水やりはいつも深夜だけど (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 407
レビュー : 40
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041054956

作品紹介・あらすじ

ごく普通の家庭の生々しい現実を強烈にえぐり出した、 珠玉の連作集。

『ふがいない僕は空を見た』『よるのふくらみ』の実力派が贈る、珠玉の連作集

セレブママとしてブログを更新しながら周囲の評価に怯える主婦。
仕事が忙しく子育てに参加できず、妻や義理の両親からうとまれる夫。
自分の娘の発達障害を疑い、自己嫌悪に陥る主婦。
出産を経て変貌した妻に違和感を覚え、若い女に傾いてしまう男。
父の再婚により突然やってきた義母に戸惑う、高一女子。

文庫化に際し、オリジナル短編、一編追加収録。

感想・レビュー・書評

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  • なぜかいつも手に取ってしまう窪美澄さんの本。
    ぐっと引き寄せられる本のタイトル。
    今回は 「水やりはいつも深夜だけど」

    わたしはセレブママに見られたい主婦でもないし
    妻や義理の両親から責められる夫でもないし
    若い女に傾いてしまう男でもないし
    義母を受け入れられない女子高生でもないんだけれど。

    どの主人公とも境遇は違うけれども
    きっと誰もが今まで生きてきた中で
    言えなかったこと思っていたこと
    嫌だったこと辛かったこと

    それをしっくりくる真っ直ぐな言葉で
    絶妙な心理描写を交えながら書いてくれるから
    あのときのあの自分に共感してあげられて
    そして救ってあげられる。
    そんな素敵な小説でした。


    窪美澄さんの本は、やっぱりいいなあ。

  • セレブママとしてブログを更新しながら周囲の評価に怯える主婦。仕事で子育てになかなか参加できず、妻や義理の両親から責められる夫。出産を経て変貌した妻にさびしさを覚え、若い女に傾いてしまう男。父の再婚により突然やってきた義母を受け入れきれない女子高生…。思い通りにならない毎日。募る不満。言葉にできない本音。それでも前を向いて懸命に生きようとする人たちの姿を鮮烈に描いた、胸につき刺さる6つの物語。

  • それぞれにそのお話を象徴するような植物の名前がタイトルに入ったお話しが6つ。
    私には二つ目から四つ目の話が身に沁みた。

    二つ目の話は、仕事で子育てになかなか参加できず、育児に壊れた妻と近くに住む義父義母から責められる男が、四つ目の話は、出産を経て変貌した妻に寂しさを覚え、若い女に傾いてしまう男が主人公。
    こうしてみると、私が幸せな夫婦生活を送れてきたのは全くもって嫁さんのお陰だな。昔はあまり分かってなかったけど、今になって本当にそう思う。
    彼女の我慢と献身がなければ、私のような人間が普通に社会生活を送れるわけがなかったのだ。
    サボテンの目に見えない棘がチクリと刺さるような痛みもある一方、苔テラリウムがゆっくりとその命を伸ばしていくように過ごしてきた夫婦での年月をしみじみ思う。

    三つ目の話は、我が子の成長の遅さに、知的障がいの妹の思い出を引き摺り疑心暗鬼になる女。
    私の子育て、どこで間違ってしまったのかなぁ…。
    長男も次男も30歳にもなろうとするのにそれぞれに問題を抱え、しかし、親として何もしてやれない。
    この話を読んでいて、幼い子が母に妹をねだる姿に、次男が生まれた時の長男の様子や二人が一緒に並んでいる写真などが思い出されてきて、朝の通勤電車の中で涙が出そうになった。
    どこかで間違えたのか、いや、最初から違っていたのか、どうしたらいいんだろう、今からでも修正できるのか。
    小さい頃に注いでいた筈の愛情を、もう一度、時間を遡って注ぎ直してみたい気に駆られる。

    巻末の対談で『どんな人でもふつうに暮らしていると言葉が足りないと思うんです』と語る作者は、『私はいつも小説で、本当はこう思っているんだよ、ということを書いているところがある』と続ける。
    夫婦、父、息子、仕事、近所の人、友人…、色んな人間関係の中で、言いたいこと、聞きたいこと、聞いてはいけないと思って言いかけて止めること…。
    どの話も息苦しくなるような話だが、最後には分かり合える端緒が垣間見え救われる。
    私の家庭もいつか少しの光が見えるようになるのかな…。

