インドクリスタル (下) (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041060643

作品紹介・あらすじ

山峡ドルジェ社長・藤岡は、開発用水晶をインドの村から入手する手筈を整えたが、やがて納品物の質は落ち、すり替えも発生。
現地に飛んで村組織を問いただすも、採掘に関わる人々に死や病など災いが生じていると突き返され、日本流の交渉が全く通じず難儀する。
かつて「生き神」だった少女ロサと再会するが、彼女は藤岡に負の予言を告げるのだった。「ここの水晶は、掘り出す人にも、持ち出す人にも、持っている人にも、良くないことが起こる」
そして更に事態は悪化。ロサは以前雇い主に「邪な種」と称されていたことを藤岡は思い返す。
州の役人により採掘が禁止され、窮地に陥った藤岡は……。


連続死、監禁と凌辱、反政府集団による襲撃…
「処女神」だった少女の運命は。 

とてつもない密度の混沌と耀き
一気読み必至、圧倒的筆力で描く社会派エンタメ超大作!


〈第10回 中央公論文芸賞受賞作〉


解説=温水ゆかり

感想・レビュー・書評

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  • 藤岡さんは懲りない。

  • 精密機械部品メーカー「山峡ドルジェ」の社長・藤岡は、社運を賭け、巨大ビジネスとなる高純度人工水晶開発に必要なインドのある町から産出された高品質の種水晶を求め現地へ向かう━
    ホテルで娼婦として遣わされた少女・ロサ。彼女は類稀なる知力を持つ不思議な存在で、更に以前、地方の村で藤岡が目撃した「生き神」だった。
    鉱山からの帰途、遭難した藤岡はロサの能力に助けられるが……
    雇い主に「邪な種」と称されるロサは関わった男たちを狂わせて行く━
    古き因習と最先端ビジネスの狭間で蠢く巨大国家の闇に切り込む、超弩級ビジネスエンタメ。

    上巻を読み終えてから下巻を読みきるまで2週間もかかってしまった…
    続きは気になるけど、どう考えても“ハッピーエンド”にはならない気配…むしろ酷いことが次々起こりそうで気が重かったから。
    実際に村人との契約は反古となってビジネスが行き詰まったり、共産主義過激派に捕らわれたり。
    本当に、ただ水晶を仕入れたいだけのハズがどうしてこんなに困難なのかと。

    そしてロサの影響力も。
    無意識なのか意図的なのか。目的もハッキリとは分からないから不安になる…
    多分に自由に生きたい、そのために女性の地位向上が必要なんだろうけど。

    しかし男たちは何故に女を下に見るのか。その女の腹から産まれてくるのに…

    インド社会の複雑さ、宗教観、ビジネスルール、色々な物事が絡み合って凄い圧力でした。

  • 面白かった!

    ロサが思ったより登場せず、水晶ビジネスにボリュームが割かれていたのが、ちょっと意外でした。
    甲州商人、インドで大奮闘です。
    インド人ののらりくらりとした交渉術、全くどうしたらいいやら読んでいるこっちまで頭抱えました(笑)

    生き神として讃えられてきた少女ロサとインドとクリスタル。
    科学では証明できない不思議な世界に誘われるのかと思いきや、海外で戦う日本のビジネスマンの苦労や、自然災害の影響で経営に四苦八苦する現実的な様が描かれていて、読んでいるものを飽きさせません。

    最後は藤岡社長が、ただのウザイおじさんに見えてきたのですが、どうなんでしょうか。

    表情が乏しく何を考えているかわからないロサですが、食事だけは元気にモリモリ食べる描写からするに、藤岡社長には可愛くみえたってことなのか。

    余談ですが、徳永さん。
    インドの駐在長いなと思ったら、最後はタイにいってしまうあたり、現実でもそんな人がいるような気がします。

  • インドの難しさがひしひしと伝わった。さすが、篠田女史、よく勉強されてます。

  • いやー面白かった! 故・船戸与一を彷彿とさせる、女性作家とは思えない骨太なストーリー展開。 ロサの幸せを願わずにはいられない。

  • 精密通信機起用の水晶発振子の水晶の種終章を求め、インド奥地まで行く社長の藤岡。そこでロサというインド人の女性に周りは振り回されながらもコヨドリ村から出る不純物の無い水晶を求めて滑動をする。現地の地主と村長、共産主義ゲリラと警察との深い争いに巻き込まれながら、なんとか、かなりの数を入手壽他ものの、直ぐ反乱が起き、藤岡は命からがら生還する。 村の水晶鉱山はウラン鉱山と交差しており、掘り起こす事で放射能がまき散らされ、死の待ちとかする事を食い止めたいロサが共産主義勢力を先導して、地主や藤岡らから事業を断念させようとした。最後は事業は失敗、水晶は最初二期多分だけとなったが、なんとか技術革新は進み種水晶が無くとも質の良い水晶が出来る技術が出来た事で会社としては良かったが藤岡は足を無くしたロサをNGOのフェアトレードで見つけロサに日本に来るように説得して話しは終わる。結構今回の本はインドの闇と裏を語るものとして重い話しが多かった。ただ日本のような人種差別の無いところでは考えられない重い課題のあるインドで今度どう向かえって行くか考えさせる一冊だと思う。よかった。 

  • 篠田節子『インドクリスタル 下』角川文庫。

    大作ではあるが、不満の残る作品だった。インドの辺境の村で採掘される高品質天然水晶の謎がそういうことで良いのか、そういうことをエンターテイメント作品の材料にして良かったのだろうか。東日本大震災の被災者で、現在は福島県民となった自分としては疑問を感じた。

    上巻までは不可思議系の冒険小説と思いながら、夢中になって読めたのだが、天然水晶の謎が判明したくだりで一気に冷めてしまったのだ。

    良質の天然水晶を原料に高純度人工水晶開発に取り組む中小企業も方向転換、不思議な少女・ロサもアッサリと流行りのサイコパスで片付けられ、何とも無難な大団円。

    読んでみる価値はあるが、大作を読んだ努力に対しての満足感は少ないと思う。

  • 人工水晶の核となるマザークリスタルを求め、インドの寒村に赴いた藤岡。宿泊先で使用人兼売春婦として働いていた少女ロサとの出会いを機に、インドの闇の奥へと足を踏み入れてゆく…。

  • 上巻と同じ熱量をキープしたままフィニッシュ。
    強いて言うならもうひと盛り上がりあるとなおよかった。
    ただ最後まで面白く読めた。
    外国人がインドで商売するのってすごく困難。
    藤岡さんもインディジョーンズ的な大冒険をしたわけだが普通なら懲りてもう行かないよね。

    慈悲深くもあり、冷酷でもあるロサの運命がいい方向に向けばいいけど。

    外国人の中途半端で自己満に近い救いの手って???
    考えさせられる機会にもなった。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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