- Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041056042
作品紹介・あらすじ
美貌とカリスマを備えた友人・空知の行方を追い、東南アジアの混沌に飛び込んだ晃。だが待ち受けていたのは、空知とその姉妹の凄絶な過去だった……。数多の賞を受賞した著者が到達した「現代の黙示録」!
感想・レビュー・書評
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読み終えて、この小説のイメージを一言でいうと「渇いた死」。
非正規雇用でうだつの上がらない男・八目晃は、消息を絶った高校時代の友人・空知を探しにカンボジアへ旅立つー。
不気味なまでに感情を排した、中立的な文章(に、僕は感じた)が続き、途中から「これはどこにもたどり着かないし、救われないんだろうな」という予感を持ちながら、読み続けた。
結末はやっぱりというか…意外というか…。
ひとまずの場所にたどり着くけど、解釈は人それぞれ。
深読みすると味わいが出てきます。
そこらへんは、さすがベテラン作家という感じ。 -
マジか!の一冊。
最初から最後まで面白さはハンパない。
高校時代の親友探しのためカンボジアへ渡った主人公 晃。
知人もいない異国の地で不安感しかない時に言葉が通じる人達と出会ったら否応なく心をオープンにしちゃうよね。
次第に強くなっていく晃。次第に掴めていく親友、空知達の複雑な生い立ちと消息。
晃の空知を想う心には時に胸アツ、時に涙で心うたれた。
人を疑わなければいけないつらさに哀しみが、数々のピンチにはこちらまで恐怖に襲われた。
そしてこの結末。マジか…!この一瞬の、ある意味サッパリ、バッサリ感がすごい。 -
主人公の八目晃は20代半ば過ぎ、IT企業の子会社で契約社員をしているが、仕事にやる気もなく、周囲からも嫌われている。高校時代の友人であり、自宅にいつもお邪魔していた野々宮空知の父親が亡くなったという知らせを受けて通夜に行く。そこで知り合った安井から空知の姉を捜して欲しいという依頼、三輪という男から空知の妹を捜して欲しいという依頼を受ける。姉と妹を探すためには、空知を捜すべき、との二人からの依頼もあり、八目は空知捜しのために、カンボジアに出かけ、カンボジアで色々な目にあいながら、空知捜しを続ける。
前半は、八目のやる気のなさに合わせるように物語のテンポもゆるやかで、やや退屈しながら読んだ。カンボジアで色々な苦労に遭ううちに、八目も徐々に空知捜しにのめり込むこととなり、それと共に物語のテンポもあがり、最後の方は一気に読んだ。ネタバレになるので書けないが、ラストはかなり衝撃的。
カンボジアには、アンコールワットの遺跡を見に行ったことがある。シェムリアップに2泊した。カンボジアは不幸な歴史を持った国である。ポル・ポト率いるクメール・ルージュによる恐怖政治のあとは、内戦が続いた。ポル・ポト時代には、総人口の20%以上の人たちが命を落としたと言われ、また、内戦時代には国の至る場所に地雷が埋められ、それにより命を落とす、あるいは、深い傷を負う人が後を絶たなかった。アンコールワットの遺跡を見学した際も、地雷で足を亡くした人たちが物乞いをしている姿を数多く見かけた。
桐野夏生が、この物語の舞台にカンボジアを選んだのは、もちろん、この国の抱えるそのような不幸な歴史を物語の背景として使うためであり、その歴史がなければ、この物語は成立していないし、この物語が醸し出す、理不尽で怖ろしい雰囲気は生まれていない。
作家のイマジネーションがどこから生まれて、どのように物語に結ばれていくのかは分からないが、この物語は、桐野夏生がカンボジアの歴史からインスピレーションを得たのではないかと想像する。 -
やっぱり桐野さんって、凄い!!
