モモコとうさぎ

著者 :
  • KADOKAWA
3.02
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本棚登録 : 164
レビュー : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041061619

作品紹介・あらすじ

モモコ、22歳。就活に失敗して、バイトもクビになって、そのまま大学卒業。もしかして私、誰からも必要とされてない――!?
そんなやり場のなさから、ひたすら、ちくちくと縫い物に没頭する日々。ここに籠もって、暗い現実を、なんとかやり過ごせたら。でもそうは問屋が卸さない。家を出る羽目になったモモコは知り合いの下宿を転々とし、3Kの肉体労働にも黙々と従事し、明日をも知れぬその日暮らしを続けるうちに、肌身離さず持ち歩いていたぬいぐるみのうさぎに導かれるように、いつしか自分のルーツともいうべき場所に漂着していて――。
外国人労働者、格差社会、限界集落、地方の共同体、超長寿社会……
のっぴきならない現実をつぶさに目の当たりにし、いかに自分が非力かを痛感するたび、自分が傷だらけになって崩壊していきそうで、とにかく怖くて。それでもその場その場で、野草のように地面に根を張ろうとするかそけき女子の意外にタフな生命力。
就職とはなんぞや。働くとは、生きるとは――。
寄るべない気持ちで、たゆたうように現代を生きるすべての若者の、云うに云われぬ不安と憂鬱と活路を余すところなく描き出した人生応援歌!

感想・レビュー・書評

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  • 大島さんの作品は『ピエタ』『あなたの本当の人生は』につづいて三作目。

    就職に失敗し、バイトもクビになったモモコは家に引き込もって自分の部屋でひたすら縫い物をするようになる。
    義姉だったハルミちゃんにもらったうさぎのぬいぐるみにもふかふかの服を作ってあげた。そうそう、このうさぎは特別な能力があるらしい。
    うさぎの服だけでなく部屋中がモモコが作ったもので満たされていて満足感を感じていた。でもそんな生活は長くは続かず、何となく部屋を覗いた売れない小説家の義父に挑発されるように、モモコはうさぎをリュックに詰め込んで家を出たのだった...。

    そこから始まるモモコの流浪の旅。
    様々な人と出会い、ある人には追い出されるように、ある人とは名残惜しげに別れる。自己表現に乏しく流されるままに生きてきたモモコの前に現れる一筋縄ではいかないキャラクターたち。彼ら彼女らに触発されながらふわふわとモモコは考える「働くって?」。

    何にも取り柄がない。世界から忘れ去られている、と感じるモモコが、最初はフラフラとした足取りで、しかしだんだんと自分のペースを作っていく過程が頼もしい。

    さてさて、モモコとうさぎの旅はどこに流れ着くのか。

    緻密なうさぎのイラストの白い表紙も素敵です。

  • 就活に失敗し引き籠って縫い物をしていたモモコが、現在の父親との会話をきっかけに家出し、不思議な雰囲気を持つうさぎのぬいぐるみと一緒に放浪を繰り返す物語。

    現実に「地方には仕事がない」と言われているけれども、それは求人がないという限られた意味合いかもしれないということに気づかせてもらった。モモコが色々な「仕事」を経験していったように、地方にも人手が必要な場面はいくらでもあって、給料という生きる手段の代わりに生きることそのものが得られる可能性は多くあるのだろうと思った。

