- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041059463
作品紹介・あらすじ
【伊坂幸太郎史上最強のエンタメ小説<殺し屋シリーズ>、『グラスホッパー』『マリアビートル』に連なる、待望の最新作!】
最強の殺し屋は――恐妻家。
物騒な奴がまた現れた!
新たなエンタメの可能性を切り開く、娯楽小説の最高峰!
「兜」は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない。
一人息子の克巳もあきれるほどだ。
兜がこの仕事を辞めたい、と考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。
引退に必要な金を稼ぐため、仕方なく仕事を続けていたある日、爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。
こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。
書き下ろし2篇を加えた計5篇。シリーズ初の連作集!
感想・レビュー・書評
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R2.4.27 読了。
グラスホッパー、マリアビートルが良かったので、期待していたが残念。
連作短編の前半は恐妻の対応がほとんどでしたが、後半2篇は殺し屋らしさが垣間見れて、良かった。
ラストは予想外でした。詳細をみるコメント1件をすべて表示-
kurapapaさん参考になります!ありがとうございます!参考になります!ありがとうございます!2020/05/31
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シリーズ第三弾。
今回は兜という殺し屋が主役。
兜は文房具メーカーの営業で恐妻家で家族想いという殺し屋。
妻への対応がまるで日常の私と丸かぶりで私も良い友達になれそうです。
そんな兜は殺し屋を辞めることを宣言した後、謎の自殺を遂げる。自殺から10年後息子の克己が父の死の真相を調べ始めてから、物語は急展開!
最後の伏線回収は見事!
シリーズで一番好きかも。オススメです♪ -
短編集ではなく、連作集となっている本作は、最終章で学生だった主人公の息子が父親となり、ある病院の父の名前の診察券をきっかけとして過去と現在が繋がり、この物語の時間的な奥行きがでてくる。
本作の主人公は通称『兜』といい、家族持ちの殺し屋。殺し屋として最高に腕が立つにもかかわらず、恐妻家で、常に妻を怒らせないように異常なくらい妻にビビっている。
例えば、妻に対する対応術を大学ノート3冊にまとめている。そこには妻の言動に対し、どのようなリアクションを取ればいいのか、妻の態度の変化もフローチャートを混えまとめた、いわゆる『妻の対応マニュアル』である。本人は一生懸命で、第三者的には『一般的な普通の妻なのに、どうしてそんなにビビってるの?』と思うし、またそれは息子の克巳からみても私たち読者と同じように父親は常に母親を恐れているように見えている。妻に対してとる兜の思考・行動・言動と、腕のいい殺し屋のもつイメージとのギャップが、まるでコメディーのように描写されていて、それが面白く笑ってしまう。
兜が最後に親しくなった、警備員・奈野村は、兜に命を救われる。兜がなくなり、父親となった克巳家が利用しているクリーニング店が、実は奈野村が営む店であった。兜との縁は切れてしまったが、克巳どの縁がつながっているのは、奈野村の意図的な意思によるものであろう。克巳に迫ってくる危機があれば、きっと自分が救おうと思っているのだ。だから、最後に克巳が危険な状態に追い詰められた時に克巳の前に現れて危機を救った。これで奈野村もようやく三宅に報いることができたという気持ちになったのではないだろうか。そして、このような設定をさりげなく入れ込んでいる著者の優しさ伺える。
また、本作には、男性が参考になる女性心理が書かれている箇所がある。「妻に限らず女性は、いや人間は、と言うべきかもしれないが、とにかく、『裏メッセージ』に敏感だ。相手の発した言葉の裏には、別の思惑、嫌味や批判、依頼が込められているのではないか、と推察し、受け止める。…そして兜の妻は、表しかないメッセージに裏を見つける天才だった。」私の教本である『妻のトリセツ』や『夫のトリセツ』の言葉を借りていうなら、男性はその昔、狩猟をしていた頃からずっと先にいる獲物を探し、どうすれば捕獲できるかを考えて行動する。女性は家や家族を守るために、自分の周りの変化に敏感である。『トリセツ』では、見た目の変化として説明をしていたが、それは言葉にしても同じである。だから、夫の妻に向ける言葉の揚げ足を取るのである。
そして、もう一つ。「自分(妻)の大変さをあなたは正しく理解していない」と妻に言われているが、これも女性の心理であろう。夫の場合は会社というフィールドで自分の存在を示すことができ、さらにそれを同僚、上司、後輩などに認めて(理解して)もらうことができる。しかし、家庭をフィールドとする妻にとっては、自分の存在を理解できるのは家族に限定される。なので、家族が自分の存在を認めていないことに対して、攻撃してしまうのである。(と、これは自論。)
兜は恐妻家で、妻に常に怯えていたかと思ったのだが、家族のこと、もちろん妻のことをとても愛している。それは妻との出会いから解った。恐妻家で、妻に脅えているのではなく、気持ちよく過ごして欲しいという彼なりの気遣いで、その真剣な不器用さが、大学ノート3冊かと思うと可愛く感じられる。
内容はハードボイルドなのだが、妻とのやりとりがコミカルなので、最後まで笑いながら読むことができたし、展開も好みであった。 -
伊坂幸太郎の殺し屋シリーズ、第3弾。
殺し屋の話なのに、こんなに後味がいいなんて!
