幻夏 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 396
レビュー : 56
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041059357

作品紹介・あらすじ

「俺の父親、ヒトゴロシなんだ」毎日が黄金に輝いていたあの夏、同級生に何が起こったのか――少女失踪事件を捜査する刑事・相馬は、現場で奇妙な印を発見し、23年前の苦い記憶を蘇らせる。台風一過の翌日、川岸にランドセルを置いたまま、親友だった同級生は消えた。流木に不思議な印を残して……。少年はどこに消えたのか? 印の意味は? やがて相馬の前に恐るべき罪が浮上してくる。司法の信を問う傑作ミステリー。日本推理作家協会賞候補作。

感想・レビュー・書評

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  • 初めましての作家さん。
    この本は以前から読みたい!と思っていた一冊。
    太田さんは「相棒」や「警視庁捜査一課9係」の脚本を担当されたこともある方。
    さらには、ウルトラシリーズ(ウルトラマンガイア、ウルトラマンコスモス等)の脚本も。

    太田さんの小説第2作目で、書店員さんにもファンが多く、ブクログでも評価が高い。
    ミステリーなので、レビューは少しだけ。

    12歳の夏。
    少年は川辺の流木に奇妙な印を残して忽然と消えた。
    23年後、刑事となった親友は少女失踪事件の現場で同じ印を発見する。
    あの夏、少年の身に何が起こっていたのか…

    主要登場人物の相馬、鑓水、修二は、第一作「犯罪者 クリミナル」で出会っている。
    さらには第3作「天上の葦」にも登場しているらしい。
    これはぜひとも第一作から読まねば!

  • テレビドラマ「相棒」などで知られる気鋭の脚本家の小説第2作。
    第1作『犯罪者』で登場した3人組が、また活躍するシリーズ物ともいえるこの作品。
    第2作は、3人組の一人刑事の相馬の幼馴染の家族が巻き込まれる冤罪がテーマ。
    書中、主人公の一人が司法の現状を指弾する。
    「捜査官は自分の筋読み通りの容疑者を逮捕しようと努力し、検察官は起訴した被告に関して有罪判決を勝ち取ろうと努力し、裁判官は事件の処理件数を上げようとする。その結果、たまに冤罪が起こってもだれも責任を問われず、咎められない」
    さらに、冤罪事件を担当した当時の検察官にこう迫る。
    「冤罪が生まれるのは偶然じゃない。捜査、起訴、公判、判決、全てを含めた司法構造から必然的に冤罪は生み出されている。この構造がある限り、・・・冤罪被害者は永久になくならない。・・・」
    また、捜査で見つかった証拠のうち、被告人に有利な証拠は裁判には提出されないという。有罪率99.9%が、こんなところにも一因があるのだろうか。
    日本の司法制度の矛盾を突きながら、第1作同様ジェットコースター的展開で、読者を翻弄させ、小説の面白さを体感させてくれる満足度超級のエンタメ。

  • 第1弾すっ飛ばして2作目から読んだけれど、充分に読み応えがあって面白くて。
    先の読めない展開、次々と浮かび上がる謎。
    500ページ近くあるのに、それすらも気にならなかった。

    ただのミステリーだけではなくて、社会的な問題(今回は主に冤罪と日本の司法の構造について)も取り入れられているが、司法に明るくない私でも内容は理解できたし、上手く物語に溶け込ませているなぁと。

    私はこの物語の中に出てくる柴谷の様に、自分がやってない罪について裁判では裁判官がちゃんと話を聞いて、しかるべき判決を下してくれるものと思っていたが、そうではないと知って驚いた。警察、検察が自分達に不利な証拠や証言をいとも簡単に隠蔽、隠滅できてしまう制度。
    そして、罪なき人が犯罪者に仕立て上げられ自分の人生、残された家族、親戚、友人などの人生までもを引き裂いてしまう恐ろしさと、非情さ。

