地獄の犬たち

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041057230

作品紹介・あらすじ

警察官の俺に、人が殺せるのか!?
東京のやくざ組織・東鞘会に所属する兼高昭吾は、弟分の室岡と沖縄に飛び、ターゲットの喜納修三を殺害した。その夜、一人になった兼高は激しく嘔吐する。実は兼高は警視庁組対部に所属する潜入捜査官だったのだ。後継者問題をめぐり、東鞘会では血で血を洗う抗争が続いており、喜納殺害はその一環だった。兼高の最終任務は東鞘会会長である十朱の殺害。十朱は警視庁を揺るがす、ある“秘密”を握っていた。ボディガード役に抜擢された兼高は、身分が明かされた瞬間に死が迫る中、十朱への接近を図るが……。
『果てしなき渇き』『アウトバーン』の著者が挑む、ノンストップ・エンターテインメント!

感想・レビュー・書評

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  •  主人公は、窓を開けた茶の間で宿題をしていたとき銃声を聞いた。しかし真夏とあって爆竹かロケット花火の類かと思っていた。

     翌日から出月家の平穏は打ち破られた。小さなスーパーで発生した強盗殺人事件で、スーパーは家の隣にあった。あまりの凄惨な事件現場に、警官のなかには涙する者もいた。殺害されたのは全員女性で、そのうち三名が近所に暮らす女子高生、初恋の相手もいた。彼女の顔はろくに覚えていない。記憶しているのは、三発の弾丸で頭を破壊された彼女の死体だけだった。正体不明の単独犯によって惨殺され、事務所の金庫の中の売上金を奪っている。帰宅の準備をしていた店員の手足を拘束して、無慈悲にも中国製のトカレフで全員射殺したのだ。

     初恋の女が命を奪われた。そのときから将来は決まったようなものだった。使用された凶器が当時の裏社会で大量に出回っている自動拳銃であったため、県警は大規模な捜査本部を組み、事件解決に並々ならぬ力を入れていた。事件から三十年近くたった現在も解決に到っていない。

     高校三年時に警視庁の採用試験を受けた。剣道で、インターハイに出場したのが評価され、地元埼玉県警と警視庁の両方から勧誘を受けた。警察学校の成績は一般教養や法学では劣るものの、典型的な体育会系の頑丈な新人として、卒業配置ではさっそく大繁華街の新宿署地域課に配属されたのを皮切りに、歌舞伎町交番にも配属された。その後、立川の第四機動隊で厳しい訓練の後、法律や警察実務を学び直し刑事になった。そして全くあり得ない異動の辞令が下った。配属先は警視庁の組織犯罪対策部特別捜査隊だった。しかも辞令が下った当時の夜、地下和食レストランの個室に案内された。

     巨大警察署の署長と一介の巡査部長がともに行動すること自体、ただ事ではなかったが、既に個室には驚くべき面々が揃っていた。
     しばらくの間、食事をしながら歓談の後、組対部特捜隊の隊長である阿内将から質問と職務を告げられた。

    「人を殺せるのか」ヤクザ組織に潜入せよ!要はヤクザになりトップの首を狩れ!

     答えに窮するが、ようやく物語が始まった。

      読書は楽しい。

  • ★4.8
    これは、面白かった。
    ハードボイルド。って感じだ。
    警察小説であって、警察小説でなし、なんともカッコいい漢達のものかたり。

  • タイトルどおり地獄のような救われない話だった。
    暴力描写もしんどい。
    ただ物語としては、先が気になって読むのを途中で止められない面白さがあった。
    どんな所にいようとも人と人との交わりがあるところには絆が生まれる、暴力団への潜入捜査官が主人公のこの物語ではそれがまた切なく感じる。

  • アウトローな一冊。
    潜入捜査のため、ヤクザになりきる警察官の主人公。
    警察側は、冷たい無機質な感じで
    反対にヤクザ側は、家族のような温かみすら感じる絆をしっかりと書いているので、どうしてもヤクザ側に肩入れしてしまう。

    現実離れしているけれども、エンタメ作品としてとても楽しめました。

  • 警視庁組対部に所属する兼高昭吾は、潜入捜査官として暴力団組織・東鞘会に潜り込む。殺人まで犯し組織内での評価を高め、若頭補佐にまで上り詰めた兼高。彼は最後に、警察庁に対し秘密を握っている会長・十朱の殺害を企てるが・・・
    ありえない話ではあるが、惹きこまれて読んだ。上司の阿内も半端ではないキャラクター。映像化したら面白そうな作品。

