私の大阪八景 (角川文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041061336

作品紹介・あらすじ

〈上の天神さん〉の境内で行われるラジオ体操。カタコラカタコラ下駄履きで集まると、在郷軍人の小父ちゃんが台に上って号令をかけていた。/トコのちぢれ毛をまっすぐにして下さい。中原淳一の絵の女の子みたいにして下さい。/チョロ松と二人で、ゆぶねに腰かけて唱歌をうたった。「旅順開城 約なりて 敵の将軍ステッセル 乃木大将と会見の 所はいずこ水師営」/あとを頼むぞ、とか何とかいって戦地へいくと、若い盛りにパッと桜のように散る。そしてほめられる、新聞にのる、勲章をもらう、みんなに泣かれる、いい気なものだ。男のほうが人生の花を独り占めして、女はカスの部分をつかまされる。/日常のささやかな描写の中にすべて戦争が描き込まれた名連作短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 田辺さんは自分の親よりも20歳くらい年上で、生まれ育った時代も環境も全く違うのに、どうしてこんなに共感できるのだろう。この本に書かれているのは、どうも田辺聖子さんご本人が戦時中に送った女学生時代らしい。先日見た映画「この世界の片隅に」を思い出すような、「普通の」人たちの戦時中の生活が描かれる。知人友人に戦死者が出たり、空襲があったり、そんな異常な状況下でも、人は淡々と日常を営もうとできるものなのだなぁと思って読んでいたけれど、終戦後の章、とりわけ最後の1ページに心を打ち抜かれた。考えさせられたし、多くの人が読んだら良いのにと思った。
    小松左京さんの後書きも面白かった。

  •  戦争の時代に子供~青春時代を過ごしたトキコが、世間の空気に何を感じ、どう思っていたかが綴られる物語。
     やわらかい頭には、大人の言葉を通じて天皇万歳とか一億総玉砕とかいう言葉がするすると入り込み、トキコの思考をたどっていると当然の成り行きのように思えてくるから恐ろしい。そうやって、自分の思いや命、人生というものを顧みることを教わらなかった若者たちが、空に海に散ったのだと思うと・・・。大人の責任は重すぎるくらい、重い。
     子供の将来を決めるのは、ある意味「今の大人」なんだな、と思う。子供自身ではなく。親や教師はもちろん、国を動かす立場にいるのも「今の大人」だ。誰が戦争を始め、誰が続け、誰が命じ、誰が支持したのか。
     乙女になろうと奮闘するトキコの、けなげで(ちょっとおもしろくて)かわいらしい一面が、ぴかっと光って見える星のよう。

  • 田辺聖子さんの自叙伝的小説である。
    その1 民のカマド<福島界隈>
    その2 陛下と豆の木<淀川>
    その3 神々のしっぽ<馬場町・教育塔>
    その4 われら御楯<鶴橋の闇市>
    その5 文明開化<梅田新道>
    解説 小松左京

     昭和3年生まれの大阪のお嬢さんが戦争という時代に翻弄されながら、女性・娘としてどのように戦争社会立ち向かってきたのか、ほんわかした雰囲気もあり、死と向き合う人生、そして、朝鮮人の当時の置かれた立ち位置など、本音で語れれている。
     戦後の、民主主義的傾向強化という国の方針の大転換についても、一定の矛盾を感じながら、また、人間天皇に対する感じも、当時の世相を緩やかに描いている。
     それは、お父さん、お母さんの平衡感覚の下で育った田辺さんの感性なんだと思いました。
     大阪・河内生まれの私としては、親しみやすく、読みやすかった。
     しかしながら、戦争がなかったら、もっともっと楽しい人生がおくれたに違いない。
     絶対、戦争はしてはいけないということです。

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