- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041060476
作品紹介・あらすじ
叔母から受け継いだ町屋に一人暮らす祥子。まったく使わない奥座敷の襖が、何度閉めても開いている。
(「奥庭より」)
古色蒼然とした武家屋敷。同居する母親は言った。「屋根裏に誰かいるのよ」(「屋根裏に」)
ある雨の日、鈴の音とともに袋小路に佇んでいたのは、黒い和服の女。 あれも、いない人?(「雨の鈴」)
田舎町の古い家に引っ越した真菜香は、見知らぬ老人が家の中のそこここにいるのを見掛けるようになった。
(「異形のひと」)
ほか、「潮満ちの井戸」「檻の外」。人気絶頂の著者が、最も思い入れあるテーマに存分に腕をふるった、極上のエンターテインメント小説。
宮部みゆき氏、道尾秀介氏、中村義洋氏絶賛の、涙と恐怖と感動の、極上のエンタ-テインメント。
感想・レビュー・書評
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十二国物語よりも、対象年齢は低いと聞いていたので、紐解くのを躊躇っていた。読めば子供騙しではなかった!確かにあんまり壮大な魔物は出てこない。ただ、言葉遣いは案外難しいものを使用していた。登場人物の名前は特に凝っていた。
曰く。
尾端(おばな)、隈田(くまだ)、衛(まもる)、夏希(なつき)、有扶子(ゆうこ)、実乃里(みのり)、真菜香(まなか)、裕弥(ひろや)、堂原(どうばる)‥‥
それに「営繕屋」なので、古い住居の専門用語や、ちょっとだけ古臭い言い方なども出てくる。振り仮名がついている場合もあれば、無い場合もある。気がついたのは、以下のような言葉だった。
障(さわ)り、手水(ちょうず)、上り框(あがりかまち)、三和土(たたき)、頭(かぶり)を振った、地均し(じならし)、梁(はり)の上に蟠(わだかま)る翳り、腥(なまぐさ)い臭気、顔を蹙(しか)めたまま、
‥‥一般に形容詞は、作者の日常用語みたいで、振り仮名を付けるのを忘れるようだ。普通読めないよ、この漢字。
家に憑く魔物は、真っ黒クロスケみたいな可愛いモノは殆ど居ない。と、わたしは経験上知っている。わたしの家も古い。家には面倒なことが多い。でも経験上小物ばかりだ。何故なら、家はずっと続くものであり、人が居なくなれば、家は急速に朽ちるものだからである。家が潰ればアレも居られなくなる。お互い宥め賺しつつ同居するしかない。
カリカリ音を立てて何故か襖が開く
屋根裏から跫音がする
雨の日にお悔みがやってくる
戸を開けると其処にアレがいる
井戸からアレが家中に這入ろうとする
ガレージの暗闇にアレがいる
わたしん家の小物は明確に、建て付けの悪さや、家屋に住む鼠や蜚蠊(ごきぶり)や、蛇口から滴り落ちる水音や、外を徘徊する動物と雨音、物置に入り込んだ小動物だと思っているけど、そうではなく、この世の論理ではなく動く世界が、ふとこの世に重なることもあるのかもしれない。
霊能力のない尾端さんは、あの世の論理を何故か理解している。だから「営繕」すると異世界は悪さをしなくなる。
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「営繕」(えいぜん)とは、「建築物の営造と修繕」のことをいい、具体的には、建築物の新築、増築、修繕及び模様替えなどの工事を指します。
わが国では、西暦701年に制定された「大宝律令」において用いられた古い言葉の一つみたい。まぁ、大工さんやな。
様々な怪異6つの短編集!
怪異を祓わず解決する。
新しい感覚!
怪異を防ぐのは、大工さん!
家相とか、風水みたいなもんか。
やっぱり、その辺も考えて、家作らなあかんねんな。
「三所に三備を設けず」ってのがあって、
三所
「鬼門、裏鬼門、宅心(家の中心部)」
三備
「玄関、台所(キッチン)、トイレ」
要は「鬼門・裏鬼門・宅心には、玄関・台所・トイレを設けてはいけない」
何か、まだまだ、色々あるみたいやけど、最低限の事は、した方がええんかな?
うちも、家建てるときは、棟上げして大黒柱に、親がくれたでっかいお札付けた。(城南宮のやったかな?)
