ヒキコモリ漂流記 完全版 (角川文庫)

  • KADOKAWA
3.85
  • (24)
  • (44)
  • (26)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 454
感想 : 35
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041062371

作品紹介・あらすじ

「なんにも取り柄がない人間が、ただ生きていても、なんにも責められへん社会、いうのが正常です」という発言がネットで共感を呼び、その陽の当たらない青春が話題となったお笑いコンビ・髭男爵の山田ルイ53世の半生。思わず笑ってしまうエピソードの数々は、実力主義、成果主義、グローバル化を無条件で「善」とする、生きづらい風潮に立ちはだかる、勇気と希望を与えてくれます。おそらく大多数であろう「普通の人」が「イケてなければポンコツ扱いされる社会」に対して、そこはかとなく抱えている後ろめたさに、免罪符を! 前進し続けることに疲れた人々に、振り返る「勇気」と立ち止まることの「正しさ」を! 「これでいいんだよ…」と社会に投げかける爆笑と癒やしの珠玉エッセイ。電子版には特典として、文庫化記念対談「山田ルイ53世×斎藤環(精神科医) 引きこもり問題の現状と正体」を収録! 引きこもり体験者と研究者が、アカデミックにそして面白く、引きこもり問題の正体に迫ります!
※本書は、2015年8月にマガジンハウスより刊行された『ヒキコモリ漂流記』に加筆・訂正し、改題のうえ文庫化したものです。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • youtubeで髭男爵の山田ルイ53世を見て
    頭のいい人だなーと感心し読了
    半生を綴った文書が読みやすくオチも効いて面白い!

    引き篭もり、家族離散等壮絶な人生を経て、
    「人は自分が頑張って絶対的に幸せになるより、他人の不幸で相対的に幸せ感を得る方がお手軽だ」
    と悟った中で、よくあの真逆な芸風をしながら発明できたなとびっくり

    youtubeでは私小説家の西村賢太「苦役列車」を進めていたが、このエッセイこそが現代ルネッサンス私小説だと感じた

    ■子供とは勝手なもので、親にも人生があるということを忘れている。子供は親を、もう「終わっている存在」と思いがちだが、彼らにもまだまだ大事な人生があるのだ。

    ■「ご利用は計画的に」と注意は促してくれるが、そもそも、計画的ではない人間が借金するのだから、その警告に効果はない

  • 引きこもり(問題)について新聞などで論ぜられると、男爵さんのインタビュー記事をお見かけすることが多くなって、このお方はどのような人生を歩んでこられたのだろう……ずっと気になってました。
    と言うのも、彼は引きこもりを美談にすることはありません。もちろん、いじめにあったりしたら学校に行かないという選択肢はあっていい。だけど、自分の場合は「引きこもりの6年は完全に無駄だった」とズバリ話しています。決して、あの6年間があったから今の自分がいるとは思ってないようなのです。失った十代の多感な時期、家に閉じこもっているより、外に出て、友達と遊んだり、勉強や部活に励んだりした方が、充実してたでしょ?楽しかったでしょ?「取り返しがつかないことが多すぎる」と彼は述べています。
    ところが、その答えは決して世間が求めているものではなかったようです。たとえ、無駄だった、失敗だったと本人が断じていても、世間の声はそれを糧に成長すればいい!と何がなんでも意味を与えようとするのだと。世間の大部分にとって、人生に“無駄”があっては拙いらしいと文庫版あとがきで書いておられます。

    「本当は、何の取柄が無い人間だっている。
    無駄や失敗に塗れた日々を過ごす人間も少なくない。
    そんな人間が、ただ生きていても、責められることがない社会……それこそが正常だと僕は思うのだ。」

