フラッシュ・クラッシュ Flash Crash たった一人で世界株式市場を暴落させた男 (1)
- KADOKAWA (2020年11月27日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041062128
作品紹介・あらすじ
ナビンダー・シン・サラオ、通常ナブ。36歳・男性。
両親と一緒にロンドン郊外の小さな家に住み、子ども部屋に設置した
古いコンピュータを使って株の取り引きをしていた。
酒もタバコもやらず、質素な生活を送るこの男が
莫大な富を蓄え、世界の金融システムを崩壊させた──!?
元ブルームバーグ記者が5年の綿密な取材で明らかにした、衝撃の犯人像。映画化決定!
これは、優れた頭脳を持ち、金融システムを補強する「配管」を理解し、規制当局が居眠り運転をしている間に平凡な投資家たちから数十億ドルをかすめ取る、新たな金融エリートが出現した物語だ。
これは、業界が自動化されてロボットが人間に取って代わり、人間が大きな代償を払った物語である。
そして、一人の男が自分に配られたカードを受け入れず、巨大な権威に戦いを挑んだ物語なのだ。
感想・レビュー・書評
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謎の瞬間的な恐ろしいほどの株価暴落のニュースは覚えていました。株式市場はもはやアルゴリズムが勝手に高速に売買しているだけなので、何か変な動きがあるとそれに引っ張られてしまう危険性がある、という事実もその時に初めて知りました。
その後、「フラッシュ・ボーイズ」を読んで、もはや金融市場は(意義はあるけど)正しく機能していないと見切りを付けたのですが、その後に書かれたこの「フラッシュ・クラッシュ」は、実はそのトリガを引いたのは一人の人間(の取引操作)だった真実に辿り着くまでのドキュメントです。
当の本人がフラッシュ・クラッシュを起こした訳ではなく、トリガまでで、それに高速自動売買を繰り返すアルゴリズムたちが踊らされて起きたというのは面白いところだし、それ故にこの人物に辿り着くまでに時間が掛かったのも納得できる内容でした。
ほんと、行き過ぎた資本主義、金融中心主義を早く転換していかないと世界が破綻しそうで怖いです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2010年5月6日のフラッシュクラッシュの引き金になったトレードは、
イギリスの若者がベッドルームから仕掛けていたというお話。リーマンショック後に取引の大半が高速取引に置き換わっていく中で、それにあらがい裏をかきにいった個人トレーダーがいるという、「巨大市場vs個人投資家」の構図。個人的にはこのパターンの物語は好き。特に証券市場もので。
著者がBloombergのアナリストだけあって、各方面への取材を元に描かれているようで、主人公であるナブの人物像が立体的。生い立ちから、数字に関わる狭く分野で異常に深く優れた能力を発揮できる部分がトレーディングにはまった。しかし対人関係が極端に弱く、結局食い物にされてしまっている。結局これは悲劇、なのかな。
ナブが開発したソフトのロジックなど細かいところまで描かれていて知識としておもしろいけれど、全体として訳のせいなのか、文章に抑揚があまり感じられなくて、物語として没入しきれなかった。映画化されたら見に行きたい。
ナブがスキャルピングで財をなしていくくだりは、その才能も環境もがない自分としてはうらやましい。自分が市場に勝つには、数ヶ月間の中期トレードの方があっているとは思うけれど。
著者あとがきから、類著に下記5冊。
マイケル・ルイス 「フラッシュ・ボーイズ」
スコット・パターソン「ダーク・プール」「ザ・クォンツ」
ジョン・サセックス「デイ・ワン・トレーダー」
エドウィン・ルフェーブル「欲望と幻想の市場」 -
犯罪なんかな?