いつもいつも読み終えた時に頭に浮かぶのは『容赦ない』という言葉。今回も第六章のあまりの衝撃に、ラスト20ページは、すぐに丸々読み返した。怖いんだけど、2度目にゆっくり読んだら、なんともいえない哀しみを感じ…。こういう結末をもってくる桐野さんに圧倒されたのでした。
主人公の晃の自堕落で無防備で怠慢な、そして行き当たりばったりな性格といったら、もう…前半は呆れながら「しょーもない男だなあ」と思いつつ読んでいた。
いきなり外国に(しかもカンボジア)手ぶらで行き、あまりにも無知で不用心な晃が、危なっかしいことったらもう…自分だったら、どんなに若くてもこんなこと出来ない。怖すぎるもん。知らない土地で、信用できる人を見つけるのがいかに困難なことか。しかし、世の中にはこんなふうに生きていってしまう人がいっぱいいるんだろうなあ〜とも思う。ああ〜怖い。
ブクログ登録出来ている、私が読んだ桐野夏生さん、これで34作品でした。(昔ので忘れてるのがあるかもしれないけど)
桐野さんって、本当に文がシンプルだし的確で無駄がない。なのでいつもスイスイ読んじゃうけど、なんていうのかな、心の芯の内側をえぐられるような気持ちになるの。
読み終えると、インドラネットの意味がじわじわ染みてきます。
印象に残ったセリフ、ちょっとだけ(中略あり)
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「だけど、私は戦争で変わってしまった人はたくさん見たよ。人間は追い詰められたら変わる」
「一番怖いのは、人間の悪意だ。悪意は執拗で、どんどん広がって、大きくなる。そんな世界が俺を待っていることなど、想像もしなかった」
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インタビューで「ずっと戦ってきた」と語っていた桐野さん。まだまだその戦いを、読み続けていきたい、やっぱり桐野夏生さんが大好きだ!と、強く感じたのでした。 -
平凡な顔、運動神経は鈍く、勉強も得意ではない――何の取り柄もないことに強いコンプレックスを抱いて生きてきた八目晃は、非正規雇用で給与も安く、ゲームしか夢中になれない無為な生活を送っていた。唯一の誇りは、高校の同級生で、カリスマ性を持つ野々宮空知と、美貌の姉妹と親しく付き合ったこと。だがその空知が、カンボジアで消息を絶ったという。空知の行方を追い、東南アジアの混沌の中に飛び込んだ晃。そこで待っていたのは、美貌の三きょうだいの凄絶な過去だった……
桐野さんは好きな作家でシンパシーを感じるのだけれど、本作のダークなラストに打ちのめされた。カンボジアにポルポト政権が暗い歴史を残したのはある程度知っていたつもりだったが、ここまで悲惨だったとは。最初は、晃と同様にカンボジア甘ちゃん旅行記を読んでいる軽い気持ちだった。日本同様に次々と登場する不可解な人物達。まるで晃は張り巡らされた網にかかった蜘蛛のようだった。空知との再会を信じて疑わずに、晃と一緒に東南アジア独特のぬるい風を肌で感じながら、旅行した心持にさせてもらえたのは特筆しておきたい。 -
おもしろかったけど、『日没』と似ている…?
共感したり新しい世界を知ったりというより、
ストーリーを楽しむだけのお話なのかも。。
主人公の晃が、なんとなく学がなさそうなのに
語彙力があったり英語でちゃんとコミュニケーションをとってるのが、人物像にはまらなくて、最後までそこを埋めることはできなかった。 -
さすが桐野夏生って感じでグイグイ読めた。最後がいまいちだったけど、面白かった。
カンボジアの振り込め詐欺集団が出てきて、サガミはルフィーなのかっとちょっと思ってしまった。
確かに…(笑)
確かに…(笑)
「プリンセス編」も映画館行きましたが、今回の「英雄編」はさらに面白かった。
ヒゲダン...
「プリンセス編」も映画館行きましたが、今回の「英雄編」はさらに面白かった。
ヒゲダンの今回の曲も素晴らしいし最高でした。
コロナでなかなか劇場に行くのをオススメしづらい時期ですけどね…
読書気分の波、確かにありますね。
今は正直乗れそうにありません。
こんなときは、ブクログで立てる読書目標、ただただウザいだけです笑
おおー!英雄編、凄いんですね!
安定の髭男なんですね!
早くアマプラに追加されないかなぁ…笑
そうなんですよ!波に乗れない時は...
おおー!英雄編、凄いんですね!
安定の髭男なんですね!
早くアマプラに追加されないかなぁ…笑
そうなんですよ!波に乗れない時はちょっときついですよね…
わたしは映画で稼ぎます笑
って、稼ぐ必要もないと思いますが…