- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041060476
感想・レビュー・書評
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城下町の旧市街地。古い家々で起こる“異常”を営繕屋の尾端が修繕する短編集。
それぞれの物語で語られる障りや異形との接触にじわりじわりと恐怖が満ち、終盤に尾端が出てくると怖さがやさしさに変化する。後味がたまらなくやさしい。
暗闇で見る水は真っ黒で濁って見えるけど、明るい所で見ると透明できれい。
そんな視点の変化。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
<怪異>との絆を感じさせるホラー…って、我ながら何だそれ?と思うものの、そう表したくなります。
人の暮らし・営みと共に、時間の積み重ねと同じように<怪異>もまた在るのだ、というような、単純に「怖いもの」「悪いもの」として描くのではない展開が新鮮でした。
祓ったりするのではなく、折り合いをつける。
そこで暮らし続けることに主を置いた<怪異>との共存は、読んでいる側としては一番安心するものでした。 -
怪奇現象を建物の修理をする営繕屋が対処するお話。対処といっても、営繕屋は霊感があるわけでなく、怪異が生じた原因を解決するできるよう家を修繕していく。解説で宮部さんが書いてあるとおり、怪異を払わない解決方法もあるんだなとハッとした。短編ごとに営繕屋が解決するものの、主人公目線ではなく、キーパーソンとして出てくるのでこの人については苗字しかわからない。
ホラーではあるものの、そこまで怖い話ではない。 -
家にまつわる怪異についての短編集。
怪異に強い主人公がいて依頼が舞い込む感じのストーリー展開かと思いきや、あくまで各話の主人公はその家に住む人で、営繕かるかやの尾端さんはチラッと出てくる感じ。祓わないし、その怪異の細かい背景事情や心情も語られず、ただただ、怪異がある家をどう営繕…というか、折り合いをつけられる形に持っていくか、という展開のさせ方。活劇譚みたいなものではなく、ある意味、共存のための解決策というのかな。それを提示する感じ。そういうやり方もあるかと面白かった。 -
『残穢』を読んでみたいが、怖過ぎると思って手が出せなかったけれど、こちらは怖さ度セーフ。
じわじわ背筋が重たくなってくる怖さ。もう勘弁してくださいと思う絶妙なタイミングで営繕かるかやを営む尾端くんが登場。一気に心拍数が下がる安心感ときたら、お化け屋敷を抜けた時の日の光の如し。
なので、読後はあたたかい気持ちになる。
短編集なので、1話読了後には、「尾端くんが出てくるまでの我慢だ〜」と思って次を読む。しかし尾端君の登場は終盤。結果、次の話を読み始めると途中で止められるないので注意が必要。
『ゴーストハント』シリーズが好き又は怖さ度セーフなら、一気に読めるくらい面白いし、怖さも丁度良い。
このシリーズ、長編でも読みたい。
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1月に引き続き小野不由美ブームなので営繕かるかやシリーズを読む
様々な家に起こる怪異を営繕屋の尾端が掬い上げる
営繕とは”営繕とは、「建築物の営造と修繕」のことをいい、建築物の新築、増築、改築、修繕、模様替等の工事を指します。"と国土交通省のHPに書いてある
つまり怪異のもとになる例を祓除したりするわけではない
その家に住む人と怪異との間をとりなすというほうが近いかもしれない
家という本来は安心できて寛げる場所だからこそ、そこに怪異があるとなるともう絶望的な気分になってしまう
職場や学校と違って逃げ場がない。また暗い夜を過ごすのも家だ
そんな心許ない状態から尾端が登場し、怪異の理由を紐解きなだめていく様子は鮮やかとしか言いようがない
短編集でもあるので長編ホラーが苦手な人も読めるかもしれない -
十二国記の著者の別作品を読んでみたくて、でも、ホラー系が苦手ゆえ、若干へっぴり腰な感じで読みました。怖すぎないけれどもゾゾっとする感じ。確かにホラー。
城下町の、いろんな古民家に暮らす人々が怪異な出来事に遭遇し、営繕屋さんがそれを解決する、という短編集です。いずれも、スプラッタな感じはないのですが、五感で感じる薄ら寒さがあり、それはそれで怖かった。あとを引く怖さというのでしょうか。
人知れず連綿と続く怪異(タブーのようなものも?)たち、これらを、何かを退治して解決する、ということではなく、営繕屋さんが落とし所を見出して、一応生活に支障のないところに持っていく、というスタイルで静かにおさまっていくのです。
曖昧さを許すというか、得体のしれないものにも居場所を作るというか、あらゆることが明快でなくてもいいじゃないか、というふわっとした解決法に、温かさを感じるというか、少しほっとさせられるところがありました。