悲しい話は終わりにしよう

著者 :
  • KADOKAWA
3.62
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本棚登録 : 167
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041062319

作品紹介・あらすじ

生まれ育った町で大学生になった僕は、図書館で寝るか、数少ない友人と慣れないビールを飲んで時間をつぶす毎日を送っていた。季節とともにまわりはどんどん変わっていくのに、僕には前に進めない理由があって――

感想・レビュー・書評

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  • 読み始めて最初に思ったのが、文章に特徴があって読んでいると音楽を聴いているような不思議な感覚がくせになり一気に引き込まれました。景色や人物の描写も素晴らしく、長野の風景が常に頭に浮かびながら読みました。
    話の方もとても面白かったです。物語全体を通して漂っている独特の雰囲気が心地よかった。現時点で今年のNo.1小説です!!
    小嶋陽太郎さんの小説ははじめて読んだのですが、他の小説も読みたくなりました♪

  • 今までの小嶋陽太郎の明るいおかしみに満ちた世界たちから一転。こんなにも心の深いところに痛みを感じる物語を描くとは。
    中学生の男女三人と、大学生の男女三人。周りと距離を取って生きている彼らの二つの物語が交互に語られる。彼らの間に、どんなつながりがあるのか。どういう関係があるのか。
    悲しく寂しい心は誰がどうやって救うのか。
    もしかすると、と思いながら読んでいく。半ば当たり、半ば外れた予想は温かく悲しい涙のラストを迎えた。長い長い悲しい話を包む光が美しい。

  • 小嶋陽太郎が描く人の抱える痛みが、踏切の遮断機の音のように急かされて押し寄せてくる。
    『火星の話』で見せていた片鱗が大化けした。
    環境に恵まれて毎日元気に暮らしている幸せな人にはこの小説はただの暗い話にしか見えないかもしれない。
    でも、人の悪意に敏感で、ぐちゃぐちゃと深く考え込んで、勝手に痛みを抱えてこんでしまうような人には、とてもよくわかる物語だと思う。

    主人公がまさにそういう青年で、主人公視点の地の文は鬱屈している。
    広崎と吉岡との出会いのシーンはとてもわくわくしたのだが、主人公は過去の経験からなかなか彼らと距離を詰めることができない。
    でも、痛みを抱えているのは主人公だけではない。
    他の登場人物たちにもそれぞれに暗い過去があって、どうにもすれ違ってしまう。

    はじめに「幸せな人にはわからない話」なんて、まるで自分だけが被害者みたいなことを書いたが、幸せばかりの人間なんていないということは私もよくわかっている。
    誰しも少なからず傷跡はある。

    周りとの価値観の違いに悩んだり、作中で「バランス」あるいは「ゼロととなり合わせの百」と表現されるような人間の不安定さに振り回されたり。

    でもそれはいつかは乗り越えなければいけない。
    その方法はいくつかあるけれど、私はやはり互いの荷物を共有していける相手がいればいいなと思う。

    物語のラストは小さな光だが、私には小さくとも眩しく感じられた。
    「悲しい話は終わりにしよう」というタイトルが、とても大きな一歩になる力を秘めている。

  • この作家さんの作品もはじめて。「ぼくのとなりにきみ」など、中学生にどうかな?と思っていたのだが、この本をどなたかの本棚で発見し、書かれている感想もなかなかだったので最初に読むことにした。
    まず、中学生には少し重い内容かな、と感じた。
    身近な人の死を二度に渡り経験し、その記憶から前へ進めない主人公。終盤まで雨雲が低く垂れ込めたような重苦しい流れだが、最後の最後に光が差してくる。
    交互に出てくる登場人物の名前はなんだろうと思っていたが、途中からそうだったのか、と分かる伏線である。なかなかワザあり。

  • 「大学生の僕」と「中学生の僕」が一章ごとに語り手となる。
    それぞれにたった一人の親友がいて、そこにちょっと変わった女子が加わり…
    似たようなシチュェーションだけれど、何かが決定的に違う。
    大学生の僕の中には隠された深い闇がある。
    最後に明かされる闇の正体は、やりきれないほど哀しい。
    哀しい話は終わりにしよう。
    「僕」が未来に向かって手を伸ばせるよう祈らずにはいられない。
    いや、ちょっとこれ凄い。
    でも「市川」と「佐野」のミスリーディングはうまく成り立っていないかも。というか必要ないかも。

  • 天才的な小説だった。
    心理描写や設定、何もかもが素晴らしい。
    最近の作品によくある、「大どんでん返し」「最後に裏切られる」などのありきたりな言葉では表現できない。
    登場人物たちが心を痛めるのと同じく、読者も心を痛める。

  • 特に何も解決してないけど面白かった

  • 2人の主人公を別人だと思わせたかったのだとしたら失敗してると思います。普通に同一人物として読んじゃいます。厭世的な雰囲気は好きだけど、ちょっとナルシストっぽいかな?

