- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041057193
作品紹介・あらすじ
ひとりは軍人に。ひとりは利通暗殺へ。
西郷の首を発見した男と、大久保利通を暗殺した男。
2人の加賀藩士は、親友同士だった――。
「維新」とは何だったのか?
武士の世の終焉を活写した、ひたすらに熱く切ない本格歴史長篇!
幕府を中心とした開国派と、長州藩を軸とした攘夷派に分かれ、激しい戦いが繰り広げられる幕末。
百万石の雄藩・加賀藩は、中立的立場ながらも、藩内では二派の対立が激化していた。
加賀藩士の島田一郎は尊王攘夷思想に憧れ、親友の千田文次郎は、一郎の情熱に煽られながらも自分を見失わないでいた。
やがて一郎は反政府活動に傾倒し、武装蜂起を企てる。
一方、文次郎は陸軍軍人となって西南戦争に参加し、薩摩軍が隠した西郷隆盛の首を発見する。
それにより不平士族の絶望は頂点に達し、一郎らは大久保利通の暗殺を画策する……。
幕末・明治という激動の時代に翻弄された二人の青年の友情と別離。圧巻の歴史長篇!
「一つの時代が終わったのだ。もう武士の世には戻れぬ」
文芸評論家・縄田一男氏、激賞!
「完敗した。評論家の首を賭けるに足る傑作」 (「本の旅人」2017年10月号書評より)
感想・レビュー・書評
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お二人共実在したのですか?あまりにも上手く出来ているので信じられません。維新を成し遂げた西郷と大久保の二人の関係が、加賀藩の二人にダブって見えたのは私だけでしょうか?
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西郷隆盛や大久保利通について、歴史が理解出来た。伊東潤氏のストーリーは最後の結末に猛ダッシュするところが良いね。
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伊東さんのものではベストかな。維新後少しだれるけど、相当面白いです。
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時代を動かしたのは二人の加賀藩士。かたや新政府のために軍人となり西郷の首をとり、かたや士族の困窮を救うべく武人として大久保の首をとる。運命というにはあまりにも数奇で残酷。
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タイトルから西南戦争の話かと思ったら、薩摩藩ではなく加賀藩の話が進む。
足軽の二人を軸に倒幕から明治維新への時代の激変を描く。
終盤になってタイトルはそういうことか、と分かったが、うーん、このタイトルにしなくても…と思ってしまった。
全体的に加賀藩のように報われない人々の怨嗟の叫びが聞こえるような話だった。
高い理想を掲げての闘いの筈が結局は権力の座を巡っての椅子取りゲームのように見えていく。椅子に座れなかった人々は諦めるのか抵抗するかしかないのか。
文次郎、一郎、袂を分かった二人が決めた道、どちらが勝ちでどちらが負けというわけではないし、西郷が負けで大久保が勝ちというわけでもなく、それぞれに大義があり抱えるものもあるだろう。
一つ言えるのは、こうした時代の激変には数多くの人々の苦しみがあるということ。
伊東さんはこうした歴史の裏を描くのが上手い。 -
ちょっと苦手な歴史物。
帯に惹かれて読み始めたものの、
案の定読み終えるのに時間がかかってしまった。
フィクションとノンフィクションが入り混じっているのか?
