オリンピックがやってきた 1964年北国の家族の物語

  • KADOKAWA
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  • 本 ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041055724

作品紹介・あらすじ

1964──昭和39年。東京五輪開催を控え日本中が沸く頃、青森のある町にて。田舎では戦争の影がかすかに残る。でも七人家族の前田家は今日も元気。小学生の民子の日常はきらきらしている。待望のカラーテレビに興奮し、学校では「ひょっこりひょうたん島」の話に夢中。まだすべての人が豊かでなく、悲しいこともたくさんある。でも皆が東京五輪を待ち望んでいたあの日、心には希望があった。

感想・レビュー・書評

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  • 東京オリンピックが開催される1964年の青森の
    とある町の家族の物語だった。
    太平洋戦争が終わって、20年近くたつのに家庭環境や社会の理不尽さや残酷さが あまりにも悪くて驚いた。

    売春を生業としていた母親が亡くなり、子供が親戚のところに引き取られたが、親戚の子供と やってきた子供との扱いの差がひどく、その上 やってきた子供が親戚の言うことを聞かず生活費を詐欺師にあげてしまったせいで、その子を遊郭に出させる。
    遊郭のスタッフに連れて行かれる時に、脱走したら、そのスタッフが根に持って無職になってでも脱走者の自宅を特定して、高価なものを万引きするというエピソードが載っていて、本当に怖かった。

  • オリンピックが行われる年の青森が舞台。
    前田家を中心に、その町に住む人達の様々な日常や思いが描かれている。
    青森の方言での会話がとても新鮮。

  • 1964年、東京オリンピックの年の、青森市が舞台。
    そろそろ戦後20年ではあるけれど、人々はまだ痛みを引きずっている。
    しかし、確実に何かが変わっていく、大きな節目の時期だった。

    大空襲で焼けた跡にできた町。
    焼け残った西洋館に住む「奥さま」(ロシア人、と言われている)が、町で一番の古株である。
    奥様に拾われて以来16年、お手伝いをしながら一緒に暮らすおトキ・27歳。
    「お屋敷の魔女」とあだ名される奥さまのタロット占いはよく当り、たびたび相談者が訪れる。

    もう一軒の舞台は「前田家」
    主の昭和(あきかず)は警察官で、子供は民子と公平の兄弟。
    妻の久仁子と、気の強い老母・ツナとのバトルがすごい。
    そこに、独身で気持も自由なおじさん、昭和の弟の昭次(しょうじ)が同居しているのが、なんだか朝ドラっぽい。

    第一話 魔女たちの仕事
    前田ツナ、孫の民子がおなかが痛いと言っていると民子を連れて奥さまを訪ねる。
    前田家では、民子の病気をめぐって揉め、また、嫁が戦死した息子の形見を捨てたと、嫁姑バトル。
    ある日、坊主頭にスーツの折り目正しい青年が奥さまをおとなう。

    第二話 嘆き節
    長谷川医院の待合室は、元気いっぱいな老人たちのサロン。
    年老いた医師の方が先に召されそうな様子である。
    理想の家庭が「家付き、カー付き、ババ抜き」と流行語になり、急速に核家族化が進む。
    戦後の物のない時代に苦労して育てたのに、という繰り言は、胸の中にしまわなければならない。

    第三話 ともだち
    民子は、「不良」と呼ばれている同級生が駄菓子屋で万引きをするのを目撃。
    そんな折、クラスの、レベルの高い女子たちの会にスカウトされて有頂天になる。

    第四話 花瓶とシュークリーム
    おトキは、ちょっとしたことで奥さまといさかいをして、気持ちを落ち着けるために買い物に出た。
    奥さまに救われるまでの、壮絶な過去を回想する。

    第五話 ホの字
    前田昭次のほのかな恋心。
    女性がずいぶん自由で、はっきりものを言うようになった時代。

    第六話 あした
    あの日の悪夢再び?
    奥さまとおトキの災難。

    エピローグ
    昭次叔父さんが買ったカラーテレビで、東京オリンピックの開会式を見る、前田家。
    一生で何度もない、幸せな瞬間なのだと、民子は実感する。

    ―――――――――――――
    奥さまの正体は、まだ明かされていません。
    この先、「万博がやってきた」とか続編があるのでは…?

  • 奥さまとおトキさんがやっぱり可愛かったなぁ

  • おトキと奥様
    民子とツナとナヨ
    ノスタルジックな物語
    ミドリちゃんと昭次は結婚しなかったのかぁ

  • 人に歴史あり

  • 東京オリンピックの年が舞台だが、東京から遠く離れた東北に住む市井の人々の物語。

  • 実際にオリンピックがくるのは最後で、楽しみにしているころの話。
    子供から老人まで、青森のとある町内で繰り広げられる、何気ない日常があたたか。
    青森弁も味わい深い。
    中でも、奥様とおトキのコンビがいい。
    気心も知れて、時にはケンカもするけれど、お互いを大切に思う。
    素敵な関係。

  • オリンピックのお話か??と見せかけて、
    全然そんなことはなく、オリンピックを迎える時代の人々のお話でした。

  • 昭和39年(1964年)の、青森県に住む平凡な前田一家の日常と、戦後の歴史を感じさせる「奥さま」とおトキの物語。
    作者はこの年生まれなんですね。
    カラーテレビに駄菓子屋、花嫁修行、押し売り、養老院、という言葉に昭和の匂いがしてきます。
    おトキさんの話には胸が締め付けられましたが、こういう人も身近にいたのかもしれません。
    私は前田家の小学生、民子と、太田るみ子を描いた「ともだち」が面白かった。今なら陰湿なイジメに発展するであろうシチュエーションが、なぜそうならなかったのか。良し悪しは別にして、るみ子のたくましい生き方。ここに昭和の秘密があるような気がして。

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著者プロフィール

1964年青森県生まれ。2006年『闇鏡』で第18回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞してデビュー。『幻想郵便局』がベストセラーとなり、以降、「幻想」シリーズで人気を博す。他の著書に『ある晴れた日に、墓じまい』『うさぎ通り丸亀不動産 あの部屋、ワケアリ物件でした!』『オリンピックがやってきた 猫とカラーテレビと卵焼き』「おもてなし時空」シリーズ、「仕掛け絵本の少女」シリーズなどがある。

「2023年 『キッチン・テルちゃん なまけもの繁盛記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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