AX アックス

著者 :
  • KADOKAWA
4.09
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  • (11)
本棚登録 : 4942
感想 : 666
  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041059463

作品紹介・あらすじ

【伊坂幸太郎史上最強のエンタメ小説<殺し屋シリーズ>、『グラスホッパー』『マリアビートル』に連なる、待望の最新作!】

最強の殺し屋は――恐妻家。

物騒な奴がまた現れた!
新たなエンタメの可能性を切り開く、娯楽小説の最高峰!

「兜」は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない。
一人息子の克巳もあきれるほどだ。
兜がこの仕事を辞めたい、と考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。
引退に必要な金を稼ぐため、仕方なく仕事を続けていたある日、爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。

こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。

書き下ろし2篇を加えた計5篇。シリーズ初の連作集!

感想・レビュー・書評

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  • R2.4.27 読了。

     グラスホッパー、マリアビートルが良かったので、期待していたが残念。
    連作短編の前半は恐妻の対応がほとんどでしたが、後半2篇は殺し屋らしさが垣間見れて、良かった。
    ラストは予想外でした。

    • kurapapaさん
      参考になります!ありがとうございます!
      参考になります!ありがとうございます!
      2020/05/31
  • 短編集ではなく、連作集となっている本作は、最終章で学生だった主人公の息子が父親となり、ある病院の父の名前の診察券をきっかけとして過去と現在が繋がり、この物語の時間的な奥行きがでてくる。

    本作の主人公は通称『兜』といい、家族持ちの殺し屋。殺し屋として最高に腕が立つにもかかわらず、恐妻家で、常に妻を怒らせないように異常なくらい妻にビビっている。
    例えば、妻に対する対応術を大学ノート3冊にまとめている。そこには妻の言動に対し、どのようなリアクションを取ればいいのか、妻の態度の変化もフローチャートを混えまとめた、いわゆる『妻の対応マニュアル』である。本人は一生懸命で、第三者的には『一般的な普通の妻なのに、どうしてそんなにビビってるの?』と思うし、またそれは息子の克巳からみても私たち読者と同じように父親は常に母親を恐れているように見えている。妻に対してとる兜の思考・行動・言動と、腕のいい殺し屋のもつイメージとのギャップが、まるでコメディーのように描写されていて、それが面白く笑ってしまう。

    兜が最後に親しくなった、警備員・奈野村は、兜に命を救われる。兜がなくなり、父親となった克巳家が利用しているクリーニング店が、実は奈野村が営む店であった。兜との縁は切れてしまったが、克巳どの縁がつながっているのは、奈野村の意図的な意思によるものであろう。克巳に迫ってくる危機があれば、きっと自分が救おうと思っているのだ。だから、最後に克巳が危険な状態に追い詰められた時に克巳の前に現れて危機を救った。これで奈野村もようやく三宅に報いることができたという気持ちになったのではないだろうか。そして、このような設定をさりげなく入れ込んでいる著者の優しさ伺える。

    また、本作には、男性が参考になる女性心理が書かれている箇所がある。「妻に限らず女性は、いや人間は、と言うべきかもしれないが、とにかく、『裏メッセージ』に敏感だ。相手の発した言葉の裏には、別の思惑、嫌味や批判、依頼が込められているのではないか、と推察し、受け止める。…そして兜の妻は、表しかないメッセージに裏を見つける天才だった。」私の教本である『妻のトリセツ』や『夫のトリセツ』の言葉を借りていうなら、男性はその昔、狩猟をしていた頃からずっと先にいる獲物を探し、どうすれば捕獲できるかを考えて行動する。女性は家や家族を守るために、自分の周りの変化に敏感である。『トリセツ』では、見た目の変化として説明をしていたが、それは言葉にしても同じである。だから、夫の妻に向ける言葉の揚げ足を取るのである。
    そして、もう一つ。「自分(妻)の大変さをあなたは正しく理解していない」と妻に言われているが、これも女性の心理であろう。夫の場合は会社というフィールドで自分の存在を示すことができ、さらにそれを同僚、上司、後輩などに認めて(理解して)もらうことができる。しかし、家庭をフィールドとする妻にとっては、自分の存在を理解できるのは家族に限定される。なので、家族が自分の存在を認めていないことに対して、攻撃してしまうのである。(と、これは自論。)

