二度のお別れ (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041059425

作品紹介・あらすじ

三協銀行新大阪支店で強盗事件が発生。犯人は現金約400万円を奪い、客のひとりを拳銃で撃って人質として連れ去った。大阪府警捜査一課が緊急捜査を開始するや否や、身代金1億円を要求する脅迫状が届く。「オレワイマオコツテマス――」。脅迫状には切断された指が同封されていた。刑事の黒田は、相棒の“マメちゃん”こと亀田刑事とともに、知能犯との駆け引きに挑む。『破門』の直木賞作家のデビュー作にして圧巻の警察ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 馴染みの無いコテコテの関西弁を脳内で再生する際のイントネーションに苦戦しながらも楽しく読むことが出来た。

    銀行強盗誘拐事件が起きる。刑事達の脱線会話も面白かったが、事件の緊迫感は薄い。物語が大きく動き出すのは後半の後半から。ヒントになるものが多く、考察するのが楽しい。勿論、良い意味でしっかりと裏切ってくれる。私が想像出来る範囲は余裕で飛び越えていった。

  • 1983年の第一回サントリーミステリー大賞佳作にして黒川さんのデビュー作。
    その手口が「グリコ・森永事件」に似ていたために当時警察から事情聴取されたという曰く付きの作品でもある。
    久しぶりに再読した。

    銀行で強盗事件が発生。犯人は現金約四百万円を奪った上、勇敢に飛びかかってきた男性客に発砲し怪我を負わせ、男性客を人質に取って逃亡した。その後、男性客の自宅へ身代金一億円を要求する脅迫状が届く。

    一番の山場は一億円の身代金を巡る犯人と警察との攻防。逆探知を避けるため、事前の指示は基本的に手紙や伝言。長くなりそうな電話については男性客宅ではなくその隣家や銀行を通じて行う。
    身代金の運搬もまるで警察を弄ぶかのように振り回す。行く先々に伝言メモが置いてあったり中継先の店に電話が掛かってきたり、実に入念な計画がされていたことが分かる。
    同時に人質の指や耳を切り落として送り付ける残忍さも見せつけ、人質の家族や警察へ犯人の指示通りにしないと最悪の事態になる恐怖心を植え付ける。

    大阪府警黒豆コンビシリーズでもあり、会話の軽妙さはデビュー作から光っている。特にマメちゃんこと亀田の舌の止まらなさは後の様々なシリーズに通じるところを感じてニヤニヤしてしまう。しかもマメちゃんは単におしゃべりなだけでなく頭が回るのが良い。
    一方先輩の黒さんこと黒田は年齢もあってか疲れ切っている感じ。五歳の娘の声を聞けば元気を取り戻したり娘となかなか遊べないと心の中で零しているあたり、子煩悩な父親ということか。

    改めて読み返してみれば最初から怪しさがあちこち見えている。しかし現代の振り込め詐欺のように冷静に考える隙を与えなかった犯人の方が上手だったと言えるだろうか。

    最後がバタバタしていたのが残念。しかしこれは解説にも書いてあるように、応募作品ということで締め切りも迫っていたらしいし原稿枚数の制限もあっただろう。取材も十分に行えなかっただろうから色々粗も見えるがそれもあって今の黒川さんがある。
    アナログ感満載なのも今読み返せば楽しいし、犯人の動機も後の黒川作品に繋がるところがあって興味深い。『二度のお別れ』というタイトルの意味と共にラストの虚無感を置いていくところも良い。

  • 古本屋さんで見かけ買った一冊。

    強盗と誘拐の話だった。

    完全犯罪をやった犯人が事件の真相を最後にバラす

    なんか不思議な感じで終わった内容だった。

    今まで読んできた事件物の小説はだいたいがどんな形であれ解決している。

    でもこの小説は主人公達が事件の真相に辿り着いていない。
    欲しい所までいっているのに

    完全犯罪を成功させても幸せにはならなかった犯人

    そりゃそうだなと感じた小説でした。

  • 大阪府警シリーズ第一弾。

    読みやすい内容だが、最後のどんでん返しが面白かった。

    真相に辿り着くプロセスに一工夫あればもっと良かったかも。

    最後の三輪車の記述が胸を打つ。

  • 関西弁での軽快なやり取りと、事件の意外な結末が面白かったです。最後に犯人自身が種明かしする所など、凝った展開でした。

  • お話としては、大阪の銀行で銀行強盗が発生。
    その場に居合わせた男性客が犯人を取り押さえようとしたが犯人に撃たれ負傷、そのまま連れ去られ犯人からは身代金の要求が。
    大阪府警捜査一課が犯人逮捕に当たるが、最初は行き当たりばったりでの誘拐かと思われたが、犯人は意外に巧妙な交渉を持ちかけてくる。

    事件の真相自体はある程度事件が進展した時点で何となく思っていた通りでしたが、エンディングの持って行き方は新鮮でした。
    あと書かれたのが80年代前半なので携帯電話も登場せず電話ボックスが犯人からの連絡に頻繁に使用されるのが懐かしかった。

    この小説は登場人物のキャラが一人一人個性的で、こんな奴ら本当に居るんだろうな・・・と思わせる。
    大阪府警が舞台と言うことで会話はすべて大阪弁、特に主人公の黒田と亀田の会話は軽妙で大阪出身の私としては楽しく読むことができた。

  • 黒川さんのデビュー作 もとは1982年刊行 3度目の文庫化だそう 人気の程がうかがえる
    JRがまだ国鉄のころのはなし でも、国鉄やスマホがないこと以外では、古さを感じさせるものはなく、令和に読んでも、私には謎解きが分からなかった
    捜査は難航 迷宮入りの未解決事件となってしまったが、最後に驚く展開 なるほど二度のお別れか
    大金を手に入れても、最後には悲しい結末
    惜しいところまで嗅ぎつけた、黒マメさんたち
    撃たれなくてよかった

    最新刊も読みたいし、過去の他のシリーズも読破したい
    黒川さんの妻雅子さんの果実の画も素敵で、見入ってしまう

  • 巧妙な身代金事件と、その種明かしの方法が斬新で評価できる/ 

  • 著者のデビュー作。黒マメコンビが活躍する、銀行強盗事件を題材にした警察ミステリー。

  • コテコテ関西弁と真相の重さとのギャップよ。

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著者プロフィール

黒川博行
1949年、愛媛県生まれ。京都市立芸術大学彫刻科卒業後、会社員、府立高校の美術教師として勤務するが、83年「二度のお別れ」でサントリミステリー大賞佳作を受賞し、翌年、同作でデビュー。86年「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞を受賞、96年『カウント・プラン』で推理作家協会賞を、2014年『破門』で直木賞、20年ミステリー文学大賞を受賞した。

「2022年 『連鎖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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