作品を読みましたが
      なんだか、スゴくいい感じですね…。
      今は「夜に星を放つ」を読んでいますが、
      おびのりさんは他の作品も結構読まれてますね。
      おすすめとかありますでしょうか??

      あと、今回フォローさせて頂きたいと
      ご挨拶に伺いました!
      どうぞよろしくお願いします。
      2023/04/29
    • おびのりさん
      かなさん、こんばんは。フォローありがとうございます。
      窪美澄さんは、なんかすごく良い感じで読み切った感があります。
      水やりと夜に星とふがいな...
      かなさん、こんばんは。フォローありがとうございます。
      窪美澄さんは、なんかすごく良い感じで読み切った感があります。
      水やりと夜に星とふがいないぼく、あたりが好きでした。
      私は、レビューが大雑把で申し訳ないですが、よろしくお願いします。フォローさせていただきます。
      2023/04/29
  • 6つの物語からなる短編集。

    いろいろな家族のかたちが描かれている。

    それぞれの物語が何となく、胸に突き刺さるというか、腑に落ちるというか…

    最後の2編の陸くんと陽ちゃんのエピソードが、個人的には好きでした。

  • 家族やママ友に関する悩みを、少し前向きに考えられるようになっていく短編集。特に主人公に感情移入したのはこの2篇。

    『ちらめくポーチュラカ』
    他人の悪口を言うのが好きな人って、どこにでもいる。「女の世界」って色々大変だよねぇ。

    『サボテンの咆哮』
    すごくいい旦那さん。奥さんもお義母さんたちも頭が固すぎる。少し歩み寄った気もするが、まだまだ苦労しそうだな。武博の実家での場面がとても良かった。不器用なおじいちゃんと孫のやりとりがとっても温かくて泣けた。

  • 人の柔らかい部分に触れられたくない部分に冷たく突き刺さる短編小説。
    それでも向き合わないと乗り越えられないのかな。
    逃げてしまったら刺さったままになってしまうのか。
    現実ではどちらを選べば良いのか難しい。
    作者さん、初読みでした。
    こんなヒリヒリするお話に希望も繋いでくれるお話、大好きになりました。

  • ⭐️3.3

    窪さんの作品は3冊目です。
    ふがいない〜と夜のふくらみの2冊が
    なかなか官能的だったので
    自分に合うかな?と思ったけど
    その2冊とは全然違う心温まるお話だった。
    家族の形は人それぞれ。
    うちの息子も障がいがあり兄弟児問題に直面してるので読んでて辛かったです。。
    かそけきサンカヨウ と
    ノーチェ・ブエナのポインセチアが
    個人的に凄く好きだった!

  • "かそけきサンカヨウ"と"ノーチェ・ブエナのポインセチア"が素敵なお話だった。それぞれの家族が形は違うけど、幸せになろうと、あったかい家庭にしようと頑張ってる感じがほっこりした。自分が高校生の頃に義理の妹に大事な本を破られたら1週間はふてくされてるなと思った。陽ちゃん大人だな。
    "ちらめくポーチュラカ"はなんかベタなママ友同士の話だった。

  • 『夜に星を放つ』を読み終えて、ちょっとやるせない気持ちになっていたところ、窪作品で読みかけの本があることを思い出し、最後まで読み終えました❗️

    最初の『ちらめくポーチュラカ』が余りイイ感じがしなくて、『夜に星を放つ』同様にちょっとやるせない作品なのかなぁと構えて読みましたが、全体を通して言えることは、家族あるあるが沢山描かれていて、少し息苦しい気持ちになることもあるけれども、前向きに明るい気持ちにさせてくれる、温かい家族小説でした❗️

    特に印象的なのは、『サボテンの咆哮』、『砂のないテラリウム』で既婚男性ならそんな気持ちになることは一度位あるのではないか⁉️と思います。

    好きな話しは、『かそけきサンカヨウ』と『ノーチェ・ブエナのポインセチア』の最後の2編で、陽や陸の関係がとても微笑ましく感じられました❗️

  • この本を読んで、世の中には色々な家族の形があること、他人同士が一緒に生きていくことの難しさを感じた。

  • 崎山蒼志の新曲「幽けき」今泉力哉の映画『かそけきサンカヨウ』主題歌を書き下ろし | 財経新聞
    https://www.zaikei.co.jp/sp/article/20210611/625065.html

    水やりはいつも深夜だけど 窪 美澄:文庫 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/321612000244/

