虚像のアラベスク

著者 : 深水黎一郎
  • KADOKAWA (2018年3月2日発売)
3.17
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  • レビュー :4
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041058732

作品紹介・あらすじ

バレエ団に公演中止を求める脅迫状が届いた。海埜刑事が甥の芸術探偵・瞬一郎と通し稽古に向かうと、演目の『ドン・キホーテ』は危険なシーンばかり。海外の要人警護の任務も加わり、緊張の中、舞台の幕があがる!

虚像のアラベスクの感想・レビュー・書評

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  • 深水さん待望の新作は書き下ろしで、中編2話におまけのエピローグが付いた海埜警部補シリーズ。
    第1話のバレエ団の事件には芸術探偵・瞬一郎が出てきて、海埜との間でバレエの蘊蓄や用語の説明が延々と語られる。謎解きミステリではあるが、探偵役としての瞬一郎の活躍は少なく、何とも物足りなかった。
    それで、今回は凡作なのじゃないかと思ったら、第2話で見事にヤラレた。くそ~。その為の第1話だったのか~!
    ホントにこの著者は油断がならない。怒り出す人がいるかもしれないけど私は好きです。

  •  深水黎一郎さんの新刊は、海埜刑事と甥の瞬一郎のコンビが活躍する、芸術探偵シリーズ最新作である。当然見逃せない。今回のテーマはバレエ。『トスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ』ではオペラをテーマにしていたが、馴染みがない点はまったく同じ。だからこそ、期待も高まる。

     まずは正統的な「ドンキホーテ・アラベスク」。創立15周年記念公演を目前にした名門バレエ団に、公演を中止せよとの脅迫状が届く。しかも、初日には欧州委員会委員長の来場が予定されていた。捜査と警護に駆り出された海埜と、ちゃっかり付いてくる瞬一郎。

     フランス語が飛び交う稽古場の様子は、軽いジャブ。瞬一郎の解説で、何とかポーズは想像できる。原作も読んだことがない『ドンキホーテ』の舞台演出は、素人なりに興味深い。このシリーズらしい、精通した作者ならではの設定は、相変わらずで嬉しくなる。どこか見落としはないのか? 公演当日は着々と迫る。不安が拭えないまま迎えた、公演初日。

     その初日の途中で、一大事発生! 一大事すぎてもちろん書けない。予想を大幅に裏切る展開と結末に、やられた。舞台以上にドラマチックではないか。実際にこんなことがあったら、警察幹部の首が飛びまくるだろうが、そこは大目に見よう。バレエはわからなくても、バレエの世界に生き、切磋琢磨する人間たちの、情熱とエネルギーは、十分に伝わるだろう。

     続いて「グラン・パ・ド・ドゥ」。別のバレエ団の話のようである。ところが…予想外の連続だった「ドンキホーテ・アラベスク」だが、こちらの方がより予想外、いや、はるかに予想外なのだった。種明かしの瞬間、ポカンとさせられました。先の話が、ドラマチックであっただけに…。

     邪道というわけではない。いわゆるあの手法であり、前例はいくらでもある。でもね…専門知識を駆使して、ここまでやるか? ある意味、この手法の極致かもしれない。深水さんはあちらにも精通されているようだが、あっちとこっちを結びつける発想の源は何だろう。それにしても、この2編を1冊にまとめて刊行したのは、深水さんも出版社も懐が深い。

     「史上最低のホワイダニット」と題されたエピローグ。そのことは自分も知っていたが、そもそもなぜこの世界に入ったのだ? やはり、メフィスト賞出身だけに、一筋縄ではいかない作家である。

  • 2018/03/07読了

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