虚談 (1)

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041057223

作品紹介・あらすじ

元デザイナーで小説家の「僕」は、知人友人からよく相談を受ける。

「ナッちゃんはそういうの駄目な口やろ」と笑いながら、デザイン学校時代の年上の同輩、御木さんは奇妙な話を始めた。
13歳のとき山崩れで死んだ妹が、年老い、中学の制服を着て、仕事先と自宅に現れたというのだ。
だが彼の話には、僕の記憶と食い違いがあり――。(「クラス」)

この現実と価値観を揺るがす、全9篇の連作集。

感想・レビュー・書評

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  • 百鬼夜行シリーズをしばらく休んでいた頃の京極さんは、多作すぎて全部の著作を追ってきませんでした。ちょうど就職して、自由時間が減ったこともある。でも最近は時間のやりくりと読書の仕方が上手くなって、いろいろな本に手を出している。この本は図書室の棚で見つけた。多分シリーズ外の一冊だから、沼にハマることもあるまい、と。確かな京極テイストがあって、面白かったです。

  • 京極先生自信が見聞きしたような話のように語られる、作り話…なのだと思う。
    自信を持って言い切れないほどに、本当の話のような、どこからが嘘なのか分からないような、そんな不思議な話。
    怖いというほどではないけれど、現と虚構の境界線が曖昧な雰囲気はわたしを話に引き込むのに十分で、こんなホラ話しならいくらでも聞きたいなぁと思う内容でした。

    ・レシピ
    ・ちくら
    ・ベンチ
    ・クラス
    ・キイロ
    ・シノビ
    ・ムエン
    ・ハウス
    ・リアル

  • 「僕」が遭遇した奇妙な話。他の人に相談されたり、自分自身の過去であったりするが、本当か嘘か、嘘が混じっているのか。。。
    話は、怖いというより、気味の悪い話に思えるのが多い。「厭な話」に近いような感じがした。それは、作者がよく書くシチュエーションの誰かが立っている、誰かが見ている系が多いからかもしれない。絵本の「いるのいないの」もそうだし。
    話は、怪談めいた話もあるが、最後に話全体が嘘だったり、一部が嘘だったりというセルフが入り、はぐらかしをしつつも、怪しさが残る終わり方となっているのがよい。それが故に、気味の悪さを感じるのかもしれない。
    が、「シノビ」は、居酒屋談義のあたりが、笑わせる京極夏彦ノリになっていて、楽しい。最後に怪しさは残すものの、途中のノリが、全てかっさらっていく感じ。「雲に乗る」から「ノンちゃん」で、しかも誰も知らないとか、笑えました。

    • やまさん
      おはようございます。
      きょうは、快晴です。
      体に気を付けていい日にしたいと思います。
      やま
      おはようございます。
      きょうは、快晴です。
      体に気を付けていい日にしたいと思います。
      やま
      2019/11/16
  • 元デザイナーで小説家、一部の人からは「ナッちゃん」と呼ばれている「僕」は、記憶力が良く、人からよく相談を受ける。世に蔓延るオカルトや心霊の類を木端微塵に粉砕する筋金入りのアンチビリーバーなのだが、不思議な出来事を体験している友人知人たちから何故か相談が持ち込まれてくるのだ。「レシピ」「ちくら」「ベンチ」「クラス」「キイロ」「シノビ」「ムエン」「ハウス」「リアル」現実と虚構をめぐる全九編収録。

    実録、自伝風…?すべてが嘘である、というのが前提でありながら現実と虚構の境界線が曖昧な不思議な物語。自分が思っているほどその境界線は危いのかもしれません。怖い…というのとも少し違う、不気味…?まぁ、嘘なんですけれども。「クラス」が一番ぞわっとしたので印象にのこっています。「ハウス」はちょうど最近澤村さんの「ひとんち」で似た感じの話を読んだので多分そうだな…と気づいてしまったので残念。

  • 「~談」シリーズの一冊。
    タイトル通りに、どこか狐につままれたような、ごまかされたような、そんな気分になる話が9話収録されている。
    そのどれもがタイトルは3文字。
    相変わらずの作者の作品に対するこだわりを感じる。

    「レシピ」
    それほど親しくない学生時代の友人の話を居酒屋で聞く男性。
    友人は学生時代はチャラ男で、その当時つきあっていた彼女の話を始める。
    彼女はつきあっていた時にスイートポテトを作ってくれて、それが美味しかったので友人はまた作って欲しいと言っていた。
    所が、彼女の実家が火事にあい、二人は自然消滅、結局彼女の行方も分からなくなった。
    その後、友人は別の女性と何人かつきあったが、その度に女性たちは不気味な体験をする。