  • 6つの短編。うまくいかない家族の毎日を描いています。

    セレブママとしてブログを発信しながらも、周囲の評価を気にして怯える主婦。
    子育てで、自分なりにできることをやっているつもりなのに、妻や義両親からうとまれる夫。
    娘の発達障害を疑い、自己嫌悪に陥る主婦。
    出産を経て変貌した妻に違和感を覚え、若い女に傾いてしまう夫。
    父の再婚で突然やってきた義母と義妹。家族になることに戸惑う娘。
    前編の連作。彼女の家族に刺激を受けながら、自分の歪んだ家族を受け入れて向き合おうとする息子。

    夫婦や家族はうまくいくことのほうが少ないと思います。幸せそうに見えても綻びはあって、理想どおり、不満もなく暮らしている人はそんなにいないはず。だからこそ、その辺に転がっていそうな「うまくいかない毎日」にリアルさがありました。
    1話ごとに1つの植物がモチーフとなっています。植物を育てる=家族を育てるというイメージなのかなと思いました。「水やりはいつも深夜だけど」のタイトルのように、水やりが深夜になっても、ギリギリだったとしても、家族を育てていこうということなのかなと勝手に解釈しました。うまくいかなくても読後感は優しかったです。

  • 自分の周りにいそうな人物たち、ありそうなリアルな描写で共感できた。
    共感できるからこそ、ふわーっとしたまま終わってしまう話が多く、根本解決していないのでは?と消化不良なところもあった。

  • どのお話も良かったです。言葉にできない本音や、生きづらさを表す文章がすっと入ってきた。
    傍から見ればどこも悪くない、今の世の中でどれだけ幸せか、そう見える人にも、こう思うことは多少なりともある。「最近僕が、通勤途中の電車の中や、会社のトイレに座っているとき、あるいは風呂につかっているとき、ふと、考えてしまう。あったかもしれないもう一つの人生」砂のないテラリウムより。なんかわかります。トイレに座っているときとか。
    高校生「陽」の、父親の再婚相手美子さんとの、揺れ動く心情を描く、「かけひきサンカヨウ」は心に残りました。父親がこのようなことを言うんです。家族や夫婦間では、突き詰めないで、ぼんやりさせたまま続けたほうが良いこともある。と。どちらがどれだけ悪いとかはっきりさせないほうがいいこともある。と。お父さんだなあと思いました。

  • 子供の頃、私は早く大人になりたかった。
    してみたいことを制限される窮屈な子供の世界とは違い、大人の世界は今よりもっと広々と自由なものだろう、と勝手に思い込んでいた。
    けれど、実際の大人の世界はそんなに甘いものではない。
    女友達やママ友との距離感、子育て中の妻の扱い等で思うようにいかず悩んだりと情けない。
    育てている鉢植えに一人でそっと水やりをするように、深夜に一人、凹んで乾いた心にひっそりと水やりをして自分の気持ちを整理し、折り合いをつけようとする大人達。
    けれど、水やりし続けることで少しずつ乾いた気持ちにも水分と栄養が満たされていく。
    水やりは続けることに意味がある、と気付かせてくれる短編集。

  • 今から家庭を築く人、家庭に少し疲れた人にオススメです。

    日常の家族仲に少し歪み違和感を感じ、家族のリアルティを共感できる短編集です。
    最終章のかそけきサンヨウカは父子家庭の娘視点で話しが進む。連れ子のいる人と再婚した話。ラストは雨に濡れたガラスの様なサンヨウカがまた白く花を咲かせた。
    サンヨウカの花言葉は『親愛の情』
    それは全ての家族の当てはまる一番の言葉である。

    水やりは深夜。全てが振り出しに戻る前に水(歩み寄り)をやり、日に当たる所にお花(家族)を移動させたい。
    そんな著者が家族に対してのメッセージを感じた。

  • 短編小説。みんな何かしら思い通りにいかなく葛藤を抱えている人のstory。どの物語も最後ほっこり(◍︎´꒳`◍︎)みんななんだかんだいろんな悩みはあるけど、懸命に生きよう❣️

  • タイトルと装丁に惹かれて手に取った。5つの短編の中にちょっとした植物の要素が入っていてタイトルとの関連性に唸らされた。閉塞感のある状況で小さな光を見つける人々のお話、だと思う。
    5人の主人公それぞれに大して共感できることが多くて入りこんでしまった、、、過去のトラウマから人の目を気にしすぎる主婦を描いた「ちらめくポーチュラカ」の主人公の自分の人生への当事者意識の薄さ、妻が自分への関心を抱かなくなるのを寂しく感じる「サボテンの咆哮」の主人公の居心地の悪さとか…感情表現が生々しい。