    兜は恐妻家で、妻に常に怯えていたかと思ったのだが、家族のこと、もちろん妻のことをとても愛している。それは妻との出会いから解った。恐妻家で、妻に脅えているのではなく、気持ちよく過ごして欲しいという彼なりの気遣いで、その真剣な不器用さが、大学ノート3冊かと思うと可愛く感じられる。

    内容はハードボイルドなのだが、妻とのやりとりがコミカルなので、最後まで笑いながら読むことができたし、展開も好みであった。

  • 伊坂幸太郎の殺し屋シリーズ、第3弾。
    殺し屋の話なのに、こんなに後味がいいなんて!
    しかも、主人公が……な話なのに?

    最強の殺し屋と知る人ぞ知る「兜」。
    文具の営業を表の仕事とし、高校生の一人息子がいる父親でもあります。
    そして、ものすごい恐妻家。
    妻の一挙手一投足に気をつかい、おびえているように見えるほど。ちょっとしたエピソードの真剣さで笑わせてくれます。
    息子にも呆れられるのですが~
    妻を愛してるんですよねえ。

    一見普通の人のような家庭生活、殺し屋の仕事のほうも、連絡は淡々と事務的に行われている様子に、乾いたユーモアが漂います。
    この仕事はやめたいと、子供が生まれたころから申し出ているのだが、やめるにはお金も必要だと引き止められていました。

    殺し屋になどなるには、普通の育ち方をしているわけがない。
    そんな暗さがちらりと垣間見えます。
    腕は立つのだが、心は純粋といってもいいぐらい素直な部分を残している。
    そんな「兜」の選んだ道は…?

    10年後に、父に何があったかをたどる息子。
    父が欲しくて得られなかった「友達」の存在は…
    思いがけない展開と、伊坂さんならではの伏線の拾い方。
    楽しませていただきました☆

    読んだのはだいぶ前ですが、お気に入りでおすすめなので、アップします。

  • テンポの良い殺し屋シリーズ三作目。
    これまでの二作と大きく違うのは、
    殺し屋の心の動きがしっかり描かれていることかな?
    読後、心がほっこりしました。

    今回は、業界ではその手腕に一目置かれる「兜」が主役。
    狙った相手を瞬時に落とす実力の持ち主。
    ところが、妻には決して逆らわず、常に大きく相槌を打つ。
    妻の機嫌が悪いときの兜の気持ちがこんな風に描かれます。
    「彼女の吐いたため息が積もって、床が見えなくなる」
    最初の方に出てくるこの表現には、思わず笑っちゃいました。
    また、心の内を察してくれる息子にも愛情をたっぷり注ぎます。
    なんか、憎めない殺し屋です。 

    兜の矜持は「フェアであること」。
    例えば、人が大勢いる空港で。
    電流で動きを止めた相手を雑木林に連れ出し、覚醒させてから闘う。
    「なぜ自分がぼうっとしている間にやらなかったのか」と訊かれ、
    「無防備な相手にとどめを刺すのでなくフェアにやりたい」と答える。
    やっぱり憎めない殺し屋です。

    そして、この作品のテーマになっている「蟷螂(とうろう)の斧」。
    カマキリが斧を振り上げて闘う姿。
    強い相手に必死に立ち向かう姿をあらわしていて、
    「はかない抵抗という意味で使われる」と兜が説明。
    読み終えて、題名がAX(斧)であることが腑に落ちました。

    章の変わり目は、前作のように印鑑になっています。
    斜めの印鑑と、ちょっとかすんだ印鑑。
    ちゃんと意味があって、お洒落な遊び心を感じます。

    『グラスホッパー』も『マリアビートル』もこの作品も
    どれもテンポがよく、会話がお洒落でユーモラス。
    そして、伏線があちこちに散りばめられていて
    とても楽しく読みました。

    ひとつ疑問が…。
    殺し屋シリーズの題名が全部、昆虫由来なのは なぜ? 

