営繕かるかや怪異譚 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 271
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041060476

感想・レビュー・書評

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  • 【短評】
    名手・小野不由美によるホラー短編集。
    どの作品も非常に後味が良く、どこか「ほっこり」とさせられる。読了後「嗚呼、素敵なお話だ」と嘆息することしばしば。解説で宮部みゆきが触れていた「折り合いを付ける」というのが言い得て妙であり、怪異に取り込まれるでも打ち勝つでもなく、細やかな”営繕”という手段を以て、怪異を受容する手法が快かった。一方で、要所要所には「怖さ」がピリリと効いており、ホラーとして弱いと言うこともない。
    派手さは無いが堅実な作品。根しとしとと雨の降る梅雨の時期にぴったりの一冊である。

    ①奥庭より ★★★★☆
    箪笥をカリカリと削る何者かの手。静かに立ち現れる怪異の描写が印象に残る。強烈な恐怖ではないが、ジワリと背筋に来る感じが非常に好み。
    怪異との共存という本作の妙味が見事に表現された結びの一文が秀逸だった。

    ②屋根裏に ★★★☆☆
    「ばいばい」が大変に怖かった。無垢な子供だからこその恐怖というものがある。三津田信三の「キヨちゃん」を思い出した。怪異の正体が**というのは恐怖的にはマイナス(既にキャラクタが確立してしまったいるゆえに)なのだが、最後の「ヒュッ」は趣深いものがある

    ③雨の鈴 ★★★☆☆
    美しさすら感じる怪異の描写!!お悔やみを申し上げる”魔”である。
    明確な法則性のある怪異は結構好みなのだが、ややパズル寄りの解決に向かってしまったのは少々残念。叙情的な意味合いにおいて、非常に印象に残る魔であっただけに、そちら方面の広がりを期待してしまった

    ④異形のひと ★★★☆☆
    正直笑った。引き戸を開けるとおじさんが詰まっているというのは、実際に行き会うと最高に怖いと思うが、第三者的な視点で見るとちょっと面白く感じてしまう。他の編に比べると、解決編(?)がやや唐突だった印象もある

    ⑤潮満ちの井戸 ★★★☆☆
    魚が跳ねていると思ったが、まさか*とは。しかも千切られているとは。
    良くも悪くもそこの印象に収斂してしまった。本作の地味さがやや悪い方向に向かった印象。スルリと終わってしまった

    ⑥檻の外 ★★★★★
    抜群。間違いなく本作のベスト。タイトルからして本当に素晴らしい。
    光の使い方が上手い。壊れたシャッターというギミックを上手に使って、暗闇と忍び寄る怪異の恐怖感を見事に演出していた。
    本作屈指の哀しいお話。無垢な子供が絡むお話には感じるものがある。本シリーズは怪異の由来が明確な方が味がある気がする。どうしてそこにいるのか、に物語がある方が格段に良い。本作は明確に所以がある。哀しいお話が、ある。
    「かってに、あいたよ」が齎す感慨に本作の魅力の全てが詰まっていると行っても過言ではないだろう

  • 怪異を『祓う』わけではなく、
    怪異を『倒す』わけでもやく、
    修繕することで 問題を解決する のが面白いなと思った。

    派手な演出を求めて読むと、物足りなく感じるかもしれない。
    でもその分、日常に地続きな怪談を読むことができ、これはこれで楽しかった。

  • 2023.06.19 ★3.8

    古い家特有のほの暗い雰囲気、明かりを点けても部屋の隅まで光が届かない感じが、すごく伝わってくる。
    子どもの頃の、おばあちゃんちに泊まった夜、あそこから手が出てきたらどうしよう、とか、あの廊下曲がった先に誰か居たらどうしよう、みたいなゾクゾク感が味わえた。

    続編があるようなのでそちらも読もうと思う。


    ↓↓↓内容↓↓↓
    雨の日に鈴の音が鳴れば、それは怪異の始まり。極上のエンターテインメント

    叔母から受け継いだ町屋に一人暮らす祥子。まったく使わない奥座敷の襖が、何度閉めても開いている。
    (「奥庭より」)
    古色蒼然とした武家屋敷。同居する母親は言った。「屋根裏に誰かいるのよ」(「屋根裏に」)
    ある雨の日、鈴の音とともに袋小路に佇んでいたのは、黒い和服の女。 あれも、いない人?(「雨の鈴」)
    田舎町の古い家に引っ越した真菜香は、見知らぬ老人が家の中のそこここにいるのを見掛けるようになった。
    (「異形のひと」)
    ほか、「潮満ちの井戸」「檻の外」。人気絶頂の著者が、最も思い入れあるテーマに存分に腕をふるった、極上のエンターテインメント小説。

