- KADOKAWA (2017年8月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784041061336
作品紹介・あらすじ
〈上の天神さん〉の境内で行われるラジオ体操。カタコラカタコラ下駄履きで集まると、在郷軍人の小父ちゃんが台に上って号令をかけていた。/トコのちぢれ毛をまっすぐにして下さい。中原淳一の絵の女の子みたいにして下さい。/チョロ松と二人で、ゆぶねに腰かけて唱歌をうたった。「旅順開城 約なりて 敵の将軍ステッセル 乃木大将と会見の 所はいずこ水師営」/あとを頼むぞ、とか何とかいって戦地へいくと、若い盛りにパッと桜のように散る。そしてほめられる、新聞にのる、勲章をもらう、みんなに泣かれる、いい気なものだ。男のほうが人生の花を独り占めして、女はカスの部分をつかまされる。/日常のささやかな描写の中にすべて戦争が描き込まれた名連作短篇集。
感想・レビュー・書評
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朝ドラ「芋たこなんきん」の、田辺聖子さんモデルのヒロインの回想シーン(戦時中の少女時代)がとてもよかったので、是非とも活字で追いたいと購入。戦時下、大阪で多感な十代を過ごすトキコ。どんどん暮らしにくくなる世の中だが、そんな状況でもユーモアを交えながら明るく語られるトキコのキャラクターがとにかくよい。どんな時代でも少女の悩みや迷いは不変で、自分の容姿に悩んだり、イケメンにときめいたり、女子校独特の「モヤか湯気が顔に当たったような」(この表現巧い!)雰囲気に馴染めなかったり。そんな日々から垣間見える戦況の描写が何とも惨く、淡々としているからこそ心を刺してくる。
「青春とはこんなものなんだ、きっと。
自分にも何かができる、間違いなしに何かを約束されている、そう信じて疑わないもの。」
戦後、ようやくトキコから抑えきれない昴揚感が溢れるシーンで、私も胸が一杯になり、泣きたくなった。凄絶な経験をし、青春が何たるかを味わうことなく失くなった若者も沢山いる。そんな事実を知っていたはずだけど、それでもやっぱり辛くなるのだ。
昭和49年に刊行された作品だから、時々どぎつい表現にぎょっとするけれど、それでも読む価値は十分にある。田辺聖子のすごさを改めて感じる、俯瞰と主観のバランスが見事な、名作。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦後29年後にかかれた小説。戦時中の大阪のひとびとの暮らし、どんどん戦争の正当化を植え付けられていく子どもたち。戦い、死ぬことを美化され戦争だけが生きる目標とされていく人々。田辺聖子さんはコミカルな小説を書くと思っていたので、少し意外で、でもより戦争の怖さや深さを感じる作品でした。
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戦時中を生きた女学生の、日々のお話。
主人公が女学生というところが良かった。大人と子どもの狭間期から見える戦争は悲惨さや暗さばかりではなく、そのような状況下にあっても純粋な明るさがあった。
〈海軍さん〉への憧れから頭の中で巡らすアリエナイ妄想や、女学生ながらに宮本武蔵に染まる様子はいつの世のおんなのこも大体は通る道として共感できる部分であり、親近感が湧く。
読んでいると戦時中の時事や単語がたくさん出て来るので、調べたりもした。それは当時を知る上で参考になり、戦時下の大阪の様子を垣間見ることができる良き一冊と思う。
こまごまと出てくる地名を地図と照らし合わせ、主人公の足取りをたどることでより深く物語を楽しめた。知らずにいた戦争遺跡の場所が多くあった。
今年は戦後77年。
明治維新から終戦までの77年間と、さらに同じだけの年数が経つ節目のような年だという。その節目に、海外では再び戦争が始まり、日本国内でも国防のためと危険な考えを唱える人も散見されるようになった。