それだけの為では、ないんやろうけど、昔の人は、怪異とか物怪とかを事前に防ぐ為に、自然とこんな事してたんかな。
今の家は、効率的とか、建ぺい率、容積率ギリギリまで使う事しか考えてないのかも?
怪異とは、別にしても、余裕ない家住んでたら、やはり、心にも余裕がなくなって、色々、変調をきたしてしまうかも…
スイスイ読めて、面白かった!-
え…??( ꒪⌓꒪)
えーっと…
やめてー!!探してしまう、探してしまう!!ホラー好きだけどビビりなんですって!:(´◦ω◦`):え…??( ꒪⌓꒪)
えーっと…
やめてー!!探してしまう、探してしまう!!ホラー好きだけどビビりなんですって!:(´◦ω◦`):2024/08/30 -
ほらっ!
壁やなくて、天井見てみ!
何か、黒〜いしみが…
えっ!お婆さんの顔 ! ∑ヾ(;゚□゚)ノギャアアーー!!ほらっ!
壁やなくて、天井見てみ!
何か、黒〜いしみが…
えっ!お婆さんの顔 ! ∑ヾ(;゚□゚)ノギャアアーー!!2024/08/30 -
い、いやぁああああ!!
せめて14世の顔にして下さい!!
今からお風呂なのに!シャンプーする時目ガン開きしとこ!い、いやぁああああ!!
せめて14世の顔にして下さい!!
今からお風呂なのに!シャンプーする時目ガン開きしとこ!2024/08/30
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読みやすいなー。
宮部みゆきさんが書いてるのかと思った。
なんか似てる気がする。
なんやかんやで古い家に住む。
なんやかんやで手を入れる。
なんかしらの怪異が起こる。
営繕かるかやにいい感じに直してもらう。
怪異が治まる。
基本的にはこのパターンの短編が6篇。
一編一編の長さもちょうどいい。
うっすらとした怖さ。
それを調伏するとか退治するではなく、なんとなく躱すのがミソかな。
おもしろくはあるけど、怖い、だけではなく、哀しいとか、ホッコリ系とか、侘しいとか、楽しいとか、あるいは義憤に駆られたりなど、いろんなパターンを用意しとくのが今後は必要になるかな?
場合によっては営繕はしたものの、住人が忠告を聞かず、もとに戻して最悪の結果を、人死にを出してしまうなどの失敗パターンなんかも欲しいところ。
シリーズ、続くといいですなー。
そのうち長編とかになって映画化とか。
アニメより実写の方が肌に合いそう。
短編がある程度貯まったら一話完結のドラマとかでも良さそうかな。-
ええ~。
クマさん。
俺は京極夏彦さんはもっとねっちょりしてる印象だわ。じめっとしてて良い感じに狂ってると思ってる。
本作は湿っぽくな...ええ~。
クマさん。
俺は京極夏彦さんはもっとねっちょりしてる印象だわ。じめっとしてて良い感じに狂ってると思ってる。
本作は湿っぽくなくて乾燥しているイメージ。
宮部みゆきさんはまともで湿度がそんなに高くないと思う。
「ばんば憑き」とかが似てるかなー。
でも京極夏彦さんの最近の「病葉草紙」とかも乾いてるか。
2024/12/05 -
2024/12/05
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2024/12/05
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この家には障りがあるー
古い家にまつわる怪異を、営繕屋の尾端(おばな)が修繕して折り合いをつけていくお話。
6話の短編集。
やわらかめのホラー。
読んでて怖さはないけど、自分がその立場だったらと思うとめっちゃ怖い〜。
営繕って言葉を初めて知った。
建物の修繕をするって意味らしい。
その営繕屋の尾端はあくまで修繕屋で除霊をするわけではないのだけど、うまく事をおさめていく。
古い家は歴史もあるし、それだけ色んな思いが残ってたりするのかも知れない。
どの話もちょっと悲しくて、そしてあたたかみのある読後感だった。
印象に残ったのは「雨の鈴」「檻の外」。
ただひとつ言うなら、怖がりの私ならすぐ引っ越すけどな笑 -
宮部みゆきさんが、『宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本』で最初に取り上げていた一冊。
解説が宮部さんであることに加え、カバー画は『蟲師』の作者である漆原友紀さん!なんとも私得です。「大工」である尾端がなすことについても、ギンコに似た部分がありますね。