    「ちくら」
    明治時代の百美人の一人の写った写真を手に入れた男性たちの怪異体験。

    「ベンチ」
    お題目を唱えると幸せになると言うおじさんの記憶。

    「クラス」
    中学時代に亡くなった妹が成長し、おばあさんになって自分のもとを訪れるという男性の話。

    「キイロ」
    山の上にある中学校に通っていた男性。
    その中学校の裏手には崖があり、一応そこからおりられるようになっていた。
    同級生たちがそこで何かを見つけてあがめているらしと知った男性はそこである物を見つけて、ある悪戯をする。
    それから不思議で不気味な噂が流れるようになりー。

    「シノビ」
    住んでいる一軒家に忍者が来るという舞台女優の話。

    「ムエン」
    ややこしい親族関係をもつ男性のもとに一通の手紙が届く。
    差出人の男性は自分と男性が血縁関係だと思うという話を始める。

    「ハウス」
    この実話には一つだけ嘘があるという前置きをして話を始めたノンフィクションライターの女性。
    その話とは、女性の友人の体験談で、友人の認知症の父親が亡くなった以後も生きている時と同様に家にいるという話だった。

    「リアル」
    夢の中で人を殺した男性の話。

    どの話も概ね、読んでいると映像が浮かび上がってくる。
    文章で映像を立ち上げるというのはすごいと思う。
    特にそれが顕著だったのが、「ベンチ」「クラス」「キイロ」「シノビ」。
    「シノビ」という話はそれほどでもなかったのに、最後の最後にビシッと鮮やかに映像化してくれた。

    考える所があったのは、
    「ベンチ」
    独善的でそれをおしつける人間って、陰でどれだけの人間に恨まれてるんだろう、とか、人間の運って一定なのかも・・・と思わせる。

    「キイロ」
    本当にそれがあったのか、どうなのか、ほんの遊び心が招いた出来事がこんな風に実際の生活に影響を与えるなんて・・・。
    とにかく、場所の設定がうまい。
    これだからこそ、不気味さが増して「本当にあったのかも・・・」と思わされる。

    「ムエン」
    ああ、本当にこういう人いるよね・・・と思った。
    家が養子、養女でなりたっていて、自分のルーツがはっきりしているようで曖昧な家系。

    「リアル」
    この話で締めくくったのが憎いくらいに巧い演出だと思う。
    作中書かれているように、確かにリアルな夢の記憶はもう実体験の記憶と同等のものである、というくだりは確かにそうだな・・・と思った。

    他にも、最初の話の主人公の男性の人から相談を受ける時の心情や態度にも「なるほどね・・・」と思った。
    こういうのを書く人は極めて普通の感覚をもった人だと思う。
    京極夏彦さんの書く世界観は独特で、一種、とっつきにくい変わった世界が広がっている。
    だけど、その根底にあるのは一本筋の通った普通の感覚。
    普通の感性をもった人が書く、不思議で奇妙な話だからこそ、人を惹きつけるんだろう、とこの本を読んで改めて思った。

  • 勝手に、京極夏彦の本気は鉄鼠の檻あたりだと信じているので、こういう種類の文章も書くんだなあ?と新しい気持ちになった。
    やはり筆致というか、語彙選び、文章の癖、好きだなあ。内容はけっこう自分を騙しながら読まないと、のめり込まないと咀嚼できない感じ。却って客観的に読むぐらいが丁度いいのかもしれない。

  • おもしろかった。特にレシピ。とりとめのなさが最高。たぶんありがとうぁみも好き。
    途中付きもの落としが始まったがとりとめなく終わってよかった。

  • かなりぞっとした。
    虚談だと分かっていつつも、
    話のどの部分が嘘なんだろうか、すべて嘘なんだろうか、
    と考えながら読みすすめていくのが楽しい本。

  • 最後の「リアル」だけは結構好き。「リアル」の主人公の感覚はちょっと分かる。
    怖くはないけど、現実と著者の世界の境界が曖昧になるような感覚は、少し面白いかも。京極夏彦の感性が合うのなら。
    私は感性合わなくてイライラした。知識の差がデカすぎる。小川一真とか、宇宙猿人ゴリとか知らないし……。

    面白くない友達の「本人だけが面白いと思ってる話」をダラダラと聞かされている感じ。話の構成からしてその通りなんだけど。

  • 怪談のようで怪談でない奇妙な読後感だった。いっそコミカルに感じられる話もある。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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