虚栄 下 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041061411

作品紹介・あらすじ

がん治療開発国家プロジェクトは、治療の主導権を巡り内紛状態となった。その現実に胸を痛めた外科講師・雪野は、内科医の赤崎に相談するが、赤崎は雪野を利用し内科が有利になるよう画策をし……

感想・レビュー・書評

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  • 下巻に至っても、外科、内科、放射線科、免疫療法科、それぞれの科の、しがらみと嫉妬と利己主義に凝り固まった医師たちが互いの足を引っ張り合う。
    思惑が錯綜し、医師たちの醜さがこれでもかと、描き出される。
    そんな中、唯一誠実な医師雪野の行動が、清涼剤となっている。
    書中、著者はタイトルの言葉を使い、医師に語らせる。
    「今は医学が進んでいるから、何でもわかるはずだと考えている人が多いようです。決してそんなことはない。実際はわからないことばかりです。何でもわかるように見せかけているのは、医者の虚栄ですよ」
    一方で、一人の医師にこんな発言もさせる。
    「日本の超高齢化社会のひずみと、進みすぎた医療の矛盾、寝たきり老人、施設での老人の飼い殺し、チューブと器械に生かされる尊厳のない命、そんな”悲惨な長生き”を避けるため、無意識の恐怖が圧力を強めて、がんを凶悪化させたとは考えられませんか。がんは私たちの一部なのですから」
    思わず考えられずにはいられない。
    がんとはいったい何なのか・・・
    私たちにとって、がんとは・・・

  • 凶悪がん治療国家プロジェクトG4は、外科・内科・放射線科・免疫療法の4科が協力し合って挑む筈なのに、多額の予算を巡って互いに醜い覇権争いの様相へなります。上では少々間延びしましたが、下ではスピート感がすごかった。
    でも癌の話は「悪医」のほうが好きだったかな。

  • 外科医・雪野は手術支援ロボットHALの医療訴訟で真実を明らかにしようとし、窮地に立つ。その最中、凶悪がん治療国家プロジェクト・G4の主軸となるがん治療の権威が、次々がんに罹患。患者となった途端、自らの提唱する治療法に逆行する言動を見せ始める。一方、雪野の同級生で内科医の赤崎は、凶悪がんの原因を電磁波とする論文を発表し、大波乱を呼び起こすー。国家プロジェクトの行方は?

  • 外科医・雪野は手術支援ロボットHALの医療訴訟で真実を明らかにしようとし、窮地に立つ。その最中、凶悪がん治療国家プロジェクト・G4の主軸となるがん治療の権威が、次々がんに罹患。患者となった途端、自らの提唱する治療法に逆行する言動を見せ始める。一方、雪野の同級生で内科医の赤崎は、凶悪がんの原因を電磁波とする論文を発表し、大波乱を呼び起こす―。国家プロジェクトの行方は?息詰まる医療サスペンス!

  • 一方で,医療を受ける側も,医療従事者に対する最低限の敬意と,医療自体に対する限界を自らの頭で考え,受容すべきである.これは著者が一貫して訴えるテーマであり,変わらず身に浸みる.

  • がん治療の国家プロジェクト発足の理由が衝撃的、かつ現実にありそうで恐怖すら覚えます。また、それをネタに事実を脚色して金稼ぎするマスコミと、そのマスコミを利用して権謀術数を企てる医療界の面々を見ていると、ホント何を信じたら良いか分からなくなります。

    そんな中、象徴的だと思ったのは矢島塔子の存在。治療法を医者に丸投げせず、自分なりに治療法を調べ、その方針に基づいた治療を行なった結果の生還。

    現在、医療に関しては様々な情報源がある時代。(利権を追い求めているかもしれない)医者に頼り切るのではなく、患者側も自分で自分が抱える病を知り、どのように向き合っていくかを自分で決めるべきではないか。

    そんなメッセージを医師でもある著者が本作に込めているのかな、なんて思いました。矢島塔子だけでなく、萩島と岸上も自分で決断した治療に納得・満足している様を見ていると、尚の事そのように思います。

    1点微妙だなと思ったのは、話展開を優先して登場人物がやたらとがんに罹患しすぎな気がした点。ここがもう少し自然な流れに見えたら、文句なく最高の評価だったかなと思います。

  • 久坂部羊『虚栄 下』角川文庫。

    がん治療の国家プロジェクトに便乗し、患者無視の覇権争いを繰り広げる医師たちの姿が滑稽であり、恐ろしくもある。まるで今の日本の政治家たちの身勝手な振る舞いを見るかのようだ。

    主人公は間違いなく『がん』であり、がん治療を巡り、論文データの改竄や医療ミスなど、最近、見聞きしたことが散りばめられており、非常にリアリティを感じる作品だった。

    ここ10年の間に叔父、父親、叔母、義理の父親、会社の同僚とがんに罹患する身内や知人が相継いだ。あながち、がんの凶暴化は創作ではないのかも知れない。

  • #本 #読書 #読了 #久坂部羊
    『虚栄』

    診断から短い期間で死に至る凶悪化したがんにより、著名人が相次いで死亡した。

    政府によるがんの治療開発国家プロジェクトが開始
    手術、抗がん剤、放射線治療、免疫療法における各分野のエキスパートが集められるも、彼らによる主導権争いが始まる。

  • 癌ってまだわかってないこと多いのね。真癌と偽癌。ちょっと信ぴょう性あるかも。
    変な療養して治ったと言ってる人は、偽癌なのかも。はやくWWシリーズみたいに病気にならない体にならないかなあ。

  • なかなか興味深いお話でした。
    うちの家系でがんで亡くなった人はいないけど、もし自分や家族ががんになった時、どのような選択があるのか参考になった。
    虚栄だらけでうんざりしてしまったけど、実際の大学病院ってこんな感じなのか、当たらずとも遠からずなのか、、、?!

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著者プロフィール

医師・作家・大阪人間科学大学教授

「2016年 『とまどう男たち―死に方編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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