- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041057377
作品紹介・あらすじ
藩の剣術指南役を仰せつかる桐生家に生まれた桐生作之進には右腕がない。
それは、作之進が幼いころに父親が斬り落としたものだった。
元服の夜、作之進に父親自らがそう告白した。
一方、現在に一人の男の子が生まれた。
姉は初めての弟をかわいがり、不器用だけど真面目な父と、優しい母が暮らす、絵に描いたように幸福な家庭であったが、ある日、一歳になった弟の右腕を握りしめ、表情のない目で見降ろす父を見た。
過去と現在、二つの物語が奇妙に交錯する。(「鬼縁」)
九篇の鬼気迫る物語を収めた、京極小説の神髄!
感想・レビュー・書評
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九篇の鬼気迫る物語を収めた、京極小説の神髄!
日本には昔から「鬼」にまつわるお話が沢山ある。
子どもの頃に読んだ童話にだっていろんな「鬼」が登場してくるし、地方のお祭りなどにも「鬼」の存在は色濃く残っている。それに「鬼」がつく言葉も沢山ある。
ではいったい「鬼」とは何なのだろうか?
赤色や青色の肌をしている?
角が生えていて牙が映えていて、棍棒を持っている?
それとも太鼓を持っている?
鬼は人を襲うの?
どれが本当でどれが作り物なのか。それともすべて作り物なのか。または本当なのか?
暴れ回る京極夏彦氏目線の「鬼」たち。
人の心に巣喰う「鬼」たちを見せつけられて、己の心を見つめなおす良い機会かもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
秋分の日前だからまだぎりで夏!「 」談シリーズ五作目、鬼談です。
多分これで終わりかな?
全ての短編のタイトルに“鬼”という文字が使われてます。
さて、鬼とはなにか。
鬼とは堕ちるものだと思っている。
当然空想上の生き物(?)であるが、昔に読んだ漫画、楠桂さんの「鬼切丸」のイメージが強すぎて、私の中で鬼とはもうそれそのものであるといってもいい。
幽霊が思念だけの存在であるのであれば、鬼とは肉体と怨念を持った、元人間の成れの果てなのだと思う。
どんな時に人は鬼に堕ちるのか。
一言で言うと、強すぎる想い。
それは男女間の愛情であったり、子が親を、親が子を思う愛。
その思いが伝わらなかった時、失った時、裏切られた時の絶望感、執着、哀しみそして妬み。
その想いが強くなりすぎた時、人は鬼に堕ちる。
本作でも、そんな鬼に堕ちた人たちの話がいくつかありました。
京極さんの作品を読むといろいろな発見がある。
例えば普段意識してなかった未亡人という言葉。
今はもうあまり使わない方向になってきているとのこと。
未亡人=未だ亡んでない人
なんてたしかに酷い言い方である。
後を追うのが当然であるかのような表現。
悲しみでは人は死なない。悲しみを忘れたくない人が後を追うんだ、という言葉にはとても納得がいった。
人は忘れていく生き物だからね。。
昔、ホラー漫画にハマった時期があったけれど、とても道徳的というか、因果応報な内容のものが多かった。
悪いことをしたから、呪われた、恐い目にあった、とてもわかりやすい構図。
でもこういった話は、怪談じゃない、と京極さんは後書きで言っておられました。
そこに至った理由なんてなく、ただ怪異はそこにあって、最後の一文で純粋に恐怖を感じるようなそんなお話が怪談であると。
最近のはそんなに読んでないですが、昔のに比べて今はむしろそういうのが多い印象です。
オチがつくまで長く続けるつもりが途中で連載が終わって、結果としてそんな感じになってるのもあるかもですがw
なんというか、触れてはいけない領分というのがあって、見えないことにしておかないといけない。あると言ってしまったり、見てしまうと、そうでないことがわかってしまうというか。。
そっとしておかないといけない。
何故なら気づいていることに気づかれてしまうと…連れていかれちゃうんですよ
備忘録
執着、一方通行の思いは嫌がらせ
・想像力は知っていることの組み合わせ、今いる世界を越えることはできない
・創造力
・予知は100%。でなければ、予測
・恐怖は予感。むしろ期待かも -
とんでもないものを読んだ。
上手いとか優秀とかそんな次元じゃない作家さんだと改めて思った。
なんだろうそれぞれの短編の最後部の言葉は。
表現するならゾクッてする感じ。
気持ちよさもあるし興奮するしこんな感覚はまずそう感じることはない。
凄い。
どの話も堪らなく気にいってしまった。 -
矢っ張り文章が良い。斯様に文章だけでぐいぐい読ませる作家を他に知らない。兎に角読者を牽引する力が強い。
泉鏡花が好きなんだろうな〜、っていうのは、京極作品をずっと読んでいると分かるけれど、氏の文章は鏡花のそれともまた違う。
何か色々混じり合い、渾然一体となって別の何かに成り果てたような。そういう意味では正に妖怪的といえるのかも知れない。
白眉は上田秋成の「吉備津の釜」を原作とする一篇。いま自分が読んでいるのが怪異譚であるという事を、途中まで本気で失念してしまった。まるで落語の人情噺のよう。
描き方一つで斯くも物語は表情を変えるものなのか。極上の怪談フルコースである。
リーダビリティに優れた他の人気作家の、誰にとっても"口に合う""食べやすい"小説で満足出来なくなったなら、京極作品を読んでみれば良い。
これを珍味と評するか、将又下手物として味わうかは個人の感性次第だが、何れ我々を飽きさせる事は無い。 -
再読。現代怪談シリーズ短編集。現代怪談シリーズの中ではこの「鬼談」が一番面白く読めた。久しぶりに読んだわりには大体覚えていたのもそのせいだろう。人と鬼をメインテーマに、その狭間をゆらゆらと漂う者たちの悲喜交々がぞっとしたりもするが、どこか共感できるところもある。一番面白いのはやはり「鬼縁」だろうが、一番好きなのは「鬼慕」かな。
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京極夏彦だから。
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おもろいです。雨月とかの元ネタを知らないで読んだけど、大丈夫でした。怖いです。寝る前に読むとドキドキします。
最初(鬼交)がかなり抽象的でやべーこれが京極夏彦か、、、!無理かもてなったけど他のはストーリーがはっきりしてて読みやすい。
怖いけど全く理解ができない、のではなくちゃんと読み手に推測させる、そしてその手助けがある話ばかりで読んでて、わかる、かも、、、という実感を得られたので楽しかった。
初めて京極夏彦さんの読んだけどかなり好きだと感じたので他のも読もうかな。
鬼景が一番怖くて好き。鬼気がマジ無理リアルさが混じってて単にホラーというか嫌味な感じ。この話はもう読めない。
鬼はすぐそこにいる。私たちの中に、、、とか思っちゃったなっ -
鬼を主題とした短編集。
人間の薄暗い感情から浮かび上がるものこそが、鬼の所業。 -
鬼神目当てで読んだら鬼情に持ってかれた。元ネタも読んだんですがやっぱ好きです鬼情。
怖かったのは鬼景。キツかったのは鬼気。面白かったのは鬼縁。
解説に載っていた宮部さんの「ラストの一行が怖い」ってまさにそのとおりでした。
特に鬼気…これは怖い、怖いんだけれどリアルというか身近なイヤさがある、目に見えない怖さっていうよりは胸糞系かな。
鬼景はシンプルに怪談で怖かったです。