幻夏 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041059357

作品紹介・あらすじ

「俺の父親、ヒトゴロシなんだ」毎日が黄金に輝いていたあの夏、同級生に何が起こったのか――少女失踪事件を捜査する刑事・相馬は、現場で奇妙な印を発見し、23年前の苦い記憶を蘇らせる。台風一過の翌日、川岸にランドセルを置いたまま、親友だった同級生は消えた。流木に不思議な印を残して……。少年はどこに消えたのか? 印の意味は? やがて相馬の前に恐るべき罪が浮上してくる。司法の信を問う傑作ミステリー。日本推理作家協会賞候補作。

感想・レビュー・書評

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  • テレビドラマ「相棒」などで知られる気鋭の脚本家の小説第2作。
    第1作『犯罪者』で登場した3人組が、また活躍するシリーズ物ともいえるこの作品。
    第2作は、3人組の一人刑事の相馬の幼馴染の家族が巻き込まれる冤罪がテーマ。
    書中、主人公の一人が司法の現状を指弾する。
    「捜査官は自分の筋読み通りの容疑者を逮捕しようと努力し、検察官は起訴した被告に関して有罪判決を勝ち取ろうと努力し、裁判官は事件の処理件数を上げようとする。その結果、たまに冤罪が起こってもだれも責任を問われず、咎められない」
    さらに、冤罪事件を担当した当時の検察官にこう迫る。
    「冤罪が生まれるのは偶然じゃない。捜査、起訴、公判、判決、全てを含めた司法構造から必然的に冤罪は生み出されている。この構造がある限り、・・・冤罪被害者は永久になくならない。・・・」
    また、捜査で見つかった証拠のうち、被告人に有利な証拠は裁判には提出されないという。有罪率99.9%が、こんなところにも一因があるのだろうか。
    日本の司法制度の矛盾を突きながら、第1作同様ジェットコースター的展開で、読者を翻弄させ、小説の面白さを体感させてくれる満足度超級のエンタメ。

  • 第1弾すっ飛ばして2作目から読んだけれど、充分に読み応えがあって面白くて。
    先の読めない展開、次々と浮かび上がる謎。
    500ページ近くあるのに、それすらも気にならなかった。

    ただのミステリーだけではなくて、社会的な問題(今回は主に冤罪と日本の司法の構造について)も取り入れられているが、司法に明るくない私でも内容は理解できたし、上手く物語に溶け込ませているなぁと。

    私はこの物語の中に出てくる柴谷の様に、自分がやってない罪について裁判では裁判官がちゃんと話を聞いて、しかるべき判決を下してくれるものと思っていたが、そうではないと知って驚いた。警察、検察が自分達に不利な証拠や証言をいとも簡単に隠蔽、隠滅できてしまう制度。
    そして、罪なき人が犯罪者に仕立て上げられ自分の人生、残された家族、親戚、友人などの人生までもを引き裂いてしまう恐ろしさと、非情さ。

    クライマックスで尚が、12歳の小さな身体と頭で母と幼い弟を冤罪から守ろうと必死になるくだりでは、思わず涙してしまった。
    もしあの時、警察も検察もしかるべき正しい手段で捜査していれば、尚の父も尚も尚の家族も苦しい、死ぬほど辛い思いはしなくても済んだのに、と。
    一家は離散する事なく、幸せに暮らせていははずなのに。。。
    たらればなのは分かる。だけれど、何の罪もない家族が犠牲になり、裁きをくだした検察、弁護士、そして警察の人間はそんな事を忘れて昇進し、地位も名誉も何もかもを手に入れて、のうのうと生きているのはあんまりだ。

  • この人かな?この人かな?と犯人を想像しながら読むけど思っていた最後とは違った!それにしても登場人物がみんな頭キレすぎ!それでいて人間臭くてとても魅力的!
    呼吸を忘れる展開、一段落してため息つきながらの納得。良いところで切り上げられなくて、寝る時間を削って読んだ。これも実写化してほしいけど難しいんじゃないかなー。

  • 頭の回転の早い兄貴。
    素直な弟。
    母親思いの兄弟。
    良家子女の優しく頭の良い美人な母親。
    父親の冤罪被害さえなければ、一家揃って日々を幸せに暮らしていたんだろうなと思うと、最後の出会いの夏の回想シーンからその後の大波乱を思い起こされ、水沢一家へのやり切れない気持ちが大きい。

  • 主題となるテーマに関わる司法の構造的問題などを説明するために、ややスピード感が犠牲になっている箇所はあるが、間延びするというほどのこともなく読み終わることができた。
    問題提起と小説としての面白さがうまく両立できていると思う。

    登場人物が複数の作品で共通する小説にありがちだが、他作品の話を不要に混ぜてくると唐突な感じが否めない。ついつい読みたくなっちゃうので狙いは当たってるんだけど。

  • 毎日が黄金に輝いていた12歳の夏休みを共に過ごした親友が新学期に突然姿を消したー最後に目撃された川辺の流木に奇妙な印を残して。
    23年後、刑事となった相馬は、少女失踪事件の現場で同じ印を発見する。
    相馬の胸に消えた親友・尚の言葉が蘇る。
    「俺の父親、ヒトゴロシなんだ」
    あの夏、本当は何が起こっていたのか。
    今、何が起ころうとしているのかー
    一方、鑓水の興信所に尚の母親から依頼が入る「尚を見つけてください」

    人が犯した罪は、正しく裁かれ、正しく償われるのか?
    司法の信を問う傑作ミステリ。


    知らずにシリーズ2作目の本作から読んでしまった…
    前作を知らなくても問題なく読めたけど、やっぱり順番に読みたかったな-
    3人の出会いが気になるから後から前作も、次作も読もうと思います。


    冤罪が壊したある家族の物語。

    本星と見なされた容疑者の取り調べが昭和の刑事ドラマか?って描写なんだけど…
    何年か前に可視化の話題を聞いた気がするけど、現実でもまだこんななのかな-だったら怖すぎる-

    なんというか、少年たちの夏休み満喫の眩しさと、悪いことが起きているじんわらり漂う重い空気のコントラストが極端で。

    何より、尚の行動力と胆力が凄すぎる!

    せめて台風が、大した被害出さずに過ぎてれば-

    上にたって裁く側が、この方法がおかしい間違ってると思わず正しいと信じての行動だということが怖い。
    そして、犯罪と関わりない立場だとその姿勢を肯定してしまう自分たちも。

    真犯人や、探し求めた尚の姿、3人の捜査、意外で面白くて一気に読みました。またひとり名前買いしていいんじゃ?と思える作者を知ることができて良かったです-

  • 子供の頃の美しい夏と、現在の悲しい冬の対比。ひと夏の思い出がこれでもかというくらい尊く描かれているのでそれぞれの登場人物の現在での境遇が切なさを倍増させる。

  • 哀しいストーリーです。

  • 前作「犯罪者」と比べるとゆっくりとしたスタートながら、後半のたたみかけと回想シーンの組み込み方はさすが。この作品から読んでもいいけど、やっぱりシリーズものなので前作からぜひ。

  • 面白かったですが、心が痛くてもやもやする読後感です。
    ある冤罪が、登場人物たちの人生を狂わせる。
    12歳の尚がとった行動が辛いです。裁く側には、冤罪となった人や家族のその後の人生への想像力が足りないかもしれない、でもそれはわたしも同じだと思いました。問題提起されました。
    尚、拓、相馬の、幻のような短い夏のエピソードが、幸せで、辛くて悲しいです。
    太田愛さん、刑事ドラマの脚本家さんなのですね。考えさせられました。

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