二度のお別れ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 174
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041059425

感想・レビュー・書評

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  • 1983年の第一回サントリーミステリー大賞佳作にして黒川さんのデビュー作。
    その手口が「グリコ・森永事件」に似ていたために当時警察から事情聴取されたという曰く付きの作品でもある。
    久しぶりに再読した。

    銀行で強盗事件が発生。犯人は現金約四百万円を奪った上、勇敢に飛びかかってきた男性客に発砲し怪我を負わせ、男性客を人質に取って逃亡した。その後、男性客の自宅へ身代金一億円を要求する脅迫状が届く。

    一番の山場は一億円の身代金を巡る犯人と警察との攻防。逆探知を避けるため、事前の指示は基本的に手紙や伝言。長くなりそうな電話については男性客宅ではなくその隣家や銀行を通じて行う。
    身代金の運搬もまるで警察を弄ぶかのように振り回す。行く先々に伝言メモが置いてあったり中継先の店に電話が掛かってきたり、実に入念な計画がされていたことが分かる。
    同時に人質の指や耳を切り落として送り付ける残忍さも見せつけ、人質の家族や警察へ犯人の指示通りにしないと最悪の事態になる恐怖心を植え付ける。

    大阪府警黒豆コンビシリーズでもあり、会話の軽妙さはデビュー作から光っている。特にマメちゃんこと亀田の舌の止まらなさは後の様々なシリーズに通じるところを感じてニヤニヤしてしまう。しかもマメちゃんは単におしゃべりなだけでなく頭が回るのが良い。
    一方先輩の黒さんこと黒田は年齢もあってか疲れ切っている感じ。五歳の娘の声を聞けば元気を取り戻したり娘となかなか遊べないと心の中で零しているあたり、子煩悩な父親ということか。

    改めて読み返してみれば最初から怪しさがあちこち見えている。しかし現代の振り込め詐欺のように冷静に考える隙を与えなかった犯人の方が上手だったと言えるだろうか。

    最後がバタバタしていたのが残念。しかしこれは解説にも書いてあるように、応募作品ということで締め切りも迫っていたらしいし原稿枚数の制限もあっただろう。取材も十分に行えなかっただろうから色々粗も見えるがそれもあって今の黒川さんがある。
    アナログ感満載なのも今読み返せば楽しいし、犯人の動機も後の黒川作品に繋がるところがあって興味深い。『二度のお別れ』というタイトルの意味と共にラストの虚無感を置いていくところも良い。

  • 大阪府警シリーズ第一弾。

    読みやすい内容だが、最後のどんでん返しが面白かった。

    真相に辿り着くプロセスに一工夫あればもっと良かったかも。

    最後の三輪車の記述が胸を打つ。

  • 黒川さんのデビュー作 もとは1982年刊行 3度目の文庫化だそう 人気の程がうかがえる
    JRがまだ国鉄のころのはなし でも、国鉄やスマホがないこと以外では、古さを感じさせるものはなく、令和に読んでも、私には謎解きが分からなかった
    捜査は難航 迷宮入りの未解決事件となってしまったが、最後に驚く展開 なるほど二度のお別れか
    大金を手に入れても、最後には悲しい結末
    惜しいところまで嗅ぎつけた、黒マメさんたち
    撃たれなくてよかった

    最新刊も読みたいし、過去の他のシリーズも読破したい
    黒川さんの妻雅子さんの果実の画も素敵で、見入ってしまう

  • コテコテ関西弁と真相の重さとのギャップよ。

  • デビュー作ということで、小説の時代背景も携帯などがない時代だったりする。
    まめちゃんがなかなか切れていて面白かった。

  • 面白かった。黒川作品ならではの関西弁がクセになる。

著者プロフィール

黒川博行
1949年、愛媛県生まれ。京都市立芸術大学彫刻科卒業後、会社員、府立高校の美術教師として勤務するが、83年「二度のお別れ」でサントリミステリー大賞佳作を受賞し、翌年、同作でデビュー。86年「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞を受賞、96年『カウント・プラン』で推理作家協会賞を、2014年『破門』で直木賞、20年ミステリー文学大賞を受賞した。

「2022年 『連鎖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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