- 本 ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041059265
作品紹介・あらすじ
ジャクソン・ポロック幻の傑作が香港でオークションにかけられることになり、真矢美里は七人の仲間とある計画に挑む。一方アーティスト志望の高校生・張英才のもとには謎の集団「アノニム」からコンタクトがあり!?
感想・レビュー・書評
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本書の表紙になっているのは、「ナンバー1A 1948」であると最後に記載があった。
ジャクソン・ポロックのナンバーシリーズ。名前は知っていたが、あまり関心はなかった。今も関心はないが、大原美術館で見たときは、やはり作品の持つ力強さに引き込まれたが、ナンバーシリーズほどではないが、何が書かれているのか、美術通ではない私にとって、心奪われる作品ではなかった。
本作「アノニム」は、美術分野でなんらかの経験を持つプロフェショナルな窃盗集団。美術品を盗んで売り捌くのではなく、盗まれた美術品を収めるべきところに収める(先導する)。収めるときは、その作品はクリーニングされ、修復された状態で、謎のステッカーとともに詳細なコンディション・リポートが添付されている。いわゆる、美術窃盗品を窃盗する「正義の窃盗集団」。
「アノニム」メンバーは、8名。本書のはじめにイラスト付きで紹介されている。名前といわゆるニックネームも紹介されているのだが、メンバー以外にも本作のキーパーソンで難読症の張英才(チョンインチョイ)、
使い切ることのできない資産を有するゼウスとその元で美術品の窃盗を行うヘロデ、ザザビーズ香港社長のジョニー・ラウ、ナンバー・ゼロの所有者で大富豪のロレンダ・ボシュロムなど、結構な数の名前が飛び交うため、アノニムメンバー以外で突如として出てきた名前は、メモしながら読み進めることになってしまった。
キュレーターである著者ならではで、ポロックの詳細な説明が入るかと思ったのだが、あまりなかったのが、少し残念だった。その代わりに、英才とオーサムとのQ&Aは美術舞台がフランスからアメリカに移ってAnswerもあり、勉強になった。教科書で読んでも、なかなか頭に入ってこないが、小説の中で学ぶと自然と頭に入るのが不思議だ。
著者がポロックを称える描写がある「新しい表現、自分だけの表現を見つけようと挑戦したポロック。巨大な白いカンヴァスを床いちめんに、広げて、その上縦横無尽に動き回った。ツバメが舞い飛ぶように、空を駆け抜けていく雲のように。絵筆から滴る絵の具は、大地に轟く雷、叩きつける激しい雨になって、カンヴァスという名の世界を覆い尽くした。」この表現が大胆で力強くかつ美しい。
また、前向きな人生を歩んでいくためのメッセージがある。アノニムが英才を支援する理由をジェットが説明するとき「アートで世界を変えられるかどうか、本当のところはわからない。けれど、変えられるかもしれない、と思うことこそ大事なんだ。そして、なんでもいい、何かアクションを起こすことが大切なんだ。私はそうだった。アートで世界をー少なくとも、自分の世界を変えられるかもしれない。そう思って行動してきた。アートで誰かの人生を変える。誰かの人生が変われば、ひょっとすると、この世界も変わるかもしれない。それが<アノニム>の活動の骨子になった。‥‥その思いを、勇気をあの少年に移植したいのだー。」
この説明は、生きていく上でとても大切な意味のある言葉として、私の心に響いた。
そして、英才に翌日のデモでのスピーチをオーサムが説得する時も「どうせ開くはずがないと、閉ざされたドアをノックもせずに終わってしまうやつには、世界を変える力はない。けれど、ひょっとしたらこのドアはほんの少しでも動くかもしれないと、とにかくノックしてみるやつには、閉ざされたドアを開けれ可能性と力があるはずなんだ」と、同じ意味のメッセージを別の言葉で説明をしている。
事あるごとに、前向きな姿勢でいるためのメッセージが散りばめられている。
余談ではあるが、先週、「なんでも鑑定団」(2020年7月5日放送)を見ていたら、偶然「アンディ・ウォーホルの「キャンベル缶」が1,000万円と鑑定されていたが、本作では9,000万USドルと書かれていた。この差がオークショニアの力の差なのだろう。タイムリーな話題が上がっていて、食いついてしまった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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ゼウスの逆襲編っ!!ちょっとそれは、・・・。
オススメ本ありがとうございます。
なんと、ちょうどぴったり、その三冊が今手元にありま~す(...ゼウスの逆襲編っ!!ちょっとそれは、・・・。
オススメ本ありがとうございます。
なんと、ちょうどぴったり、その三冊が今手元にありま~す(^^♪2019/06/14
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私の大好きなポロックに関するフィクション。
でも、ポロック自身は全く出て来ない。評価しにくいんだけど、物語としては面白く読めました。マハさんとしてはライトな方かな。
でも、いろんなことが解き明かされることなく、謎のまま終わるのがちょっと残念。
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初めは、話の展開が楽しみで仕方のない、軽めのストーリーだと思って読みました。
登場人物がみんな粋でかっこよく、会話もお洒落。
そしてなにより、[アノニム]という言葉が素敵に使われているあたり、さすがです!