歴史は繰り返すというが、たとえ繰り返すような状況があるとしても過去から学ばなければ先人たちに対して申し訳が立たない。ただ繰り返すだけではなく、過去起きたことから学び、活かして対処していくことこそ本当の慰霊なのではないかと考える。
トキコにとっての清川少年の存在というのは、戦争がどのような結果をもたらすかということをもっとも身近な表現で、淡いながらも暗示しているものと印象深く残っている。 -
各章に、福島、鶴橋、梅田新道、といった大阪の地名が副題のようについている。
戦争末期から戦後にかけての主人公トキコちゃんの物語。
戦争世間の中で青春時代を過ごしたトキコちゃんの心のアンテナへひっかかる出来事などが、なまなましく描かれていたと思う。
トキコちゃんは結構な軍国少女ではあるのだが、チチとハハは、軍国世間の波には乗ってない。そんなところも興味深い。
大阪には定期的に出かけて行くのだが、映画祭等がメインで、まだまだ少しずつしか廻れてない。
今度教育塔というところに行ってみたい。
(まだあるのだろうか…) -
戰中到戰後透過成長中的少女所看到的風景。第一章有點亂接下來是漸入佳境。可以看出這個年代(作者1928生)的少女/少年顯然和父母輩的思考有點斷層,很純粹地忠君愛國,其實沒想過青春也沒想過未來,異常的戰爭卻是他們日常的生活(原來那時工廠因為機具不夠人多所以也輪班,我還以為每天都很緊湊),到戰末的無力感、到突然高歌民主女性解放的時代...作者的筆觸略帶詼諧(少女的描繪也很可愛),寫出當時大阪的樣貌與時代世相本身也很有意義,比較驚訝的是要在這個站登錄這部作品紙本居然差點找不到,這樣的佳作已經這麼快被遺忘,太可惜了。
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田辺聖子さんの自伝的小説、っていうのを読み終わって知った。戦時中に生まれて戦争が当たり前にある中で生きていくトキコ。染まりやすいトキコが先生の言葉で軍国主義が強くなったり、キリスト教にハマったり、自由なようで不自由な世界がしんどい。
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表紙の淡い絵が、「この世界の片隅に」の世界に似てる。
ただし、新米奥さんではなくて、日々成長していく思春期の女の子の日常のお話。ほのかに異性に憧れたり、女は損だと感じたり、仲のいい友人と憧れから教会に行ってみたり、と思うと、世の中の思想にどっぷりつかったり。そして、正直でユーモラスで、大阪風味。かいらしい、ってやつです。私らにもそんなころがあったかいな、と優しく思い出したりもします。
ただ、そこにモザイクのように戦時下のあれこれが挟み込まれていて、それが次第に膨らんでいきます。淡々とした筆遣いで、焼け跡の土が燃えつくされ、死人が腐り、どこの町にも異臭が漂っているとか、防空壕と機銃掃射とか、主人公や友人の父親との死別のことも描かれます。今、ガザの空爆が行われているのですが、テレビの中の色のない廃墟のような画像が、どこかリンクします。あと、朝鮮人が出てくるエピソードが、時期を置いて少しずつ出てきます。静かに語られているからこそ、ぼんやりと戦時下の日常が見えてくるような気がするのです。
解説は、小松左京さん。当時、少年の世界と少女の世界は全く交わらなかったという観点から興味深いものが書かれていて、大阪縁のお二人の深い交流を感じます。 -
kindle。
田辺聖子の戦中、戦後の自伝的小説。
本人と同じく写真館の娘という設定。写真館の内情への興味もあって読みすすめた。残念ながら写真関係はほとんど描かれていない。それでもいい本ではある。 -
大阪樟蔭女子大学図書館OPACへのリンク
https://library.osaka-shoin.ac.jp/opac/volume/665516 -
すぐ舞い上がったり憧れたり貶したり落ち込んだりする思春期は時代によらずって感じなんやな。敗戦の気持ちは汲みがたいものがあるけど、トコちゃんの昂奮するなアて気持ちが日本人の心になかったら、日本はこんなに起き上がらんかったかもなって思うとちょっとじいんときた。
