- Amazon.co.jp ・本 (136ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041060513
作品紹介・あらすじ
ある日、大日向が地学講義室に持ち込んだのは、鏑矢中学校で配られていた「読書感想の例文」という冊子。盛り上がる一同に、奉太郎は気が気でない――。
書き下ろし新作短編「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」の他、古典部メンバー四人の本棚、著者の仕事場や執筆資料も初公開!
『氷菓』以来、米澤穂信と一五年間ともに歩み、進化を続けている〈古典部〉シリーズについて「広く深く」網羅した必読の一冊。
【CONTENTS】
Interview 〈古典部〉シリーズ15年のあゆみ
〈古典部〉書き下ろし短編 「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」
対談集――北村薫、恩田陸、綾辻行人、大崎梢
著者による〈古典部〉シリーズ全解説
さらにディープな〈古典部〉隠れネタ大公開!
米澤穂信に30の質問 読者編/作家、声優、漫画家編
あなたの本棚見せてください! 古典部メンバー4人の本棚大公開
お仕事場拝見 2017年
『いまさら翼といわれても』刊行密着レポート!
米澤穂信のマイルストーン
講演録 物語のみなもと
門外不出の〈古典部〉ディクショナリー
感想・レビュー・書評
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こうした企画物のイメージとして、大抵は次回作が出版されるまでの繋ぎ的な役割しか果たさず、中には作家本人を登場させずに編集部だけで考察するようなものもあったので、あまり期待はしていなかったのだが、本書に関してはまさにタイトルに偽り無しで、米澤穂信さんと古典部について、ここでしか知ることのできないことを知ることができる上に、米澤さん本人が何度も積極的に登場してくれる点に、このシリーズへの特別な思いが垣間見えるようであった。
その中でも、私が特に注目していたのが、ここでしか読めない書き下ろし短編「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」で、普段あまり見られないホータローの姿の他にも、なんと、これまでの古典部シリーズでは見られなかった初の展開があって、これは喜ぶ人もきっといると思う。
また、古典部シリーズに関するものとして米澤さんへのインタビューや、これまでのシリーズ6作品の米澤さん自身による解説で、ホータローの探偵像をあのようにした理由や、一作目『氷菓』のテーマがはっきりと理解できたことといった肝心なものから、作品中に散りばめられた隠れネタまで幅広く、特に『愚者のエンドロール』で千反田が差し入れしたウイスキーボンボンの二人の食べた個数とその後の経過まで、アントニイ・バークリーの『毒入りチョコレート事件』に合わせていたのには驚きだった、というか本当に誰もわからない遊びですよね(笑)
そして、古典部の特集で最も面白かったのが、実は古典部メンバー4人の本棚であり、勿論考えてるのは米澤さんだから、米澤さんの嗜好がある程度入っていることも否めないのだが、それでもこれは気になるところ。
最も分かりやすかったのは摩耶花の漫画棚で、これは作品中でもいくつか名前が挙がっていたので納得でき、里志の本棚も如何にもな彼らしいジャンルの広さがあって肯ける中、ホータローの本棚は知らない本ばかりだったのが却って印象に残り、更には姉のお下がりもちょっとあるのではといった点にも、興味をそそられるものがあった。
その反面、千反田の本棚はよく分かるような気がして、ディキンソンの詩集、確かに読んでいそう! と感じ、他にもケストナーやエンデにカニグズバーグといった岩波少年文庫系に、梨木香歩や稲垣足穂に小川未明と、思わず肯いてしまう共感を抱いた中で、ひっそりと彼と同じ本が入っていたのも見逃さなかった。
それから上記したように、本書のもう一つの特徴として、米澤穂信さん自身をより知りたい方にも応える内容が多彩で、それは「米澤穂信の作られ方」で、物語に対する真摯な思いにハッとさせられながら、彼の半生に合わせて読んできた本と共に紹介される、彼の作品の解説によって古典部シリーズ以外の作品も読みたくなる構成が上手く、特に私の中で古典部シリーズと似たような印象を抱いていた、小市民シリーズの発端が全く異なっていたことには目から鱗であり、そうした意図があったのかということを知ることによって、更に読みたい気持ちが高まった。
またミステリ好きな方には、4名のミステリ作家と米澤さんとのそれぞれの対談が興味深いのではと思い、私が印象的だったのは北村薫さんとの中での、『日常の謎に型はない』、『でもそのぶん書くのが難しい』ことと、恩田陸さんとの専門的なミステリのやり取り以上に、米澤さんの大学生にしか見えない写真の若々しさが(当時25歳だから年相応か?)、妙に頭から離れず、もしかしたら髪型の違いもあるのかもしれないけれど、他の写真と比較するとそれだけがより際立つようで、どうしても気になってしまいました(笑) -