  • 暴力、暴力、暴力!読んでいてハラハラしっぱなし。超ド級のエンターテイメント作品。

    『ダブル』でその凄まじさにやられ、すっかりファンになってしまった深町秋生。今回も見事にやってくれました。

    刑事の出月梧郎は、ヤクザの世界に入り込んだ潜入捜査官。ヤクザ界のカリスマ会長、十朱義孝も元は潜入捜査官だったが、警察を裏切り、ヤクザ界のドンとして君臨していた。裏切り者の十朱の正体の証拠を手に入れるため、また、ヤクザを滅ぼすため梧郎はヤクザの世界に潜入し、殺しを専門に汚れ仕事をこなしていくことになる。

    潜入捜査官というのが、私にとったらどんぴしゃり。しかも、ヤクザの世界に潜入とあれば、いつ正体がバレないかと、ドキドキしながら読み進めた。目を覆いたくなるような描写もあるが、その暴力性もプラスに作用し、ハラハラドキドキ感が否が応でも増していきます。

    殺しを何とも思わない完全無欠のキラーである室岡。相棒であり、兄貴分である梧郎が警察と繋がっているのではないかと疑い、梧郎を逃がそうとしたところがグッときた。
    面白かったけど、体に悪い作品でした。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    東京のヤクザ組織・東鞘会に所属する兼高昭吾は、弟分の室岡と沖縄に飛び、ターゲットの喜納修三を殺害した。その夜、一人になった兼高は激しく嘔吐する。実は兼高は警視庁組対部に所属する潜入捜査官だったのだ。後継者問題をめぐり、東鞘会では血で血を洗う抗争が続いており、喜納殺害はその一環だった。兼高の最終任務は東鞘会会長である十朱の殺害。十朱は警察庁を揺るがす、ある“秘密”を握っていた。ボディガード役に抜擢された兼高は、身分が明かされた瞬間に死が迫る中、十朱への接近を図るが…。

    潜入してまごうことなきヤクザのヒットマンとなり、正義の為の信じて沢山の人たちを殺め、ヤクザの中でシンパシーを感じて、次第に自分が何者か分からなくなっていく姿が濃厚に描かれています。だんだんとヤクザ側を応援している自分にびっくりします。不思議な血のたぎりを感じる本です。表紙からしておどろおどろしいですが、期待をうらぎらないドロリとした感覚です。

  • ここまでの暴力描写が必要でしょうか。
    潜入捜査ものは好きなのですが、これは合いませんでした。デビュー作を読んで、あまり好みでなく、その後この作者の作品は読んでいませんでしたが、この作品は評判が良いようだったので期待したのですが…。
    きっと暴力が好きな人向きなのでしょう。私にとってはイヤミスで、疲れました。

  • ジャンルは潜入捜査モノで好きなタイプ。他の作家の同ジャンルと比べて暴力の描写が鮮明なのが好き嫌いの分かれるところか。ストーリーや文章は面白かったので他作品も読んでみたいと思わせる。

  • 極道の世界に潜入捜査をする警官の物語。とことんハードでとことんアウトローな読み心地ながら、どこかしら極道がカッコよく思えてしまうのがなんだか不思議。むしろ警察のほうがやり方が汚いんじゃないかと思えてくるような……特に家族まで犠牲にするあのやり方はさすがに賛同できません。
    警官としての意識を保ちながらも、極道の世界との間で葛藤に苦しむ主人公の姿がなんともつらいところ。極道といえども悪人だとは思えず、どちらの世界で生きるのが良いのかに明確な答えなどない気がしました。どちらも生きるには楽な世界とは思えませんけど、いったいどちらが人間らしいだろう。

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著者プロフィール

1975年山形県生まれ。2004年『果てしなき渇き』で第3回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しデビュー。同作は14年『渇き。』として映画化、話題となる。11年『アウトバーン』に始まる「八神瑛子」シリーズが40万部を突破。著書に『卑怯者の流儀』『探偵は女手ひとつ』など多数。

「2022年 『天国の修羅たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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