    息子と親の私たちに対する愚痴を言いに一人で家にやって来た長男の嫁に、読んでみたらとこの本を渡してやろうかと思ったが、到底同じ感性を持つとは思えず却って誤解されるリスクを考え、止めておいた。
    そんなことを気にせず、気に入った本を薦める関係になりたいな。まあ、まず息子からだけどな。

  • 六通りの、生活圏にある物語。
    子どもが産まれて、成長して、徐々に変わっていく家族のカタチに戸惑い、振り回され、疲れてしまった大人の姿がそこにはあった。
    本当は誰のことも嫌いになりたくない。
    そんなことは分かってる。
    卓上のテラリウムを眺めながら、ひとり発泡酒を飲む夜。

  • 「言わなわからん」が私の持論です。
    この短編集の主人公たちは、察してもらえないからといっていらついているわけじゃないけれど、言えなくてつらい思いをしていたり、言ってもらえなくてもやもやしていたり。

    表題作はなく、各短編のタイトルには話中に登場する植物の名前が付いています。それを上手くまとめているのがこの表題。

    毎日におびえ、自己嫌悪しながら暮らす主人公たちが、心のうちを思いきって言葉にしてみることでちょっとだけ前を向けるようになる。

    窪美澄の紡ぐ物語は、苦しくても絶望的ではなくて好き。やっぱり、言うてみなわからん。

  • どんなに幸福に見えても本当の気持ちは誰にもわからない。
    傷つかないことも、傷つけないことも多分不可能だけれど、そうしなければ得られない何かも確かにあるのだとおもう。
    そして、好きと大切は多分違う。

  • 窪さんの本が好きで何冊か読んでるんだけど、いつもと雰囲気が違うと思う。
    けど…なぁぁぁぁにこれぇぇぇぇ!!!!
    20〜40代、乳児〜幼児持ちの家庭にドンピシャな話!!!
    共感しすぎて首がもげる!!!
    おかしいのが夫目線で主人公、私は日常では奥さんの立場で奥さん目線にもすごく共感、あるある!それそれ!ってなるんだけど、夫目線もあるある!それそれ!ってこの本ではなるのに実生活ではならないの何でなんですかね…笑

    あくまでも創作、でも創作にしては私世代に寄り添って手をとって、微笑みかけてくれるような作品でした。

    とても好き。
    そして、たぶん数年後に読んだら感想とか印象とかガラッと変わるであろう作品。



    @手持ち本

  • 大抵、文庫本の帯に書かれたコピーって過大広告だけど。
    この作品についてはまさしく!という感じだ。
    コピーには「泣ける」とあった。

    家族間の苦しみや葛藤を描いた6つの短編からなる本作。
    どの作品も本当に甲乙つけがたい。それくらいに素晴らしい。読んでいて辛くて苦しい作品ばかりだ。

    特に自分と重ね合わせて読んだ「サボテンの咆哮」。
    幼稚園児の父親と、子育てに口を出す義母との軋轢を描いた物語なのだが、まさしく私の家と同じ問題だった。
    読んでいて胸が苦しくなるのに、なぜ読んでしまうのか。
    小説の中に答えを求めたかったのかもしれない。
    物語と私の実生活とは結果が異なったけれど、この作品を読んだ後は少しだけ胸のつかえが取れたような気もする。

    高校生の男の子と女の子の爽やかなやりとりを描いた「かそけきサンカヨウ」と「ノーチェ・ブエナのポインセチア」がそれまでの苦しみを少しだけ癒やしてくれた。

    小説のすばらしさの一つに、登場人物に感情移入してその人生の一部分を追体験できることにあると思う。
    「あの時こうしていれば」と後悔ともつかない感情が、今も胸に去来している。

  • 短編集。各篇のタイトルには植物の名前が入っている。結婚生活や育児のことが織り込まれているけど、きれいごとじゃないよと言うのをまざまざと見せつけられる。
    文庫版では巻末に加藤シゲアキさんとの対談が入っているけど、「結婚するの嫌になりそう」みたいな感想が出てきてもおかしくないw