歴史に詳しくない自分にはちょっとわからなかった。 -
明治維新からの一つの時代の終焉。その中で生きなければならない武士や人間像。そして何故加賀藩出身のこの二人がこんな人生を・・・。
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これは面白かった。
西郷の首を見つけた男と大久保を殺した男。
二人は加賀藩出身で親友だった。
西南戦争を扱った作品とややリンクしていて、あ、読んだわって思わされる部分も。 -
好みとしては、幕末モノは基本辛い事しかないので、あまり積極的に読みたくないのだけど、伊東氏の戦国モノをほぼ読んでしまったので「仕方なく」借りたら、これが面白い。タイトルから西郷どんのお話と思いきや、西郷どんの死=侍の時代の終わりを象徴していて、やっぱり幕末モノらしく、溌剌な若者が段々と辛い状況に否応なく追い込まれながら、自らの信念たるものにすがりつくように破滅していくわけだけど、そこを辛いだけにしないところが、伊東氏ならではと言えるのかもしれない。読んだ後に、赤坂見附周辺を散策するのも一興だろう。次は少し時間置いて「走狗」を読んでみるつもり。
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西郷の自決後の首を発見した男と大久保利通を暗殺した男の二人は加賀藩の出身で
無二の親友だった、維新とは何か、武士とは何かを語る本格歴史長編である。
まだ、一部に理解できていないところはあるが、大変読み応えがあった。
現代を生きる自分にとって、勉強になった点は下記の4点である。主人公たちが50代以前の人であり、昔の武士は立派であると思った。これは素晴しい小説であり、同じ著者の別な作品も読んでみたいと思った。
(1)身分制度や固定観念を打破して新しいことにチャレンジする
①思考停止にならない
常識で無理だと思われることも一念さえあれば実現できる。要はなさぬだけなのだ、
について共感した。そして、嫌なことから逃げてはいけない、ことは理解できる。
②内部での争いは悪である
国内で争い事をしていては、外部から侵略される、これは会社での覇権争いや
相続問題でも同じであると思う。
③王陽明の知行合一論を学習した
学ぶだけでは足りぬ、自ら学んだことを行動に移し、この世を変えていくこと、
これは、自分の身におきかえても課題である。
④明日のことは誰にもわからない
だから、チャレンジの成果が出てくると思う。それぞれが今正しいと思う道を進むだけだ、これが今を充実して生きてゆけというメッセージだと思う。
(2)西郷の魅力に改めて畏敬の念をもった
①西郷の功績の再認識
西郷隆盛は朝敵とされた大名や旧幕府軍将兵の全員大赦、徴兵制の施行、地租改正、学制の設定、鉄道開業、太陽暦の採用などの重要政策を立て続けに決定した
②大人物の証左
自分が言うまでもないが、アーネストサトウは西郷は黒ダイヤのように大きな目玉をしていたと書き残しており、その瞳に見つめられたものは一瞬で西郷の虜になり、この人のために死のうと思ったと言う、最近そういう人物はいなさそうである。
③征韓論について
今まで自分の認識に間違いがあった。西郷は「陸海軍を送る前にまずは使節を派遣し公理公道を持って談判すべきであると説諭し、派兵すれば必ず戦争になる、そんなことでは未来永劫、両国の関係にヒビが入る、それゆえ断じて出兵を強行させてはならぬ」と言い張った。さらに西郷を自ら使節となり朝鮮に赴くと主張する。これは今までの知識と真逆であった。
④理想と現実の狭間
西郷は「皆が満足する世を作ることが政治家の務めである。」と思っていた。「恒産の道が閉ざされた武士たちのことを政府に考えて欲しかっただけだ」、「それでは幕藩体制と何ら変わらぬ」、「その通りだ」、「だがそれは夢物語だ、西郷さんは理想が高すぎた、全てのものが満足する世を作ろうとした、そんなものなどできっこないのだ」
ここに、西郷の苦悩があったはずである。
(3)大久保の再認識、再評価をした
①大久保は「人材」の評価であるが、彼も「人物」であり、立派であったと思う。
西郷は「人物」という評価であるが、大久保も「人物」であると思う。
明治政府とは自分の作品であり、それを西郷の息の掛かった人に汚されることが許せなかった。大久保は冷徹一辺倒ではなく、薩摩人らしい情けに熱い一面も持ち合わせていた。大久保は単なる権力の亡者ではなく、大久保なりの大義があったのだ、大久保の凄まじい気迫に圧倒された、とあるように人物でもあったはずだ。
②大久保も幕末から明治維新にかけての功臣であり、その時代の犠牲者かもしれない
「大久保の死は天誅であり、官吏以外の全国民の総意だ」、「それは違う、社会の仕組みを全て変えて行かねば、近代国家は完成しない、そのためには痛みが伴う、それに耐えてこそ日本は一等国になれるのだ」
(4)過去にとらわれてはいけない
①何事にも潮時というものがある
②だが時計の針は誰にも巻き戻せないのだ、もうこの世に加賀藩などはないのだ、
いつまでも過去にとらわれすぎては生きていけぬぞ、これぞまさしく現代社会に生きていく我々にもあてはまる。今を充実して、チャレンジしていけということだと思う。
③西郷の首の重さ
ここが、この小説の要旨であると思った。
「我等は幕末から維新を経てかけがえのない大切なものを失ってきた」、彼は失われたものの大きさを思い出していた。それは西郷の首のように重く大きなものだった、だがもう後戻りはできないのだ。生きているものはどんなに辛くても前に進まなければならぬ。
以上