にしてもトコちゃんアツい子やな、いや素敵やと思います。 -
戦中~敗戦の大阪の女の子の話。
おもいっきり軍国少女。
いろいろ憧れたり模索したり儚くなったり。罪はないよなあ。 -
田辺聖子の自伝的短編連作。自身の少女時代を題材に第2次世界大戦前後の大阪の風景や市井の人々の様子を描いている。
戦争を背景とした小説、映画、ドラマ等は多いが、今まで読んだり観たりしてきた作品はなかなかその当時の生活を実感できなかった。
この作品は私の地元大阪が舞台であり、よく知る土地、場所が登場すること、また主人公の少女の目を通して観た「当時の世の中」を素直に表現していることで昭和初期の生活を肌で感じることができる。
また感受性豊かな年頃の少女がその世の中を、大人たちをどのように捉えていたかも知ることができる。戦争初期はまだ普通の生活を続け、また子供達は戦争する日本を当たり前に受け入れている。これが末期になると実際に空襲があり、焼け出され、と日常の生活ができなくなっていくこと、また終戦でものの捉え方が全く変わってしまったことなど当時の子供や若者たちがどのように受け止めてきたか痛感した。
田辺聖子独特の優しい文体でありながら、自身の経験を客観的にみつめ、書き表した当時の市井の人たちの様子が手に取るようにわかる作品である。 -
田辺さんは自分の親よりも20歳くらい年上で、生まれ育った時代も環境も全く違うのに、どうしてこんなに共感できるのだろう。この本に書かれているのは、どうも田辺聖子さんご本人が戦時中に送った女学生時代らしい。先日見た映画「この世界の片隅に」を思い出すような、「普通の」人たちの戦時中の生活が描かれる。知人友人に戦死者が出たり、空襲があったり、そんな異常な状況下でも、人は淡々と日常を営もうとできるものなのだなぁと思って読んでいたけれど、終戦後の章、とりわけ最後の1ページに心を打ち抜かれた。考えさせられたし、多くの人が読んだら良いのにと思った。
小松左京さんの後書きも面白かった。 -
戦争の時代に子供~青春時代を過ごしたトキコが、世間の空気に何を感じ、どう思っていたかが綴られる物語。
やわらかい頭には、大人の言葉を通じて天皇万歳とか一億総玉砕とかいう言葉がするすると入り込み、トキコの思考をたどっていると当然の成り行きのように思えてくるから恐ろしい。そうやって、自分の思いや命、人生というものを顧みることを教わらなかった若者たちが、空に海に散ったのだと思うと・・・。大人の責任は重すぎるくらい、重い。
子供の将来を決めるのは、ある意味「今の大人」なんだな、と思う。子供自身ではなく。親や教師はもちろん、国を動かす立場にいるのも「今の大人」だ。誰が戦争を始め、誰が続け、誰が命じ、誰が支持したのか。
乙女になろうと奮闘するトキコの、けなげで(ちょっとおもしろくて)かわいらしい一面が、ぴかっと光って見える星のよう。 -
田辺聖子さんの自叙伝的小説である。
その1 民のカマド<福島界隈>
その2 陛下と豆の木<淀川>
その3 神々のしっぽ<馬場町・教育塔>
その4 われら御楯<鶴橋の闇市>
その5 文明開化<梅田新道>
解説 小松左京
昭和3年生まれの大阪のお嬢さんが戦争という時代に翻弄されながら、女性・娘としてどのように戦争社会立ち向かってきたのか、ほんわかした雰囲気もあり、死と向き合う人生、そして、朝鮮人の当時の置かれた立ち位置など、本音で語れれている。
戦後の、民主主義的傾向強化という国の方針の大転換についても、一定の矛盾を感じながら、また、人間天皇に対する感じも、当時の世相を緩やかに描いている。
それは、お父さん、お母さんの平衡感覚の下で育った田辺さんの感性なんだと思いました。
大阪・河内生まれの私としては、親しみやすく、読みやすかった。
しかしながら、戦争がなかったら、もっともっと楽しい人生がおくれたに違いない。
絶対、戦争はしてはいけないということです。
著者プロフィール
田辺聖子の作品