しかも、主人公が……な話なのに?
最強の殺し屋と知る人ぞ知る「兜」。
文具の営業を表の仕事とし、高校生の一人息子がいる父親でもあります。
そして、ものすごい恐妻家。
妻の一挙手一投足に気をつかい、おびえているように見えるほど。ちょっとしたエピソードの真剣さで笑わせてくれます。
息子にも呆れられるのですが~
妻を愛してるんですよねえ。
一見普通の人のような家庭生活、殺し屋の仕事のほうも、連絡は淡々と事務的に行われている様子に、乾いたユーモアが漂います。
この仕事はやめたいと、子供が生まれたころから申し出ているのだが、やめるにはお金も必要だと引き止められていました。
殺し屋になどなるには、普通の育ち方をしているわけがない。
そんな暗さがちらりと垣間見えます。
腕は立つのだが、心は純粋といってもいいぐらい素直な部分を残している。
そんな「兜」の選んだ道は…?
10年後に、父に何があったかをたどる息子。
父が欲しくて得られなかった「友達」の存在は…
思いがけない展開と、伊坂さんならではの伏線の拾い方。
楽しませていただきました☆
読んだのはだいぶ前ですが、お気に入りでおすすめなので、アップします。 -
テンポの良い殺し屋シリーズ三作目。
これまでの二作と大きく違うのは、
殺し屋の心の動きがしっかり描かれていることかな?
読後、心がほっこりしました。
今回は、業界ではその手腕に一目置かれる「兜」が主役。
狙った相手を瞬時に落とす実力の持ち主。
ところが、妻には決して逆らわず、常に大きく相槌を打つ。
妻の機嫌が悪いときの兜の気持ちがこんな風に描かれます。
「彼女の吐いたため息が積もって、床が見えなくなる」
最初の方に出てくるこの表現には、思わず笑っちゃいました。
また、心の内を察してくれる息子にも愛情をたっぷり注ぎます。
なんか、憎めない殺し屋です。
兜の矜持は「フェアであること」。
例えば、人が大勢いる空港で。
電流で動きを止めた相手を雑木林に連れ出し、覚醒させてから闘う。
「なぜ自分がぼうっとしている間にやらなかったのか」と訊かれ、
「無防備な相手にとどめを刺すのでなくフェアにやりたい」と答える。
やっぱり憎めない殺し屋です。
そして、この作品のテーマになっている「蟷螂(とうろう)の斧」。
カマキリが斧を振り上げて闘う姿。
強い相手に必死に立ち向かう姿をあらわしていて、
「はかない抵抗という意味で使われる」と兜が説明。
読み終えて、題名がAX(斧)であることが腑に落ちました。
章の変わり目は、前作のように印鑑になっています。
斜めの印鑑と、ちょっとかすんだ印鑑。
ちゃんと意味があって、お洒落な遊び心を感じます。
『グラスホッパー』も『マリアビートル』もこの作品も
どれもテンポがよく、会話がお洒落でユーモラス。
そして、伏線があちこちに散りばめられていて
とても楽しく読みました。
ひとつ疑問が…。
殺し屋シリーズの題名が全部、昆虫由来なのは なぜ?-
yyさん
昆虫、何故なんでしょうね
私は本当に本当に勝手に、生き死にを描いているから?などと思ってました。
殺し屋なので当たり前ですが、人...yyさん
昆虫、何故なんでしょうね
私は本当に本当に勝手に、生き死にを描いているから?などと思ってました。
殺し屋なので当たり前ですが、人も殺しますし、
食うものと食われるものというか。
yyさんも取り上げていたように、カマキリは蝶やその他昆虫にとっては恐ろしい存在ですが、天敵もいるわけで。
そんな天敵に振り上げたところで、あっという間に食べられてしまう。
兜たち殺し屋の殺し合いを俯瞰で眺めた時に、そんな昆虫の世界を当て嵌めたのかな?
な~んて。2023/08/26 -
珈琲さん
昨年の8月にコメントをいただいていたのね (+。+)
すっかり失念していました。
今更ですが、ありがとうございました (*´︶...珈琲さん
昨年の8月にコメントをいただいていたのね (+。+)
すっかり失念していました。
今更ですが、ありがとうございました (*´︶`*)♡
生死を描いているから昆虫が象徴的に使われているっていう珈琲さんの考察、説得力あり ( ^-^ )b ですね。
なるほど~。
腑に落ちました2024/03/02 -
yyさぁ~ん♪
よくぞ気付いて下さいました!って、私もコメントしたこと忘れておりました~。
お返事くださって嬉しいです。
有難う御座いました...yyさぁ~ん♪
よくぞ気付いて下さいました!って、私もコメントしたこと忘れておりました~。
お返事くださって嬉しいです。
有難う御座いました。
2024/03/02
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奥さんに頭上がらない殺し屋の殺し屋による殺し屋のためのお話。
人を殺めるだけでなく、蜂とも戦います。
ソーセージはキモです笑
笑あり涙あり?で面白かったです。
(๑・̑◡・̑๑) -
伊坂幸太郎さんの殺し屋シリーズ!
