- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041055090
作品紹介・あらすじ
攫われたユナを追い、火馬の民の族長・オーファンのもとに辿り着いたヴァン。オーファンは移住民に奪われた故郷を取り返すという妄執に囚われていた。一方、岩塩鉱で生き残った男を追うホッサルは……!?
感想・レビュー・書評
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点と点が繋がり始めた。
各国、民族の思惑が交錯する様が生々しい。彼らは自らの行いを信じて、己の民族を守る為に策を講じる。
ヴァンとユナを含めた登場人物たちが、運命であるかのように同じ渦に巻き込まれてゆく。
混沌とした人間の感情が、混ぜ物になり複雑な物語へと読者を導く。
誰もが愛する者を守るために戦っていた。
ツオル帝国に支配された国々に、根深く残る民族主義。それぞれの民族が抱えるツオルへの恨み、自由を求める思想は、何もおかしなものは無く、人としてごく自然な活動である。
それとは裏腹に、各民族はツオルの政治の下に生き長らえてきた事実がある。もう後戻りできないほどに帝国に依存していることが窺える。
ここから飛鹿の活躍に期待。
以下、ネタバレあり。
火馬の民は、民族の解放を願い、勝てない戦に散った。
残したものは、ヴァンという独角の男に獣の知覚を植え付けたことかもしれない。
体を離脱して、獣を操りツオル人を襲う能力は今後どう使われるのか。果たして能力は、その身を滅ぼすことはないのだろうか。
ヴァン、ユナ、サエ、ホッサル、マコウカン。
愛する者を守るため。彼らは国や民族の垣根を超えて、交わろうとしている。
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第3巻で、事態のあらましが判明する。
キンマの犬(黒狼と山犬の半仔)を操りアカファ辺境に住む東乎瑠人を襲わせているのは、東乎瑠人に恨みを持つ火馬の民の過激派と判明する。火馬の民の過激派を殲滅し、彼らの策略を未然に防げるのか、そして黒狼熱の治療薬の開発に成功することはできるのか。物語の焦点はこの2点に絞られていく。
さて、本物語に登場する勢力はおおざっぱに5つ。すなわち征服民である東乎瑠人(王幡侯ら支配階層、そして移民政策により東乎瑠王国辺境からアカファに移り住んだ人々)、被征服民であるアカファ人(旧アカファ王国の支配階級及び庶民)、アカファの地をかつて(アカファ王に譲るまで)支配していたオタワルの貴人達、各部族単位でアカファ辺境に暮らす辺境の民(居住地を追われた火馬の民、その従僕的な沼地の民、隣国ムコニア王国兵の侵入に悩まされている山の民等)。
これらの勢力の利害が錯綜しているので、ちょっと複雑だが、物語に厚みというかリアリティーが出ていると思う。
本作でなかなかいいなと思うのは、これらの勢力それぞれに立場があり、それなりの理があり、思いがある点。邪悪な者が登場しないので安心して読める。
例えば、キンマの犬(黒狼と山犬の半仔)を使って東乎瑠人に対してテロを起こそうとしている火馬の民の過激派には、同情すべき過去(居住地を追われ生活や文化を奪われてしまったこと)があるし、東乎瑠人の征服政策・領地経営にさえも、領地を無難に治め、経済を活性化させ、隣国の侵攻から領地を守るという点で功績がある。旧アカファの支配層にも、日和見なところはあっても征服者(東乎瑠人支配階級)とアカファ人の間を取り持ち社会の安定に寄与しようとしているし、オタワルの貴人達は医術を始めとする科学技術において独自の地位を築き、尊敬を集めている。
最終巻でどのような結末を迎えるのかだろうか。 -
【何者かに攫われたユナを追い、〈火馬の民〉の集落へ辿り着いたヴァン。彼らは帝国・東乎瑠の侵攻によって故郷を追われ、強い哀しみと怒りを抱えていた。族長のオーファンから岩塩鉱を襲った犬の秘密と、自身の身体に起こった異変の真相を明かされ、戸惑うヴァンだが…!?
一方、黒狼熱の治療法をもとめ、医術師ホッサルは一人の男の行方を追っていた。病に罹る者と罹らない者、その違いは本当に神の意思なのか…】
ついに全ての真相が分かり、二人の男が邂逅した3巻!!
様々な人を巻き込んだ壮大で悲しき復讐の物語はクライマックスへ…
-
アカファ王やアカファの複数の氏族の想いが明かされて行く。
ヴァンは、ずいぶんと複雑な事情の渦に知らぬ間に巻き込まれているようだということが、この巻で見えてきた。
マコウカンの出身氏族と近隣氏族の歴史や暮らしが、どう変化して来たのかも明かされる。
そして新薬開発に大きなヒントをホッサルが得る。
非常に展開が早いが、物語の構成がしっかりしていて、細部まで手抜かりなく描かれているので、映画を観ているように映像が浮かびながら一気に読むことが出来た。面白い。
そしてこの作者はやっぱり凄いと痛感する。 -
うおわ。
西加奈子の解説にもミクロとマクロが使われていて、ちょっと恥ずかしい。
さて、後半戦。
黒狼と山犬を掛けて生まれた「キンマの犬」を使役していたのは、火馬の民であった。
彼らは、暖かな平地でしか育たない火馬が、寒冷地に追いやられることによって痩せ衰えてゆくことに憤りを覚える。
もう一度、東乎瑠から自分たちの故郷を取り返すために犬に襲わせる。
一方で、アカファ王国はもはや東乎瑠なくしては成り立たないほどに「変化」していた。
また、黒狼病はアカファ人であっても無害ではない。結局、火馬の民を一時は野放しにしておきながら、ここに来て手の平を返すことになる。
「長い戦を経て……多くの血を流して、ようやく得た均衡ですから」
複雑に絡み合い、変質し終えた状態を、元どおりに分離させることは、容易ではない。
けれど、人間はそれを心で受け容れられない。
まるで、病を治すために神意に背くことを拒絶するかのように。
それを、古い考えだと一蹴することが出来るだろうか。
例えば、理解を得られたとしても、事実が救いにはならないのだろう。 -
展開がハッキリしていてわかり易い。
ただ簡単に書きすぎるのでもなく、読み手の想像力を働かせるように書いているとこが印象に残った。
結果として、主人公や登場人物の心情に沿った形で読み進めることができた。
著者プロフィール
上橋菜穂子の作品






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