営繕かるかや怪異譚 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 1232
レビュー : 129
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041060476

作品紹介・あらすじ

叔母から受け継いだ町屋に一人暮らす祥子。まったく使わない奥座敷の襖が、何度閉めても、開いている。
(「奥庭より」)
古色蒼然とした武家屋敷。同居する母親は言った。「屋根裏に誰かいるのよ」(「屋根裏に」)
ある雨の日、鈴の音とともに袋小路に佇んでいたのは、黒い和服の女。 あれも、いないひと?(「雨の鈴」)
田舎町の古い家に引っ越した真菜香は、見知らぬ老人が家の中のそこここにいるのを見掛けるようになった。
(「異形のひと」)
ほか、「潮満ちの井戸」「檻の外」。人気絶頂の著者が、最も思い入れあるテーマに存分に腕をふるった、極上のエンターテインメント小説。
宮部みゆき氏、道尾秀介氏、中村義洋氏絶賛の、涙と恐怖と感動の、極上のエンタ-テインメント。

感想・レビュー・書評

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  • 人が住むと疵がつく。
    古い家にはたくさんの疵が折り重なっている。よい疵も、悪い疵も…。
    ある城下町の古い家屋を巡る短編集。

    閉めてもすぐに開く、開かずの間の障子。
    夜中になると屋根裏で聞こえる足音と奇妙な声。
    雨の日になると袋小路の路地に佇む黒い和服の女。
    家のあちこちに小さくなって蹲る枯れ枝のような老人。
    異音と腐敗臭のする井戸、枯れる庭木。
    勝手にシャッターが閉まり、子供の声が聞こえるガレージ…。
    話の中には、障りの元がそれとなくわかるものと、よくわからないものがある。営繕屋かるかやの仕事は、原因を突き止めて清めたり祓ったりすることではなく、障りになる疵を居住者が共存できる程度まで直すことだ。

    家や土地の"障り"から起きる怪奇現象は、小野不由美の得意とする分野。黒い和服の女の話なんて、ひたひたと迫りくる感じが恐ろしくて。遠くからチリンという鈴の音が聞こえる気がする…。
    営繕屋かるかやのいない完全なホラーな世界にすることもできただろうけど、かるかやのお蔭で最後にすぅっと風が吹くような読後感。ホラーは苦手だけど、ライトなものなら何とか…という怖がり読者(=私)でも読み通せた。まぁ、かるかやの登場はほぼ最後の数ページなので、それまではずっと怖いのだけど。
    たとえていうと、暗い水の底にどんどん落ちて行き、もうだめ!もうほんとだめ!苦しい!!…となったところで、水の上に引き上げられ、ぐぇっほぐぇっほと息をする感じかな?それを六話分。

    読み終わってから表紙を見ると、これも実は怖かった。
    なんか…手が出てきてる…!

  • 「営繕かるかや」を営む青年、尾端(おばな)が、古い家に住うことになった人達の困りごとを、営繕という形で解決していくお話だ。

    “怪異譚”とある通り、住人からの相談は、古い家ならではの理解し難い出来事であり、相談者は不気味がり、あるいは怯えている。
    しかし、単に読者を最大限に怖がらせる目的で書かれているのではないだろう。
    怖いけれど、悲しくて美しい、私の好きな形の怪異。

    尾端は、自分を霊能者でもなんでもないただの大工、と言っており、本当に建物を直すことしかしない。
    家は、人が住めばその痕跡が残り、傷みもする。
    そして、古い家ならば“先に住んでいた人”がいるわけである。
    尾端は、新しい住人と古い住人のどちらの心地よさも同じように考える。
    そして、住まいの綻びを修繕することによって、古いモノと今の住人との関係も繕っていくのである。
    怪異をただ迷惑なものとして、調伏し、あるいは排除する、ということをこの作品では行わない。
    その優しさが、古い家の不思議な佇まいを怖さから懐かしいものに変えている気がする。
    カバーイラストが、「蟲師」の漆原友紀さん。
    そういえば、蟲師も、古きものを大切に扱っている。
    世界観が似ているかもしれない。

    とはいえ、やはりだんだん近づいて来る怪異は恐怖です。
    そして、運び込まれた長持が一体何だったのか、めちゃくちゃ気になります!

