迷い家

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041061602

作品紹介・あらすじ

===
第24回日本ホラー小説大賞 優秀賞受賞作
(選考委員:綾辻行人、貴志祐介、宮部みゆき)

綾辻行人「作品に強烈な“圧”がみなぎっている」
貴志祐介「エンタメ=壮大な虚構の極北として感動すら覚えた」
宮部みゆき「作者の物怪に対する愛情と、この分野の先達へのリスペクトが感じられた」
(選評より)


ここは迷い家。妖と霊宝を隠世(かくりよ)に閉じ込める屋敷――

昭和20年。火の雨降る東京大空襲から生き残った少年・冬野心造は、遅れて母校の集団疎開に合流した。
民話が息づく地・古森塚で、妹の真那子が行方不明となる。
妹と一緒に脱走を図った香苗の証言を基に山に分け入った心造の前に忽然と現れたのは、見渡す限りの蕗の原にたたずむ巨大な屋敷だった。
妹を捜して屋敷を探索するが、妖怪とでも言うべき怪物に次々と襲撃される心造。彼を助けたのは、老犬「しっぺい太郎」だった。
しっぺい太郎が語るには、屋敷は現世を追われた妖や、霊宝と言われる道具を封じるための異界で、稀に人も閉じ込められるという。
妹探しに協力してくれるという太郎だったが、そこにはあるたくらみがあった。
そして、脱出を図り様々な霊宝を使ううちに、大日本帝国の勝利を願う軍国少年としての紅蓮の野望が、心造の心に芽生えてくる。果たして心造が試みたことは、その結末は……。
 ◆ 
時代は下り、古森塚で教師になった香苗。街は、東京オリンピック決定で浮かれている。
香苗には、どうしてもぼやけてしまう疎開時代の記憶があった。
ある日、病院から姿を消した義父の後を追い山に入った香苗は、山中で巨大な屋敷を発見し……。

少年の哀しき紅蓮の野望が怪異まみれの「お屋敷」と共振する、新時代の怪奇冒険小説!


『遠野物語』はじめ様々な民話伝承を壮大な物語に取り込み、
清濁と、今昔と、栄枯と、虚実と、人と怪とを併せ呑んだ規格外の山怪譚。


装画=漆原友紀(『蟲師』『水域』ほか)

感想・レビュー・書評

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  • 遠野物語などの民話をベースに突如山のなかに現れた古い屋敷のなかをアイテムを集めつつ状況を打開していく、という紹介文(角川ホラー文庫30周年記念の公式HP記事より)を見て読みたくなった
    こういうRPG的な仕掛けで話が展開していくホラーも好き。遠野物語や民話がベースになっているので耳馴染みのある妖怪の名前が出てきたりしていておもしろかった
    描写次第で絵本とかで見たおばけがこんなおどろおどろしい妖怪になるんか…と関心した。舞台はまさに戦時中で疎開先の山から話が展開していく
    古めかしい漢字や言葉遣いも多かったのでそれに慣れていなければするする読めたとはならないかもしれない

  • 東京大空襲の後、冬野心造は妹の真那子と集団疎開で古森塚へやって来た。行方不明になった妹を探して山へ分け入ると大きな屋敷が現れる。
    第24回日本ホラー小説大賞 優秀賞。

    装画 蟲師の方ですね。
    遠野物語のほか数々の民話伝承が入ってる。前半は賢い少年が道具の特性を即席で活用して、妖が巣くう屋敷を攻略していく冒険譚といったところ。
    しっぺい太郎とのコンビがなんだかんだ良い。P194~195、悲しさ美しさ気高さが詰め込まれてる感じで、すごく好きなシーン。
    後半は只々悲しかった。軍国教育をされた少年が両親を亡くしても弱音も吐けず、日本が勝つことだけを拠り所にしているような姿が辛い。まだ小学生の子供にこんな思いさせたくないなぁと戦争の卑劣さを感じる。

  • 日本ホラー小説大賞優秀賞受賞作。
    昭和20年、疎開の地で山に迷い込んだ少年の前に現れた巨大な屋敷。一度迷い込めば出ることはかなわず、その中には無数の妖怪が跋扈する恐ろしいその屋敷の中で、数々の霊宝を使いこなし生き延びようとする少年の冒険譚……と思いきや、第二章からの展開には絶句するばかり。さまざまな民話伝承がこれでもかというほどに詰め込まれた作品です。
    数々の霊宝にまつわる来歴がとにかく楽しいです。知らないものもかなりありましたが、聞き覚えのあるものも多くて。妖怪は恐ろしいけれど、霊宝をうまく利用して立ち向かうシーンには大興奮。なるほど、そんな使い方をすればよいのか、とわくわくさせられてしまいました。そしてなんといってもしっぺい太郎が登場するとは! 子供の頃に昔話で読んだので、懐かしくなりました。
    というわけで最初は心造に対してはひたすらに応援する気持ちしかなかったのだけれど、第二章からがなんともおぞましくつらいことに。心造って勇気はあるし、利発だし、しかしその利発さが救いようのない現実をきちんと見据えているからこそ不憫で仕方ないのですよ。「怖いものなんかみんな、みんな無くなってしまった」というセリフがあまりに悲しくて。そんな彼が純真さゆえにどんどん邪悪になっていくのがやりきれない……! この時代だからこその倫理観や価値観というものがひどく重くのしかかってくる気がしました。このような時代は二度と訪れないでほしいです。

  • 2019/12/19(木曜日)