  • 文房具メーカーの営業をしながら、裏で殺しを請け負う「兜」。殺しを委託する「医師」に殺し屋を辞めることを言いながらも、辞めさせてもらえない。家には妻と子供がいるが、裏の仕事を隠す中で、家族への対応も頭を抱えながら生きていくが。

    「グラスホッパー」などと同じ殺し屋シリーズ。主人公は違うが、「グラスホッパー」で語られたことや、登場人物が折々に出てくる。最初から読んでこうと言いつつ「マリアビートル」を飛ばしたので、その辺は絡んでるところは、これかな?と思うくらい。先読んでおけばとが思ったものの、あくまでニヤッとさせるくらいのものなので、本筋は影響ない。

    5編からなる連作集であるが、書き下ろしの2編が入ることで、主人公の気持ちの動きがまとまっていくようになり、最後の作品で家族の感情がわかることで、家族の絆や想いを考えさせてくれる作品になったと思う。

    とはいえ、妻に対する態度のコミカルな場面と、殺しの場面の静かなバイオレンスとの対比が、とてもよい。
    夜中に起こさないための最良の食事の話や、対応パターンの話、うっかり一言多く話して険悪になったり、それを冷静にみている子供の様子など、ちょいと極端でも、よくある感じでおもしろく、ちょっと和んでしまう。
    バイオレンスは、突然発生や用意周到な策など数あるが、静かな描写で、その分緊迫感を感じられる。そして、エッと思わせるシーンも盛り込んでいくところもよかった。

    家族に対する「兜」の想いと、家族が知っていく過程での気持ちと、家族の在り方や関係について、殺し屋題材でも、穏やかな気持ちで読み進められたのが、本当によかったと思う。

  • あぁ、まさかこのシリーズで涙する日が来ようとは…。

    主人公・兜。
    息子・克己がカップ麺を食べているのを見て、「そんなものばかり食べるな」と言いたいのはヤマヤマ。
    でもうっかりそう言えば、妻に「ちゃんとした食事を作れ」という裏メッセージに聞こえるかもしれない。
    そうやって、いつも妻の顔色を伺いながら生きる彼の裏の顔は、凄腕の殺し屋。

    そんな兜の願いは、仕事から引退し人生をやり直すこと。
    今までさんざん人の命を奪ってきたのに、過去をリセットして、「はい、やり直します」なんて許されていいはずないし…
    でも…でもね、できるならやり直させてあげたいと思ってしまうのです。

    父が母に怯えて暮す姿を見て「親父は人生をやり直せるとしたらおふくろとは結婚しないでしょ?」と問う克己に、
    「まったく同じであってほしいよ。」と…
    「そしてまたお前が生まれて来るだろう。」と…
    「理解されないとわかっていても、いいことのほうがたくさんあったんだ。」と答える兜。
    あぁ…泣ける。

    やれるだけのことしか人はできないんだから、
    やれるだけやって、無理なものは仕方がない。
    人事を尽くして天命を待つ。
    立派にやり遂げた兜。
    殺し屋だったけど、奥さんを心から愛していた兜。
    最高にかっこいいお父さんだった。
    そして、殺し屋シリーズをこれほど温かな親子の物語にしてくれた伊坂さんも最高です!