    この思いはわたしが読んだどのインタビュー記事でも仰っていて、彼のことを知りたくなったきっかけでもあります。
    とても意味ある大切な言葉です。

    • しずくさん
      男爵さんって、例のワイングラスを傾けていた芸人さんですよね!?
      彼が引きこもりを経験していたとは見えませんでしたし、全然知らなかった・・・...
      男爵さんって、例のワイングラスを傾けていた芸人さんですよね!?
      彼が引きこもりを経験していたとは見えませんでしたし、全然知らなかった・・・。
      「本当は、何の取柄が無い人間だっている。
      無駄や失敗に塗れた日々を過ごす人間も少なくない。そんな人間が、ただ生きていても、責められることがない社会……それこそが正常だと僕は思うのだ。」
      とても重い言葉に慰めてもらえました。
      2019/07/25
    • 地球っこさん
      しずくさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます!
      最近、心がざわざわしていてなかなか読書に向きあえない地球っこです。
      しずくさ...
      しずくさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます!
      最近、心がざわざわしていてなかなか読書に向きあえない地球っこです。
      しずくさんをはじめ、ブク友さんのレビューを拝見し、はやく読書の世界へ戻りたいなと思ってます。
      しずくさんのおっしゃるとおり、あのワイングラスの芸人さんですよ。
      とても文章を書くのがお上手で、全然押し付けがましくもありません。
      優しくて頭の良い芸人さんだと思いましたよ(*^^*)
      2019/07/25
  • お笑いコンビ・髭男爵の山田ルイ53世の半生。
    内容はかなり深刻で重い。

    でも、すごく笑える。
    それは、筆者が自分のことを突き放した視線で客観的にみれているから。当時の自分へのツッコミが冴えわたっている。

    一発屋列伝でも感じたが、筆者のクールな批評精神が、お笑いのツッコミに昇華しているのだと思う。

    なぜ、引きこもりになったのか、本人自体もきちんとは把握していない。それでも7年間ひきこもってしまう。
    ひきこもりは、やはり世間が考えているように簡単ではない。と思う。

    頭脳も運動神経も良い、ある意味出木杉くんな筆者。
    ある日引きこもりになることで転落をしていく
    家族の関係もどんどんこじれていく。

    ドラマ要素がたくさん。
    本来は滅びの美学の世界。
    ただ、筆者はそんな演出はしない。
    そこからの現在を、成功、復活劇としても扱っていない。
    情念、恨み、反骨精神、そんなものはなく、カラっと描写する。

    だからこそ、この本は価値がある。

    彼はずっと彼として変わっていない。
    周りの社会に対して、完璧に振る舞おうとし、完璧が極まることで、自分自体も崩壊していった。
    その時、家族は見守るしかないのだが、そのうちにきしみがでて(別の要素も加わりつつだが)、崩壊していく。

    社会(自分の周り)に応じて変わり続けることはできない。
    だからこそ、例え自分が周りを変えることができなくても、傍観して、何もしないでも、「自分が自分であること」の方が大事なのかもしれない。

    引きこもり直前は、自分自身を越えられない部分まで自分を追い込んでしまったのではないだろうか。
    超一流のアスリートのように乗り越えられれば良いが、キャパの何倍もの大きな成果をあげようと無理する場合は、どちらかというと過労死と似た、オーバーヒートの状態になってしまう。

    長い冷却期間をおいて、お笑いに出会うことで、また彼特有の突破力、突き詰め力を発揮できた。
    お笑いは、彼を彼として存在することに適しているのだと思う。

    自分が自分自身であること、
    他人にとって価値は別になくても。
    自分が自分の価値をみつけられること。

    これが大事だと思った。

  • 面白かったけど、「勝ち組」とか「負け組」気にしてるのが気になった。そういうの別に無いのになと思った

  • 著者の中学生時代の「ルーティン地獄」の辛さがとてもよくわかる。私も強迫神経症だったから。
    不登校の朝の攻防も同じだが、私は著者のように自分の気持ちを親に説明できなかったな。
    引きこもりから自力で立ち直り、独学で大検に合格したのは凄いと思う。尊敬する。
    が、行動力故か、辞めるのも早い。
    基本怠け者なのに、いらんとこで無駄に行動力を発揮するのが、自分とダブる。身内と疎遠なのも同じ。
    引きこもってた6年は完全に無駄だった、と断言してるのが気持ちいい。

