水やりはいつも深夜だけど (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 624
レビュー : 62
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041054956

作品紹介・あらすじ

ごく普通の家庭の生々しい現実を強烈にえぐり出した、 珠玉の連作集。

『ふがいない僕は空を見た』『よるのふくらみ』の実力派が贈る、珠玉の連作集

セレブママとしてブログを更新しながら周囲の評価に怯える主婦。
仕事が忙しく子育てに参加できず、妻や義理の両親からうとまれる夫。
自分の娘の発達障害を疑い、自己嫌悪に陥る主婦。
出産を経て変貌した妻に違和感を覚え、若い女に傾いてしまう男。
父の再婚により突然やってきた義母に戸惑う、高一女子。

文庫化に際し、オリジナル短編、一編追加収録。

感想・レビュー・書評

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  • 子供の頃、私は早く大人になりたかった。
    してみたいことを制限される窮屈な子供の世界とは違い、大人の世界は今よりもっと広々と自由なものだろう、と勝手に思い込んでいた。
    けれど、実際の大人の世界はそんなに甘いものではない。
    女友達やママ友との距離感、子育て中の妻の扱い等で思うようにいかず悩んだりと情けない。
    育てている鉢植えに一人でそっと水やりをするように、深夜に一人、凹んで乾いた心にひっそりと水やりをして自分の気持ちを整理し、折り合いをつけようとする大人達。
    けれど、水やりし続けることで少しずつ乾いた気持ちにも水分と栄養が満たされていく。
    水やりは続けることに意味がある、と気付かせてくれる短編集。

  • なぜかいつも手に取ってしまう窪美澄さんの本。
    ぐっと引き寄せられる本のタイトル。
    今回は 「水やりはいつも深夜だけど」

    わたしはセレブママに見られたい主婦でもないし
    妻や義理の両親から責められる夫でもないし
    若い女に傾いてしまう男でもないし
    義母を受け入れられない女子高生でもないんだけれど。

    どの主人公とも境遇は違うけれども
    きっと誰もが今まで生きてきた中で
    言えなかったこと思っていたこと
    嫌だったこと辛かったこと

    それをしっくりくる真っ直ぐな言葉で
    絶妙な心理描写を交えながら書いてくれるから
    あのときのあの自分に共感してあげられて
    そして救ってあげられる。
    そんな素敵な小説でした。


    窪美澄さんの本は、やっぱりいいなあ。

  • セレブママとしてブログを更新しながら周囲の評価に怯える主婦。仕事で子育てになかなか参加できず、妻や義理の両親から責められる夫。出産を経て変貌した妻にさびしさを覚え、若い女に傾いてしまう男。父の再婚により突然やってきた義母を受け入れきれない女子高生…。思い通りにならない毎日。募る不満。言葉にできない本音。それでも前を向いて懸命に生きようとする人たちの姿を鮮烈に描いた、胸につき刺さる6つの物語。

  • それぞれにそのお話を象徴するような植物の名前がタイトルに入ったお話しが6つ。
    私には二つ目から四つ目の話が身に沁みた。

    二つ目の話は、仕事で子育てになかなか参加できず、育児に壊れた妻と近くに住む義父義母から責められる男が、四つ目の話は、出産を経て変貌した妻に寂しさを覚え、若い女に傾いてしまう男が主人公。
    こうしてみると、私が幸せな夫婦生活を送れてきたのは全くもって嫁さんのお陰だな。昔はあまり分かってなかったけど、今になって本当にそう思う。
    彼女の我慢と献身がなければ、私のような人間が普通に社会生活を送れるわけがなかったのだ。
    サボテンの目に見えない棘がチクリと刺さるような痛みもある一方、苔テラリウムがゆっくりとその命を伸ばしていくように過ごしてきた夫婦での年月をしみじみ思う。

    三つ目の話は、我が子の成長の遅さに、知的障がいの妹の思い出を引き摺り疑心暗鬼になる女。
    私の子育て、どこで間違ってしまったのかなぁ…。
    長男も次男も30歳にもなろうとするのにそれぞれに問題を抱え、しかし、親として何もしてやれない。
    この話を読んでいて、幼い子が母に妹をねだる姿に、次男が生まれた時の長男の様子や二人が一緒に並んでいる写真などが思い出されてきて、朝の通勤電車の中で涙が出そうになった。
    どこかで間違えたのか、いや、最初から違っていたのか、どうしたらいいんだろう、今からでも修正できるのか。
    小さい頃に注いでいた筈の愛情を、もう一度、時間を遡って注ぎ直してみたい気に駆られる。