    常にモモコと行動をともにするうさぎが要所で存在感を示しつつ、一歩引いたところで物語と馴染んでいるのも示唆的だと思った。

  • 30年前の20代は「モラトリアム世代」と言われ、今の20代は自分探し世代を呼ばれる。
    自分には何の仕事が向いているのか、自分は何をやりたいのか、そもそも自分とは何者か?
    いつになっても社会に出ていくその一歩は20代そこそこの者にとってはひとつの大きなハードルで。そのハードルをなんなくするっと超えていく人と、そこで躓いて立ち止まって前に進めなくなったり後戻りしてしまったりする人がいる。
    自分のそのころを振り返ってみると、ハードルがあったことさえ気づかずに通り過ぎてしまったみたいでモラトリアム世代失格だな、もっと悩んでおくべきだったな、とつくづく思う。
    モモコは就職に失敗して、ハードルの前からじわじわとコースを外れて行ってしまったわけだけど、そもそもモモコにとってはそのハードル自体がみんなとは違っていたんじゃないかと思ったりもする。考えが甘い、というのはあるとしてもいろんな意味で「今いる場所」から「外」に出るべき時であったのだろう、と。巣からの旅立ち。まぁ誰にとってもそうであるのかもしれないけど。
    モモコがその特異な半生を特異だと思わないまま22歳まで来られたのはある意味幸せだったのだろうけどその幸せのリミットが22歳だったのだろうね。そのリミットをしかけたのがうさぎなんじゃないか、と思ったりもして。
    うさぎネットワークでつながったうさぎたち。これは物語の中ではすこし後ろに隠れているけど、ものすごく広くて大きな何かを含んでいるんじゃないか。だってネットワークですよ。天才的な研究者によって莫大な資金を投じて開発されたネットワークですよ。もしかするとコレは壮大なSFなんじゃないでしょうか。日本国中にばらまかれたうさぎたち。彼らがパワースポットを通じていろんな人の動向を共有している。
    この人とこの人を会わせると何か面白いことが起こるかも、とか、この人にはこの時まで自由に動いていてもらおう、そしてビッグバンを起こしてもらおう、とか。そんなことをうさぎたちのネットワークで計画立てあっている。モモコにとってはそれが22歳の1年間。
    うさぎによって導かれた出会いと動き出した人生は、日本中のモモコに今後もたらされるべきテストケースだったのかもしれない。あるいはモモコが感じたパラレルワールドにその都度入り込ませていたのか。別の人生を歩んでいるはずのモモコと入れ替わらせていたのか。

    モモコが出会っていく人たちも、なんだかとっても変わっている人ばかりでそれもいつもの大島さんらしくてうれしい。なんでこんな変な人ばかりと出会うのか。呼び寄せているのか、モモコが。いや、やはりこれもうさぎだ。うさぎが呼び寄せているんだ。
    あぁ、でももしも他の誰かがみね婆やメリーやりるさんと出会っていてもこんな風にはいかなかったかも。ただ出会ってすれ違って別れていくだけの関係だったかも。そこにはやはりモモコと引き合い影響し合い別の道へと押し出してくれる何かがあったから。磁石の+と-の関係のように。もしくはブロックの凹凸のように。だからやはりこれはあのときうさぎをもらったモモコにしか起こりえない物語で、ひとつのモモコの人生の物語ということなんだよね。

    物語の中にいくつもの大きな問題が描かれている。就活、ブラック企業、過疎の村…誰もがいつかどこかでかかわることになるそんな問題たち。もしそのときにこのモモコの物語を思い出せたら、多分きっと少し心が軽くなるんじゃないか。そんな気がする。

  • 就職に失敗したモモコが引きこもりになって縫い物ばかりする.「ちくちくちく」という音がとても効果的に使われる.そして,やたらと開発費のかかったといううさぎをリュックに入れて家を出る.友達,兄,亡くなった父のお墓,桃源郷などを転々としながら自分探しの旅は続く.最後までウサギの存在が謎だった.

