伊豆の踊子 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041057025

作品紹介・あらすじ

孤独の心を抱いて伊豆の旅に出た一高生は、旅芸人の十四歳の踊り子にいつしか烈しい思慕を寄せる。青春の慕情と感傷が融け合って高い芳香を放つ、著者初期の代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 割と初期の作品集。
    というのもこの角川文庫、1951年の刊行なのだ(が、年譜は死まで更新されている……)。
    川端自身による「『伊豆の踊子』について」が嬉しい。
    今回は「驢馬に乗る妻」「二十歳」「むすめごころ」「父母」を読んだ。

    ■「伊豆の踊子」
    既読。

    ■「青い海黒い海」
    既読。

    ■「驢馬に乗る妻」1925以前
    彼。
    妻の綾子。
    その姉の豊子。
    綾子は知らないが、実は彼は先に豊子と通じ、豊子の自己犠牲で妹に譲った、という過去がある。
    やはり女をふたり並べて、どちらからも愛されている(年上から年下へ移行)というドリーム小説。

    ■「禽獣」
    既読。

    ■「慰霊歌」1932
    既読。とはいえ記憶が薄いので、今後ちくま文庫「文豪怪談傑作選 川端康成集 片腕」で読み直す予定で今回は保留。

    ■「二十歳」1933
    祖父。父の兵禄。が結婚したのは、母お霜。夫婦の長男の銀作。が主人公。
    母の父は雲の五六。父の後妻の梅子。その妹の竹子。
    銀作は浅草の掏摸稼業へ。
    登場人物全員が不良。
    ……文体も内容も川端っぽくない(織田作之助っぽい?)ので代作かしらんと邪推してしまうが、戦後復刊期にわざわざ総題にしているくらいだしな、と思い直す。

    ■「むすめごころ」1936★
    (私の遠縁の娘、静子が時田武と結婚した。この手紙は静子の友人である咲子が書いたもので、預かった。という前書き。)
    私は武さんと、結婚するかもしれない関係だったけれど、静子さんが好きだから、ふたりを引き合わせた。
    武さんから言い寄られても、断った。
    あなたたちが結婚して、幸せよ。
    ……うまく整理できないが、いい読後感。素晴らしき百合。
    でも不吉で(だから語り手が、この手紙は静子のもとにないほうがいいと判断した)、50年後にはこじれにこじれて、例えば吉田知子や大濱普美子の怪奇小説の題材になりそうな。

    ■「父母」1936★
    ・手紙の遣り取り。
    ・軽井沢のテニス。スカート。ラケット。コートは野外舞踏場。お嬢さん。
    ・西洋人の避暑地。
    ・あなたの慶子さん18歳。あなたの棄てた子供。
    ・ゆき子さん。
    ・僕は文学者。
    ・慶子さんはいまはいく子さんと呼ばれている。
    ・青春が呼び戻される。
    ・小説家の僕の虚構。
    ……誰が誰に対してどんな手紙を書いているのか、把握しきれず。
    でも堀辰雄っぽい雰囲気や、後半に現れるメタ視点とか、好きになれそうだな。

    ◆解説 進藤純孝

    ◆作品解説 古谷綱武

    ◆『伊豆の踊子』について 川端康成★

  • 前々から読みたいと思っていたのだが、大学受験で問われそうだから読んでみた。一回読み終わったら、もう一度読み返すと違った視点が見えてくる。差別問題や主人公の踊り子への思いだったり、短いながら納得させてしまう川端康成は上手い。美しい文章で自然と情景が浮かび上がってくる。澄み切った空気の良い匂いなんだろうなあ。

  • 女性の所作の美しさと、植物的儚さがある。

    『青い海黒い海』は名作。『伊豆の踊子』よりも好き。むしろ個人的には川端文学の魅力は慕情だとか旅情、抒情ではなく、人間の健康的なエロスや艶めかしさをさらりと述べた文章であると思うのであるから、『父母』の慶子さんの描写とか、とても良いのである。