    巻末の対談で『どんな人でもふつうに暮らしていると言葉が足りないと思うんです』と語る作者は、『私はいつも小説で、本当はこう思っているんだよ、ということを書いているところがある』と続ける。
    夫婦、父、息子、仕事、近所の人、友人…、色んな人間関係の中で、言いたいこと、聞きたいこと、聞いてはいけないと思って言いかけて止めること…。
    どの話も息苦しくなるような話だが、最後には分かり合える端緒が垣間見え救われる。
    私の家庭もいつか少しの光が見えるようになるのかな…。

    息子と親の私たちに対する愚痴を言いに一人で家にやって来た長男の嫁に、読んでみたらとこの本を渡してやろうかと思ったが、到底同じ感性を持つとは思えず却って誤解されるリスクを考え、止めておいた。
    そんなことを気にせず、気に入った本を薦める関係になりたいな。まあ、まず息子からだけどな。

  • ★4.0
    全6編が収録された短編集。4作は大人の目線から、残り2作は高校生の目線から綴られる。その全てに共通しているのは、家族に関する何らかの悩みを抱えているということと、「私を必要としてほしい」という誰もが抱く願望を心が痛くなるくらい現実的に描いているということ。と同時に、自分への理解を求めるだけでなく相手を理解する姿勢も必要、と戒められた気も。そして、同性である妻への肩入れはあるものの、幼い子どもがいる家庭の妻側の不満・夫側の不満は、どちらも分かってどちらも難しい。とりあえず、美子さんは素敵だと思う。

  • 窪さんの本は何冊か読んだが、これは良かった。
    短編5つ。
    短編だから、いつものねっとり感がなくて、好みだったのかもしれないな。共感して泣いてしまったものもいくつか。
    「お母さん、一人でそんなに抱え込まなくても大丈夫だよ」
    と言ってあげたい。…自分自身にも。

  • 六通りの、生活圏にある物語。
    子どもが産まれて、成長して、徐々に変わっていく家族のカタチに戸惑い、振り回され、疲れてしまった大人の姿がそこにはあった。
    本当は誰のことも嫌いになりたくない。
    そんなことは分かってる。
    卓上のテラリウムを眺めながら、ひとり発泡酒を飲む夜。

  • 「言わなわからん」が私の持論です。
    この短編集の主人公たちは、察してもらえないからといっていらついているわけじゃないけれど、言えなくてつらい思いをしていたり、言ってもらえなくてもやもやしていたり。

    表題作はなく、各短編のタイトルには話中に登場する植物の名前が付いています。それを上手くまとめているのがこの表題。

    毎日におびえ、自己嫌悪しながら暮らす主人公たちが、心のうちを思いきって言葉にしてみることでちょっとだけ前を向けるようになる。

    窪美澄の紡ぐ物語は、苦しくても絶望的ではなくて好き。やっぱり、言うてみなわからん。

  • どんなに幸福に見えても本当の気持ちは誰にもわからない。
    傷つかないことも、傷つけないことも多分不可能だけれど、そうしなければ得られない何かも確かにあるのだとおもう。
    そして、好きと大切は多分違う。

  • 図書館の本 読了

    内容(「BOOK」データベースより)
    セレブママとしてブログを更新しながら周囲の評価に怯える主婦。仕事で子育てになかなか参加できず、妻や義理の両親から責められる夫。出産を経て変貌した妻にさびしさを覚え、若い女に傾いてしまう男。父の再婚により突然やってきた義母を受け入れきれない女子高生…。思い通りにならない毎日。募る不満。言葉にできない本音。それでも前を向いて懸命に生きようとする人たちの姿を鮮烈に描いた、胸につき刺さる6つの物語。

    日々の生活の寂しさとか隙間とか、そんなものを題材に短編六作。初めての作家さんだけれど、読みやすかったのかあっという間に読んじゃったけれど、肌にはしっくりこなかった。自分の中にはまったくない価値観で語られていた物語しかなかったからだと思うけど。
    タイトルに惹かれたのに、どれもタイトルと内容が合致しなかった作家さんも初めてかな。

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著者プロフィール

窪美澄(くぼ・みすみ)
1965年東京都稲城市生まれ。カリタス女子高等学校卒業。短大中退後、広告制作会社勤務を経て、出産後フリーランスの編集ライターとして働く。2009年「ミクマリ」で第8回R-18文学賞大賞を受賞し小説家デビュー。2011年、受賞作収録の『ふがいない僕は空を見た』(新潮社)で第24回山本周五郎賞受賞、第8回本屋大賞第2位。同作はタナダユキ監督により映画化され、第37回トロント国際映画祭に出品。2012年、『晴天の迷いクジラ』で第3回山田風太郎賞受賞。2018年『じっと手を見る』で直木賞初のノミネート。2019年『トリニティ』で第161回直木賞、二度目のノミネート。

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