金魚姫 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041058343

作品紹介・あらすじ

恋人にふられ、やりがいのない仕事に追われていた潤は、夏祭りで気まぐれにすくった琉金にリュウと名をつけた。その夜、部屋に赤い衣をまとった謎の美女が現れ、潤に問いかける。「どこだ」。どうやら金魚の化身らしい彼女は誰かを捜しているようだが、肝心な記憶を失い途方に暮れていた。突然始まった奇妙な同居生活に、潤はだんだん幸せを感じるように。しかし彼女にはある秘密があった。
温かくて切ない、ひと夏の運命の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 恋人にふられ、やりがいのない仕事に追われていた潤は、
    夏祭りに気まぐれにすくった琉金にリュウと名をつけた。
    その夜、部屋に赤い衣をまとった謎の美女が現れ、
    順に問いかける。「どこだ」。
    どうやら金魚の化身らしい彼女は誰かを探しているようだが、
    肝心な記憶を失い途方にくれていた。
    突然始まった奇妙な同居生活に、潤はだんだん幸せを感じるように。
    しかし彼女にはある秘密があった。
    温かくて切ない、ひと夏の運命の…。

  • 夏祭りですくった琉金に「リュウ」と名前をつけた潤のもとに赤い衣の女性が現れる。記憶を失っている彼女は琉金の化身で・・・
    潤と琉金の不思議で切ないお話。

    リュウが現代の日本について少しずつテレビで覚えていく姿がかわいい。現代に馴染みきれていないリュウに振り回される潤もまた微笑ましい。

    リュウに出会ったことで(?)死者が見えるようになった潤と、その死者たちとのエピソードが切ない気持ちになる。
    “魂は残る”ってあるのかな。



    次から終盤のネタバレ↓



    リュウの台詞「お前だ」で、お〜〜〜!良い展開〜!ってなったけど、潤と劉の繋がりがいまいちわからないというか、無理やりな気もしたかな?
    でも、一緒に過ごしている大切な人が実は前世の敵ということもあるのかと考えた。いい縁も悪い縁もどっちも縁だしなぁ、と
    林姓の社長が二人のところに向かっている中でのクライマックスだったから、めちゃめちゃミスリードされる。

    最後、潤の息子の名前が揚河(ヨウガ)だということは・・・!
    たしかに劉の子孫に生まれ変わってしまえばリュウが願っていた通り「邪悪な血筋は根絶やし」にできる・・・
    でも、揚河がリュウだとすると、リュウ(らしき人)に会ったことがあるというリュウの発言と噛み合わなくなるか?

    物語最後の一言が最初に重なるのは、「すべては繫がっている」「巡る輪はいくたびも同じ場所へ戻る」ということなのかな。


    「私には見分けがつかない。お前は生きているのか」
    「え」
    「お前はどちらだ」

  • いやぁ、参った!萩原さんはズルい。
    散々笑わせておいて、ホロっとさせるんだから、読者としてはたまったもんじゃない。

    恋人に振られ、やりがいのない仕事に追われ、いつも死にたいと思っている潤は、夏祭りの金魚すくいで気紛れにすくった金魚にリュウと名付けた。
    その夜、赤い衣装を着た美女が現れる。金魚と暮らし始めた潤は、死者が見えるようになり、営業成績がグングン上がるようになった。
    美女に振り回されながらも、毎日の生活に幸せを見出していく潤。そんな生活も唐突に終わりを迎える。

    よく、この一行で世界が一変するという物語があるが、その一言で思い描いていた世界が一気に変わってしまった。それは、これから読む人のお楽しみということで。

    切なくて楽しくて、愛おしい。そんな物語。萩原さんは本当にズルい。

  • 表紙の美しさに惹かれてよみたいとおもってた、なかなかそこにたどり着けなく
    荻原浩の海の見える理髪店に次ぐ二作目

    わぁ一番苦手な、ファンタジーものだった。挫折するかと思いきや
    なかなか始めは入り込めなかった
    並行して3冊ほど読みほかのは進むがー

    ブラック企業に勤める男があるとき金魚に出会い

    別に目に見える世界だけ信じてる訳ではないのて
    そこに違和感がなかったが
    切り替えがうまくできるようになると
    面白さが増した。
    何これ?
    しかし、荻原浩の書く
    文章の美しさ、五感を駆使しての表現

    音、水、色、ー目、耳、鼻、口、触
    時と所を超えた表し方に違和感はなかった。
    中国に関する知識が自分に足りないぶん
    苦労した。
    やはり読んでいく順番もあるかもしれない、
    もう一度読めるといいのだが。