    それにしても「なのちゃんクリーニング」にはまったく気づかなかった!
    ちなみに、兜曰く、
    深夜に帰宅して、奥さんを起こさぬよう音を立てずに食べられるおススメは「魚肉ソーセージ」だそうです。

    • けいたんさん
      今日何度目かのこんにちは(^-^)/

      凄い高評価だね!
      私も兜の話としては好き。
      兜もまた愛おしいよね。
      兜の奥さんへの愛の深...
      今日何度目かのこんにちは(^-^)/

      凄い高評価だね!
      私も兜の話としては好き。
      兜もまた愛おしいよね。
      兜の奥さんへの愛の深さは他人にはわかりづらいよね。
      熟年夫婦になるとわかってくるような(笑)
      とても素敵な愛だよね。

      殺し屋って色んな事を割り切って生きていかないといけない職業なのかな、哀しいよね。
      次はどんな殺し屋に会えるかな。楽しみだね♪
      2018/04/08
    • 杜のうさこさん
      私も今日何度目かのこんばんは~(^^♪

      >凄い高評価だね!
      そうだね、今読み返してそう思った(笑)

      大好きな殺し屋シリーズとい...
      私も今日何度目かのこんばんは~(^^♪

      >凄い高評価だね!
      そうだね、今読み返してそう思った(笑)

      大好きな殺し屋シリーズというのもあるけれど、
      もうね、こういう話弱いわ~
      兜もそうなんだけど、克己がね~
      ぶっきらぼうなんだけどいい息子で、たまらない。

      そっか、兜の奥さんへのわかりづらい愛(笑)、
      熟年ならではというのもあるんだね。納得!
      でも、旦那様♡♡のけいちゃんから聞くと、妙に新鮮なカンジ(#^^#)

      殺し屋って、本当にいるのかな?って時々考えるけど、
      伊坂さんの作品の殺し屋は、つい「さん」付けしたくなるくらい愉快だよね!
      楽しみ♪

      では、またね~(^^)/
      2018/04/09
  • 次々とストーリーが展開し、あれっと思っていると、最終章で種明かしされる。

    フェアであることに拘る兜。
    最後の最後に夫婦の出会いが出てきて、裏街道にいた自分に家族という大きく暖かな存在を与えてくれた妻とフェアでいるために、その後ずっと気を使い続けていたのかなと思った。

  • 伊坂幸太郎作品、定番の面白さに満ちた作品。
    殺し屋を時にはカッコよく、時にはコミカルに描いた内容でとにかく読みやすく面白い。
    そしてラストは本当にハラハラさせられて爽快で心が温かくなりました。
    繰り返しになりますが伊坂幸太郎らしい作品です!

  • 殺し屋の話なのに、愛にあふれている。ところどころで涙腺が崩壊。
    妻に気を遣う夫の所作、恐妻への受け答えマニュアルなど、伊坂さんのこれは実体験ではと思うくらい、真に迫っている。共感しきり。物語の運び、伏線、読ませるなぁ。

  • 伊坂さん、長らく読んでなかったなぁ ....
    これ、シリーズ物らしいけれど、なんの続きだっけ?というくらい忘れてる。

    父は 実は殺し屋だったのです〜 ピロリロリーン♪ みたいな軽めのノリかと思いきや、負い目を負って生きる男の胸の内が赤裸々に。
    それが、大事な大事な一人息子の 学校面談とか、家の庭にできたスズメバチの巣などなど、日常の詳しい描写と一緒に絡めて語られるんで、なにかすごく質感がリアル。
    ありえない話なのにw
    相変わらず、上手いです。

    上手いですが、父親の心情があまりに切なくて 茶化しちゃいけないんだろうなって思ってしまう。
    オー!ファーザー!だっけ? あれは4人もいる父親がそりゃもう愛情深くて 贅沢の極みだったけれど、AX=蟷螂の斧でも、家族を守りきりたいという兜の真摯さも 愛の極みか。

    ああそうだ、グラスホッパーのシリーズだ。。
    最初から読み直したくなるな。

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著者プロフィール

1971年、千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュー。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞、08年『ゴールデンスランバー』で本屋大賞と山本周五郎賞、『逆ソクラテス』で柴田錬三郎賞を受賞。ほか『砂漠』『グラスホッパー』『火星に住むつもりかい?』『フーガはユーガ』『シーソーモンスター』『クジラアタマの王様』『ペッパーズ・ゴースト』など多数の著書がある。

「2021年 『小説の惑星 オーシャンラズベリー篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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