- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041062319
作品紹介・あらすじ
生まれ育った松本から出ることのないまま大学生になった僕は、
附属図書館のくたびれたソファで寝るか、
数少ない友人の広崎と吉岡さんと慣れないビールを飲んで
時間をつぶす毎日を送っていた。
季節とともにまわりはどんどん変わっていくのに、
あの日のことを忘れられない僕は、ずっと動けずにいて――
友情、淡い恋心、ちぐはぐな心とからだ――
痛みと絶望の先に差すかすかな光のまぶしさに胸がひりつく、著者新境地の青春小説!
感想・レビュー・書評
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読み始めて最初に思ったのが、文章に特徴があって読んでいると音楽を聴いているような不思議な感覚がくせになり一気に引き込まれました。景色や人物の描写も素晴らしく、長野の風景が常に頭に浮かびながら読みました。
話の方もとても面白かったです。物語全体を通して漂っている独特の雰囲気が心地よかった。現時点で今年のNo.1小説です!!
小嶋陽太郎さんの小説ははじめて読んだのですが、他の小説も読みたくなりました♪詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今までの小嶋陽太郎の明るいおかしみに満ちた世界たちから一転。こんなにも心の深いところに痛みを感じる物語を描くとは。
中学生の男女三人と、大学生の男女三人。周りと距離を取って生きている彼らの二つの物語が交互に語られる。彼らの間に、どんなつながりがあるのか。どういう関係があるのか。
悲しく寂しい心は誰がどうやって救うのか。
もしかすると、と思いながら読んでいく。半ば当たり、半ば外れた予想は温かく悲しい涙のラストを迎えた。長い長い悲しい話を包む光が美しい。 -
小嶋陽太郎が描く人の抱える痛みが、踏切の遮断機の音のように急かされて押し寄せてくる。
『火星の話』で見せていた片鱗が大化けした。
環境に恵まれて毎日元気に暮らしている幸せな人にはこの小説はただの暗い話にしか見えないかもしれない。
でも、人の悪意に敏感で、ぐちゃぐちゃと深く考え込んで、勝手に痛みを抱えてこんでしまうような人には、とてもよくわかる物語だと思う。
主人公がまさにそういう青年で、主人公視点の地の文は鬱屈している。
広崎と吉岡との出会いのシーンはとてもわくわくしたのだが、主人公は過去の経験からなかなか彼らと距離を詰めることができない。
でも、痛みを抱えているのは主人公だけではない。
他の登場人物たちにもそれぞれに暗い過去があって、どうにもすれ違ってしまう。
はじめに「幸せな人にはわからない話」なんて、まるで自分だけが被害者みたいなことを書いたが、幸せばかりの人間なんていないということは私もよくわかっている。
誰しも少なからず傷跡はある。
周りとの価値観の違いに悩んだり、作中で「バランス」あるいは「ゼロととなり合わせの百」と表現されるような人間の不安定さに振り回されたり。
でもそれはいつかは乗り越えなければいけない。
その方法はいくつかあるけれど、私はやはり互いの荷物を共有していける相手がいればいいなと思う。
物語のラストは小さな光だが、私には小さくとも眩しく感じられた。
「悲しい話は終わりにしよう」というタイトルが、とても大きな一歩になる力を秘めている。 -
天才的な小説だった。
心理描写や設定、何もかもが素晴らしい。
最近の作品によくある、「大どんでん返し」「最後に裏切られる」などのありきたりな言葉では表現できない。
登場人物たちが心を痛めるのと同じく、読者も心を痛める。 -
読後の思いのままのタイトルだ。
正にといった気分である。
この著者はこんな重い話を書くんだと考えながら読み進めた。ラストの明かりの差し方はやはりと思ったが、それにしても軽くはなかった。ただ、このどんよりとしたムードも嫌いじゃなく、物語に強く引き込まれた。
どうにも手放せない過去によりどこにも進めなくなっている様子がヒシヒシと伝わってきた。その姿にはとても共感したし、またイライラもした。
胸に鉛が落ち込んだような読後感があった。
途中どうにもバドワイザーが飲みたくなった。 -
特に何も解決してないけど面白かった