「怪異」は好きでも「ホラー」は苦手な私なのですが、この本……相当に怖かったです^^;
舞台となるのがそれぞれ日本らしい「古い家」で、古い家というのがそれだけで怖い。日中でも暗かったりじめじめしていたり……そこかしこに現れる暗がりはこの年になっても苦手です。
ストレートに怖かったのが、「奥庭より」と「檻の外」。実際に”見えて”しまうのはダメですよお……。小野さんは本当に細かな描写が巧く、そのおかげでまざまざと情景が目に浮かんでしまうので困りました。
他に印象的だったのが「雨の鈴」。
日本はすっかりゲリラ豪雨ばかりになってしまいましたが、しとしとと細かい雨が降る雰囲気が好きでした。
ただ、短編ということもあり、尾端が登場するとあっさり解決に向かうのがほんの少し物足りなくもありました。”解決しない一編”があっても後味の悪さがあってよかったのでは、とは個人的な感想。
さっそく次巻も買ってきたので、しっかり肝を冷やしてこの猛暑を乗り切りたいと思います〜。-
ゆのまるさん コメント失礼します♪
『営繕かるかや』シリーズ、私も好きです~(怖いけどw)
夏の読書にピッタシな“怪異譚 ”ですよね...ゆのまるさん コメント失礼します♪
『営繕かるかや』シリーズ、私も好きです~(怖いけどw)
夏の読書にピッタシな“怪異譚 ”ですよね。
この作品、ゆのまるさんが、レビューに書かれていらっしゃる通り、小野さんの細かな描写が巧いので、読んでいてゾワっとくるものがありますよね~。
因みに、個人的には「雨の鈴」に出てきた“喪服の女”が謎すぎて怖かったです((( ;゚Д゚)))2024/07/21 -
あやごぜさん、コメントありがとうございます!
あやごぜさんもお好きなのですね♪
小野先生のホラー(に入るのかな・・・)は初めて読んだのです...あやごぜさん、コメントありがとうございます!
あやごぜさんもお好きなのですね♪
小野先生のホラー(に入るのかな・・・)は初めて読んだのですが、すっかりびびってしまいました。笑
普通、怖い場面が終わるとホッとするのですが、なぜか”その先”がもっと読みたいような読みたくなかったような……と、不思議な感覚に陥りました。
”喪服の女”、真っ直ぐにしか進めない……というのはちょっとパズルっぽいなとも思ったのですが、実際に自分がその突き当りにいたらと考えたら恐怖ですよね;
2024/07/22
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ホラーだけどどこかハートフルな物語が6つ
怖くて不気味で何者かはわからないけど
大切にしなきゃいけない「なにか」が存在する。
この物語はフィクションだし6つの物語のような怖いことは実際に経験しないだろうけど「なにか」はこの世界でも存在していると思う。
だから私はお墓の前を通るときは親指をしまうし、北枕で寝ない...。(ちょっと違うか)
十二国記シリーズにはまり、小野不由美さんの文章の虜です。美しい...
専門的なことはわからないけれど文章の構成とか句読点の位置や改行のタイミングとかがなんだか美しい。と思います。 -
'24年1月18日、Amazon audibleで、聴き終えました。久しぶりの、小野不由美さんの作品。
怖いけど、なんだかホッコリ終わる話が並んだ短編集で、とても面白かったです。
「雨の鈴」が、特にお気に入り。不気味だし、怖かったけど…なんだか可笑しくもあり。
第二集も、聴いてみます! -
小さな城下町の古い家々に起こる怪異を描いた短編集。
叔母の住んでいた町屋を相続し、暮らし始めた主人公。何度閉めても離れの襖が少しだけ空いてしまう。叔母も恐怖で衰弱し亡くなったのだった(「奥庭より」)。
認知症が始まった母が、天井裏に誰かがいる、と言い出した。思い切って天井を取り払うリフォームを行う主人公だが、母はいまだに天井裏に何かを見ている(「屋根裏に」)。
主人公たちは、相続や介護などをきっかけにこれまでの現代的な生活から一転、古家で暮らすことになった者たちで、理屈では説明できない「何か」の存在が理解できず、恐怖におびえ、排除しようとする。
そこに現れるのが「営繕かるかや」の大工、尾端である。彼はお祓いで「何か」を取り除いてくれるわけではない。建物の「営繕」という、極めて現実的な方法で主人公たちの恐怖を和らげるのである。
