少女は夜を綴らない

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041058664

作品紹介・あらすじ

“人を傷つけてしまうかもしれない”という強迫観念に囚われている、中学3年生の山根理子。彼女は小学6年生のときに同級生の加奈子を目の前で“死なせてしまった”ことを、トラウマとして抱えていた。 “身近な人間の殺害計画”を“夜の日記”と名付けたノートに綴ることで心を落ち着け、どうにか学校生活を送っていた理子の前に、ある日、加奈子の弟・悠人が現れる。“加奈子の死”にまつわる理子の秘密を暴露すると脅され、理子は悠人の父親を殺す計画を手伝うことに。やむを得ず殺害計画を考えるうち、誰にも言えなかった“夜の日記”を共有できる悠人に心惹かれていく理子。やがてふたりは殺害計画を実行に移すが――。

感想・レビュー・書評

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  • 2022/06/07読了
    #逸木裕作品

    学園青春ミステリー。
    加害恐怖症に悩む主人公の女の子が
    殺人の依頼を受ける。
    別軸では自分の兄が連続殺人事件の
    犯人ではないかと疑い探る。
    他の先進的な作品とは一転、
    リアルな闇がゾクッとするストーリー。
    エンディングがちょっと、、な感はあるが
    総じて面白かった。

  • 『彼らは、正攻方で乗り越えられる壁の存在しか知らないんだ。』

  • 過去の出来事から加害恐怖を抱え、周りの人間を殺害する妄想を書き綴る少女。そして父親の暴力に苦しめられる少年。二人で立てる完全犯罪の計画と、周りで起こる事件と疑惑。全体的にひりひりとした痛々しさを感じさせられる物語でした。感情移入して読めば読むほどつらく、だけれど読む手は止められません。ただし、読み終わった後の印象はそれほどひどくもなかったかな。完全にハッピーエンドでもないのですが。
    過去の「事件」の真相はまあわかったけれど(ミステリ読みなら「それはない!」って思うよなあ)。そういう動機だっただなんて。分からないでもないけれど、それが主人公にあれほどの傷を残してしまったとなると……ひどい。しかし結局はあの子もあの子も被害者だったのだなあ、と切なくなりました。

  • 前作「虹を待つ彼女」が意外に面白かったので、手に取った一冊。
    小学生の時に、同級生を殺してしまったと思い込んだことから「加害恐怖症」に思い悩む中学3年生の主人公・理子。
    またいつか誰かをころしてしまうのかもしれない、自分の兄はホームレスの殺人犯かもれしない…そんなことばかりを考えている中学3年生実在するだろうか?
    あまりにも現実味がない内容で、最後まで何が伝えたかったのか、よく分からなかった。
    「ボー研」のところの描写だけが、学生時代に部活を忘れ、ゲームに熱中していたことを思い出させてくれて、ホッとした。

  • 本番に限って上手くいかない、という現象は不条理な現実として存在している。そして悪意の中で生きたことのない人間が悪意の中で生きる人間に対して、暴力的に正論を投げつける。世の中綺麗なことばかりではないはずなのに、それを知らない幼さを色濃く描いていた作品。最後はご都合主義で丸く収めた感が否めないが、物語としては読みやすいと思う。

  • 「困難があったら、正攻法で乗り越えればいい。そんな風に考えてる強い人間が、嫌いなんです。僕は」「反対から考えてみると、正攻法で乗り切れる程度の壁しか、あの人たちの中にはないんだと思います。」
    このセリフが刺さった。苦しんでいる人にとって必要なものと求めているものは違っている時がある。苦しみは苦しんでいる本人にしかわからない。

    人を殺すのにも運と才能が必要なのかも。
    とにかく悠人の父親と理子の兄が気持ち悪い。

  • ある事情から、人を殺す妄想を抱いて毎日を過ごしている少女。この展開で、意外と明るいラストで、ちょっとえっ……とおもいました。(^^

  • 逸木裕『少女は夜を綴らない』他人を傷つける妄想に苛まれる少女。暴露治療の「殺人ノート」に記したとおりの事件が起こり、彼女の日常はその危うい均衡を失う。物語が進むにしたがって緊張感は鋭さを増し、まったく目が離せず、息苦しいほどだ。文章がとにかく上手なうえ、構成も美しい。

  •  筆者の2冊目の小説。処女作の「虹を待つ彼女」も良かったが、本作も秀作。キャラクターが立っており、ストリーテリング・構成も考え抜かれている。
     「虹を待つ彼女」はAIをメインにした話だったが、本作はトラウマを抱えた女子中学生の内面を描いたもの。
     同級生・加奈子の死により心に傷を負い、その為、常に人を殺すことを考えることで心の平穏を得ている女子中学生・理子。
     理子は加奈子の弟で父親から虐待を受けているという悠人から「父親を殺してほしい」という依頼される。
     ストーリー的には人が死ぬところを見たいと考えている女子高校生らを主人公にした湊かなえの『少女』と最低な養父を殺そうと考える高校生を主人公にした貴志雄介の『青の炎』を混ぜ合わせたような内容だが、本作はもっと前向きになれる内容。
     筆者の処女作も本作も、根底に「少女と死(自殺・自死・殺人」というものが潜んでいる。
     イラストレーターloundraw氏による本書の主人公を描いた「儚く見えながらも毅然とした強さを感じさせられる透明感のある少女」のカバーイラストも秀逸。
     

  • 強迫観念・加害症を持つ女子のお話。彼女の心の動き、しっかり伝わってきた。殺人とか結構しんどい内容なんだけれど、うまくまとまってるし、スススッと読めた。思ってたよりも良かった。
    それにしても。現代の中学生の一部分なのか、そういった症状の独特の考えなのか。自分がもう少し(もっと?)若ければ、違った風に受け取ったかなあ。

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著者プロフィール

小説家。1980年、東京都生まれ。第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、2016年に『虹を待つ彼女』(KADOKAWA)でデビュー。2022年には、のちに『五つの季節に探偵は』(KADOKAWA)に収録された「スケーターズ・ワルツ」で第75回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した。このほか著作に、『少女は夜を綴らない』(KADOKAWA)、『電気じかけのクジラは歌う』(講談社)などがある。

「2023年 『世界の終わりのためのミステリ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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