    なに言ってるんだと思われるだろうナ。

    ファッション的に、まだ肌を隠していた時代の小説というのは、膜一枚分の奥ゆかしいエロスがあると、わたしは思うワケです。

  • 昔の小説、という感想しかない。
    読んでいるとき、年配の男性と話す時と似た感覚になった。ポジティブな感覚ではないかもしれない。
    当時を感じられるという意味では勉強になるかもしれない

  • 表題作はp34とだいぶ短かった。
    男主人公に対し、踊子が脱衣所で裸ではしゃいだり、若い女3人が一緒に風呂に入ろう、女は汚いから先に川の水をどうぞ等言ってたり時代だろうけど微妙なところ。しかし踊子は可愛いし、読了後は清々しかった。

  • 『伊豆の踊子』
     旅先で出会った踊り子に心惹かれ、ふれあいの中で心が洗われていくお話。主人公が伊豆を訪れた理由について、「二十歳の私は自分の性質が孤児根性で歪んでいると厳しい反省を重ね、その息苦しい憂鬱に堪え切れないで伊豆の旅に出て来ているのだった。」と述べている。川端自身の出生が作品に大いに影響していることは、言うまでもないだろう。
     有名な作品だけど、こんなに短かったとは。サックリ読めた。

    『青い海黒い海』
     なんと奔放な作品か。全てが漠然としたイメージで成り立っている。それぞれが何の比喩なのかまったく理解できないけれど、作者の死生観、そして触れたことのない母を求めているんだろうなあと。

    『驢馬に乗る妻』
     元恋人の妹と結婚した男。その結婚生活は、元恋人の犠牲の上に成り立っているのだろうか。この男情緒大丈夫か?と思ってしまう。最後の妻を驢馬に乗せるシーンが、何を表現しているのかわからない。川端の作品は肝心なところを書ききらない。

    『禽獣』
    「夫婦となり、親子兄弟となれば、つまらん相手でも、そうたやすく絆は断ち難く、あきらめて共に暮らさねばならない。おまけに人それぞれの我というやつを持っている。
     それよりも、動物の生命や生態をおもちゃにして、一つの理想の鋳型を目標と定め、人工的に、畸形的に育てている方が、悲しい純潔であり、神のような爽かさがあると思うのだ。良種へ良種へと狂奔する、動物虐待的な愛護者たちを、彼のこの天地の、また人間の悲劇的な象徴として、霊障を浴びせながら許している。」
     悲しいなあ。

    『慰霊歌』
     鈴子を霊媒に、呼び寄せた花子の美しい霊。これも母体への渇望が現れた作品なのかな。うーん、解釈が難しい。

    『二十歳』
     これは唯一わかりやすい作品だった。継母の意地悪、実母の死に接し、坂道を転がるように堕ちてゆく人生。
    「彼のなかの女性的なものが、彼を女になれなれしく、女をさげすませつつ、しかも、この世に女がいる限り、自分はいつか立派な人間になれるというような、安らかな夢を、どこかに持たせているのだった。」
     ねじれてるなあ。しかしあんな最後ったらないよ。

    『むすめごころ』
     咲子健気かよ涙。大好きな人同士が結婚したら嬉しい、けどどこかで嫉妬を感じてしまう。心の機微がなんともすばらしく描かれている。

    『父母』
     旧友に宛てた手紙。内容は、「お前が生き別れた娘と軽井沢でテニスに興じているが、特別な関係になってしまったわ!」これは実父にとっては堪らない話だが、真偽のほどは・・・?