    全部、同じ街での話なのかな。この物語の中では一人称視点が語られることのなかった人たちも同じような葛藤や違和感を抱えながら生きているんだろうなと思わされるような立体感があったな。

  • なぜかいつも手に取ってしまう窪美澄さんの本。
    ぐっと引き寄せられる本のタイトル。
    今回は 「水やりはいつも深夜だけど」

    わたしはセレブママに見られたい主婦でもないし
    妻や義理の両親から責められる夫でもないし
    若い女に傾いてしまう男でもないし
    義母を受け入れられない女子高生でもないんだけれど。

    どの主人公とも境遇は違うけれども
    きっと誰もが今まで生きてきた中で
    言えなかったこと思っていたこと
    嫌だったこと辛かったこと

    それをしっくりくる真っ直ぐな言葉で
    絶妙な心理描写を交えながら書いてくれるから
    あのときのあの自分に共感してあげられて
    そして救ってあげられる。
    そんな素敵な小説でした。


    窪美澄さんの本は、やっぱりいいなあ。

  • それぞれにそのお話を象徴するような植物の名前がタイトルに入ったお話しが6つ。
    私には二つ目から四つ目の話が身に沁みた。

    二つ目の話は、仕事で子育てになかなか参加できず、育児に壊れた妻と近くに住む義父義母から責められる男が、四つ目の話は、出産を経て変貌した妻に寂しさを覚え、若い女に傾いてしまう男が主人公。
    こうしてみると、私が幸せな夫婦生活を送れてきたのは全くもって嫁さんのお陰だな。昔はあまり分かってなかったけど、今になって本当にそう思う。
    彼女の我慢と献身がなければ、私のような人間が普通に社会生活を送れるわけがなかったのだ。
    サボテンの目に見えない棘がチクリと刺さるような痛みもある一方、苔テラリウムがゆっくりとその命を伸ばしていくように過ごしてきた夫婦での年月をしみじみ思う。

    三つ目の話は、我が子の成長の遅さに、知的障がいの妹の思い出を引き摺り疑心暗鬼になる女。
    私の子育て、どこで間違ってしまったのかなぁ…。
    長男も次男も30歳にもなろうとするのにそれぞれに問題を抱え、しかし、親として何もしてやれない。
    この話を読んでいて、幼い子が母に妹をねだる姿に、次男が生まれた時の長男の様子や二人が一緒に並んでいる写真などが思い出されてきて、朝の通勤電車の中で涙が出そうになった。
    どこかで間違えたのか、いや、最初から違っていたのか、どうしたらいいんだろう、今からでも修正できるのか。
    小さい頃に注いでいた筈の愛情を、もう一度、時間を遡って注ぎ直してみたい気に駆られる。

    巻末の対談で『どんな人でもふつうに暮らしていると言葉が足りないと思うんです』と語る作者は、『私はいつも小説で、本当はこう思っているんだよ、ということを書いているところがある』と続ける。
    夫婦、父、息子、仕事、近所の人、友人…、色んな人間関係の中で、言いたいこと、聞きたいこと、聞いてはいけないと思って言いかけて止めること…。
    どの話も息苦しくなるような話だが、最後には分かり合える端緒が垣間見え救われる。
    私の家庭もいつか少しの光が見えるようになるのかな…。

    息子と親の私たちに対する愚痴を言いに一人で家にやって来た長男の嫁に、読んでみたらとこの本を渡してやろうかと思ったが、到底同じ感性を持つとは思えず却って誤解されるリスクを考え、止めておいた。
    そんなことを気にせず、気に入った本を薦める関係になりたいな。まあ、まず息子からだけどな。

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著者プロフィール

1965年東京生まれ。2009年『ミクマリ』で、「女による女のためのR-18文学賞大賞」を受賞。11年、受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、「本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10」第1位、「本屋大賞」第2位に選ばれる。12年『晴天の迷いクジラ』で「山田風太郎賞」を受賞。19年『トリニティ』で「織田作之助賞」、22年『夜に星を放つ』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『アニバーサリー』『よるのふくらみ』『水やりはいつも深夜だけど』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『夜空に浮かぶ欠けた月たち』『私は女になりたい』『ははのれんあい』『朔が満ちる』等がある。

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