悪い夏

  • KADOKAWA
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本棚登録 : 517
感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041061824

作品紹介・あらすじ

26歳の守は地方都市の社会福祉事務所で、生活保護受給者(ケース)のもとを回るケースワーカーとして働いていた。曲者ぞろいのケースを相手に忙殺されていたその夏、守は同僚が生活保護の打ち切りをチラつかせ、ケースである22歳の女性に肉体関係を迫っていることを知る。真相を確かめるために守は女性のもとを訪ねるが、やがて脅迫事件は形を変え、社会のドン底で暮らす人々を巻き込んでいく。生活保護を不正受給する小悪党、貧困にあえぐシングルマザー、東京進出をもくろむ地方ヤクザ。負のスパイラルは加速し、ついには凄絶な悲劇へと突き進む――。

感想・レビュー・書評

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  • ちょくちょくブクログで見かけてて気になったので借りました。
    序盤はかなり面白くてどうなるか気になりながらも読み進めていきましたが、最後はえぇえぇ〜?!?みたいな終わり方でした( ̄▽ ̄;) 途中まですごく良かったのにーーっ!佐々木くんの人生を返せ〜!!

  • 生活保護制度については、色んな本で書かれたものがあるけど、ヤクザが出たり、本当に困窮している人が出たり、不当に受給している人がいたり。何となく似た感じの登場人物ばかりな気がする。
    だからか、作家さんによって視点が違うオリジナリティが楽しめて私は結構好きだ。
    今回は、やはり終盤のワチャワチャが良かった。
    真面目な男があっという間に堕ちていく。底辺の女が浮上しかけたのに、まだ堕ちて戻っていく。不正受給の男が真の悪ではなかったこと。四角張った正義論を翳し他人を糾弾する女が、弱者につけ入るクズの男に恋したり。
    今の状況から少しでも抜け出したい。誰もが思う事。生活保護を受けていても。

  • ケースワーカー達と、働く気のない生活保護受給者、暴力団関係者、底辺の生活に苦しむ親子。
    そこに切り込む社会派作品かと思ったら…
    言葉は悪いが、皆んなが胸糞悪いどん底へと転がり落ちていく最悪の夏、の話だった。
    そんな中で個人的には、クズのような山田が右往左往している姿が、意外にも印象に残っている。
    そして、鮮やかな色彩の絵が今も描かれている事が、ほんの少しだけ救いになっていると思う。

  • 未来のない物語。
    社会福祉事務所のケースワーカーと生活保護受給者(ケース)トラブル。
    登場人物全てダメな人間か、ダメになっていく人間で。
    主人公のケースワーカー、佐々木守の落ちぶれ度合がいちばん酷い。

    「『生活保護を貰ってる奴らは、楽して金を得てずるい』でなく『一生懸命働いてるのに生活保護世帯より安い賃金しか貰えない社会はおかしい』と考えるべきなんだ。」
    というセリフが刺さる。
    本当にそう思う時がある。
    不正受給する人、本当に心中するほど追い詰められているのに受給できない人、ケースワーカーの仕事の過酷さ。
    適正なところに適正に支給してほしい。
    そしてお仕事に復帰できたら、次は助ける側に廻り相互扶助ができたなら。
    先が気になり、一気読み。

  • タイトル通り、悪い夏。
    生き詰まった人と不正受給しようとする生活保護受給者とそれを蝕む輩と生活福祉課。どこまでが現実でどこからがフィクションなのか。
    誰がどのタイミングでどう動いたら違うエンディングを迎えられるのか。
    後味は悪いけど嫌いではない。
    191冊目読了。

  • 役所の中で、福祉行政が大変だということは分かるが、あまりにも職員の描き方がひどすぎる。
    人って言うのは転落するときは本当にあっという間なんだなとつくづく恐ろしいと思った。主人公が可哀想すぎて後味の悪い作品だった

  • 読み終わった時にハァーとため息が出てしまいました
    なんか体力が削られた小説でした
    読みやすくスラスラ読んでしまいました
    他の小説も読んでみようかと思いますが
    少し明るい本を1冊挟んでからにしようかと思います

  • 負の空気が充満しすぎて、読んでるだけで伝染するんじゃないかと思うくらいの悍ましい本だった。公務員って、楽そうでいいなとか不景気関係ないとか思われがちだけど、精神的には、一般企業よりきつそうだなと思う。「誰の金で飯食ってる」とかいう人だってたくさんいそう。そして、どんな人でも、一歩間違えばどん底の生活に引きずり込まれる恐怖。なんなら間違ってなかったのにいつの間にか転がり落ちてる。ものすごく怖かった。一気に読める面白さだったけど、すごく悪いものが体に溜まった感じ。

  • いやぁ、勿体無い!途中までは本当に面白く、グイグイ読まされた。それが終盤にきてチープな物語に変貌してしまった。

    ケースワーカーと不正受給者、それにヤクザとくれば柚月裕子の『パレートの誤算』と似ている。中盤まではパレートを凌ぐほど面白かったんだが、ケースワーカーの宮田有子のキャラクターがハッキリしてからが、こうきたかぁ。と残念でならない。

    物語は、不正受給者と奮闘する様々なケースワーカー。あるケースワーカーが不正受給者を脅迫して金銭を要求し、肉体関係を結ぶ。その事実を知った正義感のケースワーカー。そして、それをネタに新たなビジネスを展開しようとするヤクザ。ケースワーカーの奮闘と不正受給者の実態を描く。

    実際こういうことってあるんだろうなぁと思ったし、生活保護に関しても考えさせられた。物語としても凄く面白かったので、途中までは4か5どちらにしようかと悩んだが・・・。最後まで突っ走って欲しかったというのが正直な気持ち。

    • breadandbookさん
      私も、宮田は最後になんかするんじゃないかと思ってたら、そういう風に登場してきたかーって思いました。最後みんな集まっちゃうし、変? 美空のその...
      私も、宮田は最後になんかするんじゃないかと思ってたら、そういう風に登場してきたかーって思いました。最後みんな集まっちゃうし、変? 美空のその後も気になるところでした。
      2017/11/29
  • 生活保護を不正受給する人々。そして、その人達は不正受給を斡旋するかのようなヤクザと関係を持つ。市役所職員も、立場を傘にきて、不正受給者を脅迫したり、肉体関係を迫ったり…
    その一方で、真っ当に生きる人たちが受給できず死ぬことに…
    全てが絡み合っった結末はしっちゃかめっちゃかで、なんだかなぁ…だったけど、生活保護を巡る事は事実が往々にしてありそうだ。

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著者プロフィール

染井為人(そめい・ためひと)
1983年千葉県生まれ。芸能プロダクションにて、マネージャーや舞台などのプロデューサーを務める。2017年『悪い夏』で横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞しデビュー。本作は単行本刊行時に読書メーター注目本ランキング1位を獲得する。『正体』がWOWOWでドラマ化。他の著書に『正義の申し子』『震える天秤』『海神』『鎮魂』などがある。


「2023年 『滅茶苦茶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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