  • 家にまつわる怪異のお話。
    想像すると住んでるところでゾッとする事が続くのか1番嫌かも…
    そんな怪異を営繕かるかやの尾端さんがうまく収めて、家主が受け入れて共存していくようなお話。
    最後の話はとても切なくて…ラストで親子が目撃したシーンに救われました。
    続きも読みたいと思います。

  • 古い家で起きる霊的現象を
    祓うでもなく、遠ざけるでもなく
    共存と言うか支障が出ないよう
    少し手助けをしてくれる営繕屋。

    営繕屋自身の事は余り語られる事はなく
    その由縁が気になるところ。
    シリーズものなので、のちに分かってくるのかな。

  • 「家」を中心とする怪異の短編集。最終的には営繕屋を名乗る尾端が建物を修繕することによって、怪異と共存出来るようにしていくという話。
    どれも、一級品にコワイが怪異を祓うのではなく共存するというところが新鮮な気がした。
    奥座敷にいた女性の話や屋根裏に居着いていた何物かの話。袋小路に佇む黒い和服の女性。家族に虐待を受けていた男性の老人や古井戸からくる魔の気。次の短編も楽しみ。

  • 古い家屋に纒わる六つの怪異の物語

    『奥庭より』
    一人暮らしの女性の自宅
    ある部屋には、扉を閉めるように配置された箪笥と、塞がれ少しだけ覗いた障子
    閉めては、開き 閉めては、開き
    古い家だから傾きで開いてしまうのかな?って思うけど、何度も何度もと続くのが恐怖を掻き立てる

    『屋根裏に』
    屋根裏から足音が響く
    衰えた母に聴こえる音
    更には幼い娘が何者かに手を振り返す
    無垢な幼い心に響くものなのだろうか
    怖いよりも、個人的には微笑ましく感じられる

    『雨の鈴』
    雨の中佇む女性
    雨の日にしか現れない
    どこへと向かうのか、真っ直ぐ真っ直ぐ進み行く
    行く先会う先では不幸が起きる
    彼女が家に来てしまったら…
    私はこの短編の中でこの物語が1番怖く感じた

    『異形のひと』
    引っ越した田舎町
    ただただ馴染むことが出来ずにいる
    勝手に出入りする住人たち
    彼女の前にだけ現れる、おじさん
    襖の中やお風呂の中、はたまた冷蔵庫の中にまで
    正直想像しただけで怖いよりも気持ちが悪い
    けれどおじさんの事を知ると、すごく可哀想な人だったのだと悲しくなる

    『潮満の井戸』
    古くからある塞がれた井戸
    水位は下がったり上がったり
    水やりに使ったけれど、徐々に植物の元気が無くなっていく
    そしてしまいには、異臭
    水は海水が混じっており、海は死者が還る場所
    還った者が現れてるのかも…しれない

    『檻の外』
    実家へ帰り古い家へ住み始める
    車の電源が入らず、ガレージのシャッターは勝手に閉まる
    そして時には声が聞こえ、朧気な小さな影
    それは過去に起きた悲しい事故の心細さ
    怖いけれど、怪異を抱きしめてあげたくなる
    自分で出ておいで




    どの物語も凄く怖い訳では無いけれど、でも…読んでいる最中に家に忍びこんで来てはいないかと辺りを見回してしまう
    我が家も古い日本家屋だし殊更感じる

  • 小野不由美さんのホラー短編集

    怪異を祓うのではなく、家の「傷」として住人と折り合いをつけさせるという解決の仕方が新鮮で面白い。
    ただ、家という本来くつろげる場所に怪異が出るというのはじわじわとくる怖さがあった。田舎ならではの窮屈さや古い家の薄気味悪さが妙にリアルで、小野不由美さんはこういう細やかな描写が上手いなと感じた。

  • 続巻が出ていたので1巻を読んでみました。
    少し不思議というより、大分怖いお話。営繕屋なので、家や道や土地にまつわるものって、地味に怖い。

    でも、対処というか、アヤカシでも霊でもモノでも、何を求めてどうしたいのかという事を考えると、少し恐怖が安らぐ感じが救いだな、と思いました。でも家の中にいる怪奇は怖い。向こうも怖がってるとは思わないもんな…

  • 怖くて切なくて愛おしい、古家屋と怪異と営繕の物語。建物や場所に取り憑いた残穢が人に障りをなすあたりは「残穢」や「鬼談百景」のテイストを引き継ぎながら、それを家屋営繕で解決するという手法が新しい。営繕屋の尾端による怪異の謎解きは控えめすぎて病みつきになりました。

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著者プロフィール

大分県出身。講談社X文庫ティーンズハートでデビュー。代表作に『悪霊シリーズ』 『十二国記シリーズ』『東亰異問』『屍鬼』など。重厚な世界観、繊細な人物描写、 怒濤の展開のホラー・ミステリー作品で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『悪夢の棲む家 ゴーストハント(1)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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