- 本 ・本 (292ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041056639
作品紹介・あらすじ
山梨の高校に通う女の子、小熊。両親も友達も趣味も無い、何も無い日々を過ごす彼女だが、中古のスーパーカブを買ったことでクラスメイトの礼子に話しかけられて――「わたしもバイクで通学してるんだ。見る?」
感想・レビュー・書評
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バイクに特段興味・関心が無かった私でも、ちょっと本気で乗ってみたいな、と思わせられた作品。
いや、もう少し子どもに手が掛からなくなったら真剣に検討するかもしれない。
またこの、山梨県北杜市内に実在する日野春という土地をちょっと調べてみましたが、まあ〜いいところ。甲府からさらに北へ25㎞程の場所。
その町に暮らす主人公・小熊ちゃん。
彼女の容姿については「美少女と言うには小さく野暮ったい目」「田舎の女学生という印象しか抱かれない」(p4)と書かれていますが、博先生の挿画を見る限りこれは美少女かと。
ただ境遇は中々にハードで、父親は「小熊が生まれて間もなく事故で死に」、母親は「失踪宣告の紙切れを残して姿を消した」(いずれもp4)とあり、祖父母もおらず天涯孤独の身。自治体による奨学金の支援により倹しく暮らしている。
友達も部活も趣味もなく、若くして水を打ったような日々を送っている。
そんな彼女が出会った一万円のカブ。この出会いにより、彼女の日々が少しずつ変化していく。
「自分がバイクに乗っているということをちょっと自慢するような気持ち」(p60)が芽生えたり、カブに装着する鉄の箱とカゴを手に入れた時は「体がとても軽く、自由」(p75)を感じたり、「同じカブ乗りの言うことは一言も漏らさず、真摯に自分の胸に取り入れ」(p102)てみたり、色々なものを得ていく過程がとても微笑ましい。
夏休み期間でバイク便のバイトに勤しむうちに「姿見」(p122)や「ちょっといい夕飯」(p159)や「普通自動二輪の免許」(p204)などへの物欲を持ち始める様子は、女子高生が洋服や化粧品なんかを欲しがるのと何ら変わりない気持ちではないかと。
思考回路は随分と現実的ですが。
p214の黄色ナンバープレートを片手に満面の笑顔の小熊ちゃんが素敵。
最終的には「カブに乗っている時の格好で胸を張って教師や同級生の前に現れたい。」(p229)という感情が生まれるまでに変化した小熊ちゃん。
修学旅行の出発日に一瞬熱を出して、後からカブで追いかけて鎌倉で合流する…という段取りは少々強引な気がしなくもないが、メリハリがあって良いのではないかな。
決して派手な作品ではないし、小熊ちゃんのささやかな日々を眺めるだけと言ってしまえばそれはその通りだけど、続きが読みたいなと思えた小説。
3刷
2022.5.8詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
素晴らしい! 特に主人公の名前が「小熊」であること。
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アニメを見て原作が気になって購入。
アニメでは描かれていない、小熊たちキャラクターの心の内を読むことができて、「あのシーンはこういう考えでの行動だったんだ!」と2度楽しめてとても楽しかったです。
小熊の何とも複雑な難しい性格は、友達になるには少し怖い印象も受けますが、ある意味ちょっと頑固というか生真面目さもあって良いなあと思います。
礼子が富士山に挑む話は、何度も失敗しながらもなんとか気持ちを奮い立たせる礼子に勇気を貰いました。
スーパーカブという、ありふれたバイクによって変わっていく小熊と礼子の物語がこれからも楽しみです!
早く2巻読みたいです〜。 -
面白かった!読み始めてしばらくは独特な淡々とした文体に違和感を感じたけど、とにかく話の中身が面白い!
どうみても何かが欠落しているとしか思えない…主人公の小熊ちゃん(笑)こちらもやっぱり感覚がずれてる礼子ちゃん。女子高生らしくないタフな女の子がとても素敵です。
今のバイクを買い換えるならやっぱりスーパーカブだなぁ…
10月には続編が発売されるみたいなので楽しみ! -
ホンダ・スーパーカブ総生産台数100000000台記念作。
とか帯に書いてあり、「マジかよ」(どういうこと?ホンダコラボなの?)と思って手に取ったのだけど、予想外に面白かった!