  • 始めはブラック企業とホラーな物語かと思って読み進めて行ったら、最後はとても切ない話だった。潤とリュウが結ばれることはないとしても、もう少し長く一緒に居させてあげたい、と思った。

  • ひさびさの荻原浩。
    ものすごく面白かった。ミステリ要素もありつつ、主人公とリュウが心を通わせていく様子にとても引き込まれ、ぐいぐいあっという間に読み終わった。
    エピローグのようなラストも、思わず泣いてしまった。
    今まで読んだ萩原作品の中で、個人的にはこれが一番良かった。

  • 狂おしいほどに大人ファンタジー
    現代が抱える闇と過去の哀しい歴史から目を逸らさずに、だけどちゃんとファンタジーでラブストーリー。
    恋人の為に転職したはずの転職先はブラック企業。そのために恋人にも去られ、業績も上げられず、鬱病に手招きされるようにただ日々を過ごしてる僕は、ある日、近所のお祭りで、一匹の琉金をすくい上げてしまう。
    「すべては繋がっている。」
    その日から、僕の生活は一変する。
    琉金は女の子(リュウ)となって現れるし、死者が見えるし…どうなってんの?
    去った恋人を忘れられずにいるはずの僕は、いつしか琉金のリュウに恋をして…。
    リュウは何者なのか?何故、僕のところへやってきたのか?
    2人の自分探しの旅は始まる。
    そして…哀しい結末はどこへ向かうのか。
    テレビやレストランで見る女の子らしさを真似するリュウが可愛くて愛しくてたまらない。
    哀しい過去を少しずつ思い出しながら、現代を一生懸命に生きようとする女の子。
    ラストシーンを思い出すたび涙が溢れて止まらない。
    決してバッドエンドではないのに…
    これをハッピーエンドというにはあまりにも残酷で切ない。
    そんな恋。
    今年の5冊目
    2019.3.3

  • 金魚がヒトになり主人公の前に現れる。それを機にいろいろなことがうまく行くようになり、次第に2人は恋に落ちる。しかし最後は、、、

    なんて在り来たりなストーリーかと期待せずに読んでいたが、琉金の美しさ、リュウの可愛らしさ、中国秦の時代からの怨恨による復讐劇、死者たちが<すべてはつながっている>、<巡る輪は幾たびも同じ場所へ戻る>と告げたように避けられぬ運命。
    話は深みを増し、どんどん惹きつけられる。
    きちんと最後まで描き切られていて、納得の最後だった。

  • ブラック企業、仏壇会社営業の江沢。失恋もしてうつ状態。コンビニより近いということで空腹を満たすためにお祭りへ行く。そこで金魚の光に惹かれて、金魚すくいをして琉金をとった。その夜、謎の美女(リュウ)が現れるが、実はその琉金の化身であった。それよりこの世に残る霊が見えるようになり、会社の成績も上がってゆく。実はリュウははるか昔、中国で人間だった時の恨みが心の底にあり、その記憶をなくしているが生き延びていた。全てが偶然のつながり。リュウの記憶は戻るのか、そして江沢とリュウの未来は…。ファンタジーものですが、ラノベっぽくならず、堅苦しく重くならず、残虐なものなく、軽やかに描いているのは荻原さんの力ではないかと思います。リュウと江沢のやり取りも可笑しいのですが、何と言ってもリュウの可愛さがよく出ていました。その他、鬱の状態やら、様々な悲しさ、よく表現されていて、いたるところに作者のメッセージがありました。リュウの最後は悲しいね。少々詰め込みすぎなのが玉に瑕かなあ。

  • 幅広い作品を書かれる荻原浩さん。
    だからこそどんな話なのか想像もつかずに読み始めました。
    知らないくらいがちょうどよい。面白く読める。
    今回はまさに悲恋のお話でした。

    人間になれる金魚の女の子と過ごす、ブラック企業に勤める死にたい男。
    過去に婚約者を殺した相手に復讐するために生き長らえる金魚。
    最後にえっ!!と言わさせるこの感じが最高。
    絶対社長だと思ってたよーーー…。人相悪すぎ。(見てないけど)

    きっと過去から続く復讐の連鎖は、この恋によって断ち切られたのだろう。
    終わり方もとても悲しいけどとても好き。

    表紙のイラストがきれいで印象的で好き。



    @手持ち本


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著者プロフィール

1956年、埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞。14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞。16年『海の見える理髪店』で直木賞。著作は多数。近著に『楽園の真下』『それでも空は青い』『海馬の尻尾』『ストロベリーライフ』『ギブ・ミー・ア・チャンス』『金魚姫』など。18年『人生がそんなにも美しいのなら』で漫画家デビュー。

「2022年 『ワンダーランド急行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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