柳橋物語 (1) (角川文庫)

  • KADOKAWA (2018年3月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784041062364

作品紹介・あらすじ

気丈で働き者のおせんは、おとなしく控えめな庄吉と、乱暴者だが闊達な幸太の2人から相次いで求愛を受ける。幼さゆえに同情と愛とを取り違え、上方に修行へ行く庄吉の「待っていてくれるか」という言葉を受け入れた彼女は、しきりに会いに来る幸太のことをすげなく突き放す。たいへんな大火事が起きたのはそんな時だった。おせんは病気の祖父をかばって逃げ遅れ、窮地を救ってくれた幸太は、火に追われ逃げ込んだ川の中で、濁流にのまれ命を落としてしまう。火事で一切の身寄りをなくしたおせんは、幸太と不義を働いたという根も葉もない噂で心身ともに追いつめられてゆく。追い打ちをかけるように、月日を経て再会した庄吉からも幸太との不義を疑われ、婚約破棄を言い渡されて――。火事から町が復興し、柳橋がかけられるまでの日々に起きた、おせんという一人の女性の哀しくもたくましい愛の物語。他「生きる」ことへの悩みに真正面から向き合った『しじみ河岸』を加えた中編2作による名作集。

感想・レビュー・書評

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  • 『柳橋物語』と『しじみ河岸』2編が収められた1冊です。

    『柳橋物語』人の心の複雑さを炙り出す、心に残る作品でした。
    出逢った人に心惹かれ、この人とずっと一緒に居たいという気持ち。とても尊く素敵な感情だと思います。

    誰かに必要とされたい。そして同時に自分も支えてもらいたい。双方の想いが着地点を探しながら重なったとき、この先の艱難辛苦を一緒に乗り越えていくことのできる力強い伴侶同士となるのでしょう。

    しかし出逢いの時点で想いのなかに相手への同情や憐憫が底深く横たわっていたら…。

    自己解放的で情愛に満ちた人よりも、一見可哀想で自己抑制的な人を選んだ娘おせんの人生を山本周五郎さんが描きます。

    堅実で辛抱強く見える若い大工の庄吉の存在は、幼い頃から家族に苦労してきた娘おせんにとって「私が支えなければならない」という使命感のようなものを掻き立ててしまったのだろうと思います。
    私にも思い当たる節があります。

    自分さえ辛抱我慢すれば…とすべてを1人で抱え込み、自分の心の奥底にある真なる情愛や想いに蓋をしてしまったのかもしれません。

    度重なる天災や貧困という人々にとっての極限状態で、裏切る人、本当の意味で支えてくれる人の混在する様は今の時代にも当てはまるように感じました。

    『しじみ河岸』
    江戸時代の身分、知的水準の違いの大きさ、貧困が意味する「重さ」が善悪の価値観抜きで描かれます。

    「貧困」や「格差」を「可哀想な人たち」というフィルターで見て決めつけてしまうことほど、単純化の恐ろしさを感じることはありません。もっともっと複雑だと思います。

    諦念のなかで生き延びるために人々はどう考え、どう振舞うか。
    経験の浅い新参者の吟味与力 花房律之助から見える貧困の世界が淡々と描かれます。

    描き過ぎず思想を押し付けず、江戸時代の市井の人々を描きながら、山本周五郎さんが思い描く言葉の世界は今の時代とも地続きであり、生きることは容易いことではないと改めて感じます。
    白でもなく黒でもなく、いくつもの難しさが複雑に絡み合う価値観のなかで、私たちは生きています。

  • 同情と恋と愛を見間違えた結果、人生が難しくなる話。でも、何が正解で幸せかなんて、死ぬ時まで分からないから、生きていくしかないんだな〜と思った。
    宝塚で演るので予習のために軽い気持ちで読み始めたけど、かなり好きだった。

  • 柳橋物語
    宝塚"川霧の橋"の原作ということで読んでみたけど、おせんちゃんに次々と災難がふりかかってくるし、そこに折れないところと最後の決断が本当に強いな…と。

    しじみ河岸
    事件の結末に何が幸せなのか…となるような苦しさ。「生きることに疲れきって、ただもう疲れることから逃げたしたいという気持ちで、ーああ、おれにはそれがよくわかった、おれはそのことだけでまいったよ」
    この言葉に全てがつまってる

  • 元禄の大火と地震、日本は災害の国だ。江戸時代は燃えたり流されたりしたら住み替えも日常茶飯事でそのまま行方不明になってしまうことも多かったのだろう。おせんは火事でたまたま救った赤ん坊に縛られて庄吉の愛を失うが、その子があるゆえに亡くなった孝太の愛を得る。あまりに悲惨なおせんの境遇がしんどく、読み続けられるか不安だったが、最後の淡い光のような明るさに心底ホッとした。おせんの一歩一歩はとてもゆっくりとした歩みだけれども、なにか絶対に揺るがない心の強さがあって、こうして粘り強く生きていくことが価値なのだと思えてくる。

  • 柳橋物語としじみ河岸
    柳橋物語はもう、悲惨。泣きっ面に蜂という感じ
    火事で祖父を失い、ショックで記憶喪失、洪水でお世話になったひとを失い、
    結婚を約束した庄吉に勘違いされ、裏切られる。
    しかし、最後には避けていた幸太の愛に気づく。
    強い女性

    しじみ河岸はもっと悲惨。救いがない。
    家族を養うのに疲れて、犯してない人殺しの罪を被る。
    律之助の操作により、罪を犯していないことがわかり、また元の生活に戻っていくり
    救いがない。。

  • 2019/01/12 借りる

  • 山本周五郎を読むと日々をかっこよく生きようという気概が湧きます。

  • 2018年3月角川文庫刊。既読。やはり名作。諸田玲子さんの解説で「没後半世紀」と描かれていました。著作権50年切れに合せた出版なんでしょうねぇ。ちょっと考えてしまいました。

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著者プロフィール

(やまもと・しゅうごろう)
1903~1967。山梨県生まれ。小学校を卒業後、質店の山本周五郎商店の徒弟となる。文芸に理解のある店主のもとで創作を始め、1926年の「文藝春秋」に掲載された『須磨寺附近』が出世作となる。デビュー直後は、倶楽部雑誌や少年少女雑誌などに探偵小説や伝奇小説を書いていたが、戦後は政治の非情を題材にした『樅ノ木は残った』、庶民の生活を活写した『赤ひげ診療譚』、『青べか物語』など人間の本質に迫る名作を発表している。1943年に『日本婦道記』が直木賞に選ばれるが受賞を辞退。その後も亡くなるまで、あらゆる文学賞の受賞を拒否し続けた。

「2025年 『山本周五郎[未収録]時代小説集成』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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