インドクリスタル (上) (角川文庫)

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  • 本 ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041060636

作品紹介・あらすじ

社運を賭け、巨大ビジネスとなる惑星探査用の高純度人工水晶開発のためマザークリスタルの買い付けを行う山峡ドルジェ社長・藤岡。
インドのある町から産出された高品質の種水晶を求め現地に向かう。
宿泊所で娼婦として遣わされた少女ロサ。彼女は類稀なる知力を持つ不思議な存在で、更に以前地方の村で目撃した「生き神」だった。
鉱山からの帰途に遭難した藤岡はロサの能力に助けられることになる。

ロサを通訳兼案内人として村人との交渉に挑む藤岡だが、商業倫理や契約概念のない先住民相手のビジネスに悪戦苦闘する。
直面するのは、貧富の格差、男尊女卑、中央と地方の隔たり、資本と搾取の構造──まさに世界の縮図というべき過酷な現実だった。


鉱物ビジネスを巡る命を懸けた駆け引き。
古き因習と最先端ビジネスの狭間で蠢く巨大国家の闇に切り込む、超弩級のビジネスエンタメ!


〈第10回 中央公論文芸賞受賞作〉

感想・レビュー・書評

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  • 篠田さんワールドだな。読み応えある。インドの風習とか、影の部分が際立ってる。

  • 騙す方じゃなく騙される方が悪い…ハッタリや嘘は当たり前のインド人いてのビジネス。
    タフじゃないとやってけない、かけひきたっぷり展開が面白い。
    加えてインド社会の闇も垣間見える。
    読み応えがかなりある。そして、妖しい魅力を放つ少女娼婦ロサ。彼女の正体が気になる。

  • 地方の水晶振動子メーカーの社長が、インドで高品質の水晶を買い付けようとする話だが、主人公はインドでのビジネスに四苦八苦するだけではなく、そこで知り合った不思議な力を持った先住民部族の少女に翻弄されていく。
    カースト制、男女差別、部族差別などの外国人には理解し難いインド社会の構造まで深く掘り下げており、奥が深い話で読み応えたっぷり。
    この小説を書くにあたり、綿密なリサーチをしていることは一目両全で、さすが篠田節子と言いたい。

  • ウーン。何と言っていいか。インドのカースト制度を見せられ日本人の冒険活劇を見せられたような。でも、この年の人が仕事とはいえこんなにのめりこむのかな。日本の家族はたまったものじゃない。

  • 水晶発振子のために必要な種水晶を探しにインドまで行く水晶屋の社長の話。ただインドの暗黒部分について語っているが、やはり深い。物語は水晶の単結晶の不純物のない塊をいかに集めるかにかかっている。藤岡社長はインドの中に突き進む。結構波乱もあり、面白いため下巻に直ぐ突入!

  • インドという国の成り立ち、習慣、風習、宗教観、制度、決して一言で形容することが出来ない複雑に絡み合った背景に物語は進んでいく。

    アウトカーストである日本に生まれ、日本に生きていると読み進めていくたびに驚かされて、読む手が止まる。

    人が家畜以下なんて世の中があったなんて信じたくはなく、あまりにも人の命が軽く扱われていることに怒りと哀しみが。

    暴力とカーストに支配されたインドに真の意味での平等が訪れることを期待して、下巻へと向かう。

  • 人工水晶の核となるマザークリスタルを求め、インドの寒村に赴いた藤岡。宿泊先で使用人兼売春婦として働いていた少女ロサとの出会いを機に、インドの闇の奥へと足を踏み入れてゆく…。

  • 記録

  • 本書を読んで『神の座-ゴサインタン』の淑子の不可解さが、ようやく理解出来た。
    この作品に登場するロサも「生き神/処女神」だった経験があり、ロサが語る生き神の生に衝撃を受けた。
    彼女らは「生き神/処女神」として選ばれると、幼い頃から、現実の世界と隔絶され、祭文を覚える等以外は、人としての教育は何一つ受けず、その期間をカミサマとして奉り上げられ、身分ある大人たちさえ額づく環境で過ごす。しかし、初経がくれば「生き神」の座を降ろされ、突然に現世に放り出されてしまう。
    人とどう喋るかも知らず、会話が出来ないし、水汲みなど、日々の労働で直ぐに疲れてしまう。「人間として」生きる術を知らないのだ。
    ロサは才気煥発な女性で、「自由になりたい」という意志を、手段を問わずに求めていくが、淑子は「生き神」だった時代で、人生が止まってしまったのだろうと思う。
    篠田節子氏の世界に惹き込まれて、もはやシノダー(笑)になってしまったが、本作もスケールの大きな構成で、登場人物の味わいある描写、そしてインドという国の匂いをむんむんと立ち昇らせて進んでいくストーリーの鮮やかさに、読書の喜びを存分に味わった。

  • インドが舞台のビジネス冒険小説。冒頭の地図にある都市のプリーまでは行ったことがあるし、日本の水晶機器メーカーにも何回か訪問したことがあるので、インドや水晶デバイスのことを少しは知っているつもりでいたが、なんとも奥が深く勉強になることばかりだ。多様な価値観がぶつかる場面では、自分の常識が普遍的ではないことを再認識させてくれる。どのような取材を行えばこのような小説ができるのか、また著者の創作の動機についてなど、興味は尽きない。下巻を読んだ後に、著者の「インド取材旅行記」を読むのが楽しみだ。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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