ずっと読みたかった本でした。
何より、短編が読みたかった。
奉太郎の中学時代の読書感想文の話でした。
中学の頃から奉太郎は奉太郎なんだなあと思いました。読書感想文をよんで奉太郎のことがもっと好きになりました。
(最後の方は奉太郎が色々かわいそうだった)
他にも古典部シリーズ制作の裏話や、古典部メンバーの本棚が見ることが出来て、とても満足の行く内容でした。
これからの古典部シリーズへの期待が高まりました -
米澤穂信さんの古典部こぼれ話的な本。古典部の書き下ろし短編が載っていて、奉太郎の別の感想文の話で面白かった。山月記は私も好きだけど、奉太郎のような切り口で考えたことがなくて新鮮だった。
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折木奉太郎のエピソード0的な短編が収録されていてよかった。
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こんな本があるとは。私が何も知らなかっただけで、本当に人気シリーズなのだなあと七年遅れで嬉しくなる。
この本によると、既刊最新の六冊目『いまさら翼といわれても』も六年ぶりの発行ということで、二〇一六年当時、サイン会等で盛り上がったようだ。それから八年。続編は今出ても、来年出ても、数年後出ても、おかしくはないですよね? そのときは私も盛り上がれるぞ、と楽しみな一方、他の米澤作品を一切読んでいないのでこのあとどうしようかなという楽しい悩みも。小市民シリーズにまだなんとなく食指が動かないので、もともと古典部シリーズのひとつとして出す予定だったがそうしなかったと本書でも書かれていた『さよなら妖精』が良さそうかな。
▼短編「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」
ホータローの読書感想文がまた読めます!大日向さんのいる古典部も全然悪くなかったよなあ、と惜しいような気持ちに。
▼いろんな人との対談
北村薫、恩田陸、綾辻行人、大崎梢。ミステリー語りが多く興味深い。日常の謎論など。
・やっぱり「逆説」がわからない。
・(後の質問コーナーも含め)泡坂妻夫の言及回数の多さに歓喜。
・クイーンのライツヴィルシリーズを自分流でいつかやりたいと言う恩田陸さんとのトークで、「クイーンも、彼がいるから大丈夫!という感じがしない」「あの不安感、神経症な雰囲気をやりたい」と後期エラリーの頼りなさが槍玉に挙がっていてニヤニヤした。
・綾辻行人の十角館はみんな読んで影響を受けてるようだからきっと読むべきなんだろう。
・北村薫さんとの脱線個所、佐佐木幸綱「サキサキとセロリ嚙みいてあどけなき汝(なれ)を愛する理由はいらず」の解釈をめぐるやりとりには笑ってしまった。思わぬところで、米澤さんにホータローを見たというか……。そしてまたそこからミステリーに戻ってきてしまうところがさすが〈日常の謎〉のお二人。
▼講演録「物語のみなもと」
なぜ人は物語を読むのか。なぜ自分は物語を書くのか。面白かった。
▼作者本人による古典部語り
作者本人による作品紹介文、オマージュ等の隠れネタ、古典部四人の本棚公開、古典部ディクショナリー(設定集的なもの)など。楽しい。四人のキャラクターがどう生まれたか、そこには当然彼らが果たすべき役割があるのだが、特に千反田えるが米澤さんの中で役割を脱却して人間味を帯びていく過程が興味深い。
あ、そうそう、ホータローたちの高校入学年度が私と全く同じことが判明!一作目の刊行年からするとそれくらいかなとは思っていたが、ぴったり同じでちょっと嬉しい。今彼らもどこかで私と同じ四十路をがんばりつつ昔の出来事がたまに小説化されているのか〜という設定でこれからは読もう。
▼米澤穂信さんの印象
・本書自体が米澤穂信ムック的なものなので、基本的には「作者大いに語る」な本なのだが、読者や作家等有名人からの質問に答えるコーナーで時折見せる「答えなさ」が大人だなと思った。作家として見せるべき素顔と人として見せなくていい素顔とのわきまえ感が。物足りなさも感じなくはないが、ホータローたちの品の良さもここからきているのだなあと納得。
・自分の文章は「理が勝っている」タイプなので、ミステリーというジャンルに合うと思った、という自己分析も印象的だった。-
たださん、コメントありがとうございます。
読まれたのですね。
「彼ならば古典部シリーズを、愛情込めて最後まで書いてくれるだろう」→私もそう思...たださん、コメントありがとうございます。
読まれたのですね。
「彼ならば古典部シリーズを、愛情込めて最後まで書いてくれるだろう」→私もそう思います!