    クライマックスで尚が、12歳の小さな身体と頭で母と幼い弟を冤罪から守ろうと必死になるくだりでは、思わず涙してしまった。
    もしあの時、警察も検察もしかるべき正しい手段で捜査していれば、尚の父も尚も尚の家族も苦しい、死ぬほど辛い思いはしなくても済んだのに、と。
    一家は離散する事なく、幸せに暮らせていははずなのに。。。
    たらればなのは分かる。だけれど、何の罪もない家族が犠牲になり、裁きをくだした検察、弁護士、そして警察の人間はそんな事を忘れて昇進し、地位も名誉も何もかもを手に入れて、のうのうと生きているのはあんまりだ。

  • あの遠い夏の日、少年は、尚(なお)と拓(たく)という兄弟と出会った。
    しかし、その後の人生は、3人に過酷な試練を与えた。
    あの日、尚が、忽然と姿を消してから...。

    あれから、20年以上の年月が経ち、少年は刑事になった。そして、ある誘拐事件を捜査するうちに、あの夏の日が、不思議なリンクを見せてくる。

    二転三転する真実に、翻弄される相馬刑事たち。
    読者の予想を上回る展開に、読む手が止まりません。

    あの遠い夏の日に、思いを寄せる相馬と尚。
    そして、静かに慟哭の物語が閉じる。

    司法の正義とは、冤罪が生み出される仕組みとは、日本の司法制度は、本当に正しく機能しているのか、様々なことを世に問う一冊です。

    やや長編ですが、一気読み必至です。
    表紙の夕暮れの写真も、本書の内容にリンクする、ノスタルジー溢れる素晴らしい写真と思います。

  • この人かな?この人かな?と犯人を想像しながら読むけど思っていた最後とは違った!それにしても登場人物がみんな頭キレすぎ!それでいて人間臭くてとても魅力的!
    呼吸を忘れる展開、一段落してため息つきながらの納得。良いところで切り上げられなくて、寝る時間を削って読んだ。これも実写化してほしいけど難しいんじゃないかなー。

  • 頭の回転の早い兄貴。
    素直な弟。
    母親思いの兄弟。
    良家子女の優しく頭の良い美人な母親。
    父親の冤罪被害さえなければ、一家揃って日々を幸せに暮らしていたんだろうなと思うと、最後の出会いの夏の回想シーンからその後の大波乱を思い起こされ、水沢一家へのやり切れない気持ちが大きい。

  • 流れるように進むストーリーに時間を感じさせない展開でいっきよみ。感情移入させるととても切ないストーリー。兄弟である尚と拓が冤罪を通して世の中に問いかける。あらゆる事象、物証が伏線として張られており、無駄なところが本当にない作家だなぁとおもう。

  • 「犯罪者」を読んでこの作家が好きになったので読みました。これもなかなかよかったです。切ないです。
    子供のころの場面はほのぼのとしており、前作に出てきた相馬、鑓水、修治の3人のかけあいはやっぱり面白い。

  • 面白かったですが、心が痛くてもやもやする読後感です。
    ある冤罪が、登場人物たちの人生を狂わせる。
    12歳の尚がとった行動が辛いです。裁く側には、冤罪となった人や家族のその後の人生への想像力が足りないかもしれない、でもそれはわたしも同じだと思いました。問題提起されました。
    尚、拓、相馬の、幻のような短い夏のエピソードが、幸せで、辛くて悲しいです。
    太田愛さん、刑事ドラマの脚本家さんなのですね。考えさせられました。

  • 主題となるテーマに関わる司法の構造的問題などを説明するために、ややスピード感が犠牲になっている箇所はあるが、間延びするというほどのこともなく読み終わることができた。
    問題提起と小説としての面白さがうまく両立できていると思う。

    登場人物が複数の作品で共通する小説にありがちだが、他作品の話を不要に混ぜてくると唐突な感じが否めない。ついつい読みたくなっちゃうので狙いは当たってるんだけど。

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著者プロフィール

香川県生まれ。1997年テレビシリーズ「ウルトラマンティガ」で脚本家デビュー。「TRICK2」「相棒」など、刑事ドラマやサスペンスドラマで高い評価を得ている。2012年、本作『犯罪者 クリミナル』(上・下)で小説家デビュー。13年には『幻夏』を発表。日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補となる。17年には3作目『天上の葦』を刊行。

「2017年 『幻夏』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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