     全体的に解釈が難しいけれど、各作品に残る疑問が、作品に深みを与えていることは間違いない。しかし男性作家とは思えないほど少女の心をわかっていらっしゃる。

  • きちんと読んだ思い出がなかったので読んでみた。

    『伊豆の踊子』は、旅芸人の14歳の踊り子がとても可愛い。
    可愛くて純粋なだけに、「旅芸人」というものの行く末が思われて悲しい。
    高校生の主人公の踊り子への気持ちも初々しくて、切ない。


    他7編。
    『驢馬に乗る妻』の主人公の気持ちがわからなかった。
    妻とその姉が可哀想。結局自分しか愛せないんでは無かろうか。

    『むすめごころ』がとても切ない。
    友達と大好きな友達をくっつけようとするいじましさ。
    幸福ってなんだろう。

  • 川端康成の短編集。
    収録作品→伊豆の踊子/青い海黒い海/驢馬に乗る妻/禽獣/慰霊歌/二十歳/むすめごころ/父母/
    夏休みと言えば、伊豆の踊子で読書感想文を書いた記憶がある。装丁が可愛くて購入。十何年ぶりの川端康成。

    女性が美しい。
    純粋な可愛さに、妖艶な美しさがある。

    一番好きなのは「むすめごころ」。吸い込まれるように読んだ。所作が美しい女性は女から見ても惚れてしまう。恋心にも似た愛情を持つ気持ちは分かるなぁ。
    「驢馬に乗る妻」もそうだけど、男を紹介しておいて忘れられないでいるパターン。恋愛って好き同士が結ばれるとは限らない。失ってから気づく愛もある。

    一行感想。
    普段、文学読まない人の感想なので、閲覧注意。
    ☆伊豆の踊子
    ロリコンストーカー。だがしかし踊子は可愛い。淡い恋。
    ☆青い海黒い海
    引きずってる。よくわかんないとこもあるけど、世界観が好き。
    ☆驢馬に乗る妻
    とんでもないツンデレ男。なんでモテるの。
    ☆禽獣
    動物の生と死が生々しい。寂しいと死んでしまうの。
    ☆慰霊歌
    ダメだと言われると知りたくなる。鶴の恩返しや禁断のりんごのように。
    ☆二十歳
    愛情に触れて生きることって大切だと思う。
    ☆むすめごころ
    強がってる。素直になりたい。でもそんな自分を受け入れる。
    ☆父母
    軽井沢でテニスって爽やか要素なのに、なんで爽やかじゃないんだ。

  • 伊豆の踊子、青い海黒い海、驢馬にのる妻、禽獣、慰霊歌、二十歳、むすめごころ、父母を収録。旦那に「伊豆の踊子」の感想を聞くと、話淡い恋いの話でしょ。と。私はそれだけではないような気がする。踊り子達一行と、数日間旅をして過ごし、主人公の心が浄化され、優しい気持ちになっていったような、心地よささえ感じる。それは最後の作者が船に乗る時、可哀想な婆さんを上の上野まで連れて行くよう頼まれた時、快く引き受けたり、少年の親切を自然に受け入れられるような、美しい空虚な気持ちになった。という所から。他「二十歳」もおもしろかった。「むすめごころ」は、作者が中学時代の寄宿舎で同室だった初恋の少年への気持ちを、思い起こして書いたのだろうかと読みながら思ってしまった。他数作品は生と死について、彼の独特の空想、非現実世界が広がっている作品だった。 ノーベル文学賞受賞者というので、いいんだろうなぁ。いいんだろうなぁ〜。と少々読む前から、暗示にかかっていた所もあるかも。で、★★★★

  • 川端文学は本当にわかりにくく、内容についていけないことが多い。名著という読破ノルマ感から、やっと読んだが何も心に刺さらず残らず。

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著者プロフィール

一八九九(明治三十二)年、大阪生まれ。幼くして父母を失い、十五歳で祖父も失って孤児となり、叔父に引き取られる。東京帝国大学国文学科卒業。東大在学中に同人誌「新思潮」の第六次を発刊し、菊池寛らの好評を得て文壇に登場する。一九二六(大正十五・昭和元)年に発表した『伊豆の踊子』以来、昭和文壇の第一人者として『雪国』『千羽鶴』『山の音』『眠れる美女』などを発表。六八(昭和四十三)年、日本人初のノーベル文学賞を受賞。七二(昭和四十七)年四月、自殺。

「2022年 『川端康成異相短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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