    「奥庭より」
    閉めたはずの襖が、いつの間にか開いている

    「屋根裏に」
    屋根裏を誰かが歩いている、と訴える年老いた母

    「雨の鈴」
    チリン…と鳴って、和装の喪服姿の女

    「異形のひと」
    どこか開けるたびに、爺さんがいる!!

    「潮満ちの井戸」
    生臭い

    「檻の外」
    いきなり降りるガレージのシャッターと、車の怪異に恐怖するシングルマザー

  • 怪異現象の悩みを解決するのが「大工」というのもユニークだが、その対処法もまた一風変わっていて目からウロコ。ホラーながら読後はほっこりする話ばかりだった。

  • まったく新しい切り口で描かれたホラー作品。恐怖に襲われるというより、背筋が冷えるようなうすら寒い空気に包まれた。ただ、後書きで宮部みゆきさんが述べているように、一貫して絆を重視したストーリー展開になっており、一味違った夏の風物詩に仕上がっていると感じた。

  • 2018/09/27

    ・尾端が出てくるまでの陰鬱さがすごい!
    ・小野不由美が書くホラーなのに救いがあってすごい!
    ・中古物件の購入に二の足を踏ませる展開がすごい!

  • ミステリというかまあホラー。でも前の”残穢”みたいなガチじゃなく、カバーイラストby漆原が示すように、世界観としては”蟲師”に通じるものがある。解決する営繕やさんが共通だけど、それ以外の部分は殆どが独立した短編集。家に憑くのも、霊的なものから魔物的なものまでさまざま。基本的にはポジティブな解決を見るから、読後感も不快じゃない。逆に平均的というか、本作じゃなきゃ!っていう孤高性は見出せなかった次第。

  • 家にまつわる怪異についての短編集。

    怪異に強い主人公がいて依頼が舞い込む感じのストーリー展開かと思いきや、あくまで各話の主人公はその家に住む人で、営繕かるかやの尾端さんはチラッと出てくる感じ。祓わないし、その怪異の細かい背景事情や心情も語られず、ただただ、怪異がある家をどう営繕…というか、折り合いをつけられる形に持っていくか、という展開のさせ方。活劇譚みたいなものではなく、ある意味、共存のための解決策というのかな。それを提示する感じ。そういうやり方もあるかと面白かった。

  • 「主上,こんな所で油を売ってないで,早く十二国記の続きを書いてくれ」と思いつつ,お布施のつもりで買ったんだけど,面白かった.
    こんなホラーもあるのか.

  • うわ、こっわ!
    背筋がぞくりとする怖さ。現象は本当に怖いのだけど、営繕かるかやが件の家に来て解決法を導いてくれると、一転してほっとでき、なんとなく心が温かくなる気がするのはどうしてだろう。
    怖いのになんとも不思議。
    怖いけど、いつまでも読んでいたくなるそんな本。

  • 城下町の旧市街地。古い家々で起こる“異常”を営繕屋の尾端が修繕する短編集。
    それぞれの物語で語られる障りや異形との接触にじわりじわりと恐怖が満ち、終盤に尾端が出てくると怖さがやさしさに変化する。後味がたまらなくやさしい。
    暗闇で見る水は真っ黒で濁って見えるけど、明るい所で見ると透明できれい。
    そんな視点の変化。

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著者プロフィール

大分県生まれ。1988年作家デビュー。「悪霊」シリーズで人気を得る。91年『魔性の子』に続き、92年『月の影 影の海』を発表、「十二国記」シリーズとなる。『東亰異聞』『屍鬼』『黒祠の島』は、それぞれ伝奇、ホラー、ミステリとして高い評価を受けている。「悪霊」シリーズを大幅リライトし「ゴーストハント」として2010年~11年刊行。『残穢』は第26回山本周五郎賞を受賞。『鬼談百景』『営繕かるかや怪異譚』『営繕かるかや怪異譚その弐』など。2019年、十二国記最新刊『白銀の墟 玄の月』を刊行し話題に。

「2021年 『ゴーストハント7 扉を開けて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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