  • 6年引きこもり、その後も逃げ、挫折を繰り返したお笑い芸人さんの回顧録。
    逃げ、挫折と書いたけれど、それは本当に逃げ、挫折なんだろうか?
    また、それはネガティブなものなのだろうか?ネガティブでもポジティブでもないのか?と考えさせられました。
    インタビューで、あの引きこもりの6年があったから今の山田さんがあるんですね!なテンプレートに対して、いや、あれは無駄でした、と。意味なんてなくても、取り柄がなくても、失敗しても、ただ生きていて責められることのない社会こそが正常では、との文庫版あとがきが心に残りました。
    パッとしなくても大丈夫。
    笑えて泣けるエッセイに出会えて嬉しかった。

  • 六甲学院の十二年先輩、
    と言っても、中学生で引きこもりになって退学した芸人さんですが。

    シリアスな内容なのに、書き方がコミカルすぎて一気に読んでしまいました。

    中学時代、そうだったそうだった、とうなづきながら読んでおりました。
    担任の先生も一緒でした

  • おもしろかった。最初から最後まで1度も退屈しなかった。できればもっと深く引きこもり時代の家族の話を読みたい。いつか長い本を書いてください。

  • お笑いにさほど関心が無い僕が知っているという事は、一度は一世を風靡していると言っても過言ではないと思います。ネタは良く覚えていないけれど「ルネッサーンス!」「やないかーい!」というフレーズだけは頭に残っています。
    まさか本を書いているなんて思いもしなかったし、そもそもひきこもりだったという事も意外。どちらかというと頭が良くてなんでも出来る方という事自体も意外。全て意外ずくめといえば意外意外意外。
    小学校の黄金時代から中学のちょっとしたトラブルからの、メインストリートからのドロップアウト。そして家庭崩壊になるほどの長期間のひきこもり。そして大検受けて中卒からの大学生。基本的に全体能力が高く産んでもらったのにもったいない話ですね。ゲームキャラだったら完全に当たりキャラでしょう。
    そんな髭男爵のひげの人がいかに転落してそのまま転がり落ちまくり、現在へどうつながっていったかの主観的な記録ですが、文章が面白いのでどんどこ読めます。これ本当に彼が書いたのならさらに文章を書けるという能力まで持って生まれてきたという事か。なんとうらやましい。
    特にひきこもりから抜け出す方法も、教訓的なものも何も無いです。こういう人もいるという事を書いているだけです。でもこの文章からにじみ出る魅力は次の本を期待させる力があります。

  • 『僕たちはキラキラする義務などない』
    というタイトルで山田さんの講演を聞いたことがきっかけで引きこもっておられたことを知りました

    本を読んでみると
    暗いというかポジティブの反対というか
    ひたすら当時の想いとかが続く
    こんな人いるんや!と面白く読めるけど
    やっぱり芸人さんなので、お話を聞く方が面白かった笑

    この方は最後に子どもさんが生まれて
    人生が余ってしまった感覚がゼロになった
    むしろ、足りなく感じるようになったと記されていたけど
    引きこもったまま、結婚することもなく、一生を終える人は、どうしたらいいんや〜と
    少し思ってしまった

    まあ人それぞれだよな〜そんなのもそっとしといてあげなあかんのかな

    多様性と言うけど
    誰でも認めると言う風潮にはなってるけど、全くそうじゃない状況であることは私にもわかる

    若干おせっかいな私はこんな方や子どもに出会ったらどうしたらいいんやろ(やっぱ考え方が上からなんかな)って思ってしまう

    おそらく彼らからしたら
    ほっといてくれ〜なんやろな

全35件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

山田/ルイ53世本名・山田順三(やまだ・じゅんぞう)。お笑いコンビ・髭男爵のツッコミ担当。兵庫県出身。地元の名門・六甲学院中学に進学するも、中学2年に引きこもりになり中退。大検合格を経て、愛媛大学法文学部に入学も、その後中退し上京、芸人の道へ。「新潮45」で連載した「一発屋芸人列伝」が、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞し話題となる。

「2018年 『ヒキコモリ漂流記  完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山田ルイ53世の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×