    ・ちらめくポーチュラカ
    過去、女の子同士の付き合いがうまく行かず、今も気負ってしまっている感じの主人公。子供が生まれたら嫌でもその女の世界に飛び込まざるを得ないと実感する。
    嫌われたくないように見栄を張り、セレブ生活をブログを書いていたりするが、コンビニの菓子パンで落ち着いたりする。
    そんな中娘の幼稚園の行事で母親たちと付き合うことになり、やはりやりきれなさを感じる。
    ママ友カーストみたいなのが生々しく書いてあった。子供産んだら確かに親の集団とも接することになるんだよね。

    ・サボテンの咆哮
    子供ができてからも働くと言っていた妻が産後鬱になり、何かと気を使っている夫が主人公。夫としては精いっぱいやっているが、妻の両親からは責められ、家のことに口を出され、妻はその両親に頼りきり。
    夫のやるせない気持ちに感情移入。子供の運動会を通じて、今後は少しずつ変わっていくのかな…と光を感じたラスト。

    ・ゲンノショウコ
    障害を抱える妹と暮らしてきた主人公。結婚して娘が生まれるが、発達具合が気になり、厳しく当たってしまう。
    だがある日、障害を持った男の子に自ら接して危機を救った娘の行動を見せつけられる。
    夫がおおらかなのが良かった。いい人と結婚したなぁという感じ。

    ・砂のないテラリウム
    結婚して子供にも恵まれ、それなりに暮らしているサラリーマンが主人公。
    何もかも足りているようたせかせ、どことなく空虚に感じる日々。彼は「結婚していなければ…」ともしもの人生を考えるようになる。
    そんな矢先、誘われた合コンで若い女性と仲良くなり、一銭を越えようと考えてしまう。

    ・かそけきサンカヨウ
     かそけき
    【文語】ク活用の形容詞「幽し」の連体形。
     かそけ・し 【幽▽し】( 形ク )かすかである。淡い。
    父子家庭に育った女子高生・陽。父親が再婚して、新しい母と妹ができる。
    陽の母は画家で、仕事との折り合いがつかず家を出て行った。
    陽の新しい母・美子さんはちょっと抜けているけれどいい人。陽に気を使ってくれる。
    そんな中、陽は陸という同級生の男子と交流を深めていく。
    新しい家の中に不満はないけど、陽はどこか「ここは自分の居場所じゃない」的な不安定な感情を抱いているように思う。
    母親の絵を見に行くという行為は、大袈裟に言えばアイデンティティーを探していた結果かもしれない。
    妹に母の絵を破られて、ようやく陽の感情が爆発する。
    平和な家の中に波風が立って、家族の絆が少し強くなったラスト。

    ・ノーチェ・ブエナのポインセチア
    ポインセチアの原産国とされるメキシコ合衆国では、「ノーチェ・ブエナ」(原義は「素晴らしい夜」)と呼ばれる。
    前の話に出ていた陸が主役。
    祖母と一緒に暮らす陸。家の中では祖母と母の板挟みになっている状態。
    心臓に病が見つかり、運動ができなくなった陸は陽と仲良くなるが、彼女は家のことを吹っ切り、どこかまぶしすぎるように思う。
    ある日陸は、図書館で同じ学校に通う沙樹と出くわし、彼女が家に問題を抱えていることを知る。以来陸は、沙樹の隣で時間を過ごすようになる。
    陸の心は沙樹に傾くが、沙樹は陸に「同情はいらない」と言い放つ。
    沙樹が陸に「何でも持ってるじゃん」と言ったシーン。多分陸は目からうろこが落ちたような気持ちになったんじゃないかと。
    自分が思う自分と、他人から見た自分、その間で本当の自分について考えさせられる。

  • 窪美澄さんのやつを読むとなんか泣いてしまう。
    透き通ったあたたかさがいつもある。

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プロフィール

窪美澄(くぼ・みすみ)
1965年東京都稲城市生まれ。カリタス女子高等学校卒業。短大中退後、広告制作会社勤務を経て、出産後フリーランスの編集ライターとして働く。2009年「ミクマリ」で第8回R-18文学賞大賞を受賞し小説家デビュー。
2011年、受賞作収録の『ふがいない僕は空を見た』(新潮社)で第24回山本周五郎賞受賞、第8回本屋大賞第2位。同作はタナダユキ監督により映画化され、第37回トロント国際映画祭に出品。2012年、『晴天の迷いクジラ』で第3回山田風太郎賞受賞。2018年『じっと手を見る』で直木賞初のノミネート。

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