  • 50ページくらいで挫折・・・ちくちくちくちく・・・あれだな、時間があって余裕があるときだったら読めたかも。世界観になじめなかったなー。

  • 就活に失敗し、家に引きこもってちくちく縫いものをするモモコ。小さな部屋は自分の作った作品、不思議なうさぎの人形と、ファンタジーな世界を期待して読んだ。
    が、引きこもっていた部屋からモモコが突然飛び出したところから話しは大きく展開していく。

    これからの事、自分に何ができるか、何が向いているのか。自分探しの旅のようで、しかしモモコからは焦りは感じられず、流れるように彷徨っている。
    読んでいる方はモモコの得意な分野を見つけられるので、「そこを伸ばせばいいよ!」と声をかけたくなる。が、当然声は届かない。このもどかしさがある意味リアリティがあるのかもしれない。
    モモコが流れていくように、文章と会話の区切りがなくダラダラと流れていくようだ。読むのにちょっと苦戦する。
    ずっと待っていたうさぎの謎も最後までよく分からずちょっと残念。

  • 本屋さんで見つけてビビビときたので図書館で借りました。
    大島さんの小説は昔のものの方が好きなのだけど(内容とか文体とか)、最近のものは「読もう」という気持ちになれないものが多かったのでなんとなく避けてた。でもこの本はあらすじ見てひさしぶり読みたいと思ったな。
    そのビビビ感はやっぱり正解だったみたいで、いまの自分が読んで良かったなぁと思った。シンクロが多かったし。
    親のこととか、これからどうしてゆくかということとか。
    モモコは結果的に、どういう仕事につくか、どこで暮らすか、ということより、「モモコ自身でいれればいい」というところに到達するのだけど、ほんと、究極はそれだよねって思った。モモコは最終的にどんな仕事をするのだろう?とか気になって読んでたけど、、
    でもこの本はサラッと深い。
    家出してからのモモコの生活はなかなか大変でひどいものだったのだけど、その経験があったからこそ生きてくることもたくさんあり、どんな経験も意味があるんだなあ、とも思った。
    途中の、村を離れるモモコを引き留めない皆のシーンでは、とても泣いてしまった。留まるべきか迷っている場所があったのだけど、あぁ、わたしもうここにいなくてよくて、先に進まなくちゃいけないのかもしれないなぁ。。とものすごく思えて。

  • うさきがしゃべるにゃ。

    結局、温かなものに満たされてる感が、肌にあわなかったにゃ

  • なかなかなんとも……だった。可愛らしい表紙とは裏腹に、主人公モモコは就活失敗、バイトをクビになり、居候先を探すもトラブルや主人公のマイペースさにより、居候先を転々と変更……というなかなか波乱万丈な内容だった。

    主人公の性格も掴みどころのない感じだし、登場人物も変わっていた。まず、なんといってもモモコ母が。

    桃源郷あたりからモモコも成長し、今まで散々してきた掃除や裁縫を活かして生き生きとしだした気がする。
    そして今後どうするかを見つけたのかと思いきや、そこでお話はおしまい。モモコは旅を続けるのか、実家に帰るのか……?
    良い予感は確かにするんだけど、ここから先は読者の想像におまかせかな?

    さらにはあの光ったり喋ったりするうさぎさんは一体……うさぎが好きで手にとった本なだけに、もう少しうさぎに関する描写が欲しかった。

  • モモコは縫う。ちくちくちく、ちくちくちく。どんどん縫う。ちくちくちく、ちくちくちく。ちくちくちく、ちくちくちく。モモコがあまりにぼんやりしているから、現実味がなくて、夢うつつな感じ。バイトをクビになり就職に失敗し、なんとなく家出してふらふらしているモモコ。こんな子がいたら本当に心配。がんばれモモコ。

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著者プロフィール

1962年名古屋市生まれ。92年「春の手品師」で文学界新人賞を受賞し同年『宙の家』で単行本デビュー。『三人姉妹』は2009年上半期本の雑誌ベスト2、2011年10月より『ビターシュガー』がNHKにて連続ドラマ化、2012年『ピエタ』で本屋大賞第3位。主な著作に『水の繭』『チョコリエッタ』『やがて目覚めない朝が来る』『戦友の恋』『空に牡丹』『ツタよ、ツタ』など。

「2018年 『モモコとうさぎ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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