『さよなら妖精』のことも教えていただきありがとうございます。私はなんだか古典部が好き過ぎて、同じ米澤さんの別の作品を読むのがちょっと怖い(?)みたいな状況に陥っております^^; でも、せっかく好きな作家さんに出会えたので、みなさんのレビューを参考にしつつ、読み時探っていきたいです。2024/11/23 -
好き過ぎて他の作品を読むのが怖いという、そのお気持ち、分かりますよ(^^)
私の場合、先に太刀洗万智シリーズを読んでいるので、初めて『氷菓...好き過ぎて他の作品を読むのが怖いという、そのお気持ち、分かりますよ(^^)
私の場合、先に太刀洗万智シリーズを読んでいるので、初めて『氷菓』を読んだときは、こんなに渋い物語を書く米澤さんもいるのだなといった新鮮な驚きがありましたが、それでも物語の奥に潜む根底的な部分といいますか、米澤さんの人間性はシリーズが違っても間違いなく変わっていないなというのも実感できたことで、この人の作品は全て読んでみたいなと思いましたし、まあそれでも何冊かは、これはちょっと違うかなと思う作品もあるのかもしれませんが、それも含めて知りたいといいますか、あとはミステリが大好きなことが本書でよく分かったので、それがどう作品に活かされているのか、確かめたい気持ちもあります。
ですから、次は何を読もうかなといった嬉しい悩みを現在抱えておりまして、他のシリーズを追いかけるか、発表順に読んでいくか、どちらも捨てがたいなと思っているところで、本書の米澤さんの自作に対するコメントが、また期待感を煽るんですよね。2024/11/23 -
怖い気持ち、わかっていただけて嬉しいです。
好きなシリーズや作品があると、そればっかり読んでいたい(書いてほしい)という気持ちもありますが、...怖い気持ち、わかっていただけて嬉しいです。
好きなシリーズや作品があると、そればっかり読んでいたい(書いてほしい)という気持ちもありますが、そればっかりではないことを知ったときに、もっとその作者のことを好きになれるのですよね。米澤穂信さんは私にとって古典作品の人ではなく、せっかく同時代を生きておられる作家さんなのだから、少し勇気(大げさ!笑)を出して、たくさん触れてみたほうが読書ライフを楽しめそうだなと改めて思いました!2024/11/24
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最近になって『氷菓』を読んで、古典部にはまり、作者の米澤穂信さんにはまり・・・というわたしにはとっても面白かったです。ミステリ作家の方々との対談ではたくさんの小説も紹介されていました。古典ミステリ読もっと!書き下ろし短編も楽しく拝見。これ高校の授業で『山月記』習った子どもに見せてあげよう。たくさんの企画の中でも古典部員たちの本棚大公開が良かったです。本棚って、その人自身が表れるものじゃないですか。なるほどなって。
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『氷菓』から始まる「古典部シリーズ」は、15年で6冊。
シリーズ物として、6冊は少なくはないけれど、決して多くはない。
こうして丸ごと1冊のファンブック兼ガイドブックが出版されたことは、読者に相当愛されている証拠に思える。
内容は、15年の歩みのインタビュー、過去の雑誌(野生時代)に掲載された作家同士の対談、古典部シリーズ書き下ろし短編、古典部の世界観を伝える、メンバーのプロフィール紹介と、(空想)本棚拝見、シリーズの用語辞典、そしてウェブ上でも公開されていた、米澤氏に対する質問など。
書き下ろしは、目からうろこの読書感想文だが、これを、後輩たちへのお手本集に収録する国語教師の頭の柔らかさに感動した。
質問は、読者から、に加えて、『氷菓』のアニメ版関係者など。