先日読んだ『マリアビートル』から繋がる部分もあったので、未読の方は、やはり発行順で読むことをオススメしたい。
さて、今回は殺し屋「兜」の半生を描いた作品。
十代後半から裏の世界に手を染めて生きて来た兜が、その秘密は隠したままに家庭を築き、妻と息子とのしあわせを望む一方で、自分が殺めて来た罪と向き合って生きる様子が、心に迫って来た。
殺し屋界では一目置かれた存在の兜が、妻の前では別人の様になり、妻との円滑なコミュニケーションのノウハウを記したノートを記録することをライフワークの一貫としている。
一見すると、単なる恐妻家のようだが、読み進めるにつれ、それは兜が背負って来た人生で、唯一掴んだかけがえのない幸せをもたらしてくれた妻に対する愛情以外の何者でもないのだと気付かされた。特に、最後に種明かしとなる「キッズパーク開園」のチラシには、目頭が熱くなった。
ラストに兜の一人息子である克巳と医師がマンションで対峙する場面は、絶対絶命!と叫びそうになったが・・・
ネタバレになるので控えるとして、情報屋の桃、クリーニング屋、本当良い仕事しますねぇ。最後まできっちりと方を付けてくれて、この展開は予想外!やっぱり流石の伊坂さんです。
マリアビートルが、新幹線内で繰り広げられる疾走感溢れるエンターテイメントだとすると、本作は殺し屋を生業とする男の生き様を描いた内容。
ユーモアもあって、ハラハラドキドキもあって、時に心温まる作品だった。いやぁ〜面白い!!
ちょっと切なさは残るけれど、読後感もすごく良かった。
独身者より既婚者の方が心に響くと思う。
ちなみにタイトルのAXって斧なんですね。
やられた〜笑
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この世で1番恐ろしいものが妻という、変わった殺し屋、兜。親密な人に自分の正体がバレたら終わりという状況の中、「手術」を重ね、彼に「平穏」なんて日々はなかったのだろう。その中で見られる息子の成長、怖い妻だけれど、生まれ変わってもまた出会いたいと言えるなんて、素敵な関係だと思った。なんの前触れもなく死んでしまった父の真相に近づき、死を怖がっていたという医師の言葉に、息子の克巳が「父がこの世で一番怖いのは」…「母ですから」
と涙を浮かべて言うところが心に残った。暗闇に仕掛けられていたボーガンも、自動販売機も途中途中で出てくるアイテムが全て伏線のようになっていた。
蜂を退治するときに、宇宙服のような格好で寝転がっていたというところは想像したら笑えたが、殺しは怖くないのに、蜂や、妻に怯えるという所が、兜のキャラクターとして人間として欠けているところであり、愛せるところであった。 -
文房具メーカーの営業をしながら、裏で殺しを請け負う「兜」。殺しを委託する「医師」に殺し屋を辞めることを言いながらも、辞めさせてもらえない。家には妻と子供がいるが、裏の仕事を隠す中で、家族への対応も頭を抱えながら生きていくが。
「グラスホッパー」などと同じ殺し屋シリーズ。主人公は違うが、「グラスホッパー」で語られたことや、登場人物が折々に出てくる。最初から読んでこうと言いつつ「マリアビートル」を飛ばしたので、その辺は絡んでるところは、これかな?と思うくらい。先読んでおけばとが思ったものの、あくまでニヤッとさせるくらいのものなので、本筋は影響ない。
5編からなる連作集であるが、書き下ろしの2編が入ることで、主人公の気持ちの動きがまとまっていくようになり、最後の作品で家族の感情がわかることで、家族の絆や想いを考えさせてくれる作品になったと思う。
とはいえ、妻に対する態度のコミカルな場面と、殺しの場面の静かなバイオレンスとの対比が、とてもよい。
夜中に起こさないための最良の食事の話や、対応パターンの話、うっかり一言多く話して険悪になったり、それを冷静にみている子供の様子など、ちょいと極端でも、よくある感じでおもしろく、ちょっと和んでしまう。
バイオレンスは、突然発生や用意周到な策など数あるが、静かな描写で、その分緊迫感を感じられる。そして、エッと思わせるシーンも盛り込んでいくところもよかった。
家族に対する「兜」の想いと、家族が知っていく過程での気持ちと、家族の在り方や関係について、殺し屋題材でも、穏やかな気持ちで読み進められたのが、本当によかったと思う。
著者プロフィール
伊坂幸太郎の作品