  • 久々に読んだら小嶋陽太郎のイメージをガラっと覆す小説でびっくり。もっと軽妙で前を向いたポップな小説を書く人のイメージだったのだが、この本は軽妙さやポップさは(ないとは言わないが)影を潜めている。

    主人公と親友とそこに現れた一人の女の子。そういう三角な関係が2つ。大学生の市川君と中学生の佐野君の視点で交互に章立てされて話が進む。どちらもまっすぐな友情物ではなく、かなりの登場人物それぞれの背景からして曲者で、一角を成す女の子との関係もそうとうに曲者。

    話が進むにつれて張られた伏線になんとなく気付いてくる。その伏線は決して目新しいものではないのだが、それでも回収されるときの衝撃は鈍くドンっと響く。ミステリーじゃないので「あっ」と驚く必要はない。そうかこういう回収による表現もあるんやと、衝撃におののきつつ感心する。

    読後にタイトルの意味と、第一章が唐突に始まる意味が分かって、それでまた感動する。小島陽太郎、やっぱただものじゃない

  • ええええ



  • 市川と佐野、2人のストーリーが交互に描かれており、市川は大学生、佐野は中学生と関連性が無く、最初は「この2人に共通するのは三角関係って事かなあ?」などとぼんやり考えていました。
    ですが、途中から市川=佐野であることを間接的に匂わせる表現が入ってきて、最後の晃との会話の部分で確定した…って感じでしたよね?
    途中で同一人物であると気付いた時は震えました。笑

    市川でのストーリーも、佐野でのストーリーも、
    最初はただただ"日常"感が強く、穏やかな気持ちで読めていたのですが、段々と不穏な空気が混ざって来て…最終的に1番怖かったのが、佐野が父の部屋を見て奥村の家に行かなければならないと思い浮かび、雷雨の中自転車を漕いで奥村の家に向かい、インターホンも押さずに家に入っていくシーン、あのシーンは本当に鳥肌が立ちました。
    そのシーンの際はぼやかされていて、
    結局奥村が死んだ、という事実しか明かされていなかったのですが
    最後の最後で、晃と市川が2人で話しているときに奥村が晃に覆い被さって…とその時の事が明らかになった時も驚きました。というか奥村は沖田の"利用すべき敵"を殺した通り魔事件の犯人なんでしょうか?そういう話が上がってましたけど、結局ぼや〜っと終わりませんでしたか?
    誰か教えてください!!!

    あと、アレですね。広崎。
    彼もすっごいですね。
    市川と広崎が最後に話した日、あの時にはもう大学を辞めていたんですね。衝撃すぎました。


    今度、バドワイザー飲みながら
    はっぴいえんどの曲聴いてぼ〜っと散歩でもしようかと思います。

  • 中学生の男女3人、信州大生の男女3人、交互に話がすすんでいく。
    穏やかに、でも何でだかざわざわと、不安で落ち着かない感じがすごくうまい。
    途中、どっちの話だか分からなくなりつつ、行きつ戻りつ読んだ。
    最後は苦しかったけど、少し前に進めた。
    傷ついたことのない人はいないと思うけど、私のがさつな感性ではこんなにひりひり感ある人には寄り添えないだろうな。
    うまく書けないけど…本としてはかなり刺さった。

  • 2つのお話が交互に語られるという構造になっていて、登場人物達が抱える闇が少しづつ見えてくるが、面白いところで2つの話が繋がってくる。

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB2500459X

  • 小嶋陽太郎の3冊目
    文体が少し村上春樹や伊坂幸太郎に似ている
    かなりハードなストーリーだった

  • ページをめくる手が止まらず一気読みしてしまった。この作品とても好きです。

  • 生まれ育った松本から出ることのないまま大学生に
    なった僕。季節とともにまわりはどんどん
    変わっていくのに、あの日のことを忘れられない
    僕は、ずっと動けずにいて…。痛みと絶望の先に
    光の眩しさに胸がひりつく青春小説。
    重かった…。

  • 0と100が隣り合わせ

    頭の中にも降る雨が
    とても身近に感じた
    絶望と決別してはじまりと手を繋ぐ希望は
    今1番欲しいものかもしれない

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著者プロフィール

1991年長野県生まれ。信州大学人文学部中退。2014年『気障でけっこうです』で第16回ボイルドエッグズ新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『今夜、きみは火星にもどる』『おとめの流儀。』『こちら文学少女になります』『ぼくのとなりにきみ』『ぼくらはその日まで』『悲しい話は終わりにしよう』『放課後ひとり同盟』『友情だねって感動してよ』がある。

「2019年 『行きたくない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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