地味な田舎の高校生の女の子が、中古のスーパーカブを手に入れたよ、という日常を淡々と描いているのだけどこれはなかなか良い。最後の修学旅行追いかける話すき。うーん、これはカブ乗りたくなっちゃうな。免許持ってないけど。
あとイラストもやーらかそうで無駄にえろ…げほごほめっちゃかわいいのだ。ううん、これはアニメ化とかしたらうっかり人気出ちゃうかもだな。 -
【感想】
・「スーパーカブ教」の経典やね、これは。
・これはこれで完結している。続編もあるらしいが。
・アニメを先に観てから読んだ。
【内容】
・たんたんとした記述で、スーパーカブを入手したことによって生活が変わっていくちょっと孤独だった女子高生を描く。
▼スーパーカブについての簡単なメモ
【アパート】小熊は日野春駅近くの女性専用二階建てアパートで暮らす。八戸ありやはり一人暮らしの女子高生が一人と、工場勤めの女性たち。
【雨】単車の天敵。レインウェアは必需品。
【アルバイト】小熊の初めての仕事は学校の書類を提携高校に届けること。甲府の高校で往復四十キロを一日二往復。一往復二千円なので一日四千円、月に二十日間としたら八万円、あまりいい稼ぎにはならないが奨学金頼りの小熊にとっては悪くない。このために費やした経費もあるけど。
【アルバイト・礼子の場合】富士山の荷物運び用キャタピラー付きの運搬車への荷をの上げ下ろし。真の目的は郵政カブで富士頂上に達すること。そのために「走路確認」という仕事まででっち上げてもらった。
【教頭先生】使っていない前かごをくれた。
【ゴーグル】ホームセンターで売っている保守工事用ゴーグル。単車乗りにぴったり。千百円のコレのおかげで速度が出せるようになり、カブとならどこまでも行けるような気がし、他の車や礼子と対等になれた。
【小熊/こぐま】主人公の女子高生。父は幼い頃亡くなり母は失踪し奨学金で高校に通う。田舎娘っぽいルックス。起伏の多い土地柄、自転車通学でひーこら言ってたがある日スーパーカブを手に入れて人生が変わった。猫舌。
【スーパーカブ】小熊にとっては初めての財産と言えるもの。言わずと知れたロングセラーの原付。個人的にももし単車を買うならスーパーカブを選ぶだろうと思っている。丈夫そうなのと、燃費がいいらしいのと、成熟商品なのでエラーが少ないだろうと思うので。それにぼく的にはかわいらしいと感じる。《どうやらこの原付というものは、乗せていってくれる物ではなく一緒に走るものらしい。》一巻p.20。
【速度】《小熊にはカブのスピードが一番合っている。》第一巻p.262
【二段階右折】原付に義務づけられている右折方法らしい。免許持ってないのでよくわからないが言葉面からするとたぶん自転車と同じ右折方法かな。小熊はそれがめんどくさいこともあって普通自動二輪の免許を取ってカブを改造した。
【荷物入れ】後ろの荷台に固定する大きな箱。ヘルメットも入れられるしカブがとっても便利になった。信用金庫の課長さんが廃車にする外回り用カブにつけていたものをくれた。
【ハンターカブ】CT。オフロードを念頭に置いたカブらしい。海外での需要はいまだ高いが生産中止になったらしい。富士山への挑戦で郵政カブをかなり傷めたこともあり、限界も感じたらしい礼子はハンターカブに食指。次の巻ではこれに乗るんやろう。
【富士山】礼子にとっては自分の周りにある壁の象徴。乗り越えてみたい。わたしのスーパーカブなら登れるわと小熊は思った。
【舞台】山梨県北杜市。ぼくにとって馴染みの甲斐駒ヶ岳なんかも後に出てくるもよう。この地名を見るといつも北杜夫を思い出してしまう。『ゆるキャン△』の舞台とはどれくらい離れてるんやろう?
【ブロック修正】カブの丈夫さや排気量を加味できる改造。そう高額ではないらしいが効果もそれなり。ただ、自動二輪として登録できるようになり黄色のナンバープレートをもらえるようだ。
【ヘルメット】小熊のはアライ・クラシック。カブを買った店でキャンペーン期間中だということでもらうことができた。
【郵政カブ】郵便配達員が乗っているカブ。礼子が乗っている。小熊が興味を引かれたのは荷台に積んである大きな箱だった。
【ラジオ】乗ってる最中に聴いてはいけないが遠出などのお供に。
【礼子/れいこ】クラスメートのクール系美少女。長身で黒髪ロング。郵政カブ(ホンダMD90)に乗っているカブマニア。実はかなりアツい。後にハンターカブに変える。父は市議、母は仕出し弁当屋を経営している。礼子は現在両親の別荘で一人暮らし。 -
スーパーカブという題名につられて普段はあまり手に取らないライトノベルを読んでみました。
20歳を過ぎてからバイクを乗り始めた私は高校のときに乗ってたら今とは違う景色が見れたのかな〜と思いました。 -
両親も友達も趣味もない地方の女子高生が、それに悲観するでもなく暮らしている。ところがある日、中古のスーパーカブを手に入れ、行動範囲とともに生きる世界が広がりだす。それでも決して背伸びはせず、無駄に目立たず自分らしさを失わず。先日読んだ『ひと』じゃないけど、こういう恵まれない境遇にあって地味ぃに信念保って生きてく若者が支持されるって時代になったんだ。無鉄砲で破天荒ながら夢をかなえんと挑戦する、そんな昭和の主人公は、平成の経済失速を経て、令和では現実味がなさ過ぎか。俺も今やカブにはまってるもんなぁ。
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スーパーカブを題材にしてるということでおもしろそうだったので読みました。
田舎の女子高生がカブと一緒に生活する話。劇的に何かが変わるわけじゃないけれど、淡々とした文体と合っていておもしろかったです。ほぼセリフがなく子熊の脳内で完結しているところもリアルな感じがしました。カブは乗ったことがないので乗りたくなりました。とくに最後の追いかけるのは楽しそうでいいなぁ。
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