「ハルヒ」シリーズの谷川さんの質問は、ミステリについて深く、且つ真剣に追求していて、軽いQ&Aコーナーでなく、対談編と同じ位のレベルであった。
用語集「古典部ディクショナリー」は、本編のあれこれを懐かしく思い出しました。 -
米澤穂信と〈古典部〉シリーズ15年の歩み。
〈古典部〉新作短編に加え,著者によるシリーズ全解説,古典部メンバーの本棚公開など,ファンならぜひ手元に置いておきたいと思うムック本。
『虎と蟹,あるいは折木奉太郎の殺人』
新作短編はいつもよりは短いながらも,その垣間見える遊び心に唸らされながら読んだ。やっぱり上手いなぁと。
『氷菓』から始まり,アニメ化を経て,まもなく実写映画が公開される本シリーズ。
「〈古典部〉シリーズは完結するまで書いていただけますか?」
との質問に米澤氏はこう返す。
「はい,そのつもりです」
最後まで彼らの成長する姿を見届けたい。 -
「古典部」中心に、米澤穂信の大解剖。
古典部書き下ろし短編
「猿と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」
なかなかおもしろかった。古典部の新入生大日向が、こともあろうに奉太郎の中学生の時の読書感想文を持ってくる。奉太郎の中学では在校生が感想文を書くお手本として、先輩の感想文をまとめたのを見せる、というのを国語の先生が行っていたのだ。
1年は「走れメロス」2年は「山月記」3年は「猿蟹合戦」。部員の前で肴にされてしまう奉太郎。しかも猿蟹合戦は芥川龍之介の書いた短編で、千反田はそこに奉太郎のある意図に気づく・・ う~ん、やるじゃないか奉太郎!
古典部メンバー4人の本棚は? 米澤氏が30冊考えた。奉太郎の棚には篠田節子の「夏の災厄」があったのがうれしい。
米澤穂信の作られ方
氏の年表。影響を受けた本、発表した本。
講演録「物語のみなもと」H28.1.10岐阜県にて
物語は役に立つのか? いやいや日常生活は物語に満ちている。たとえばコマーシャル「24時間闘えますか」にも働く先の栄光の物語、ドリンクを飲めばその栄光につながるのだという物語がある。物語は人を導き、鼓舞する。書く身としては自分はひとつの情報体だ。自分が死んでも作りだした物語が拡散し、自分のかけらが残る。自分の小説が誰かの物語の源になるかもしれない、そう思うことで、私はけっこう満足する。
人間はなぜ物語を作れるのか? 自分は、物語は、なぜだか出てきてしまう。
2017.10.13初版 図書館 -
古典部シリーズのファンブックみたいは内容。
奉太郎の切り口はとても面白かった。
米澤穂信さんとゲストとの対談集。北村薫・恩田陸・綾辻行人・大崎梢って豪華メンバーだなと思う。
やっぱり彼らの本棚気になりますよね。千反田えるの本棚のページにあった、「全集などは家の本棚にあるだろう...
やっぱり彼らの本棚気になりますよね。千反田えるの本棚のページにあった、「全集などは家の本棚にあるだろうから、個人の本棚にはきっと…」といった考察も面白かったです。
ひとりひとりの本棚の内容も興味深いですが、これを全部考え出せる米澤さんがすごい…。作家さんとしては当たり前なのかもしれないですが、本が好きでたくさん読まれていて、過去作品へのリスペクトの気持ちが「古典部」なんていう名前の部活動を生み出したのかなあ、などと思いました。
メンバー4人の本棚、気になりますよね。
米澤さんの本好きも凄いと思いますし、本書の『...
メンバー4人の本棚、気になりますよね。
米澤さんの本好きも凄いと思いますし、本書の『講演録 物語のみなもと』の中の『生み出した登場人物を粗末にしないこと』や『つくり出した彼または彼女に、あなたはどういう人間ですかと問うことを、三十回繰り返す』を知って、それだけの思いや試行錯誤があるから作ることができたのだろうなとも思いました。