ウォーター&ビスケットのテーマ 夕陽が笑顔にみせただけ (2) (角川スニーカー文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041060315

作品紹介・あらすじ

8月をループする街【架見崎】。プレイヤーが命がけのゲームをするこの地で、最大手チームの2つ【平穏な国】と【PORT】が、ついに交戦する――そう予見した香屋歩とトーマは、戦いを「引き分け」に持ち込むため、もうひとつの大手チーム【架見崎駅南改札前】へ向かう。そこには最強のプレイヤー【月生】ただひとりが所属していて――「そんな風に我儘に、貴方はなにを目指すのですか?」「安全な世界ですよ。僕でも安心できるほどの」  架見崎全土を巻き込む戦いの裏側で、臆病な少年による、世界のルールを打ち破るための革命が、静かに進行する。

感想・レビュー・書評

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  • 謎の町、架見崎で繰り広げられる異能力バトルの第二巻。異能力バトル、といってもテイストは前作と変わらず、アクションがメインではなく臆病な少年がチーム同士による戦争の均衡を保とうと暗躍する物語である。それはやはり著者である河野裕が得意とするところの、独特の箱庭的世界観と壮大なつじつま合わせであり、今作はそれが戦略という形でしっかりと具体化されている。戦術は多くとも戦略の観点にまで踏み込んだ異能力バトルは珍しく、それが誰かを陥れたり出し抜くためのものではなく、全員にとっての幸福な結末とルールそのものに対する闘いというのが本作の見所の一つだろう。今までの著者の作品では動機がやや内省的で内輪めいた感覚があったのだが、今シリーズは登場人物の死が明確にクローズアップされており、それが主人公の臆病性と掛け合わさることで「生きろ」「なんのために?」「そんなこともわからないまま、死ぬんじゃない」というウォーターの言葉通りの生への渇望と繋がるのだ。また「信頼が試されている」という架見崎でのルールとの符号も素晴らしく、デスゲームなのにデスゲームという体裁そのものに真っ向から反逆する物語になっている。

    今作で新たに登場したキャラクターである月生は非常に面白く、総ポイントは№1で文字通りの最強という存在なのに、実態は絶対に来ない電車を永遠に待ち続け、規則正しい生活を送るサラリーマン社畜キャラクターというのが実によかった。また、最強でありながらその実態は謎のベールに包まれており、今作では一切戦わないというのも思い切った感じがあって面白い。それを何とか利用するという周りも含めて、真の強さは見せる必要がないというのはとてもリアルである。

    現実世界に対する認識のズレ、パラレルワールドの可能性、0番目のイドラという謎の言葉、なぜ運営に電車が来る時刻を訪ねてはいけないのか? 蘇生能力は一体誰が持っているのか(恐らくは月生で、次作は月生を倒す話になるのだろうか?)など、次回作への謎は伏線もバッチリである。前作も面白かったが、今作も素晴らしく、テーマとルールと著者のテイストが抜群に噛み合った傑作と言えるだろう。

  • 登場人物が増えて、視点もたくさん入れ替わりめまぐるしかったです。
    いろんな人の思惑が絡まり複雑で難しいけれど、読んでいてハラハラして楽しかったです。ただほんとに苦しい…この世界の死は仮想であるはずなのに軽々しくないというのがとても重い。
    途中途中で出てくる言葉の数々に胸が締め付けられました。泣きました。サブタイトルの意味に震えました。
    これからさらに物語が大きく動く予感がするのでとても楽しみです。

  • オセロ盤を目の前に置かれた時、それをチェスのルールで制することができるのか。

    喩えが難しいのだけど、この物語で主人公がやろうとしているのはそういうことなんだと思う。ゲームのルールがある中で、ルールを超えて(破って、ではない)目的を達成する。

    現実でも我々は、世の中のルール(に見えるもの)と先入観に囚われて生きている。目的のためにそこから飛躍する。言うは易し、行うは難しの典型だが、それを面白い冒険譚として描けているのがまず素晴らしい。

    「戦わねばならない」「裏切らねば勝てない」「殺さなければ生き残れない」。この架見崎という地を覆うそういった先入観を憎み、本気で「できるだけ平和にみんなが生き残る」場所にできるのか。閉じられた空間のファンタジックな物語ではあるが、根底のテーマは現実世界への警鐘でもあるなと感じる。

  • 香屋、トーマ、秋穂の3人の関係が大体わかってきた。
    一巻はプロローグ的な、世界観の説明だったが、二巻からは本格的な大規模な戦争が行われ、トーマと香屋が頭脳と分析により戦争の行方をコントロールする展開は圧巻だった。異能バトルものなのに、安易に異能で無双しないのが他の典型的な異能バトル物と違うところだろう。

    わかりやすい根っからの悪人みたいな敵が次から次へ登場して倒して終わりを繰り返すものとは一線を介する、展開が予測できないストーリーは読んでてただただ面白い。

  • 図書館に2巻が無かったので折角なので1、2巻購入。何故こうも対立構図にするのかよくわからない。最大の敵だから一番信頼してるって…うん、意味わからない。

    多分作者的にはメガネ女子の方がポイント高いんだろうなぁ。過去の作品から分析するに。意見は言うし、意志はあるけれども基本的には主人公の考え方を崇拝するぐらいに貴ぶ存在。ちょっと怖い。

    シロとクロの猫が良い感じだな~とか思いながら読みました。個人的にはトーマの方が好きなんだけどな~な~

  • ま、主人公だし。チートはしかたなかろう。かなりのトップクラスの軍師系ではあるが。
    ヒロインは誰だろう?難しいなぁ。
    あと最後で発覚した蘇生類似能力ってなんだろ。
    蘇生能力じゃないんだよねぇ?

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著者プロフィール

徳島県出身。2009年に『サクラダリセット CAT,GHOST and REVOLUTION SUNDAY』で、角川スニーカー文庫よりデビュー。若者を中心に人気を博し、シリーズは7冊を数える。他著作に「つれづれ、北野坂探偵舎」シリーズ(角川文庫)、『いなくなれ、群青』(新潮文庫)に始まる「階段島」シリーズなどがある。

「2023年 『昨日星を探した言い訳』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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