ただ、読後にじわじわ感じるところがありました。
アメリカのアーティスト、ジャクソン・ポロックの絵をめぐる物語。
この作品では、香港の大規模デモが重要な伏線として描かれています。
一国二制度のもとで悩める都市ならではの社会情勢。
その中で悶々とする若者。
その背中を押して勇気づけるのが、
ピカソを超えようともがき苦しんで独自の世界を切り拓いたポロックの作品。
これは、魂の自由への賛歌の物語なのですね。 -
登場人物一覧を見たときに、
「あちゃー、カタカナだぁー」と思ってしまったー笑
カタカナが苦手な私でも読めるか心配だったけど
なんとか読めたよー!!
ジャックソン・ポロックのナンバー・ゼロ。
アクション・ペインティングという書き方で
新しい芸術を見いだした人物。
そのナンバー・ゼロがオークションに出される。
それを「アノニム」という良い美術怪盗集団が
偽物とすり替える。
さらに、香港の学生運動にそれを掲げる。
なんか、いろいろと壮大な話だった。
こういう原田マハさんもあるのね、と
新しい発見でしたー。 -
ジャクソン・ポロックのアートを背景にした表紙がスタイリッシュな、原田さんのアート・エンタメ。
ラノベ風なイラストの<アノニム>メンバー紹介ページからもわかるように、本作は思いきりエンタメに振り切っている感があります。
学生デモが盛んな香港を舞台に、コンテンポラリー・アートの巨星、ジャクソン・ポロックの幻の傑作「ナンバー・ゼロ」を巡って繰り広げられる、クールでエキサイティングな展開となっております。
他の方も書いておられるように、さながら『オーシャンズ8』を彷彿とさせるような、謎のエキスパート集団<アノニム>。その<アノニム>から“贋作作成”のコンタクトを受ける、アーティスト志望で難読症(ディスレクシア)の高校生・張英才、「ナンバー・ゼロ」の落札を狙う闇のコレクター・<ゼウス>・・。
それぞれのキャラ設定は良いのですが、深みがないせいか、プロットの緩さは否めない感じです。(この辺りも映画の『オーシャンズ8』と同じかも)
なので、本作はサザビーズ香港のオークションの雰囲気を堪能し、ゴージャスな富豪気分を味わい楽しむのが良いかと思います。
勿論、原田さんらしく、アートに対する熱や愛情はすごく伝わってきます。
終盤の学生決起集会で、英才がポロックを絡めた演説の内容は胸に響くものがありました。
そして、ラストに“アノニム”の意味がサラっと書いてるのが何ともクールな感じでカッコよかったですね。 -
「ジャクソン・ポロック」による名画の存在と、アクション・ペインティングという手法を教えてくれた1冊。
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舞台は香港。
盗まれた名画を取り戻し、修復してもとの持ち主に戻すという活動をしている窃盗団「アノニム」。
今回の彼らの目的は、ジャクソン・ポロックによる未発表の作品「ナンバーゼロ」を手に入れることだった。
その一方、香港の航行する・張英才と接触するアノニムの目的とは…?
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アノニムのメンバーは8名おり、皆とても個性的で容姿も肩書きもバラバラです。
本編に挿し絵はないものの、登場人物紹介ページが見開きであり、アノニムメンバーのビジュアルは公開されています。
しかし、アノニムとともに重要な位置にいるはずの高校生・張英才や、今回の“敵”のビジュアルはなく、その点は残念に思いました。
そして正直なところ、おそらくこの登場人物紹介ページはいっそなくてもよかったと思います。
なぜなら、個性豊かなアノニムメンバーにも関わらず、本文で過不足なく自然かつ鮮やかに、メンバー紹介がなされているからです。
登場人物紹介をいっそなくす、または敵や張英才を含めた登場人物一覧にする、このどちらかの方が、すっきりしたのではないかと思います。
本編は、原田マハ節炸裂!という感じで、とてもスピーディーかつ濃厚な物語でした。
ジャクソン・ポロックによるアクション・ペインティングで描かれた名画の魅力、アノニムの鮮やかな活動、そしてアートと世界の関係性と未来への希望が見事に融合し、エンディングを迎えました。
そして未来へと向かう若者に対して、苦難の状況を打破していくのは、自分自身の志と小さな一歩であるという、強いメッセージ性を感じました。
オークションのシーンは緊張感が一気に高まったが故に、あっさりしすぎた印象もありましたが、これは読み手の好みがわかれる部分かもしれません。
このお話では敵の存在もまだ末端の一部、という感じでしたので、ぜひ続編が読めるといいなと思いました。 -
今まで読んだマハさんのアート関連の作品で一番エンタメ度が高かった。アートで世界を変えたいとボスのジェットの元に集まったアノニムのメンバー7人はそれぞれの分野での第一人者のスペシャリストだけあって優秀。オークションの裏側を覗けたようで楽しかったけど、優秀で有能なメンバーが、007ばりの小道具まで使うものだからミッションが順調すぎてこの手のエンタメ小説に求めたいハラハラ度やワクワク感といった成分が足りなかった。今回の敵である<ゼウス>側が敵として物足りなく、あっさりとした幕切れ。シリーズものらしいので、これからもっと盛り上がっていくことに期待したい。
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一冊では消化しきれんかったな〜
って感じ
シリーズ化するつもりがなさそうな話の流れっぽいのでまさしく消化不良
あのキャラ紹介のページが余計だよね
編集者のミスだと思う
これから一人一人が主人公になるような一大スペクタクルが始まりますよ!って感じやもん
著者プロフィール
原田マハの作品