彼の方法は「排除」ではなく、「共存」である。恐怖のあまり離れの壁を塗りこめてしまい、離れの裏に出ていくことができなくなった「何か」のために、壁に開口部を設け、手水鉢にきれいな水を絶やさないようにする。天井裏の「何か」が気にならないよう、2重天井の間に吸音材を入れる。
人が住めばどうしたって疵が付く、古い家に折り重なる疵こそが時を刻むということなんだ、という尾端。確かに、古い家は人間の一生の何倍もの長きにわたって存在しているのであって、私たちの方が一時の空間を借りているだけなのかもしれない。そうすると、自分より前から存在していた「何か」をやみくもに排除しようとすることがそもそも間違いだということなのか。
とはいっても、雨の日、鈴の音とともに黒い和服の女が袋小路に現れ、訪れた家の者が必ず死ぬ(「雨の鈴」)、となると、共存などとはいっていられない。この場合の尾端の対処は「回避」である。妖が入ってくるので袋小路の正面には入り口を設けない、という暗黙のルールは、いつのまにか車庫を設けたり、建て替えたりする際に忘れ去られた。古い家にまつわる言い伝えはおろそかにしてはいけない。
得体のしれない恐怖と、それに対する現実的な対処法の妙なギャップがくせになる小説である。 -
正しい「日本の幽霊話」
まさに「怪異譚」
ただ、この作品の怪異を解決する主人公は「営繕さん」なので、直したり、これ以上傷まないように手当てしたりするのが仕事。つまり、退治したりはせず、「その存在」が家にいることを受け入れて折り合って生活する工夫で解決する……というスタイル。
ホッコリ系になりそうなのに、いや確かに収録されているどの短編もたいていがホッコリとした気持ちにはなるのですが、読んでる間のほとんどの時間は、しっかりと怖いです。わりとちゃんと怖いです。雨の日の夕方にでも読んだら、さぞかし雰囲気あるだろうなと思います。「ホッコリ解決だろうな」と思っていても、かなり怖いです。
何度閉めても襖が勝手に開いていたり、鈴の音が雨の日のたびにだんだんと我が家に近付いてきたり、押入れにお爺さんがうずくまってこちらを見ていたり、車の運転席に後ろから白い手が掛けられたり、します。
本作品は連作短編で、物語を語る「視点人物」は毎回違います。主役の「営繕さん」は、それぞれの短編の中でチラリと出てきて、「障り」を鮮やかに解決していく。主役の他にも、チラチラと登場するレギュラーメンバーが数人いるのですが、個性はちゃんと紹介されているのに多くは語られていなくて、彼らの日常をもっと知りたくなります。想像の余白がある作品というか。
家の修理をする営繕さんが主役なので、どの短編も、「家」にまつわる話です。
古い家を、実家だったり血縁だったりたまたま借り受けたりして「家を継いだ」人たちが、古いがゆえに発生する色々な「障り」と折り合っていくという姿に、考えさせられることが多くありました。
継ぐということは、良いことも悪いことも、諸々を受容して、折り合って、直し直し生活していくことなのかな、みたいなことを。
実は私も「実家の空家問題」を抱えているところで、その家に住むのか、片付けはどうするんだ、修理は必要なのか、などと、本書に出てくる人たちにどこか共感する部分が多くて、そんな意味でも刺さる作品でした。
ところで、本書所収の「異形のひと」の終盤に出てくる「大きな木箱」が何なのか、説明が無いままでめちゃくちゃ気になっております。「分からない」「想像だけが膨らむ」って、怖いですね。でも、そういうものを懐に入れたまま、「家」というのは続いていく……ということなんだと思います。
最後に一つ。
登場する「家」として、「ウナギの寝床的な町屋」がいくつか出てきます。
京都住まいのかたや時代劇を観るかたはお馴染みかもしれませんが、ちょっと特徴的で、知らないとイメージしづらいものだと思うので、画像検索などで見てみることをオススメします。分からなくても作品は楽しめますが、より深く味わいたい場合には。
特に最初のお話「奥庭より」は、私には間取りを脳内に再現しきれなかったので、「かるかや 奥庭より 間取り」で検索したところ、再現間取りをTwitterに載せてくださってるかたがいて、とても助かりました。(しかも作中には言及の無い時代別の改築考証もされていて、とても興味深く拝見しました)
読みながらの画像参照をオススメします。 -
シリーズもの。
怪異をなくすこともなく、淡々と自分の仕事をしているので印象的でした。
著者プロフィール
小野不由美の作品