  • 第24回日本ホラー小説大賞受賞作。
    もともと遠野物語に登場する迷い家の伝承に興味があり、今市子の「百鬼夜行抄」やその他フィクションで引用されるうちに好奇心が湧いたので購入。
    帯で錚々たる顔ぶれが絶賛しているが、特に宮部みゆきと漫画家の漆原友紀(「蟲師」の作者)が褒めているのは納得。そりゃこの二人なら気に入る。綾辻氏と貴志氏もわかる。

    学童疎開で田舎にやってきた軍国少年の心造が、行方不明になった妹をさがして迷い家に至る和風ホラー。
    田舎の悪ガキと疎開児童の対立があったり、心造や香苗が東京大空襲のトラウマを背負ってたり、当時の世相と迷い家の不気味な存在感を絡めた展開が見事。
    文章も達者で饒舌、心理描写も上手くグイグイ読ませる。良い意味の玄人っぽさ。
    中でも心造が屋敷で出会う霊宝の目録にはわくわくさせられる。
    迷家に保管された妖ゆかりの道具の由来が数行しるされているのだが、この怪異憚が本当に面白く、ここだけ摘まみ読みしても高揚をおさえきれない。
    次はどんな奇想天外な無双アイテムが出てくるのか……心造の相棒となる犬もとい狼の妖、しっぺい太郎も非常にいい味をだしてる。
    高慢で狡猾で低俗で誇り高い、「ぐふふ」と笑い自分の知名度の低さに本気で落ち込む彼のキュートさと邪悪さにはときめくこと必至。
    第二章は時代が飛んで視点人物も変わるが、迷い家に滞在している間に心造に起きた変化、彼が侵された憎悪と絶望に起因する狂気にぞくりとする。

    霊宝を組み合わせて威力を倍にする、または欠点を補うという発想も秀逸で、機転を利かせ窮地を切り抜けてく姿は痛快。それがのちに大参事に繋がるとは……永久に時が止まった隠世と終戦を迎えた現世の隔絶の残酷さが感慨深い。
    クライマックスのスペクタクルは、荒俣宏の「帝都物語」を彷彿とさせた。
    ラストは少しわかりにくいがあまり書き込みすぎても興ざめなので、余韻が残る終わり方ととれるだろうか。
    全く話は替わるが、学帽学ラン短パンの規律正しい軍国少年スタイルで日本刀や短刀を振り回す心造のビジュアルはマニアックな向きにはたまらない。

    シリーズ化するかこれのみで完結かはわからないが、もし続編があるなら迷い家にやってきた様々な境遇や価値観の迷い人たちと、彼が交流する話になるのだろうか。
    その趣向も楽しそうなので実現したら読んでみたい。

  • 「天邪鬼」の起こりはここにあったとは。

    舞台は戦時中の疎開先、里山ならではの様々な伝承が物語を回すという民俗的な空気が濃く、何より主軸は山の怪異譚と、私的に大好物の要素が並ぶ。
    特に導入部、心造がついに屋敷に迷い込むまでの握力たるや凄まじい。
    屋敷に揃う"霊宝"の数々を駆使して生き延びるべく化け物どもと戦っていくんだな…と想像させるに充分な設定は、まるでひと頃流行ったホラーゲームのようでもある。
    もっとも、作中で紹介されるその霊宝の数がどうも多過ぎ、途中で目録を読み進めていくのが苦になる瞬間もあったが…。
    さらにはここに、当時の軍国教育に染まった少年の狂気を通し、教職員を中心に左翼思想が蔓延しつつあった昭和30年代をクールに描写するくだりや、果ては何物をも超える家族の情愛なんかもぶっ込んでくるわけだが、そんな力技の数々が決して浮くことなく、見事に物語と融和しているのが心地良い。
    筋と離れ、書かれている文章そのものもリズムに富んで美しく、日本語を操る力も相当なもの。

    私もちょくちょく山に入るので、いつか大きな"屋敷"が忽然と目の前に現れたらどうしよう…とこれから頭の片隅で常に怯えるのではないか?

    また、私は貴志祐介氏の作品も大好きだが、巻末に収められた選評を読み、やはりね、と独り納得したりも。

  • (特集:「先生と先輩のすすめる本」)

    ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00546556

  • 図書館で借りた本。千里眼を持つ婆様、探し物や未来の事など全て見える婆様は村人たちに重宝されお礼に米をもらいながら生活していたのだが、呆け気味になり村人個人の未来を大声で喚くようになってしまい、村人たちは婆様を担いで山に捨てに行く。その話を疎開してきた子供達に夜話として聞かせていた。
    ある日、子供が山で行方不明となり神隠しに遭ったのでは?という展開から恐ろしい話に物語は続いていく。遠野物語や妖怪伝説、霊宝などたくさん散りばめられた読み応えある本だった。

  • 戦争中、ある山里に疎開した兄・冬野心造と妹・真那子。
    父と母のいる東京を目指し、綾織香苗と共に脱走した真那子だが、
    山から見つかったのは香苗だけだった。
    妹を探しに山に入った心造は不思議な霧に包まれ大きな屋敷に迷い込む。
    しかしそこは魑魅魍魎のいる妖の館で…

    前半おもしろかったんだけどな~
    後半がなんか期待外れ感がすごい。

    深夜のアニメとかになりそう。

  • ふわっとした出だしから始まり、
    途中はこのさきどうなるんだろうという
    ワクワク感があったけど、
    うまく収束できなかったように思った。

    途中は大傑作かもと思ってたんだけど。。

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著者プロフィール

1987年、京都府生まれ。龍谷大学法学部卒業。リハビリ介助を行う介護士として勤める傍ら、2017年『迷い家』(マヨイガ)で第24回日本ホラー小説大賞〈優秀賞〉を受賞し(受賞時筆名:霞澄晴吽)、同作単行本でデビュー。『夜の都』はデビュー第2作となる。

「2022年 『夜の都』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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