- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041058497
作品紹介・あらすじ
遣唐使船の船長だった阿倍船人(あべの・ふなびと)は、ある事件により朝廷より処罰をうけて草香津に逼塞していた。そこへ、七年ぶりに再会した兄・宿奈麻呂(すくなまろ)から新都造営の手助けをしてほしいと、打診を受ける。たった三年で、唐の長安に並ぶ新都を奈良に――これは朝廷一の実力者・藤原不比等(ふじわらの・ふひと)からの必達の命だった。失敗すれば大きな責任を問われる難事業だったが、白村江の戦い以来冷遇されてきた阿倍家再興を誓う兄を助けるため、船人は引き受けることに。行基衆の手助けなどもあり、着々と準備を進めるが、朝廷では遷都推進派と反対派の対立が激化。造営予定地の立ち退きを巡り、死者まで出てしまう。事件の黒幕について、船人はある疑念を抱くが……。
感想・レビュー・書評
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タイトルのとおり、平城京への遷都を描く古代史小説である。
藤原京遷都からたった16年しか経っていなかったのに、さほど遠くない地に平城京を作って遷都したのはなぜか? 「古代史最強の謎」(帯の惹句)の謎解きがなされていく。
平城京建造の責任者(造平城京司長官)を務めたのが、阿倍宿奈麻呂(阿倍比羅夫の子)。
この宿奈麻呂も重要キャラとなるが、主人公はその弟で遣唐使船の船長であった阿倍船人(あべのふなびと)だ。
阿倍船人という名の人物は実在したようだが、事績は一切不詳。船人を宿奈麻呂の弟に設定したのは著者のフィクションだ。
船人は兄に懇願され、平城京建造プロジェクトの現場責任者といった役どころに就く。
だが、さまざまな難題が次々と起こり、プロジェクトの遂行を阻む。その最たるものは、朝廷内に遷都を阻止しようとする勢力が存在すること。
ストーリーは、それらの敵と船人たちの戦いを軸に進む。
藤原不比等、吉備真備、行基など、歴史上の重要人物が次々と登場。ワンシーンのみだが稗田阿礼も出てくる。
平城京建造の模様もリアルに描写され、〝古代版プロジェクトX〟的な趣も楽しめる。
大国・唐の影が、全編を黒雲のように覆っている。また、すでに滅びた百済の再興を熱願する百済人たちの存在も、ストーリー上重要な役割を果たす。
つまり、古代の国際政治をリアルに描く小説でもあるのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
平城京建設の物語。
河川のつけかえから始まり、用地の買収や人足の確保などの下準備をしたり、都大路の整備、建物の建設など大がかりな土木工事を進めていく中で建設反対勢力の妨害が起こる。
果たして工期は間に合うのか、妨害の親玉は誰なのか。プロジェクトXにミステリーを少し足したような、ドキドキハラハラしながら読める一冊。 -
710年平城京遷都。そうやって軽く歴史を習ったけれど、裏ではこんな壮絶な物語があったのかと思うととても面白い。ストーリーは疾走感があって続きが気になり一気に読んでしまった。ところどころ出てくる大物の名前に少しニヤッとしたり。とても楽しかった。
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[評価]
★★★★☆ 星4つ
[感想]
平城京への建造と遷都を題材とした小説
うまく史実の出来事や史書の内容を盛り込みながら物語として、成立させている。
遷都の詔から2年で平城京に遷都するというのは言われてみれば、非常に短期間の遷都で民に大きな負担をかけることになっただろうということは本書を読んで強く感じた。
それと本書は天智系から天武系への王朝交代した壬申の乱を明確に近江朝廷を滅ぼしたと書かれていることには驚いた。 -
教科書では「710年平城京に遷都され奈良時代が始まった」ぐらいしか書かれていない。どこから遷都?って思っても藤原京についてはほぼ書かれていないような。
史実に基づくフィクションであるにしても、この時代の人の息吹を感じられたのはとても良かった。
それを抜きにしても読み応えのあるストーリーで満足。 -
奈良・稗田、環濠集落につながる葛城氏の話が面白かった。
一文の表現力に奥行きがないように感じて、
どうも安部さんは肌が合わないかな。 -
平城京遷都のお話。壬申の乱や白村江の戦いから続く因縁も描かれ、歴史の流れを感じる。
2019/11/1 -
人が集まって一大プロジェクトを成し遂げようとする時、
自らの信念や利益を全うしようとして、
時には残酷な行いにも走ってしまうのは、
今も昔も変わらない。
そして、そんなピンチの中であっても、
人の心をつかんで離さないリーダーがいれば
まとまることができるのも変わらない。
今の日本にそんなリーダーは現れる日は来るのか? -
石上豊庭が割とメインキャラ(主人公の敵役)で登場する
著者プロフィール
安部龍太郎の作品





